Appleがクパティーノの本社Apple Parkで、新製品を発表するスペシャルイベント「It’s Glowtime.」を開催した。本記事では、Apple Watch Series 10を中心に、世界中30カ国から大勢のジャーナリストやインフルエンサーが集まり、大いに盛り上がったSteve Jobs Theaterのハンズオンエリアで、実機を体験した筆者のファーストインプレッションをレポートする。
Apple Watch、10周年の集大成
Apple Watchは、2014年の初登場から10周年を迎えた。ナンバリングシリーズの新製品も、Apple Watch Series 10となる。
ほかにも、Apple Watch Ultra 2の新色・ブラックチタニウムが加わり、久しぶりにミラネーゼループバンドが復活した。ブラックチタニウムのケースに色を丁寧に合わせたバンドも発売する。
「手首につける」ことに最適化された、視野角の広いディスプレイ
筆者はApple Watch Series 10のさまざまな革新に驚いた。Apple Watchをいつも身に着けていたくなるような「ベーシックな使い勝手」が飛躍していたからだ。
ケースは46ミリと42ミリになり、それぞれSeries 9から1ミリずつサイズアップしている。バンドの互換性はキープする。
ディスプレイの有効画面領域も広くなった。テレビやパソコンのディスプレイは正面からのぞき込むものだが、Apple Watchはウェアラブルデバイスだ。手首に装着した状態で、多くのユーザはディスプレイを上下左右、さまざまな方向から「斜めにのぞき込む」。Appleは、だからこそApple Watch Series 10のディスプレイ視野角を広げるべきと考えた。
そこで独自に「広視野角のOLEDディスプレイ=Wide-Angled OLED display」を設計し、Appleデバイスにはじめて搭載した。OLED=有機ELディスプレイはもともと液晶などに比べて広視野角だが、Apple Watch Series 10のディスプレイは、角度を付けてのぞき込んでも色味の変化や明るさ落ちが発生しにくい。
“1秒を刻む”。ディスプレイに最新の制御技術を採用
さらにApple Watch Series 10の広視野角OLEDディスプレイには、LTPO(低温多結晶酸化物)という制御技術方式のもっとも新しい世代の技術が使われた。それは、LTPOは性能を高く保ったまま、ディスプレイが消費する電力を低く抑えることにも貢献する。では、そのメリットはどこに表れるのかだろうか。
たとえばApple Watch Series 4ではじめて採用された、ディスプレイの「常にオン」(常時表示)時の描画応答が速くなる。従来モデルでは「1分間に1回」ディスプレイを描き変えていた。しかし、Apple Watch Series 10では「1秒に1回」に高速化する。1秒に1回ということは、常時オン表示のときにも「秒針」を表現できることになる。Apple Watch Series 10の新しい文字盤には、画面を徐々に色で埋め尽くす「フラックス」があるが、こうした秒単位で移ろう文字盤の表現力が高まるだろう。
最大18時間。バッテリライフを支える高速充電性能に注目
ケースが薄くなり、Apple Watch Sereis 10の装着感はぐんと軽快さを増していた。Appleが新規に開発した「S10 SiP」と、本体のケース背面にメタル素材を採用し、通信用アンテナを組み込めたことなどが薄型化に大きく寄与している。
ハンズオンでは試せなかったが、Apple Watch Series 10ではバッテリまわりがさらに改善されているという。高いパフォーマンスと電力効率を兼ね備えるS10チップによって、性能アップと同時に、Apple Watch Series 9と同様の「1日中使える18時間のバッテリライフ」を維持。さらに、メタルの背面に充電効率の高いコイルを組み込むことで、15分の充電で最大8時間も使用できるほどの高速充電性能を備えるという。実機を試す機会が楽しみだ。
美しいアルミニウムとチタニウムの2ラインナップ
Apple Watch Seires 10のケースは、素材をアルミニウムとチタニウムから選べる。今回はステンレススチールがない。アルミニウムのケースには鏡面仕上げの「ジェットブラック」が初めて加わった。2016年にAppleが発売したiPhone 7/7 Plusのカラバリとして並んだジェットブラックの色や質感によく似ているが、Apple Watch Series 10のほうが指紋の付着が目立ちにくいように改善されている。
チタニウムのケースもジュエリーのように鏡面仕上げの輝きが映える。ステンレススチールよりも軽い金属なので、ケースの薄型化とあいまって装着感は良好だった。
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著者プロフィール
山本敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ITからオーディオ・ビジュアルまでスマート・エレクトロニクスの領域を多方面に幅広くカバーする。最先端の機器やサービスには自ら体当たりしながら触れて、魅力をわかりやすく伝えることがモットー。特にポータブルオーディオ製品には毎年300を超える新製品を試している。英語・仏語を活かし、海外のイベントにも年間多数取材。IT関連の商品企画・開発者へのインタビューもこなす。