iDeCoと企業型DCの併用は可能?併用する場合のポイントや判断基準を解説 みんかぶ編集室 2023.11.01 (2021.08.27公開) iDeCo(イデコ) 「企業型年金(企業型DC)に入っているけど、iDeCo(イデコ)との併用はできる?」こうした疑問を持つ会社員の方も増えているのではないでしょうか。 老後の備えの一つとして企業型年金だけではなくiDeCoも活用したいところですよね。 そこで今回はiDeCoと企業型年金の違いや、併用が可能かという点について徹底解説していきます! 目次iDeCoと企業型DCは何が違う?iDeCoと企業型DCを併用する際の条件とはiDeCoと企業型DCの併用で拠出限度額はどう変わる?iDeCoと企業型DCを併用するメリットは他になにがある?iDeCoと企業型DCを併用するデメリットはある?条件によってはマッチング拠出がおすすめの場合もまとめ iDeCoと企業型DCは何が違う? まずiDeCoと企業型DCはどんな制度なのか、両者はどこが違うのかを簡潔に説明していきます。主な違いは以下の通り。 iDeCo(個人型確定拠出年金) 企業型DC(401k) 加入対象者 国民年金第1号被保険者…60歳未満の自営業者やその家族 国民年金第2号被保険者…65歳未満の会社員(役員を含む)・公務員 国民年金第3号被保険者…60歳未満の専業主婦(夫) 国民年金任意加入被保険者…60歳以上65歳未満の者(海外居住者は20歳以上) 厚生年金被保険者(公務員は含まず)…原則70歳未満の会社員(役員を含む)及び私学教職員 拠出限度額 自営業者やその家族…月額68,000円 会社員…月額23,000円(企業年金に加入している場合は月額12,000円)* 公務員…月額12,000円 専業主婦(夫)…月額23,000円 国民年金任意加入被保険者…月額68,000円 *企業型DCのみ加入の会社員の場合、月額55,000円-各月の企業型DCの事業主掛金額(月額20,000円を上限) 企業型DC以外の企業年金にも加入している場合、月額27,500円-各月の企業型DCの事業主掛金額(月額12,000円を上限) 月額55,000円 掛金控除 全額所得控除の対象 加入者が支払った分は全額所得控除の対象 運営費用の負担 個人負担 会社負担 運用商品 選んだ金融機関が選定している運用商品から選定可能 (自由度高) 会社が指定した金融機関の商品ラインナップから選定(自由度低) iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」といい、企業型DCの正式名称は、「企業型確定拠出年金」といいます。 企業型DCは「401k」と呼ばれることもありますので、企業型DCと401kは同義と考えていただければOKです。 どちらの制度も、毎月決まった額の掛け金を拠出し運用する「確定拠出年金」だという点は同じですが、掛け金を拠出するのが個人なのか、企業なのかという点で異なっています。 では、同じ「確定拠出年金」の制度である、iDeCoと企業型DCは併用可能なのでしょうか。 結論から言うとiDeCoと企業型DCの併用は「可能」です。 しかし、企業型DCとiDeCoを併用するには2つの条件をクリアする必要があります。 iDeCoと企業型DCを併用する際の条件とは iDeCoと企業型DCを併用するための条件は「企業型DCでマッチング拠出をしていないこと」です。 「マッチング拠出」とは「企業型DCを利用する上で、企業の拠出する掛け金に加え、企業の掛け金額を超えない範囲までであれば、従業員自身も掛け金を拠出することができる仕組み」をいいます。 このマッチング拠出を利用されている人は、企業型DCとiDeCoとを併用することはできません。 つまり、iDeCoを利用するか、現在加入している企業型DCに追加で掛け金を拠出するかを選択する必要があります。 iDeCoと企業型DCの併用条件が2022年10月から緩和された 2022年10月までは、iDeCoと企業型DCを併用するためには「会社の規定でiDeCoと企業他がDCの同時加入が認められていること」が必要でした。 しかし、この同時加入の制限を見直し「自助努力(自ら資産形成を行うこと)」を推進しようということで、2022年10月からは「会社規定に同時加入に関する記載がなくとも原則同時加入が可能」になりました。 この規制緩和のおかげで、企業型DCに加入している人でも「自由」にiDeCoへ加入できるようになりました。 2024年からは「新NISA」も開始されますし、国民が「資産形成をしやすい環境」が整いつつあるといえますね。 関連記事:「新NISA制度はいつから始まる?年間上限投資額や非課税期間など変更点をわかりやすく解説」 iDeCoと企業型DCは併用すべき?判断基準は? では、iDeCoと企業型DCは併用すべきなのでしょうか?答えは「資金に余裕があるのであれば併用がおすすめ」です。 なぜなら、併用をした方が「最終的な積立金額」も増えますし、毎年の「所得税控除額」も増え節税効果が見込めるからです。 