「風真いろは&ラプラス・ダークネス」というキャラの、4月1日の入籍宣言(への非難)を論ず。 - INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「風真いろは&ラプラス・ダークネス」というキャラの、4月1日の入籍宣言(への非難)を論ず。

jisin.jp
有名人による4月1日のエイプリルフールの“嘘”がネットで注目を集めるなか、人気VTuber事務所「ホロライブ」に所属するVTuber2人のXでの投稿が物議を醸している。

投稿を行ったのは、風真いろはとラプラス・ダークネス。風間は87万人、ラプラスは112万人のフォロワーを持つ超人気VTuberだ。
2人は4月1日未明に《ご報告》と題し、それぞれ《この度、同じくホロライブ6期生の風真いろは(ラプラス・ダークネス)と入籍いたしました。未熟な2人ですが今後ともよろしくお願いいたします》と綴った。あわせて、ウェディングドレス風の白いドレスを着た2人のイラストも添えられていた。
この2人は互いの配信に頻繁に登場しており、ファンからは“仲良し”としてお馴染みの存在。

これか。

まず「超人気」「おなじみの存在」と書かれていて、youtuber、Vtuber の文化圏から我ながら、いまだに遠く離れているなぁ、と実感。昭和プロレスの裏話でもないと見に行かない怠惰さをあらためねば、と思うのは後に回して…


もとの話(記事)とブクマに関して、述べる。
[B! VTuber] 「反吐が出る」「認識が甘い」超人気VTuberがエイプリルフールに“同性婚発表”で批判噴出 | 女性自身

そもそも怒る、批判する根拠ねーだろ、という論だ。
ただ最初に断っとくけど「理屈は関係ない、感情として腹が立つんだ!」という、そういう感情の話はしょうがない。そちらは仕方ない、とみとめます。


なにかの理屈のもとに、
これを批判する、という人向け。上の記事を中心に……


そもそもこのキャラ、現在の日本の民法に縛られる存在なの?設定上。

いま設定確認したよ

風真いろは
《秘密結社holoX》の用心棒。 山奥の田舎で生活していたが、外の世界に憧れてお供と共に面白い事を求めて武者修行の旅を始めた。 今は日銭を稼ぎながら 《秘密結社holoX》の用心棒として雇われている。


ラプラス・ダークネス
La+ Darknesss
貴様ら、刮目せよ!!

【秘密結社holoX】を設立した総帥。
本来頭も良く、力も膨大だが、今は力の大半が封印されている。枷のせいで力の大半が封印されていることは本人も薄々感じているが、いつからかけられたのかよく覚えていない。
側にいるカラスとは長い付き合い。

角が生えてたり、銃刀法に違反するであろう凶器を背中に背負った存在やん。役場に届を出しに行ったら現行犯逮捕されました、みたいな設定の甘さを批判しとんのか。
そういう存在であるなら、現行の民法に関係なく、結婚とかしても別に不思議じゃないと思うのだが…


「物語の世界で、現実でできないことをする」が励ましになることも

そもそも「現実でできないことを虚構(物語でも、「夢の話」でも、4月1日でも)で行う」って、むしろ”エンパワメント”とやらじゃない?
マーメイドの”人種”が自分に近いと、エンパワメントされるとか、アラレちゃんがメガネだけど、おとなしい子でなくて大騒ぎの元気っこなので励まされました、云々とかあるじゃない。
この伝でいくと、設定的には架空の存在であるVtuberが、架空の世界で「結婚しました」いうのは、実際のところ「同性婚」に関するふわっとした”慣れ” ”概念の認識”を一般の視聴者、ファンに与えて、同性婚許容(若い世代に多いことは統計的にあきらか)の下地をむしろ作ってるんじゃない?そう考える「当事者」がいるかいないか、知りたいけど。
あと仮に、仮のはなしとして……ここで「当事者性」が議論の対象になるならばだ、実際のところ、このVtuberのいわゆる”中の人”は、いわゆる属性的に……いやアウティングになるおそれがあるからこの論は掘り下げようがないが、逆にそのへんは皆さん確信を持って論じてるの?


オバマ大統領」が現実に誕生する前、アフリカ系、アジア系などが大統領になるフィクション、物語も描かれた。

ディープインパクト 黒人大統領

m-dojo.hatenadiary.com

i-guru

オバマ前”のこれらの作品を「現実に政治の場に足を踏み入れて、制度や社会の状況ゆえに挑戦が実らず苦しんだ人たちを、この物語は傷つける」みたいな論だよ。

設定上で同性婚に「踏み込まなかった」ことを、こっちでは非難されてたな。
togetter.com
togetter.com


もし今回、上のVチューバ―のキャラクターが、その設定世界の中で(キャラクターが、だぞ、中の人ではないぞ)「本当に二人は同性結婚したんです」という体で、このあとも続いていったら、そういう場合の評価はどうなんですかね。
ついでにそこで「私たちは現実政治の中でも同性婚を推進すべきと考えています、そのキャンペーンの一環です」とかだったらどうだったんだろうね。

