本庄准教授からの
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本庄 陽子
コミュニティ人間科学部は、当たり前にそこに存在すると思い込んでいる「地域」をより深く知り、生かすことのできる人を育てていく学部です。学びの自由度が高く、学生はそれぞれが興味を持った事柄を学び、経験と思考を深めていくことができます。知識と経験を積み重ねることで、さまざまな人が暮らし、多様な課題が存在する地域という場での支援に役立てられるでしょう。
Q.本ゼミナール(ゼミ)の学習内容を教えてください。
2021年度、1期生が3年生の時には「子どもの放課後研究」として、子どもの放課後の過ごし方をテーマに学習しました。4年生で卒業論文の指導を継続しています。2022年度の3年生では「子どもと家庭教育に関する研究」としていますが、大きく内容が変わっているわけではありません。子どもを軸にすると、幅広い課題があることに気づきます。社会の「子ども観」がどのように変遷してきたか、母親の役割の変化、放課後児童クラブの職員のあり方、子どもをめぐる制度など、幅広い考察領域、支援が必要な対象も見えてきます。
学習の進め方は、全員が課題として同じ文献を読み、担当者が要点や筆者の主張とともに自分の意見をまとめて発表、その後、ゼミ生皆で話し合うというものです。ゼミ選択の際に各々の興味関心を尋ねていますので、そのテーマに沿った論文や書物の抜粋を使用します。
学生達は毎回、議論の中で、他の学生の意見に触れて新たな視点を持つ体験をしています。たとえば「自然の中で元気いっぱいに遊ぶ」という形が果たして最上位の価値をもつ遊び方なのかなど、これまでの先入観を考え直すような経験も多くしています。家庭教育というテーマでは、自分たちの経験を話し合ってもらうと、それぞれが受けてきたしつけや教育は皆違い、これまでにそれを比較した経験もなかったため、学生達は新鮮に受け止めているようです。
3年次の終わりには、その時点で興味を持っているテーマについて論文に近い形で提出してもらい、そこから1年近くをかけて、最終的な卒業論文につなげます。学術論文は文章で伝えるものですから、書くことは大学の学びの本質とも言えます。プレゼンテーションのスキルは社会人になった後にも訓練の機会はありますが、論文を書く機会はなかなかありません。学生のうちに書く練習を重ねてほしいため、レポートやリアクションペーパーなど、折にふれて書くこと、その前提となる読むことを大切にして指導しています。
Q.学生はどのように取り組んでいますか。
本ゼミでは学生の自主性を重んじていますが、全員が意見を出しやすい環境を自分たちでつくり、活発な議論を展開してくれています。発表の順番決め、欠席者への配慮も、皆で考えながらスムーズに進んでいると思います。
4年生では、卒業論文の中間報告を順に行っていますが、テーマや扱う領域が重なる人同士で文献を紹介し合ったり、学習方法を教え合ったりする姿が見られます。もちろん、ただ「なあなあ」になるのは大学でやるべきことではありません。反対意見や質問も活発に出し合って、各学生は視野を広げています。夏休みには、3・4年生が参加するゼミ合宿も行いたかったのですがコロナ禍で叶わず、合同授業を3回ほど行いました。4年生は、3年生から予備知識がないからこその素朴な質問を受け、3年生は卒業論文という自分たちが近く取り組む内容を考える機会を持ち、お互いに刺激を受けていました。
Q.ゼミに興味のある学生にメッセージをお願いします。
私の研究者としての専門分野は社会教育。PTA活動の研究を長らくやってきた経歴もあります。私自身、子育て期にPTA活動を積極的に行っており、子育てを終えて学び直そうと考え大学院に入学したので、研究者としてのスタートは通常より遅めでした。その分、論理だけでなく、人生の中で出てくる具体的な課題や経験から得た視点を大切にしたいという思いがあります。学生にも学んだことを、日々の暮らしや人生と切り離さずに、家族や友人、今後の人生で出会うパートナー、さまざまな人間関係においてプラスに作用させ、より良い人生に繋げてくれれば嬉しく思います。
