原動力は無尽蔵の情熱。大学で培った音楽を俯瞰してとらえる力を携え、音楽業界へ進む|AGU LiFE

原動力は無尽蔵の情熱。大学で培った音楽を俯瞰してとらえる力を携え、音楽業界へ進む

掲載日 2024/10/7
No.318
総合文化政策学部 総合文化政策学科 4年
坂田 望
神奈川県立横浜緑ケ丘高等学校出身

OVERTURE

高校時代に音楽の力を知り、日々が豊かになったという坂田望さん。広い視点で文化を探求できる環境を求めて総合文化政策学部に進学し、大好きな音楽を多角的に見つめたことで、大きく視野を広げました。憧れていた音楽業界への内定を獲得し、感動を届ける起点になりたいと語る坂田さんに、大学での学びと就職活動を振り返っていただきました。

幅広く文化を探求できるカリキュラムとラボ・アトリエ実習が進学の決め手

高校生のときに初めてお気に入りのバンドのライブに行き、音楽が持つエネルギーに心が震えるほどの感動を覚えたことで、音楽に関わる仕事がしたいという思いが芽生えました。一方でデザインやアートも好きだったので、一時は美大への進学も検討しましたが、音楽を含めもっと広くカルチャーと社会について学べるところはないだろうかと悩んでいた高校3年生の夏、塾に置いてあった青学のパンフレットをたまたま手に取り、総合文化政策学部について知りました。幅広い分野を横断して文化を探求できるカリキュラムは他大学にはないものだと感じましたし、本学部独自の演習授業「ラボ・アトリエ実習」(ラボ)を調べる中で、「音楽専門ウェブメディアの研究と実践」をテーマとする東海林修先生のラボで学んでみたいと思ったことが決定打となり、「私がやりたい勉強ができるのはここだ!」と出願を決めました。

好奇心を刺激する総合文化政策学部の多彩な授業

総合文化政策学部は個性を尊重する自由な空気にあふれ、さまざまな方向に興味を開かせてくれる多彩な授業と、学内外で多様な活動に取り組んでいる友人たちから刺激を受けて学ぶ日々は、好奇心が尽きません。私は広範なフィールドの中から「音楽文化」を中心に据えて勉強に励み、課外活動においても、大学公認部会「青山ミュージックソサエティ(ROCK)」(A.M.S ROCK)と音楽系のイベント企画を行う大学公認愛好団体「軽音楽振興愛好会」の二つを掛け持ちして精力的に活動してきました。A.M.S ROCKでは3人組で構成されるスリーピースバンドのベースを担当し、月1回ほどのペースでライブに出演していました。想像以上に多忙な大学生活となりましたが、せっかく好きなことを勉強しているのだから手を抜かずに良い成績をとりたいと思い、タスク管理アプリでやるべきことのスケジュールを組み、図書館に足繁く通ってレポートなどの課題に取り組みました。

2年半続けているバンドでA.M.S ROCKの定例ライブに出演

音楽文化の研究入門は、2年次に履修したKUSHELL, Michael先生の「文化基礎演習AB」で、「音楽のサブスクシステムと私たち世代の音楽消費行動がどう影響し合っているのか」というテーマで行いました。研究対象について何を知りたいのか、まず主語を明確にすることが重要だ、というところから研究の基礎を学ぶことができました。また、各自が多様な研究テーマに取り組んでいたため、他のメンバーの発表を聞くことも新鮮でした。

3年次に履修した「観光産業論」も印象に残っています。特定の地域を選んでオリジナルの「コンテンツツーリズム(聖地巡礼等)」の企画をアクティブラーニング形式で考案するという授業で、私は好きなバンドとそのメンバーの出身地である山陰地方を組み合わせたツアーを企画しました。もともと関心があった観光業に、自分の好きなものが結び付いた楽しさに加え、デザインが得意ということもあって、所属する両サークルでは広報担当としてポスターや冊子等の制作を担当していた経験がエンジンとなり、企画書からパンフレットまで力を入れて作成しました。その結果、全体プレゼンでは「ファンではないけれど、行ってみたくなった」「資料が凝っていてよかった」といったうれしい感想をもらい、自信につながりました。

実践的な英語力の習得が重視されているのも総合文化政策学部の特色です。特に1年次の必修科目「イングリッシュ・コミュニケーションⅠ」は、ネイティブスピーカーの先生による少人数クラスで行われ、私のクラスは海外居住経験者や留学経験者が多かったこともあって、高校までの授業との違いに慣れるまでは戸惑いました。最初の頃はボディランゲージで乗り切ることも多かったですが、間違えることを恥ずかしがらずに話してみることを意識することで、徐々に会話の感覚が身に付いていきました。