いや、そりゃ「戦争とてえま」だ。

戦争とてえま

覚えてますか「水星の魔女」最終回騒動

もし水星の魔女、という架空のお話の結末が同性婚だったら拍手喝采で、Vtuberという架空の人格の二人が同性婚という「エイプリルフールのジョーク」だったら非難殺到、だというなら、それは「結婚ネタは神聖だから4月1日ネタとして軽く扱うな/長編テーマで登場ならヨシ」みたいな区分かもしれない。それはそれで別の話になる(異性婚のネタでも同様だろうから)。自分はそういう立場だという論者なら、それは理解しました、ですませます。


そもそも「入籍」可能だよね?現行法でもさ(叙述トリック)。

そもそも元ツイートの「入籍」は、「養子縁組しました」と解釈すればいいだけだからな(笑)。これはUとIの「入籍」が週刊文春で報じられた時、可能性として論じられたメソッドである(最終的には婚姻届けであったことが判明)。その時、有名になったやろ?



行政手続きに関係なく「結婚」できるし、現に多くの人がしてるがな(「結婚を認めるのは神か人か国家か?」という大きな問題にも繋がる)

以下は、「入籍」という表現の場合はそぐわないけど、こっちも書いておきたいので載せておく

そもそも、別に今の日本であっても「入籍」は別として、「同性婚しました」と宣言することはふつうに可能。
てか、いまの「きのう何食べた?」は、まぁその話ではある。

※注意 どうもこの作品は不定期連載でもあり「単行本で読みたい派 だから内容を知りたくない派」が多い作品のようである。
有料定期購読者(サブスク)が、そういう人に遠慮する謂れもないし普段は気にしないが、まあそういう人は、下の画像についてはパッと目をそらし、その後、続きをご覧あれ
モーニング 2024年18号

きのう何食べた 同性婚の結婚式


これは俺というより憲法学者・木村草太氏の話で出てくる。

――現行憲法下でも同性婚は実現できるということですね。

正確に言うと、同性婚は今でも日本法のもとで出来るのです。婚姻というのは共同生活のための契約です。これには2つのやり方があります。個別に契約書や合意書を作って自分たちの共同生活の契約の内容を定めるという「個別契約婚」とでも言うべき結婚と、そして役所に結婚届けを出して行う民法の規定に則った「民法婚」です。

――事実婚法律婚ということでしょうか?

そうですね。ただ、いわゆる事実婚も個別の契約であり、法律上有効です。何か問題があったときには、法的保護を受けたり裁判所で執行してもらったりすることが出来ます。事実婚というとまるで法的効力がないかのような言い方ですが、じつは法的効力があります。そういう意味では法律婚なのです。

ですから事実婚法律婚という言い方自体が私はおかしいと思います。個別に契約する個別契約婚と民法のフォーマットを全て受け入れる民法婚の2種類の婚姻が日本にはあると理解すべきです。

同性間の個別契約婚は、すでにたくさんの例が日本にはあります。行政書士司法書士、弁護士の協力を得ながら、互いの扶養義務や生活費の負担の割合などを公正証書にしている人もいます。そういう意味では日本では同性婚は既に存在しているのです。もしも憲法24条が同性婚を禁じているなら、こうした同性愛者の個別契約婚も公序良俗違反として無効にしなければなりません。憲法24条が同性婚を禁止していると主張する人も、そこまでは言いませんから、恐らく、「憲法が禁止している」ということの意味を正確に理解していないのでしょう。

www.huffingtonpost.jp


……ということであるから、「結婚」を現行の民法下でしました、というのも別に何もおかしくない。それが役所に届けられないから「結婚」が今はできない、もわかるが、それはただ結婚の解釈が違う、というだけでしょう。

(同様のことは養子縁組でも言える。役所に届は出さないが、ふたりや周囲の間で、この子はうちの子です!と宣言し、親子としてすごす。それって皆無な、ことなのかい?)


というか、異性間でもまったく同様に「結婚します、しました」と本人たちは宣言したけど、国家権力と民法が受け付けない、というのはよくある話である。たとえば片方、あるいは双方が、まだ前の配偶者との離婚が法的に成立していない、とか、片方、あるいは双方が、結婚可能な年齢に達してないとか……

そういう人たちが、木村草太いうところの「民法婚」とは別の形で「結婚」するのは、それは自由というか禁止できないというか……ああ、ぴったりの言葉がある、多様性。タヨーセイ! 民法婚の成立によってこそ「結婚」なのである、という定義の人もいること、それまた否定しないけど。
みんなちがって、みんないい。


役所に届けるのと、たとえば神の前に誓いを立てるのと、どちらが真の「結婚」なのか、はプロイセンビスマルクの時代からつづく抗争。


弘兼憲史「ですら」ここまで来てるのに。

しかし思い出すのは、最近の弘兼憲史「黄昏流星群」で、何度目かの同性婚の話題が出てきて、そこではあっさり「私は同性婚も神は認めている、という立場の牧師です!」という人が登場、この人の導きによりめでたく結婚が成立していた。民法上、役所上の話はどうかしらん。

みなさんは、弘兼憲史より、結婚観がアップデートされてないのかい?


(ひとまず了)

炎上した4月1日の入籍宣言