MACDとは?特徴・使い方を基礎から応用まで徹底解説 - みんかぶ(マガジン)

MACDとは?特徴・使い方を基礎から応用まで徹底解説

MACDとは?

MACDは、移動平均線をもとにしたテクニカル指標です。値動きを追うよりも早く相場の転換点を分析することができます。

ボリンジャーバンドや一目均衡表などと並び、多くの投資家に使われています。

この記事では、テクニカルアナリストの筆者が、MACDの基本から分析方法、活用方法について徹底的に解説してゆきます。

ひとこと要約

  • MACDは、移動平均線よりもわかりやすい売買シグナルを提示してくれる
  • トレンド変換を見極めるのに役立つ
  • MACDとRSIを組み合わせて精度を高められる

目次

MACD(マックディー)とは?

MACD(マックディー)とは、2本の移動平均線からトレンドの強さを測るオシレーター系※のテクニカル指標です。MACDはMoving Average Convergence Divergenceの頭文字を取ったもので「マックディー」と呼ばれています。

Convergenceは収束、Divergenceは発散・拡散を意味していて、MACDの日本名は「移動平均収束拡散法」です。また、移動平均線よりもわかりやすい売買シグナルを提示してくれます

※オシレーター系:売られすぎ、買われすぎ相場の過熱感を数値で表し、トレンドの転換点を分析するテクニカル指標

MACDの特徴

MACDを構成している2つの移動平均線を、MACD線とシグナル線といいます。MACD線とシグナル線の間の距離を棒グラフで表した指標がヒストグラムです。

MACD線とシグナル線0ライン

【MACDの計算式】

  • MACD線:短期EMA(12)ー長期EMA(26)
  • シグナル線:MACD線を単純移動平均化(9)
  • ヒストグラム:MACD線-シグナル線

設定値(パラメーター)は、12・26・9がデフォルトの値となっていることが多いです。

開発者のジェラルド・アベルは、だましを避けるために場合によっては19と39、6と19の組み合わせも使い分けて、複数のMACDで分析することも推奨しています。

MACDの売買シグナルを使いこなすためには、計算式の意味とMACDの特徴をひとつずつ理解していくのが近道です

MACD線について

MACD線は、短期のEMA(指数平滑移動平均)と長期のEMA(指数平滑移動平均線)がどのくらい差があるのか、変化を線で表した指標です。

EMAは、直近の終値に重きを置いた移動平均線です。

詳しくはEMAとは?をご参照ください。

EMAを使ってMACD線を生成する事によって、トレンド転換のシグナルがより早く出やすく、直近のトレンド強弱も追いやすくなっています。

シグナル線について

シグナル線はMACD線を単純平均化したものなので、MACD線よりも鈍い動きになります。

「単純平均」とは、シグナル線を期間9で出すときは、直近のMACD線の値を9つ足して単純に9で割ることです。これが、該当するシグナル線の値になります。

このとき、シグナル線は、MACD線の期間9の移動平均線なので、MACD線よりも緩やかに動くのは前述したとおりです。MACD線は短期移動平均線、シグナル線は長期移動平均線として捉えていくことがポイントです

ヒストグラムについて

ヒストグラムは、MACD線とシグナル線の間隔を棒グラフで分かりやすく表示したもので、日本語で棒グラフという意味です。

MACD線とシグナル線がクロスした時に間隔は0になるので、当然のごとくヒストグラムの値も0になります。つまり、MACD線がシグナル線を上回り、ゴールデンクロスしたときにMACD線=シグナル線となりヒストグラムの値は0になります。

この場合、上昇トレンド入りの可能性を示し、ヒストグラムの値の変化は「マイナス → 0(ゴールデンクロスの時)→ プラス」に推移します。

逆にMACD線がシグナル線を下回りデッドクロスした時に、ヒストグラムの値の変化は「プラス → 0(デッドクロスの時) → マイナス」に推移します。

MACD線とシグナル線のゴールデンクロス
外為どっとコムのチャート

MACD線とシグナル線が交差したときには、トレンドのピーク時よりもタイミングが遅れてしまいます。そのため、ヒストグラムの高さが利益確定の判断に利用されることがあります。ただ、ヒストグラムのピークは数値では分からないため 「だまし」もその分多くなります。

