歴史の客観的な学びには
幅広い視野が不可欠
(チェ ジイン)
OVERTURE
生まれ育った環境や置かれた立場などにより、解釈が異なる歴史を客観的にとらえようと考えているチェさん。広い視野を持つために母国の韓国を離れ、日本に留学することを決意し、現在は東洋史コースで学んでいます。
多様な歴史分野を学べる青学に留学
韓国国内のみならず、日本を含めたアジア諸国を旅行する機会が多い家庭に育ちました。母の方針で、旅先ではまず現地の博物館や歴史館を訪れ、その土地の文化や歴史に触れてから観光をすることが習慣になっていたこともあり、自然の流れで東アジアの歴史に関心を持つようになり、現在は史学科東洋史コースで学んでいます。
当初は韓国の大学に進学するつもりで国内の受験勉強に取り組んでいましたが、高校3年生の時に日本への留学を決めました。歴史は史料を解釈する人によって認識も変わるものなので、客観的にとらえるには母国以外の観点も知るべきだと考えたからです。
日本を留学先として選んだのは、歴史的な意見がしばしば異なる日本と韓国の関係を学び、理解を深めたかったからです。父が日本と関わる仕事をしていたので、日本語には幼い頃から親しみ、勉強もしていました。しかし、韓国での受験勉強に集中するために日本語学習を中断してしまったためブランクがあり、当時は、韓国から日本に直接留学できるような日本語力がありませんでした。高校卒業後に来日し、2年間は日本語学校で日本語を徹底的に学び直しました。
入学前から希望していた飯島ゼミへ
大学では幅広い歴史の知識を得ようと考え、進学先は、来日してから大学のウェブサイトなどで在籍する先生方について研究内容を調べたり、執筆された論文を読んだりしながら絞り込みました。その結果、多様な分野の先生方が在籍する青山学院大学の史学科が目に留まり、東アジア近代史が専門の飯島渉先生のもとで学ぼうと思い、日本留学試験(EJU)対策に励み、念願かなって入学を果たしました。大学入学までに日常的な漢字はほぼ身に付けていたものの、東洋史を学ぶには専門用語や中国語の繁体字を覚えなければならず、また歴史上の人名や地名などには特殊な漢字が多く、苦労しました。
1年次に履修した「史学入門」や「史学概論」などで基礎知識や史料批判力を身に付け、文献や史料の良し悪しを判断しながら適切なものを探せるようになりました。そのおかげで2年次の「基礎演習」、「史料・文献講読Ⅰ・Ⅱ」では自分なりに分析や発表ができるようになったと実感しています。
2年次からは東洋史コースに進み、現在は希望通り飯島渉先生のゼミナール(ゼミ)に所属しています。また中国史が専門の青木敦先生のゼミにも参加し、さらに広い視野の獲得につとめています。
東洋史を学ぶうえで非常に重要なことを学んだ授業は、2年次に履修した飯島先生の「史料・文献講読Ⅰ・Ⅱ」です。この授業では英語と中国語(漢文)の文献を読み、日本語で解釈するのですが、これは私にとって外国語を別の外国語に翻訳する作業なので、とても大変でした。特に漢文では日本特有の「書き下し」を行わなければならず、この技術を習得するだけでもかなりの時間がかかりました。ただ最初のうちは先生が配慮してくださり、「書き下し」を経ずに直接、現代語に訳したり、日本人のクラスメイトに手伝ってもらったりしたおかげで、今はある程度の漢文なら読めるようになっています。「史料・文献講読」を通じて東アジアの歴史を学ぶには漢文の知識が必要だと強く感じ、3年生になってから第3外国語として中国語を学び始めました。学問に積極的かつ意欲的に取り組んだ結果は成績評価に現れ、2年連続で史学科の成績優秀者に選ばれました。
学部の4年間で習得する知識・経験を基礎に、卒業後は大学院に進学し、博士後期課程まで進もうと考えています。将来の夢は、研究職に就いて日本と韓国の歴史を客観的に読み解き、両国間の隔たりを埋めることに貢献することです。
豊富な選択肢が魅力の青山スタンダード