では、企業型DCとiDeCoを併用した場合「拠出金額」がどれくらい増えるのか確認していみましょう。 iDeCoと企業型DCの併用で拠出限度額はどう変わる? ここでは企業型DCとiDeCoを併用した際の、拠出限度額についてシミュレーションしていきます。 今回は、企業型DCとの併用を前提に、企業に勤める「国民年金第2号被保険者(会社勤めの人)」の場合について考えてみます。 それぞれ自分が該当するパターンをチェックしてみましょう。 企業型DCのみ加入している場合 DBのみ加入している場合 企業型DCとDBを併用している場合 企業型DC、DBどちらも加入していない 企業型DCのみ加入している場合の拠出限度額 企業型DCだけに加入している場合、iDeCo拠出額は月額2万円までとなっています。 また、企業型DC、iDeCoの拠出額は合計で5.5万円までという制限もあるため、iDeCoに2万円拠出した場合、企業型DCの拠出額は最大3.5万円までとなります。 DBのみ加入している場合の拠出限度額 「DB」とは確定給付年金のことを指します。企業型DCやiDeCoなどとは異なり、給付される金額が確定しているということです。 DBの具体例としては、私学共済や厚生年金基金などがあり、これらに加入している人は、iDeCoに拠出できる掛金は月最大1.2万円までです。 企業型DCとDBを併用している場合の拠出限度額 企業型DCとDBを併用している場合、企業型DCとiDeCoは合計で最大2.75万円まで拠出可能です。 DBのみ加入している場合、iDeCo拠出額は月額最大1.2万円なので、iDeCoを限度額まで拠出した場合、企業型DCは1.55万円以下であれば併用が可能です。 企業型DC、DBどちらも加入していない場合の拠出限度額 企業型DC、DBどちらにも加入していない場合、iDeCoに拠出できるのは月額最大2.3万円になります。 勤め先が企業型DCを導入していない場合でも、企業が従業員の資産形成を補助してくれる「iDeCo+」という制度を採用している場合があるので、ぜひ担当部署に確認してみてください。 iDeCoと企業型DCを併用するメリットは他になにがある? 企業型DCだけでなく、iDeCoを併用するメリットは「掛金上限(運用金額)を増やせる」だけではありません。 iDeCoは自分で加入する金融機関を選べるため「運用商品の自由度」も高くなります。 例えば、企業型DCのみに加入している場合を考えてみましょう。 企業が選定した金融機関では選定銘柄が少なく、NISAで人気の「全世界株式インデックスファンド(オールカントリー)」が選べないこともあります。 しかし、iDeCoなら「全世界株式インデックス」を取り扱っている金融機関を選び、投資することが可能です。 「投資戦略の自由度が上がること」は併用をする大きなメリットの一つといえるでしょう。 iDeCoと企業型DCを併用するデメリットはある?条件によってはマッチング拠出がおすすめの場合も iDeCoと企業型DCを併用するかどうかは「企業型DCで企業側が拠出している金額」にも注意を払う必要があります。 なぜなら、会社が「2万円超〜2万7,500円まで」の金額で拠出をしてくれているケースでは「マッチング拠出の方が掛金上限が大きくなるから」です。 マッチング拠出の上限として「企業側が拠出している金額を上回ることができない」というルールがあります。そのため、企業側の拠出金額が20,000円より少ない場合はiDeCoとの併用でOK。 しかし、2万円を超える金額を拠出してくれている場合には「マッチング拠出」の方が上限額の観点ではお得になります。 iDeCoとの併用がおすすめの場合 マッチング拠出のほうがおすすめの場合 企業側の拠出金額 20,000円未満 20,000円〜27,500円 個人の拠出上限 20,000円 20,000円〜27,500円 上記の通り、iDeCoと企業型DCを併用することで「拠出上限」が減ってしまうことがあるため、事前に「企業側がいくら拠出しているのか」は確認しておきましょう。 その他のデメリットとしては、企業型DC、iDeCoともに「原則60歳まで」は引き出しが不可能なため、資金拘束されていない資産を用意しておかないと、直近のライフイベントで困ってしまうリスクがあります。 必ず、確定拠出年金に使う金額と「生活予備費・ライフイベント費」のバランスを加味して運用を続けましょう。 まとめ 今回の要点は以下の4点です。 企業型DCだけでなくDBを行っている場合でもiDeCoと併用できる 2022年10月からiDeCoと企業型DCの併用がしやすくなった 併用する場合はiDeCoの拠出上限額が減少する 企業型DCでマッチング拠出を行っている場合は併用できない iDeCoも企業型DCも「老後資金作り」という目的において非常に心強い存在です。 自分の資産状況を考慮しつつ、無理のない範囲で上手に活用していきたいですね。 iDeCoや企業型DCを賢く運用できれば、老後の不安もかなり軽減されるはずですよ。 この記事はいかがでしたか?感想を一言!