たった1人の「熱量の高い声」を聞き続けて成長、おやつサブスク「スナックミー」が語る「真のユーザー」理論。おかしの「返送封筒」を入れたら解約率が減ったワケ|アプリマーケティング研究所
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たった1人の「熱量の高い声」を聞き続けて成長、おやつサブスク「スナックミー」が語る「真のユーザー」理論。おかしの「返送封筒」を入れたら解約率が減ったワケ

おやつのサブスクD2C「スナックミー」を取材しました。

株式会社スナックミー 代表取締役 CEO 服部 慎太郎さん

「スナックミー」について教えてください。

服部:
スナックミーは、100種類以上のおやつの中から、ひとりひとりにぴったりのものを選んで、ポストまで届ける「おやつの定期便」です。

特徴としては、ECサービスとしては「レスポンス率」がとても高いことで、お客様からのフィードバック件数(評価・リクエスト・コメントなど)は、累計で4,200万件を超えています。

現在、社員は25名ほどで運営しています。

「ほしいからはじめた」のは納得ですが、事業としての可能性のようなものは、どう判断したのでしょうか?

服部:
これは定性的ですが、たった1人でも「熱量の高いお客様」がいらっしゃったことが、ものすごく重要だったと考えています。

なぜなら1人そういう方がいるなら、本当に「日本に1人だけ」というのは絶対にあり得なくて、他にも同じような方がいる証拠になるからです。

例えば、初期から「こんなサービスを待っていた」「コンビニのお菓子を食べない娘がすごく喜びました」といったお手紙をいただくことがあって。

これは、箱におやつを入れて送るだけ、最低限の価値しかなかった初期のスナックミーを、生活に取り入れてハマってくれる方がいる、ひとつの根拠になったと思います。

僕個人としては、熱量の高い方が1人いれば広げられる、そうじゃないと浅く広がるだけで、継続されないものになりやすいと考えています。

スナックミーの運営で「大事にしていること」を教えていただけますか?

服部:
スナックミーは、ペルソナをつくらずに、市場規模やデータから考えずに、ずっと「熱量の高い方」の声を拾って、方向性を決めてきました。

ユーザーインタビューは初期から続けていて、とくに方向性で迷ったときは、お客様に立ち戻ってめっちゃ話を聞くようにしています。

例えば、方向性を「モノかコトか」で迷った時期があって。このときにも、ユーザーインタビューを続けて、サービスの価値を改めて考えました。

例えば、なぜ使っているのか聞いたとき、「無添加のおかしを探していたんですよ」となれば、モノ自体に価値があることになります。

一方で「遊び場のないところに住んでいて、これが月一の楽しみなんです」となれば、ワクワクするような体験に価値があることになります。

実際のところ「コト」に価値を感じている方が多くて、迷った上で体験のほうに振り切ったことは、大きなターニングポイントになったと思います。

体験(ワクワク感)を高める「ボックスの工夫」

ユーザーインタビューはどのように進めていますか?

服部:
ユーザーインタビューは、週2〜3人ほど「熱量の高い人」にお願いして、どう使っているのか、実際のシーンなども含めて聞いていますね。

ポイントとしては、「熱量の高い人」の意見を聞くことで、熱量が低い人がなんとなく感じた意見に、引っ張られないことだと思います。

例えば、スナックミーでは、ボックスに毎月入れている冊子を、すごく楽しみにしてくれている人もいれば、別に要らないという人もいます。

ここで大事なのは熱量です。楽しみにしている人は「サービスへの熱量」が高い人ですよね。この人のサービス価値を下げてはいけないんです。

つまり「冊子は要らない」という意見に引っ張られて、冊子をなくす選択をしてしまうと、「熱量の高い人」の満足度が下がってしまうんですよ。

迷ったときは「熱量が高い人」の意見をベースに。その方たちのサービスの価値が下がることは絶対にしない、ということを意識していますね。

たくさんのユーザーがいる中だと「熱量の高い人」は、どのように判定したらいいですか?

