山陰中央新報 論説 北京五輪政府代表見送り 政治と切り離すべきだ
2021/12/25 04:00
政府は来年2月の北京冬季五輪・パラリンピックに閣僚ら高官による政府代表団の派遣は見送ると発表した。北京五輪には参院議員の橋本聖子東京五輪・パラリンピック組織委員会会長ら3氏が、国際オリンピック委員会(IOC)などの招待を受けて出席する。日本代表選手団は予定通り大会に参加する。北京五輪を巡っては、中国の新疆ウイグル自治区などでの人権侵害に抗議し、米国のバイデン政権が政府代表を派遣しない「外交ボイコット」を表明。英国やオーストラリアなどが同調している。
松野博一官房長官は「出席の在り方について特定の名称は使わない」と述べ、「外交ボイコット」という言葉は使わなかったが、事実上、米国に足並みをそろえた決定と言える。
中国の人権状況は極めて深刻な問題であり、日本政府としても改善を強く働き掛けていく必要がある。しかし、「平和の祭典」である五輪への代表団派遣の見送りが人権問題の改善にどういう効果があるのかは疑問だ。スポーツと政治は切り離して対応すべきであり、岸田文雄首相は今回の判断の理由を丁寧に説明する責任がある。
今夏の東京五輪の際、中国が派遣したのは中国オリンピック委員会のトップを兼ねる国家体育総局長だった。このため、政府内には当初から現職閣僚ら高官を派遣する必要はなく、東京五輪組織委のトップである橋本氏らの派遣でバランスが取れるとの考えがあった。
しかし、米国の外交ボイコットを受けて日本政府の対応が問われることになり、自民党の高市早苗政調会長らが「外交団は送るべきではない」とボイコットを要求。安倍晋三元首相も「中国への政治的メッセージは日本がリーダーシップを取るべきだ」と求め、閣僚の派遣の是非が焦点になってしまった。
岸田首相は「適切な時期に諸般の事情を勘案して国益の立場から自ら判断する」と述べて結論を先送りしてきたが、その対応が結果的に、国内で政治問題化する事態を招いたのではないか。
今回の発表は、岸田首相ではなく松野官房長官が行った。来年、国交正常化50年の節目を迎える中国を刺激しないための対応とみられる。松野氏は決定の理由についても「総合的に勘案して自ら判断した」と述べるだけで、「外交ボイコット」という言葉を使わないのも中国への配慮だろう。
一方、政府代表団の見送りで、米国に対しては「足並みをそろえた」という姿勢をアピールし、安倍氏ら国内の強硬意見にも耳を傾けたと説明する考えだと思われる。
外交には決定の意図を曖昧にしておくという手法もある。しかし、アスリートのための五輪開催を祝うのならば、政治とは切り離して、堂々と政府代表団を送るという判断もあり得たのではないか。何よりも大切なのは、世界中の選手たちが集まり、競い合う「平和の祭典」が順調に開かれることだ。その場を政治的駆け引きに利用すべきではない。
岸田首相に求められるのは、中国との安定的な関係構築に取り組みながら、同時に新疆ウイグルや香港などでの人権侵害に対して改善を強く求めていくことだ。人権問題担当の首相補佐官を新設するなど「人権外交」を掲げる岸田政権の真価が問われる。
ここで特筆すべきなのは、これが「山陰中央新報」の論説ではなく、もとは共同通信が配信した社説だ、ということだ(それを社説にできる仕組みになっている)
こちらなども同じ
東奥日報 スポーツと政治切り離せ/北京五輪 政府代表見送り
文面は同じなので略す。
www.toonippo.co.jp
「北京五輪の外交ボイコットに反対だ」という論説は、あるようでいて日本では、ほとんど見られなかった。サンデーモーニングでちょっと、コメンテーターが言ってたかな。
ここまではっきり「政治とは切り離して、堂々と政府代表団を送るという判断もあり得た」というのは珍しい。
執筆者は、共同通信の「川上高志」氏であるという情報もあるが…
これらと読み比べてください
m-dojo.hatenadiary.com
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