新作から紐解くヒストリー 〜ディオール〜|THE NIKKEI MAGAZINE

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新作から紐解くヒストリー 〜ディオール〜

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2021.6.18

DIOR ディオール

マイクロサイズが登場したバッグをはじめ、スモールレザーグッズのバリエーションがさらに豊富になった「レディ ディオール」。右上から時計まわり「レディ ディオール」コンパクト ウォレット(H8.5×W10×D2.5cm)¥68,200 「レディ ディオール」iPhone ケース 対応機種12&12Pro(H14.6×W6cm)¥60,500  「レディ ディオール」マイクロバッグ(H10×W12×D5cm/ショルダーストラップ付き)¥396,000 「レディ ディオール」マイクロバッグ(H10×W12×D5cm/ショルダーストラップ付き)¥396,000 「カナージュ」 Air pods Proケース(H5×W8cm)¥115,500/以上ディオール(クリスチャン ディオール☎0120-02-1947)

PART1 メゾンのエレガンスを体現する「レディ ディオール」

1995年9月の誕生以来、ディオールのもっともアイコニックなバッグとして愛されてきた「レディ ディオール」。握りやすいダブルハンドルに、見た目は優美だが収納力もあるトート型、動くたびに揺れて輝くチャーム「D」「I」「O」「R」がアクセント。なめらかなラムスキンに、「カナージュ」(籐の編み目)柄のステッチを施したデザインが代表的だ。

名前の由来は、故ダイアナ元妃。公務時の夏の白いワンピースや真っ赤なテーラードジャケット、パーティでの黒いソワレに、手にはいつも「レディ ディオール」がコーディネートされた。そのエレガントな姿は世界中に広まり、人気はさらに上昇。シーズンやオケージョンを問わず、どんなスタイルも格上げしてくれる洗練されたデザインはもちろんだが、その確かな作りも、揺るぎない名品といわれる理由だ。専用の木型を用い、ひとつひとつ職人の手によって丁寧に仕上げられるバッグは、メゾンが誇るサヴォワールフェールの結晶である。

フランスの由緒ある出版社、ガリマール社が、フランスとアメリカの9名の小説家に「レディ ディオール」のバッグを題材にした小説の執筆を依頼し上梓した一冊がある。いかに「レディ ディオール」がクリエーターの創造力を掻き立て、物語を生み出すモチーフになりうるかを証明している。“品格”漂うバッグには、ストーリーが内包されているものなのだ。それでは、ディオールが紡いできたドラマティックな歴史を振り返ってみよう。

PART2 ディオール、その華麗なる歴史を辿る

ファッションのみならず、フレグランス、ファイン ジュエリー、時計、ビューティ、ホームコレクションまで取り揃える「ディオール」。その王国の礎を築いたのは、フランス、ノルマンディ地方のグランヴィルで生まれ育ったひとりの男性、ムッシュ ディオールだ。1946年にメゾンを立ち上げ、翌年オートクチュールのデビューコレクションを発表。ファッション界に革命を起こした。しかし、その活動期間はなんとわずか10年。1956年に心臓発作でこの世を去ったが、“モードの神”が残した美のヘリテージはあまりにも大きく永遠性を秘めたものだった。

41歳で、パリ8区、モンテーニュ通り30番地に「クリスチャン ディオール」を創設したムッシュ ディオール。多くの逸話が残されているが、審美眼が高いのはもちろんのこと、ビジネスセンスにも長けていた。性格はとても繊細で完璧主義者。花々が咲き誇る庭園を愛し、美味しいものに目がないグルマンで、たいへん迷信深かった、といわれている。

「あやうく気を失いかけた」。そう当時の名物ジャーナリストが語ったように、ムッシュディオールが発表した1947年2月のコレクションは、センセーショナルなものだった。実用重視の飾り気のない戦時中のファッションから一転、茎のようにほっそりとシェイプしたウエストから、花のようにふんわりと広がるスカートの「コロール(花冠)・ライン」を登場させたのだ。アメリカの雑誌の編集長が、「これぞニュールック!」と叫んだことから、「ニュールック」として世界に伝わり、夢見ることを忘れていた女性たちのハートを掴んだ。

西洋ファッション史を語るうえで欠かせない「ニュールック」を代表するルック。女性のボディを優しく包み込む構築的な「バー」ジャケットは、発表から70年以上経た今もなお、その時代時代の空気をまとわせ進化し続ける、まさにメゾンのアイコン的アイテム。

「ニュールック」をはじめ、ムッシュ ディオールが残したAラインやHラインなど数々の印象的なシルエット、レオパード柄、カナージュ、すずらん、スターといった、シグネチャーは、今も随所に反映されているメゾンを象徴するデザインコードだ。現アーティスティック ディレクターのマリア・グラツィア・キウリは、それらに時代のムードを絶妙なバランスで編み込み、女性ならではのまろやかさと強さを注ぎ込む。そして、フレッシュでありながら品格のあるクリエーションでもって、「ディオール」物語の新たな章を綴っている。

ダイアナ元妃も愛用していたベーシックな黒の「レディ ディオール」。カナージュ(籐の編み目)ステッチは、ムッシュ ディオールが好んだ、ナポレオン三世様式の籐を編み込んだ椅子の座面に由来する。メゾンを象徴するデザインコードのひとつである。

現在のディオールを率いる、アーティスティック ディレクターのマリア・グラツィア・キウリ。ムッシュ ディオール亡き後、イヴ・サンローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズといった才能溢れるデザイナーによって引き継がれてきた。ディオールにとって、初の女性デザイナーとして2016年に就任。

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Photo: ASA SATO(bags), ©Chritian Dior ©All Rights Reserved. Editor: MAIKO HAMANO