離島移住のための就活ガイド【1】 ~考えてみる編~
近年、離島移住が注目されている理由
夏休みなどに、離島でリゾートを楽しんだ経験がある人も多いと思います。
最近は地方移住の中でも「離島移住」が注目されており、「離島移住者」が増えています。なぜ今、「離島移住」が注目されているのでしょうか。
今回は、その魅力について考えてみましょう。
離島移住者は増えている
まずは「離島移住が増えている」という事実をデータから見ていきましょう。
伊豆諸島のひとつ、東京都利島(としま)村では、20〜40代の住民の84%がIターンによる移住者であると発表しました(令和2年1月時点)。長崎県五島列島の五島市も、平成28年に86名だったUIターン者が、令和4年には353名と4倍に増えたと発表しました。
総務省の公表データから、自治体の総人口に占める転入超過人数の割合「転入超過率」を算出すると、転入超過した全国94市町村TOP5のうち3つの自治体が、離島自治体であることも分かります。
専門家に聞く「離島移住の魅力」
では、「離島移住の魅力」はどのようなところにあるのでしょうか。
北海道から沖縄県まで、全国の離島を有する136の市町村で組織される公益財団法人 日本離島センターの広報課長・森田朋有さんと広報係・石川新さんに、お話をうかがいました。
―近年「離島移住」が注目されているようですが、その理由は何だと思われますか?
石川:テレワークの広がりや多拠点という考え方が世の中に広まってきた中で、実際に離島を訪問して島の暮らしに魅力を感じ、離島移住に興味を持つ方が増えたのではないかと考えています。
森田:離島でもコワーキングスペースを設置するなどの動きが出てきていますし、移住者がゲストハウスを運営するような島も増えています。そこでワーケーションなどを経験して、実際に離島移住へという流れもありそうです。
―離島移住する若者には、どんな特徴があると思われますか?
石川:例えば、島でやりたい仕事や趣味があり、その夢を実現するために移住している人が挙げられます。近年は、働く場所を選ばないフリーランスの方などが離島移住する傾向もありますね。
森田:島根県隠岐島前(どうぜん)地域(海士町・西ノ島町・知夫村)では、「大人の島留学」という全国各地の若者が島に滞在しながら、都会にはない島の仕事を体験できる機会を提供しています。3カ月の「体験」から1年の「留学」まで、受け入れも行政から民間事業者まで様々なプランがありますね。このほかにも移住者の受け入れに積極的な島は増えつつあると思います。
―離島移住に関するイベントも増えてきていますか?
石川:増えています。一般的な地方移住のイベントは、全国の自治体をはじめ、移住・交流推進機構(JOIN)やふるさと回帰支援センターなども実施していますが、離島に特化したものとしては国土交通省と日本離島センターが共催する「アイランダー」があります。昨年は、東京池袋のサンシャインシティとオンラインのハイブリッドで開催し、北海道から沖縄まで全国約80の離島団体が参加しました。
森田:入場無料で、求人案内はもちろん、島留学やお試し移住の案内などもしています。特産品の販売や島の工芸品のワークショップ、音楽ステージなどもあり、全国様々なエリアの島暮らしや文化を知るには、いい機会だと思います。
石川:例年11月に開催しています。離島就職や離島移住に少しでも興味がある方は、ぜひ気軽に参加していただければと思います。
https://www.i-lander.com/
―離島移住を決める前に、島留学やお試し移住をすることは重要ですか?
石川:人によると思いますが、島暮らしを一度体験しておくと環境が分かり、知り合いもできて安心しますから、お試し移住などの活用は効果的だと思いますね。
森田:離島移住の場合、一定期間現地で暮らして生活をイメージすることが大切だと思います。また住居の確保も重要です。移住が決まって引っ越しする際も、島によっては船をチャーターしないと大量の荷物を運べない場合もあります。可能であれば島留学やお試し移住の間に、それらを調べて準備することをおすすめします。
―離島生活の魅力は、どこにあるとお考えでしょうか?
石川:一般的には、豊かな自然やゆったりとした時間の流れ方などが挙げられると思います。加えて、地域の人との距離が近く、日々の暮らしでの助け合いや、行事への参加など、密接に交流できることが魅力だと感じます。
森田:家と職場が近いことも魅力です。特にお子さんがいるようなご家庭では、都会で通勤している一般的な会社員のみなさんよりも、家族と一緒にいる時間が間違いなく増えると思います。
―離島移住に興味があっても、仕事がないと生活ができません。離島で仕事を探すのは大変でしょうか?
森田:今、日本中で人材不足と言われていますが、離島は人口も少ないので、更に人材不足なんです。そのため仕事自体はあると思いますが、移住する方が希望する仕事とのマッチングが課題です。
石川:当センターのサイトにも求人情報が多数掲載されていますが、医療・福祉関係の仕事の担い手は常に不足していますし、自治体職員も事務職・専門職問わず募集が多いです。
森田:離島では、医療・介護の分野もそうですし、IT系の知識・技術を持った方などを探している傾向があるようです。島の特産品をSNSでPRしたり、ECで販売したりできるような、島の人だけではできない・足りないようなスキルを持っている人は引く手あまたで、いろいろなチャレンジができると思います。
https://www.nijinet.or.jp/
実際に離島に移住した人の声
では次に、過去にLO活で取材をした離島移住者の声をダイジェスト版でご紹介します。離島生活の魅力とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
かつて千葉県の会社に勤めていた魚谷さんは、東日本大震災をきっかけに会社を退職し、ボランティアとして被災地の宮城県に向かいました。朝から晩まで休みなく働き、2年が経った頃、やっと休みが取れて、あてもなく向かった先が伊豆諸島のひとつ・八丈島でした。
レンタカーを借りて島を回る中で、八丈島で牛乳を生産していることに気付きます。大学院時代に牛乳の成分について研究していた魚谷さんは、八丈島のような環境で生産される牛乳は美味しいだろうとイメージしました。しかし、実際に食べた八丈島の牛乳を使った食品は、都会で売っているような工業的な味がしたそうです。気になって酪農の方法を調べてみると、八丈島の飼料を使用せず、外から取り寄せた飼料を与えて育てている現状が分かったそうです。
この島の地形や環境を使えば、日本一の牛乳が作れるのではないか。そう考えて、島の酪農家の方のブログからアポを取った魚谷さんは、月に一回島を訪問しては、島ならではの自然放牧のプレゼンを続け、現在の会社へ就職を決めました。
島の暮らしは「普通」だと言う魚谷さん。その言葉には、「都会での暮らしは少し異常だったかもしれない」という思いが込められています。
「八丈島には24時間営業のコンビニはありません。しかし、本当はコンビニの存在自体が異常なのではないでしょうか。だから都会の人は疲れてしまい、こういう自然がある場所に癒されたくなる。でも実は、島に癒し空間があるわけではなく、島の暮らしが普通なんです。自然に恵まれ、子どもの頃に夢中になった昆虫がたくさんいる。本来それが普通なんだろうなと思います」
離島には、都会では決して得られない魅力があるようです。離島で暮らすイメージを持つと共に、都会との環境や暮らしの違いを知ることも必要ですが、地方就職のひとつの選択肢として、離島就職(移住)も検討されてみてはいかがでしょうか?
以下の記事では、「離島就活」の具体的なノウハウについてご紹介します。併せてご覧ください。
※この記事に掲載されている情報は、2023年10月にサイトに公開した時点での情報です。