本学には、教養科目として青山スタンダード科目が数多く設けられており、美術、音楽、科学といった専門外の授業も幅広く選択できるところが大きな魅力です。
教養コア科目「自己理解」では、日本人の宗教観を学びました。韓国では、無宗教の人が宗教施設に足を運ぶようなことはありません。一方、日本では多くの人が初詣に行ったり仏壇を拝んだり、日常の中で宗教的な行動を取るにもかかわらず、「無宗教の人が多い」とか「自分は無宗教」だという話を耳にすることが多く、不思議に思っていました。「自己理解」の授業では、長い時間をかけて行われた宗教政策により、個人レベルの宗教観も変化したという歴史を学び、日本についてさらに理解するきっかけを得たと感じています。
また、地球温暖化を扱った「科学・技術の視点(個別科目)」も新たな視座を与えてくれた授業です。数十億年にも及ぶ地球の歴史を振り返れば、現在とは比べものにならないほどの激しい気候変動が過去にはあったという事実を知り、たいへん驚きました。科学的な知見に基づいた新しい観点に初めて触れたことによって、視野が広がり、歴史の分野も全く新たな視点から眺めることができるのではないか、という気づきにつながりました。
留学生も学びやすい充実した環境
青学はキャンパス内の国際的なサポートが整っている大学です。留学生をサポートする国際センターでは、ビザ・在留資格の更新に必要なたくさんの書類を整えていただきました。時間がかかるビザ更新に間に合うよう手早く、しかも丁寧に準備をしてくださったので非常に助かりました。
また外国語を学びたい学生と、その言語が得意な学生が交流するチャットルームが設けられており、私は韓国語のチャットリーダーを務めています。ここで一緒にセッションした青学生の中には、韓国へ交換留学に行った学生やソウル大学大学院への進学を報告してくださった先輩もいて、語学力の向上に貢献できたことをうれしく思っています。
私自身、30歳までに日本語・英語・中国語の力を上級者レベルまで向上させるという目標を持ち、青学の充実した学習環境を生かして外国語学習に励んでいます。
振り返ると、日本語学校に通っている2年間は、日本語力向上のために日々努力をしているものの、同学年の友人よりキャリアが遅れていくことに焦り、無駄な努力をしているのではないか?と悩むことも多々ありました。今になってみれば、努力は回り道ではなく、全てが目標へ向かうための大切なステップだったのだと思えます。留学の準備があまりに大変で、投げ出したくなる時もあるでしょう。しかし、大学に入って多様な人々と交流し、関心ある分野の勉強を継続すれば、努力はきっと報われるので、諦めずに目標を達成してください。
文学部 史学科
青山学院大学の文学部は、歴史・思想・言葉を基盤として、国際性豊かな5学科の専門性に立脚した学びを追究します。人間が生み出してきた多種多様な知の営みにふれ、理解を深めることで、幅広い見識と知恵を育みます。「人文知」体験によって教養、知性、感受性、表現力を磨き、自らの未来を拓く「軸」を形成します。
ロマンあふれる歴史を扱う歴史学は、実は史料を読み解き過去を再構成する科学的・実証的な学問です。史学科では、日本史、東洋史、西洋史、考古学という4つの視点から学びを深めます。過去について学ぶことは、異文化に対する広い視座を養うとともに、現代社会の成り立ちに関する理解を深め、社会の持続可能性を探ることにも通じます。これらについて自身の見解を客観的に表明できるよう、指導します。
国際センター
国際センターは、大学の国際化に関わる教育支援と国際人育成をサポートしていきます。主な業務は、海外協定・認定校を対象とする「学生派遣」と「留学生の受入れ」、短期語学研修などのプログラムやイベント等の企画・運営、および青山学院中・高等部などの設置学校と大学間のグローバル化に関わる一貫教育体制のサポートなどを担います。国々の多様な文化や慣習および学生の異なる価値観を尊重しながら、海外大学と本学との連携をさらに強化・拡充していきます。