ヒストグラムのダマシ

画像のヒストグラムは、高さが一個前よりも高くなっているときは濃い色、小さくなっているときは薄い色で表されます。ピークから低くなった後に、また高くなった場合にも表されます。

まとめ:トレンド転換の判断基準が早い順

  1. ヒストグラムの高さ:トレンドのピーク確認
  2. MACD線とシグナル線のデッドクロスとゴールデンクロス(ヒストグラムが0):相場の転換点
  3. MACD線とシグナル線が0ラインを突き抜ける時:トレンドの転換点

MACDの見方、基本的な売買ルール

ゴールデンクロスとデッドクロスした時の売買シグナル

MACD線とシグナル線がゼロラインをクロスするときと比べて、MACD線とシグナル線がクロスする方が早い段階でトレンド転換を示します

また、下図で確認できるようにMACD線とシグナル線のクロスは、同じ期間のEMAを2本表示させた時よりも早めの段階で発生しています。

MACDヒストグラムはこの時どうなっているかも押さえておきましょう。ゴールデンクロスのポイントとデッドクロスをヒストグラムが0になったことでクロスしていると判断する人もいます。

ゴールデンクロスがマイナス圏で、デッドクロスがプラス圏で生じているかも注視してください

下図のように、0ライン付近でMACD線とシグナル線がクロスを何度も繰り返してしているような調整期間は売買シグナルとしては使えません。

MACD0ライン付近とプラス圏で生じた売買シグナルの違い
外為どっとコムのチャート

MACD線とシグナル線がゼロラインをクロスした時の売買シグナル

ゴールデンクロス

ゴールデンクロス

デッドクロス

デッドクロス

MACD線単体で、トレンドの転換を捉えるための指標になっています。

長期EMAよりも短期EMAの方が動きが早いため、値動きが上昇することによって短期EMAが長期EMAを上回ったときに、MACD線が-から+の値になると0ラインをクロスして上昇トレンド転換を示します。

逆の場合は、今までMACD線が+の値で、急激な価格の下落により短期EMAの値が長期EMAよりも小さくなることでMACD線の値がマイナスになった時、下落トレンドに入ったと判断できる場合があります。

より慎重なトレンド転換を確認する場合は、シグナル線はMACD線の性質を受け継いでいるため、2本の線がゼロラインをクロスした時にトレンド転換のタイミングであると考えられます

EMAとMACD
外為どっとコムのチャート

ただ、売買のタイミングとしては大きく遅れる場合があるので注意しなければなりません。

EMAのクロスのタイミングよりも遅く発生する場合があるので、機会損失になりかねません。実際のトレードでは、トレンドの方向性を確かめるのに利用する程度に留めておくと良いでしょう

株価の値動きによるMACDのトレンドの大きさの違い
外為どっとコムのチャート

なお、MACD線の絶対値が大きいほどトレンドが強い傾向があります。つまり、MACD線がゼロラインをクロスして、その値がどんどん0ラインから離れていくほど、トレンドが一方向に続いていると考えられます。

うまくトレンドに乗れたら、トレンドのピークはヒストグラムで確認しながら利益確定を行う手法もあります。

ダイバージェンス

大きなトレンドの転換を示唆するのがダイバージェンスという逆行現象が起きている時です。価格が高値を更新しているのに、MACD値は高値を更新せず、下がっていくときに「弱気のダイバージェンス」と言います。

また、価格が安値を更新しているのに、MACD値が安値を更新しない場合に「強気のダイバージェンス」といいます。どちらのダイバージェンスも、大きなトレンドの変化を示す場合があるので、相場の転換点として売買シグナルとして考えられています。

