ラグランジュの補間公式とその応用例
座標が相異なる 点 を通る 次以下の関数 が1つ定まり,以下の式で表される:
ただし,
ラグランジュの補間公式(ラグランジュ補間)について, の場合の例を使って意味を説明したあと,応用問題を紹介します。
ラグランジュの補間公式の意味
ラグランジュの補間公式の意味
一般形は複雑で意味がつかみにくいので, の場合を書き下してみます:
座標が相異なる 点 を通る 次以下の関数 が1つ定まり,以下の式で表される:
- 右辺は についての
次多項式になっています。例えば右辺に
を代入すると第一項は
,残りの項は になるので を通ります。 - 同様に を通ることも分かるので, が指定された 点を通る二次以下の関数と言えます。
- 二次の係数が になる場合もあるので「二次関数」ではなく「二次以下の関数」です。
ちなみに,通る 点から 次以下の多項式が1つ定まることは,因数定理を用いて証明できます。 →二次関数の決定とその背景
例題
例題
を通る二次関数を求めよ。
3元の連立方程式を解くのが一般的だが,ラグランジュ補間を使って求めてみる:
整理すると,
第一項が なのでマシですが,それでも式を展開して整理するのが大変です。
ラグランジュ補間の応用例その1
ラグランジュ補間の応用例その1
応用例として,IMO 1981の Shortlist から1問紹介します。
次多項式 が, に対して
を満たすとき を求めよ。
通る 点が与えられているのでラグランジュの補間公式を用いて を求めることができます。計算はややゴツイですが,機械的な計算で解答できます。
本問では通る点の 座標は である。
まずはラグランジュの補間公式における を求める。
求めるのは なので,次に を計算する。
よって,ラグランジュの補間公式から, に注意すると,
これは が偶数のときに で奇数のとき となる。
ラグランジュの補間公式の応用例その2
ラグランジュの補間公式の応用例その2
次は,USAMO(アメリカ数学オリンピック)の問題です。ラグランジュの補間公式は実際に多項式を求めるためだけでなく,多項式の存在を示すときにも使われます。
任意の 次モニック多項式(最高次の係数が1の多項式) について, が, 個の実根を持つ2つの 次モニック多項式の和で表されることを示せ。
個の実根を持つ多項式を構成するのが難しいところです。中間値の定理より,十分振動する関数(正負を行き来する関数)を構成すればよいわけです。
ラグランジュの補間公式より, を通る 次以下の関数 が存在する。ここで, を が奇数のとき十分大きな数,偶数のときに十分小さな数とすれば は激しく振動する。
これを利用して
個の実根を持つ
次モニック多項式を以下のように構成する:
※ の第二項は,「 を 次式にしたい」かつ「 での値は と同じにしたい」という気持ちで付け加えています。
あとは が 個の実根を持つことを示せば良い。
実際 などから中間値の定理より は実根を 個持つが,残り1つの根も実数である。(複素数が解なら共役複素数も解になる→共役複素数の覚えておくべき性質)
また, の値が無視できるくらい を激しく振動させれば も激しく振動して同様な議論により実根を 個持つことが分かる。
※厳密にはどれくらい を大きく取ればよいか議論する必要があります。
ちなみにラグランジュ補間は情報理論にも応用があります!→(k,n)しきい値法とシャミアの秘密分散法
USAMOの問題は非常に歯ごたえがあります。
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