ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティングを実践する、北の達人の“チーム作り”を明かす (1/3):MarkeZine(マーケジン)
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ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティングを実践する、北の達人の“チーム作り”を明かす

 資本金1万円で北の達人コーポレーション(以下、北の達人)を立ち上げ、年商100億円企業にまで成長させた木下勝寿氏。自身が実践してきたマーケティングスキルを体系化し、Webマーケティングの手法として編み出したのが「ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティング」だ。北の達人では、どのようにファンダメンタルズ×テクニカルの両輪を回しているのか、どのようにして組織に落とし込んでいるのか。「北の達人のチーム作り」にフォーカスし、MarkeZineプレミアムで開催した木下氏の単独セミナーの内容をレポートする。

※本記事は、2023年1月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)85号に掲載したものです。

ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティングとは

 ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティングは、いずれも投資用語に由来がある。それぞれ、対象企業の業績や財務状況、経営者の資質を見る「ファンダメンタルズ」と、対象企業そのものではなく株価の値動きから予想・分析しながら投資判断をする手法「テクニカル」という意味だ。これをマーケティングに応用すると、以下のようになる。

  • ファンダメンタルズマーケティング=商品そのもの、ユーザーのペルソナ、インサイトを分析してコミュニケーションを設計する
  • テクニカルマーケティング=Web広告出稿後のクリック数、遷移率、購入率、キーワードなど数値分析できるフィードバックデータから顧客とのコミュニケーションを設計する

 それぞれの領域を具体的に説明すると、ファンダメンタルズは「商品、競合、ユーザーの情報から仮説と戦略を立てる工程」で、テクニカルは「ファンダメンタルズで立てられた仮説と戦略を実行し、検証しながらチューニングする領域」だ。流れとしては、商品/競合/ユーザーについて情報収集し、コンセプトワークとして「誰に」「何を=どんなUSP(Unique Selling Proposition)を」伝えるかを決めてクリエイティブを作成するところまでがファンダメンタルズ。その後、広告を運用しながら得られたフィードバックをクリエイティブに返したり、細かい運用の調整をしたりする部分がテクニカルマーケティングとなる。

 ポイントは、広告運用の現場が数値改善で行き詰まらないようになっていること。「広告を運用していると、テクニカルの部分でチューニングが疲弊するタイミングがやってきます。その時には、コンセプトワークで情報収集に戻って、クリエイティブを見直し、再び広告を回していくという工程を踏みます」と木下氏は説明する。

ファンダメンタルズマーケティングを実践する仕組み

 セミナーでは、ファンダメンタルズマーケティングとテクニカルマーケティングについて、それぞれ基礎的な一部分が解説された。

 まず、ファンダメンタルズマーケティングは「USPの抽出」から始まる。そのために、商品/自社(Company)、競合(Competitor)、ユーザー/顧客(Customer)の“3C”を分析するが、3C分析では、CompanyとCustomer、CustomerとCompetitor、CompanyとCompetitorと3つのCが重なる部分を見ることがポイントだ(図表1)

図表1(タップで画像拡大)
図表1(タップで画像拡大)

 この3C分析で出てきた情報を書き出し、独自性のあり/なしを表に整理するとUSPが見えてくる(図表2)

図表2
図表2

 そうして抽出したUSPを軸に、3C分析で収集した情報と他社クリエイティブに関する情報を含めた「フィールド情報」をもとに広告クリエイティブを作成していく。

 ちなみに、先述した通り、広告運用のテクニカルのチューニングが疲弊したとき、北の達人ではファンダメンタルズの情報収集に戻り、クリエイティブを作り直す。この時、参照するのが上記のフィールド情報だ。このフィールド情報は、メーカーが代理店に向けてまとめる「オリエン情報」とは情報量がまったく異なる。フィールド情報の情報量が1,000だとすると、オリエン情報の情報量は100程度。だが、多くの場合、広告クリエイティブはこのオリエン情報でしか作られていないと木下氏は指摘する。オリエン情報をベースに広告クリエイティブを作り続けると、いつか切り口がなくなるため注意しておきたい。

 ファンダメンタルズマーケティングの仕組みが奏功するためには、メンバーの評価制度が不可欠だ。木下氏は、自社で実践しているディレクターとアシスタント・ディレクター(以下、AD)の評価方法についても紹介した。

 北の達人では、フィールド情報をもとにクリエイションできるメンバーをディレクター、それ以外をADとしている。ディレクターの下に数人のADがつき、それぞれ数人のチームで動く形だ。ディレクターの評価点は以下のようにして算出されており、目標値のストレッチ度合いも踏まえながら、自分の作成したクリエイティブから生まれた獲得数に応じて評価する仕組みとなっている。

ディレクターの評価方法

目標値 = 担当商品の過去半年平均の月間獲得件数×1.2

評価 = 目標達成率×獲得件数

 目標設定のないADの評価では、ポイント制を取っている。1件注文が入ると、広告やBLP、HLPなどを作成した人それぞれに0.33ポイントが加点。これに加え、あるメンバーが作ったクリエイティブを他のメンバーがアレンジし、そこから新規の注文につながった場合、「オリジナルの制作者」へ0.1ポイント加点される。いわば、印税のようなものだ。こうしたポイント制により、「この広告クリエイティブで高い成果が出たから、アレンジするとポイントを上げやすいよ」「このBLP、HLPはCVRが高いから、これを誘導先に広告を作るといいよ」などと、AD同士で密に情報交換をするようになる。「同僚と協力しあったほうが自分の成果が上がる仕組み」が機能しているというわけだ。

次回のセミナーは2023年2月28日(火)開催です!

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2023/02/17 09:30 https://markezine.jp/article/detail/41071

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