また、このようなダイバージェンスが生じた時に逆のポジションを保有していたら一旦手放すこともオススメです。なかなか出現しない現象ですが、大きなトレンドの転換点と捉えることができます。

弱気のダイバージェンス

弱気のダイバージェンス

強気のダイバージェンス

強気のダイバージェンス

リバーサル

ダイバージェンスはトレンドの転換を示すのに対して、リバーサルはトレンドの継続を示唆しています。上昇トレンド途中の「押し目」、または下降トレンド途中の「戻り目」を狙ったトレンドフォローの売買判断になります。

押し目は上昇トレンド中に安値を更新しない範囲で下落することで、押し目が生じた時にMACDが安値を更新している時を「強気のリバーサル」といいます。戻り目は、下落トレンドの高値を更新しない範囲の上昇ポイントのことです。

「弱気のリバーサル」は、戻り目でMACDが高値を更新している時のことを差しています。リバーサルは、トレンド継続中の早まった利益確定を防ぐためにも役立ちます

売買シグナルまとめ

【買いシグナル】

  • MACD線がシグナル線を下から上に突き抜けてするゴールデンクロスした時
  • MACD線とシグナル線がマイナス圏から0ラインをクロスした時
  • 強気のダイバージェンス
  • 強気のリバーサル(上昇トレンド中の押し目狙いの買い)

【売りシグナル】

  • MACD線がシグナル線を上から下に突き抜けてするデッドクロスした時
  • MACD線とシグナル線がプラス圏から0ラインをクロスした時
  • 弱気のダイバージェンス
  • 弱気のリバーサル(下降トレンド中の戻り目狙いの売り)

MACDはどのような状況で使うか

MACDはトレンドが出ているときに機能しやすく、日足や週足などの長い時間軸の方が、だましも少なくなります。

一方、レンジが狭い調整中の相場では、EMAの方向性が定まらず、何度も交差してしまうことからMACDの売買判断が使えない状況が多く出現します。

レンジ相場かどうかの判断は、MACD単体以外にも他のオシレーター指標やトレンドラインを引いたり、移動平均線を使う方が良いでしょう。

MACDの設定値の使い分けは大きく分けて短期・中期・長期の3種類あります。開発者のジェラルド・アベル氏の推奨は下記の通りです。

  • 短期:6、19、9
  • 中期:12、26、9
  • 長期:19、39、9

一般的に使われているのが中期の設定値で、多くのトレーダーはこの数値を使っています。多くの人が使っているテクニカル指標の売買シグナルを把握しておくという意味で、中期のパラメータがオススメです。

ただ、MACDはオシレーターの中でも比較的遅い売買シグナルです。数ティックの差をトレードするスキャルピングでは、短期に切り替えたほうが機敏な価格変動を追うことができます。

その代わりに売買シグナルの発生が増え、だましも増えてしまいます。自身の売買エントリーやエグジットの傾向を踏まえて、MACDの設定値の最適化を行ってみてください

①レンジ相場ではないことを確認

①レンジ相場ではないことを確認

②上位足の確認、トレンドの方向性とMACDを比較

②15分足も確認してトレンドの方向性とMACDを比較

③エントリータイミングの確認

③エントリーのタイミングを転換点で確認・検証

④エグジット(決済)のタイミングを考える

④エグジットのタイミングを考え検証&メモ

上記のような手順を繰り返していくと、MACDを利用した売買が板についてくると思います。

MACDと相性のいいテクニカル手法について

MACDの欠点を補えるテクニカル指標を組み合わせることで、より精度の高い売買判断ができる場合があります。MACD単体での見方に慣れてきたら、他のインジケーターと併用してみましょう。以下の2つは代表的なMACDと併用するテクニカル指標と分析です。

MACDとRSIを組み合わせる

RSIは相対力指数といいます。RSIは相場の過熱感を0-100の数値で表し、一般的に30以下は売られすぎ、70以上は買われすぎとして判断され、逆張り系の売買シグナルとして利用されてます