私の役目は「種をまくこと」だと考えています。教員がこうしなさいと指示したり、正解を教え込んだりするのではなく、教員のまいた疑問や「もやもや」の種の中から、育てる種を自ら選んで、それに水を与えて肥料をほどこし、大きくしていってほしいのです。自分が抱く関心は案外自分では気づかないものです。本ゼミでは、発表や議論を通し、その人がひっかかるところを掘り下げ、視点を広げるきっかけや、自分が本当に気になっている課題を見つけることができると思います。
子どもを軸にテーマを設定していますが、直接子どもをテーマにするだけでなく、女性や母親、それに対する男性や父親の生き方をテーマにしたい人にも向いています。幅広く子どもに関わる課題を考えたい人は、ぜひこのゼミを受講してください。
学生の
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埼玉県立蕨高等学校出身
2年次までの学習で「子ども」や「女性」といったテーマに特に興味を持ち、また、個別指導塾のアルバイトで子どもたちと関わる中で、自分自身の子ども時代を比べてみた際に、現代の子どもたちの生活スタイルや過ごし方が異なっていると感じていたため、子どもの放課後というテーマで学べる本ゼミを選択しました。
行き詰まったり、わからないことができたりしたときには、本庄先生がじっくり相談にのってくださるという心強さがあってのことですが、授業の進め方や内容をゼミ生自身で決められることがこのゼミの大きな魅力です。こうした自分たちで方向性を決めていくことのできる自由度の高さは、コミュニティ人間科学部の1期生としてゼミ以外のさまざまな場面で感じることができ、自主性や積極性を高める経験ができたと思います。
学生同士の議論の中で、自分にはない視点や考え方を発見できることもこのゼミの面白さです。卒業論文は「子どもとネットのかかわり」というテーマで書いています。初めは「子どもの居場所」をメインで取り上げようと計画していましたが、卒業論文中間報告の中で、皆で意見を出し合ううちに、私の中の興味・関心は特に「子どもとネット」にあるとわかり、よりふさわしいテーマ設定をすることができました。
ゼミでは、知らず知らずのうちに固定観念や思い込みを持っていたことに気づかされ、多様なものの見方に出合い、視野を広げ、考え方の面で大きく成長することができたと思います。卒業後の進路を考える上では「自分らしくいられる仕事はどのようなものか」と考えたとき、自分の軸は「人と深く・長く関わりたい」というところにあることに気づき、ウェディングプランナーになることを選択しました。数ある企業の中でも、「人と深く長く関わる」という自分軸を大切にして、最初の相談から挙式まで一貫して一人のプランナーが担当できる企業にご縁をいただきました。この進路にたどり着くことができたのも、ゼミを通して人との関わりを大切にし、自らの関心を見つける過程を経験できたからだと考えています。就職後も、ゼミで身に付けた幅広いものの見方と自分の考えと異なる意見を尊重できる力を生かして、多くの人の人生の節目の日をサポートすることのできる人材になれるよう尽力していきたいと思います。
コミュニティ人間科学部
コミュニティ人間科学部では、日本国内の地域に着目した社会貢献を追究し、地域文化とそこに暮らす人々の理解を深め、より良いコミュニティ創造に寄与する力を培います。幅広い知識の学び、体験し行動するプログラムを通じて、自ら課題を発見・解決し、地域の人々との互助・共助のもとにコミュニティの未来を拓く力を育成します。日本の地域社会は、高齢化や過疎化などさまざまな課題に直面しています。その解決に力を発揮するには、地域の人々に接し、活動の実際を知り、共感する体験が重要です。コミュニティ人間科学科では、地域の人々や行政についての学びをはじめ、市町村やNPOと連携した体験的実習などを展開します。専門家として、地域社会の構成者として、地域の活性化や持続的な活動支援ができる人材を育てます。