【質問】「二次創作」なる言葉や概念は、令和6年の今、一般社会でどれだけの認知度があるんだろうか? - INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

【質問】「二次創作」なる言葉や概念は、令和6年の今、一般社会でどれだけの認知度があるんだろうか?

考えると、ちょっと面白い話
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この反響で「揶揄するな」「二次創作なんてもはや当たり前なのに、なに言ってるの?」的なものがコメント欄にも、ブクマにも多い。

コメント欄

そんなに響く話を見つけられて良かったな、とは思うけど、オタクの私からしたら笑える話でした!ってことなのかな(・ω


よくわからんけど二次創作だと何かあるの?


50代なら直球世代だろうし素直にいい話だと思うけど。わきまえるのは大事だけど、変に卑屈になってすぐ茶化すのはオタクの悪い癖だよ。


アラフィフなら二次創作って理解もしてそうだけど、何かダメなんか


二次創作というものを触れずに過ごしてきたと思しきおじさんが二次創作を「誰が書いたかわからないもの」として認識できるのかしら……?


逆に「ファンフィクションの概念って何年前からあるか知ってます!?!?!?」って聞いてやりたいな


言ったのがアラフィフ男性だからなんか揶揄されてるみたいな雰囲気だけど、非オタに対して二次創作について説明しようとするとこんな感じの言い方にならない? 自分はまとめられてる中の「予想外の場所でエンカするとびっくりする」程度の意味だと受け取ったぞ。そんな揶揄とか茶化すとかダメなんて一言も言ってないと思う。 真相は知らんけど


昔ネットの何たるかもよく分かってなかった小学生の頃、検索サイトで好きな漫画のキャラ名調べたら出てきた面白いネット小説にハマってむさぼり読んでたことを思い出した 知らない世界に出会った大興奮ってあるよな


同人文化を知らない人が純粋に自分の心を打つ二次創作を見てしまったことのインパクトはすごそうね……ある意味我々ではもう体験できない感動だろうからちょっと羨ましくもある。


作者じゃない人が書いた本の話をしたら、そんな設定は無いとかそれ嘘やとかお前が考えたんだろとか言われました。


おっさんも二次創作って言いづらいからそう表現した可能性あるよな。


偶然だとしてもネットで出会ったスラダンの小説を読んでみようという気になる人は少なからずオタク文化には触れてそう→二次創作だと理解してそう。会社の飲み会だからそういうのが分からない人に配慮(もしくはオタクだと思われたくないから予防線はって)客観的に話したんじゃない?


ブクマ

50代なら二次創作に慣れ親しんでてもなんもおかしくないし泣いてもいいし引かれる理由もさっぱりわからんのだけど何これどゆこと? 特権階級意識みたいなの何?


コミケって来年50周年にもなるし、既存作品の二次創作を書いて発表する事自体はアラフィフの人が生まれた頃から既に存在している文化ではある


("二次創作"というのを知っている)「普通と違う自分」に酔ってる昔からあるオタク仕草。とにかく周りを「一般人」扱いして自分を特別だと思いたいんだよね


なんだろう…自分の得意分野に何も知らずに、うっかり迷い込んだ人を笑うというより、アツく語り合える程、相手がオタク事情に詳しくないし、親しくもなくて困惑してるって感じかな?


自分は、少なくともこのツイートを読んで、そのアラフィフは二次創作という言葉や概念を知らんのではないか?と受け止めた派

シャーロキアンを経由してなかったら、自分も「二次創作」とか「ファン・フィクション」と呼ばれるものの概念を知らずに面食らったかもしれない。そういうものがある、と知らない世代や個人もいるかもしれんね。
https://b.hatena.ne.jp/entry/4749439382674958304/comment/gryphon


じゃ、まぁ、この話とはちょっと離れて、フラットに、「二次創作」はどこまで一般に知られてる概念になってるか?をあらためて考えてみたい。
実のところことし20年を迎える(!!!今気づいておれもびっくり!!)このブログ、それに関する蓄積が少々あるねん。



まず、大前提…二次創作って単語の浸透具合、定着度を見るなら、一番手っ取り早くて権威のある方法がある。「辞書に載っているか」だ。

そして、令和6年、おそらくいまだに載せてない国語辞典が多数派のはずだ!!!(「無い」と言いたいが断言できぬ)…というか、載っているんならその語釈を見てみたいわ!!知りたいわ!!読者で、お手持ちの辞書に「二次創作」という項目があったという人は是非おしえてください(ついでに「ボーイズ・ラブ」も探してみて!!)