RSIはMACDよりも値動きに機敏に動くオシレーター系のテクニカル指標です。MACDはレンジ相場では使えないという欠点があるので、RSIを見てレンジ相場での過熱感を判断するのに使います。

  • RSIが天井圏で張り付くときは、上昇トレンド継続
  • RSIが底を這っているときは、下降トレンド継続

RSIが天井圏や底を這うような動きの時は、売買シグナルのタイミングとしては信憑性が落ちてしまうため、注意が必要です

RSIが天井圏・底値圏で張り付いておらず、ワークしている時は、RSIをもとにレンジを判断していきます。RSIが天井や底に張り付いたらMACDを基準に売買をします。価格が調整し方向性の判断が分からなくなれば、再度RSIの方が機敏に反応するのでRSIの方向性を確認していきます。

RSIのシグナルが点灯し、MACDのシグナルも出そうな両者の方向性が合致するところで逆張りの売買を行うのが王道です。

RSIとMACDを組み合わせる

①RSIのシグナルが点灯したところから見ます。
この時、RSIが張り付いてないかどうか確かめます。RSIでダイバージェンスが出る場合があります。この時も同様に優先的な売買シグナルとして考えます

②MACDのヒストグラムがピークを打ち始めたらエントリーします。
MACDがゴールデンクロスもしくはデッドクロスした時まで待つことも手ですが、機会損失になったり利益幅が少なくなることもあります。逆差し値注文を置いてエントリーするか、注文量を少なめにして数回に分けてエントリーするのも手でしょう。

③反対シグナルが出始めたら、ロスカットもしくは利益確定を行います。

RSIに過熱感が出ていないときは、基本的に待機します。以上が、RSIとMACDを併用した時の王道の逆張りトレードの手順です。

MACDとボリンジャーバンドを組み合わせる

ボリンジャーバンドも、レンジ相場を把握するのに役に立ちます。利点は、バンドの幅がエクスパンションしたりスクイーズすることで値動きの強さ(トレンドの発生の有無)やトレンドの方向性を捉えやすいということです
参考記事:ボリンジャーバンドとは?活用法から注意点まで完全網羅

ボリンジャーバンドとMACDを組み合わせる

いくつか売買サインがありますが、基本的に順張りトレードに使用します。ボリンジャーバンドがスクイーズしているときは、価格が調整中で値幅が少なくなってきていることを示しているので、売買を避けます。

ボリンジャーバンドと併用して、売買を行うときのポイントは、以下の3点です。

  • ボリンジャーバンドの中心線の傾きでトレンドを確認し、バンド幅でトレンドの強弱を把握
  • ボリンジャーバンドで確認したトレンドの方向性が、MACDの向きと同じ場合、売買シグナルが点灯すればエントリー
  • 利益確定は、ボリンジャーバンドの±2σを目途。もしくはMACDで反対の売買シグナルやトレンド転換が見られた場合に決済。

まとめと注意点

MACDを理解する上での重要なポイントと注意点は、以下の4つです。

  • MACDの値の上下限はない。数値は無限大でトレンドに勢いがあるほど、数値の絶対値が大きくなる
  • MACD線の計算にはEMAが使われる
  • 移動平均線が交差するような狭いレンジ相場では、だましが多くなり使えない
  • 価格の天底よりもMACDの天底の方が早く発生し、トレンド転換を示唆する

トレードを上達させるコツは「なんでここでエントリーしたんだろう」、「なんでここでエグジットしたんだろう」というような売買判断に根拠がないトレードを減らすことです。

上達への道は、マイルールをつくってそれを守る事だとは筆者は考えています。MACDの特徴を理解してうまく活用することで、感覚的なトレードで損する取引を減らすことができるかもしれません。ぜひこの記事を読んで、MACDを活用する練習を始めてみてくださいね。

サイ

東京大学大学院卒、NTAA認定テクニカルアナリスト /株式・為替トレーダー歴7年。ファンダメンタルズとテクニカルを組み合わせた分析手法の解説が得意。ラジオ日経「THE スマートトレーダー+」の出演など

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