http://natalie.mu/comic/news/105932
ゆうきまさみが原案およびマンガ版を手がけた「機動警察パトレイバー」の実写化プロジェクト、「THE NEXT GENERATION –パトレイバー-」のポスタービジュアルが公開された。
押井守を総監督および監督に迎え、登場人物も新たにした完全新作として制作される「THE NEXT GENERATION –パトレイバー-」。ポスターには実物大のイングラムこと98式AVと・・・(後略)
そしてもうひとつ、きのう12月17日は架空の話だが、主人公泉野明の誕生日だったらしい。今回の映画は泉野明とかいて「いずみの・あきら」で、別人だというのがややこしいのだが(笑)。
このキャラクターデザインをした人が、ある企画をしたので、18日の本日には公開されるだろう。
http://ameblo.jp/angel-touch/
こんなことをやった人もいる
https://twitter.com/BELCORNO/status/412606616840581120/photo/1
ベルコルノ@ラテアート愛知一宮 @BELCORNO
@masyuuki ラテアート描いてますベルと申します^^
今日(12/17)は、ゆうき先生の娘さんのお誕生日祝いを一杯淹れさせて頂きました。
どうぞお飲みください^^→ pic.twitter.com/f1ObBJ45hs
さて。
そんなおりに、なんと23年前の雑誌が実家からこの前発見されたので、この機会にご紹介したい。といっても、基本的にはこの話の続編というか・・・こことかで、記憶で紹介したものを、資料で裏付ける補足のようなものだと思ってほしい。
■「パトレイバー」実写映画企画、目撃証言多数。「パトレイバー生みの親」たちの対立も、また才能の証か。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130805/p3
これから引用するのは、昔あった漫画批評誌「COMIC BOX」1990年2、3月合併号「東京パトレイバー事情」から「ヘッドギア座談会」。
司会のほかゆうきまさみ、伊藤和典(文芸部の伊東くん)、上でブログを紹介した高田明美の各氏。
もう、既に有名作品だから、作品作りの経緯なども相当資料があると思うけど、箇条書きしましょう。
・1:娯楽の王道をいくぞ! 2:遊馬と野明が大活躍! 3:レイバーの敵はレイバー!という「3つの誓い」を立てた。だけどそれがシナリオでは相当に枷になった(伊藤)
・香貫花が途中から出てきて説明が無かったのは、この映画を基礎知識が無い人に「そのまま見てくれ」といえないのでちょっと残念(ゆうき)
・シナリオ段階では実をいうと「『帆場の計画の全貌をつかんだ!』時点で終わってるじゃないか」という指摘があって揉めた(笑)(伊藤)
・ヘッドギアの5人(出席者+出渕裕・押井守)みんな、こだわる部分が違う。そのみんながお任せにせずくちばしをつっこんだから、盛りだくさんのいい結果になった(伊藤)
以下、「監督論」は丁寧に引用しよう。
ゆうき (略)・・・最後に拾うのは、やっぱり監督だと思う。面白ければ監督の功績だし、つまらなかったら監督の責任なんですよ、フィルム(映画)っていうのは。
Q:その意味でいえば、漫画の場合はゆうきさんが監督ですよね?
ゆうき そうですよ。だから、面白くないぞといわれたら、僕が謝るしかない。・・・(略)責任を逃れるために言ってるわけじゃなくて、やっぱりそういうものだと思うよ。だってそうでしょ、つまらないと監督が悪い、で、面白いと原作が面白いから当たり前だ、というような言い方が「うる星」のときなんかによくあったじゃない。でも、それは違うんだよね。
高田 アニメの場合に多いのは、面白ければ監督が良かった、つまらないとシナリオはどうしたんだよって言われる(笑)。こりゃシナリオライター、性格曲がっちゃうわー…とか思って(略)
伊藤 (略)実写だとシナリオで90%決まるとか、役者で映画が保つみたいなのがあるけど、アニメの場合は監督ですよ。
ゆうき 実写はやっぱり、シナリオだよね。(略)実写は昔や特撮と違って、コンテ切らないからなあ。
ゆうき 押井さんって映画を作る才能があるんだなと、あらためて思った(笑)
Q:でも、ああいう作品になると思ってらっしゃいましたか?
(※これに対し「いや、怖かった。みんな怖かった」などの答えが)
ゆうき あの独特のキャラクター(の絵)にしてもね、押井さんが見てびっくりしたという話を聞いたことがある(笑)
伊藤 多少は予想はしてたけれども、あそこまでやるとは思わなかったと、ポロッともらしてた。
ゆうき 僕らも部分的にあのキャラだけ見せられたときは、ものすごく不安でした。これでファンがついてくるんだろうかって。高田 ところが、完成して見たらぜんぜんおかしくないっていうか、話の内容に合っていた・・・(略)なんかこう、ねじ伏せられたって気がしますよね、何もかもが・・・(略)あれぐらい細かくしないと背景のグレードと合わないというところはあるかもしれない。
(略)
ゆうき ただ、それはわからないんだよね。ビデオ版そのままの絵でいっても、もしかしたら、保ったかなという気もする。むしろ映画の出来が、絵が気にならないところまで行っちゃったということなんじゃないかと思うな。
Q:(押井さんは)パトレイバーの劇場版では、割りと抑えた部分があるんじゃないですか?
