ゆうきまさみ氏「鳥坂の中指は、今は塗り潰す→それがギャグにまたなった」/「だけど〇〇は、今なら描かない」(KAWADEムックより) - INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ゆうきまさみ氏「鳥坂の中指は、今は塗り潰す→それがギャグにまたなった」/「だけど〇〇は、今なら描かない」(KAWADEムックより)

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ゆうきまさみ氏「今の状況に合わせた描写の変化とは」KAWADEムック


えーと、すでに当ブログ「予告編」なんて書いてるし、状況説明は手短に。


という、過去のムックに最新インタビューを加えた増補改訂版のムックが今出ている。


それとは別に、この前、以下がはてな的にバズった。
パトレイバー」愛蔵版発売&作品で描かれた『女性と社会』について - Togetter
togetter.com

それへの当方ブクマで予告した…

「パトレイバー」愛蔵版発売&作品で描かれた『女性と社会』について - Togetter

間もなくブログで紹介したいけど、最近増補改訂版が出たゆうきまさみムックで、「昔の表現で、ちょっとまずいところはこことここ」みたいな話しててそこが面白いです

2019/11/11 12:50
b.hatena.ne.jp


この予告の話を、これから書こうという訳。しかし、なんであんなにスターが付いたのよ。けっこう店頭からすぐ無くなった(売れた?)からかもな。


で、初っ端に画像でお見せした通り。
ゆうきまさみ氏が、聞き手の質問に答えて「2019年、いまのポリコレ状況にどう対応するか」を語った部分を紹介しましゃう。(聞き手は南信長氏)

<同ムック76P・増補されたインタビューより>

ただ、難しいところもあって、30年前だったら通用したことは、今だと問題 になることって結構あると思うんです。

―ボリコレ的なこととか?

そうですね。でも、それなりに注意はしてたかな。もともとそんなに危ないネタは『あ~る』でもやってないし。

―前回のインタビューでも話が出ました が、鳥さんの中指立てボーズにクレーム が来たという。

ありましたね。

―今回の新刊でも鳥坂さんの中指にわざわざぐしゃぐっしゃっと消しを入れてるところがあって、さすがと思いました。

これはもうお笑いにしてしまえと思って。でもまあ、これも前に話しましたけど、『じゃじゃ馬~』のホモフォビア的な描写は、今だったらたぶんやらないです


とまあ、これが、ブクマと予告編記事で紹介した、本人が語る『昔の表現で、ちょっとまずいところはこことここ』でした。

そこから雑感。…そういえばこの技法も、いつから一般化したんだろう?「パペポTV」なのかな?
いわゆる『ピー音』が、過去の映画やドラマの”不適切なシーン、セリフ”をマジにカットするためのものだったことを逆手にとって『実はここで、すごくアブない発言をしてるんですよー!!』と強調する効果として使われるようになったのは。
UFCニック・ディアス、ネイト・ディアスのディアス兄弟が出た時は、セリフはカット、指はモザイクだもんなあ。

しかし、ピーを入れたり塗りつぶせばオールオッケーかというと、大川興業は「アカペラ替え歌」にこれまたアカペラのピー音を入れてたのに、がっつり怒られましたっけ。
※1分35秒&4分35秒
www.youtube.com
「もうネタ見せ大変。ピーピーピーピー、『ろくなもんじゃねえ』って言われましたから(長渕剛の歌にからめたギャグ)」
一番社会問題化した、『39時間テレビ』のときの映像はさすがのyoutubeにもない???
まあ、それはそれとして、いわゆるFワードやFポーズも、社会的にアウトととられるほどに批判されたり嫌悪されることもあるが、それはそう処理したと。

あ、せっかくだから煽っておくけど(笑)、これを応用すると、ことし話題フット―のこのポスターもたちまち問題は沈静化(するのか?)

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「宇崎ちゃんは遊びたい」ポスターを「究極超人あ~る令和版」的に解決すると(…解決してる?)



ちなみに「中指ポーズ」を含めて、表現規制と自粛問題については「ゆうきまさみはてしない物語」のほうでもっと詳しく語っている(もちろん意見は、書いた当時のものだろう)

※画像追記
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ゆうきまさみ はてしない物語(文庫「地の巻」にある「わたしの所為?」という回より)中指ポーズと批判と作者の責任論


しかし、その一方で「内海的なキャラクターが生き残ったら、倫理的にまずいから彼は死なねばならない」という実にモラリスティックなポリシーも持っているのだ。
それはここにて

togetter.com



では、中指問題は、それはそれとして…もうひとつの、「今ならたぶんやらない」「じゃじゃ馬でのホモフォビア的」描写とは??

実は、インタビューで「これも前に話しましたけど」という部分は、ムックの最初のバージョンが出た時の巻頭インタビューでの発言なので、これもこのムックで読めるんです。
それは29ページにあるんだけど、そこでは図版も載っていて、「ああ、こういう場面かあ」とわかる。
ま、そこはいうのはやめときませう。買えばわかるさ。


ただ、それを「ホモフォビア」というかどうかはまたわからないけど、ある一件を思い出す…「究極超人あ~る」における、間垣剛と兵藤まことの話って、もともと同性婚とかLGBTとか、そういった概念がない(というとこれまた一寸正しくないけど)状況……要は「そういう話でもないのに、まだ性概念が未分化の小学生のころの間違い(男が男にプロポーズする)をからかわれてる」という設定で物語が進むわけだけど、これがふつうに同性婚があり得る状況の中で「(男が男に)プロポーズされた」というのを、ギャグとして扱えるのかどうか。

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究極超人あ~る 昔プロポーズされたことがありまして(※男が男に。ギャグ扱いでいいか?)
究極超人あ~る (2) (小学館文庫)

究極超人あ~る (2) (小学館文庫)

想像してください、令和〇〇年に電子書籍…いや、そのころのデバイスはなんだろうな…まあスーパーミラクルエレクトロブック、とかそんなもので、ゆうきまさみ先生傘寿記念か何かで「究極超人あ~る」が復刊されたと。
そこに注釈で「当時、同性の間で結婚する慣習や法制度はまだ整備されておらず、同性間でプロポーズがあったことは奇妙で意外なギャグやからかい材料だと思われていました」みたいに書かれているのを……。


それでも、いろいろとここから思うことはありますよ。考えさせられるはなしですね。






また、当ブログでなじみ深いポリコレ話に焦点を絞っちゃったけど、ほかにもこのムックは面白い話が多い。





ゆうきまさみ先生、富士鷹…ええい、予測変換ミスだ(笑)。藤田和日郎先生にこう問われたそうだ。

「どうしてあんな小説みたいなマンガが描けるんですか」

ゆうき先生、(内心で)返事して曰く
「小説みたいじゃマズいだろう」   

(笑)

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さても両人ながら名人!(梶原一騎原作・小島剛夕画「斬殺者」より)



そのほか、荒川弘が語った「非常に勿体ないところで『もう読むのやめます』と言ってきたファンの話」とか、羽海野チカの「後藤隊長愛」などなど…機会あれば紹介しましゃう