だいたい、「二次創作」って言葉は誰が考えたんよ?その造語者は??


みたいなことを、2014年、2015年に記事にした。

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その結果、大塚英志「物語の体操」内に、大塚英志が西暦2000年ごろ「二次創作って言葉を聞いた。へー。なんでも、この意味は…」みたいな記述がある、とわかった。


これらの記述からわかる事を列挙します。

1. 2000年の2月頃には、現在の使い方における「二次創作」という言葉が存在していた。
2. 大塚英志氏のようにサブカルチャーに造詣の深い人でも、この時点で「二次創作」という言葉に初遭遇していた。
3. 「二次創作」の出所は、同人誌コミュニティの可能性が高い。
4. アニメ、マンガ、小説を一次とした同人誌だけではなく、(セキグチくんが所属していた)ギャルゲー同人誌も出所の可能性がある。


こういう所から見るに、自分の趣味のエコーチェンバーな範囲はともかくとして(笑)、任意の、ランダムの、趣味とは別の知り合いが「二次創作」という言葉を知ってるか?どういう意味か聞いたら的確に説明できるか?というと、うーんオッズにしたら「知ってる」5-6倍、「知らない」1.5倍ぐらいじゃないですかね。

その2015年に、日本国の行政のトップが「知的財産戦略本部」でこの言葉を口にした、という報道があり、NHKなどが記事にしている。

2015年11月24日

TPP 著作権の法整備で2次創作への影響考慮

安倍総理大臣は知的財産戦略本部の会合で、TPP=環太平洋パートナーシップ協定に著作権侵害があった場合、告訴がなくても起訴できる「非親告罪」の規定が盛り込まれたことについて、2次創作への影響を考慮しながら法整備を進める考えを示しました。
政府の知的財産戦略本部は24日午前、総理大臣官邸で会合を開き、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の大筋合意を受け、今後、著作権法の改正など必要な対応を進めていくことを確認しました。
TPPでは、著作権侵害があった場合に原則、作者などの告訴がなくても起訴できるようにする「非親告罪」の規定が盛り込まれ、アニメや漫画などの2次創作に影響が出るのではないかなどという懸念も出ています。
会合で安倍総理大臣は、「TPPは、オープンで活力あふれる経済を作る、成長戦略の切り札だ。必要な知的財産制度整備をしっかりと進めていく。その際、特に著作権に関して2次創作が萎縮しないよう留意する」と述べ、2次創作への影響を考慮しながら法整備を進める考えを…(後略)

同じ2015年、まだ在野の野人だった赤松健氏が、こんなツイートをしている。


知財とか、海賊版対策とか、そういう部分と無縁ではないので、国会審議には多少出てくるは出てくる。
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そういえば、辞書掲載率で言葉の定着度や浸透具合を見るのと同様に「新聞紙面にその言葉が登場した数」を調べる手もある。ネット全体だと、そこにどっぷりつかったエコーチェンバーがひっかかるから(爆笑)、そこは「カ、カテェ、溶岩石のように凝り固まった」大手新聞内の検索ワードの数は、それなりに目安になる。どこかの検索サービスと契約してて、探せる人は探してください(他人任せ)




にしたって、やっぱり「二次創作(別にパロディ、パスティッシュ、ファンフィクションなど別の言葉でも全然いいが)」が、探せばシャーロキアンの時代から確立されたお遊びであることは十分にしっているがな、こちとらそのシャーロキアンの端くれじゃい。
であるが、なかなかに業界のど真ん中を行くぞ!!とはなりにくいことも分かってるやろ。知ってるなら、なおさら。