ゆうき 抑えてる、抑えてる。
Q:よく我慢したというか・・・
ゆうき あれはみんなで羽交い絞めの世界(笑)。押井さん、それはいけない、それだけは・・・(笑)
伊藤 やっぱり帆場は存在してなかったことにしようとか、そりゃあマズイと(笑)
ゆうき みんなで羽交い絞めにしましたって言ったら、音響監督の斯波さんが、あの人はそのほうがいいよって。
高田 以前「ビューティフル・ドリーマー」の時にも思ったんだけど、押井さんの場合は枷が枷になっていなくて、本人の持っている別の面でも生き生きした部分が出てくるような気がする。
ゆうき あれくらい力量のある人だから、上からどんな枷を押し付けられても、必ず<<押井守>>がににじにじにじ〜と出てきて……。
高田 しみ出したのが、いい味なんだ。
ゆうき 監督の個性を残している感じで、そのにじにじにじ〜が出てくるくらいがいいんじゃないかって思うんだよね。
伊藤 でも『御先祖様』はすごいぞ〜〜(※押井監督の他作品のこと?)
ゆうき あれは枷がないんだもの(笑) そこら中から押井さんが見えてる(笑)。「うる星」の時は原作そのものが枷になっていたんだと思うよ。
当初の予定では、最後の「羽交い絞め」と「にじにじにじ〜」を紹介すれば済むと思っていたが、やはり名人の芸談はジャンルを超えて面白いのでついつい引用してしまった。
後半ではゆうきまさみの漫画版のほうに話が言っていて、当時連載中だった「廃棄物13号編」を軸に彼の創作手法なんかも語られていて大変興味ぶかかった。最近の新作「でぃす☆こみ」ともあわせて、いつかは紹介したい。
ちなみにゆうき氏談。
子供がほしい、できれば男の子がいいと思っていたけど、女の子がうまれたっていうのがビデオ(笑)でもまあ子供ができたからうれしいやっていうのがあって、それが無事に育ったなというのが劇場版(笑)。で、わーっ、男の子が生まれたっていうのがTV版、という感じかなぁ、あははははは〜
(略)
ビデオというのは、あれはあれでいいんだけど、ほら本編が無いでしょ。しいて言えば1話だけという感じがあって、女の子かぁ、でも、まぁ子供ができたからうれしいや。劇場版は、その女の子が思いもよらず美人であったという・・・縁談もじゃんじゃん来い、みたいな。よかった、よかったと。それでTV版は待望の男の子って感じ。
Q:マンガ版はどうですか?
あれはまぁ、私生児ですからね(笑)
(Comic BOX 1990年2,3月合併号 P39 )
これ、何度も紹介したけど、一応記録として正確に引用した。
あらためて読んで見ると、やはり押井氏に対して、距離を置いた上での敬意というものを座談会出席者は払っている。ゆうき氏なんか、穏やかにけっこう辛らつだ(笑)。
だが、リスペクトであることもまた間違いない。
押井守という存在と、他のヘッドギアとの関係は前回書いた引用記事と同様に、やはりスムーズに、滑らかに廻ったのではないらしい。しかし物理法則の通り、摩擦は熱を生み、それは炎となって燃え上がったのだろう。
トキワ荘やスタジオ・ゼロも、手塚プロもそうだろうけど、実録、架空を含め、やはりこの80年代、90年代の「パトレイバーをつくった男(と女)たち」はそれ自体が一級の物語であり、創作論であるといえる。
だからさ、これなんだよ。「ハチミツとクローバー」の最後の一節(笑)。
時が過ぎて、何もかもが思い出になる日はきっとくる。
――でも、僕がいて、君がいて、みんながいて
たったひとつの宝物を探したあの奇跡のような日々は、
いつまでも甘い痛みとともに、胸の中の遠い場所で、
ずっと、なつかしく回りつづけるんだ…
さて、そして今回のパトレイバー実写版は、彼らが恐れ、あるいは畏れて封印(=羽交い絞め)した「にじにじと染み出るのではなく、どこを切っても押井守のパトレイバー」となるだろう。
果たして、それはどうなるか。
当ブログのゆうきまさみ漫画関連リンク(パトレイバーとあ〜るを中心に)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130806/p4