服部:
基本的には「継続して使ってくれているか」を見るといいと思います。

飲食店でいうなら、常連さんの意見を聞くべきで、例えば「評論家」のような継続して使わない人の意見には、注意しないといけません。

僕らも初期に「新しいもの好きな人」が使ってくれて、こうすべきだと意見をくれたけど、彼らは1回評価したら「使い続けない」のですよね。

それって「本当のユーザー」ではないので、引っ張られると失敗してしまうと思います。「継続して使ってくれる人」が本当のユーザーかなと。

改善施策① 「返送用の封筒」で解約率が下がった

服部:
これは解約してしまった方に理由を聞いたときの話なのですが、退会理由として「おやつが溜まっちゃったから」という意見が多かったんですね。

さらに深く聞いてみると、実は「溜まっただけ」では辞めなくて、賞味期限が切れて「捨ててしまった瞬間」にすごく罪悪感を感じて、辞めているということがわかってきました。

そこで僕らはその「捨てる瞬間」をなくそうと考えました。施策としては、おやつを子どもに寄付することができる「返送用の封筒」を入れるようにしたんですよね。すると、ちゃんと解約率も減らすことができました。

改善施策② 「箱のデザイン」を毎月変えるようにしたらSNSのクチコミが増加

服部:
おやつを送るボックスは、もともと3ヶ月毎にデザインを変えていたのですが、今は毎月デザインを変えるようにしています。

例えば、「箱を開けるのがすごく楽しい」とか「ポストにいつもと違う箱が入っているとテンションが上がる」といったご意見は多くて、食べているときよりも、開封体験が楽しいという方もいらっしゃったんです。

そこで、①ポストを開けるときと、②ボックスを開けるとき、2つの開封体験を味わえるように、デザインを毎月変えるようにしました。成果としては、ツイッターやインスタなどの「SNSのクチコミ数」も増加しました。

100種類以上ある、おやつの「おいしい」を評価するときに、意識していることはありますか?

服部:
おやつの評価でおもしろいのは「評価の平均スコア」も大事なんですけど、ちゃんと「評価の分布」も見ないと、満足度が上がらないことです。

例えば「鮭皮チップス」というおやつは、評価が一見低かったんですよね。でも、1人の方から「鮭皮を8個入れてくれ」と熱烈に支持されていて。

そこで評価の分布を見てみると、高評価と低評価にはっきりわかれていて、実は好き嫌いの激しい「ニッチな人気商品」だと気づきました。

つまり、一部がハマっている商品なので、それを「平均の評価が低いから」といって取り下げると、全体の満足度は下がってしまうんです。

なるほど。平均スコアだけでみると「唐揚げや卵焼き」みたいなお弁当ばかりになる感じですか?

服部:
そうなんです。平均スコアで切り捨てると、結局クッキーやドライフルーツみたいな、わかりやすく「誰もが好きなもの」しか残らないんですよ。

例えば、スパイスやシナモン系のおやつも、好きな人は好きな商品なので、それをなくしてしまうと、サービスの魅力が下がってしまいます。

評価平均だけを見ると「ニッチな人気商品」を見落としてしまう。ある程度はニッチな商品を残さないと全体の満足度が下がる。これはサービス満足度を高めるために大事なことなんです。

好きと嫌いが分かれるおやつは、リクエストしないと入らないようにして、食べたい人だけが食べられる形で、残すように工夫していますね。

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【取材協力】
株式会社スナックミー:https://snaqme.com/
スナックミー:https://snaq.me/
CEOの服部さん:@haztr

【告知】スナックミーさんでは、各職種で採用も強化中。エンジニア、人事担当、商品開発など、募集しているそうです。ご興味のある方は下記サイトよりどうぞ。

※ 以降は、マニアックな事例を4つほどnote購読者向けにまとめています。サブスクを後押しするSNS成功施策、サービスのKPIの話、リアルの店舗を置くメリット、などご興味あればご覧ください。

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