もともとのスラムダンクの話、これは仮定として(実際のとこそうではないらしい)、全然二次創作の概念や造語を知らない人だとしたら

「泣けるスラムダンクの小説をネットで読んだんだけど、なんか、へんなんだよな。おれもスラムダンクは全巻持ってるけど、そんな場面や展開なかったはずなんだ」
「それは原作漫画と別の小説ですよ」
「え、井上雄彦そんな小説書いてたの?リアルもバガボンドも完結してねーのに」
「いや、井上先生が描いた小説じゃないんです」
「ああ、別の小説家に許可して、そういうのを書かせたのね。集英社から出てるの?」
「いや、ファンが自由に書いたんです」
「え、集英社井上雄彦の許可はいらないの?」

……なーんていう、超素朴な論点を説明するのも難しい。
シャーロック・ホームズの「パスティッシュ」を紹介する1980年代のホームズ解説本も、もともとホームズファンが読者であるという前提の本のはずなのに、その説明には結構紙幅を費やしていたよ!!「コナンドイルが書いていない、ホームズものもあるんです」ということを説明するのに。


特に権利関係は…

もちろん、法律論議はこうなんだけど
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21世紀に入っても、映画会社がこういう動きを見せていたぐらいには複雑微妙だし、

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ネット上でのファンダムがさかんになりはじめたこの時期、 著作権者はファンに対して非常に厳しい態度を取ろうとして いた。ワーナー・ブラザースは、ファンがハリー・ポッターをほめたたえ、その結果宣伝すらしているのだとは考えず、 自分たちの権利を侵害しているものと見なした。彼らはハリー・ポッターの二次自作を少しでっ掲載しているホームペー ジのオーナーに書面で停止命令を送りつけ、ハリー・ポッターシリーズを想起させるようなドメイン名を持っている世界じゅうのティーンエイジャーに警告状を送って、ドメイン名をワーナーに引きわたすよう指示した。映画会社が警官を連れてファンのコンベンションに乗り込み、販売ブースの並んだ会場を何時間も閉鎖するということもあった。ネット上のコミュニティも、へたな投稿をしようものなら、コミュニティごと削除されかねなかった。

 著作権侵害をめぐる戦いはしばらくしてようやく決着を見た。裁判において「フェアユース」とは何かという判例が確立し、その定義が拡張された。営利目的の使用ではなく、創作によって元の作品を変容させている場合、元の創作者は通常、それを権利侵害として追及することはない、というものだ。権利者はファンによる二次創作を許容しはじめ、徐々にファンと協力、交流し…(略)

ハリーポッターとシャーロックが、英国の二次創作を盛んにしたが、公式は当初妨害※「〈ホームズ〉から〈シャーロック〉へ」


いまでも現役の漫画家が「こういう二次創作を描いていいですか?とか絶対俺に聞くな。聞かれたら反応しなきゃならなくなる。だから聞くな!」という、まことにインガオホーというかマッポーな、複雑微妙な回答をするしかない、そんな部分が宿痾として存在するジャンルなこともまた事実だ。
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一方で「公式スピンオフ」が定着したり
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いろんな賞を受賞したクリエイターが「自分の創作キャリアの第一歩は二次創作です」と公言したり
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全国の書店員が一番売りたい本を投票で選ぶ第17回本屋大賞が7日、凪良(なぎら)ゆうさん(47)の小説「流浪の月」(東京創元社)に決まったと発表された。凪良さんはボーイズラブ(BL)小説のジャンルで10年以上のキャリアを持つ。BLより広い読者に向けて書いたのは受賞作が3冊目。小説に踏み出したきっかけは、「銀河英雄伝説」の二次創作に30代ではまったことだ。作家としては異色のキャリアだが…(略)
www.asahi.com
※この記事では、朝日新聞の文化記事だが「二次創作」という言葉の説明は無く、そのまま地の文で使われてるっぽいな?


ネットジャーゴンサブカルの造語から出でて、定着した言葉・概念になりそうな言葉もいろいろある
(まさに二次創作はその最前線、出世頭だとは見立てている)
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それやこれやを勘案して、「二次創作」というのは、どれだけ一般に浸透してるのか。説明不要で伝わるのか……自分は、やはり「まだそれほどではない」と思うのだけど、皆さんはいかが思われますか。