モデルの小谷実由さんによる初の著書がリリース。読書家としても知られる小谷さんの今回の出版に至るまでと自分自身もよく手にとるというエッセイの魅力について伺いました。
文章というフォーマットを使って表現できるのは、
すごく幸せなことだと思う
ーー楽しい音楽をノリノリで聴いているような、ポップでリズミカルな読み心地。エッセイの醍醐味がぎゅっと詰まった、新しい本をみつけましたよ。モデルの小谷実由さんによる初の著書『隙間時間』です。
「エッセイって人の頭の中にあるものと、外側の距離が一番近いと、私は思っていて」
ーー読書家としても知られる小谷さん、特によく手にとるというエッセイの魅力について教えてくれました。
「エッセイというとおしゃれなイメージだったんですけど、穂村弘さんの『絶叫委員会』を読んだとき、けっこう衝撃的だったんです。本当に自分の頭の中を、そのまま出している。どうしても人って自分がどう見られるか考えてしまうものなのに『そんなことまで書いて大丈夫?』みたいな」
ーー小谷さん自身、モデルという職業も相まって
「ずっとおしゃれでいなきゃ、憧れてもらえるような姿でいなきゃと思ってきたけれど、今は自分のおもしろい部分ももっと出したい、と思うようになりました」
ーー自己表現の方法といえば、若い世代の中ではとりわけ写真や動画が花盛り。
「でも私はやっぱり、文章というフォーマットが性格に合ってるんだと思います。子どものころから書いて頭の中を整理していましたし、言葉を追うことも、なりたちも、読んでいるリズムも本当に好きなので。そんな好きなものを使って表現できるのは、すごく幸せなことだと思う」
読書中は、思考はすべて持っていかれる。
それって、すごく健康的なこと
ーー本書は3年におよぶウェブの連載を一冊にまとめたもの。ただ書籍化にあたりすべてを読み返し、約1年かけて加筆修正に取り組んだという小谷さん。文章としての完成度に情熱を注ぐと同時にこだわったのが「もの」としての魅力でした。
「本の存在自体がすごく好きで、それから読むようになったんです。紙の本がいいのは、やっぱりめくるところだったり、手ざわりだったり。装丁もそう。あとは今って、携帯見ながらテレビ見ちゃったりとか簡単にできてしまうけれど、本を読んでると、他に何もできない。両手がふさがるし、思考はすべて持っていかれる。それって、すごく健康的なことだと思うんです」
ーーだからこそもっと、紙の本を読む人が増えたらいいなとの願いを込め、大切につくった『隙間時間』。
「これを読んだことで、エッセイっておもしろいなと思ってもらえて、他の人のも読んでみよう! というきっかけになったら、こんなに幸せなことはないなあと思うのです」
新著『隙間時間』
NAOT JAPAN公式HPでの3年間にわたるWEB連載が一冊に。日々の過ごし方やよしなしごと、集めているもの、愛猫しらすの話など、書き下ろしエッセイに加え、インタビューや撮りためた写真も掲載。ユーモアとリアリティを随所にちりばめた、すいすいっと読める絶妙なリズム感。愛おしいキャラクター、クセになる文体。ニュージェネレーション・エッセイの新しい星。
お話を伺った小谷実由さんProfile
おたに・みゆ/1991年東京生まれ。14歳からモデルとして活動を開始。ファッション誌のほか企業広告でも活躍中。猫と純喫茶をこよなく愛し、自身の偏愛を発信するインスタグラムのフォロワー数は10万人を超える。アパレルブランドやアーティストとのプロダクト開発にも多く取り組んでいる。
photograph:Daisuke Shimada text:BOOKLUCK web edit:Masako Serizawa
リンネル2022年10月号より
※写真・イラスト・文章の無断転載はご遠慮ください
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