難しいフレーズが弾けるようになった瞬間や音を合わせたときの喜びは何物にも代え難い

音楽の楽しみ方が深まり、言語化能力も向上

2、3年次では、総合文化政策学部への進学の動機の一つでもあった「東海林ラボ」の「ラボ・アトリエ実習(1)・(2)」を選択しました。東海林先生が運営する海外のインディーズアーティストを紹介するウェブサイトで、レビューの作成やインタビューの翻訳といった実務に携わるラボに挑戦してみたいと思ったのは、文章を書くことも好きだったからです。記事を書くにあたって情報の優先順位のつけ方や絞り方などを詳しく教えていただいたことによって、期待を超える学びを得ました。3年次には東海林先生からラボ長に指名され、メンバーのやる気を喚起する声掛けなど、チームをディレクションするための自分なりの術が獲得できたと思います。

このラボの魅力の一つは、実践ワークと並行して、アーティストや楽曲のバックグラウンドを深掘りするために、美術館の企画展鑑賞やミニシアターでの映画鑑賞といったフィールドワークが多く実施されることです。ヒップホップの作品が、アメリカにおける人種差別の歴史に強い影響を受け生み出されてきたことなど、これまでの世界史の授業では知り得なかった文化と歴史のつながりを学び、「楽しく、美しいもの」と限定的にとらえていた音楽を、より深く味わえるようになりました。音楽文化の観点にとどまらず、世の中に発信される情報を一度自分でかみ砕いて考えてみることの大切さを、常に心がけています。また、フィールドワーク後には、学生同士で意見や考察を共有しディスカッションを行っていたため、心に引っ掛かったことは放置せず、言語化してメモに残すことを習慣化していました。これが自分の考えをアウトプットする良い訓練になり、他の授業でもレポートやリアクションペーパーをスラスラ書けるようになりました。また、就職活動の面接でも、質問に対してよどみなく答えることができました。

このような学びを通じて、建設的な意見が持てるようになったと感じており、映画を観たときなどは「ああ、誰かと意見を交わしたい!」という気持ちが自然と湧いてくるようになりました。最近、ドイツ映画を観た際に、ラボで触れたドイツ人画家の作風と、2年次で履修した「マスメディアと社会」で学んだドイツの歴史、そして第二外国語で覚えたドイツ語が頭の中でパズルのようにつながり、自分なりの解釈が生まれて大変感動しました。さまざまな文化・芸術の楽しみ方が広がり、「総合文化政策学部に入ってよかった」と強く感じています。

趣味の美術館巡りで大阪の堺市立文化館「堺 アルフォンス・ミュシャ館」へ

譲れなかった音楽業界への思いと「自分らしさ」

卒業後は、ソニーミュージックグループに就職する予定です。就職活動について意識し始めたのは3年次の春でした。自分にとって最も大切なのは、音楽やデザインなどクリエイティブな表現に携わることだという思いは高校生の頃から変わらず、進みたい業界は悩むまでもなく、第一志望が音楽、第二志望が広告と定まっていました。それ以外の選択肢は考えられなかった、と言えるかもしれません。特に、勉学においても、サークル活動においても、音楽とその周辺文化に対する情熱が途切れることはなく、音楽業界を目指す思いは揺るぎないものになっていました。

3年次の2月に異業種の内々定をいただきました。しかし、その時点で就職活動をやめたら後悔することは明らかだったので、活動を続行し、レコード会社や著作権管理会社、音楽出版社などの選考に参加しました。

人生の多くの時間を仕事に費やすのだからこそ、「好きなものに近く、自分らしくいられる環境で働く」という譲れない信念が生まれ、それが就職活動の軸にもなりました。そのため、面接では、話を盛ったり、膨らませたりせず、ありのままの自分で素直に話そうと決めていました。また、評価項目として重視されるといわれる、いわゆる「ガクチカ」よりも、自分が得意とするクリエイティブに対する熱意や好奇心に素直な姿勢をアピールし、入社後に実現したい目標を前面に押し出すようにしていました。そんな中、就職活動生としての飾った姿ではなく、本当の自分を見せてほしい、という姿勢を示してくださったのが、ソニーミュージックグループでした。面接では、ざっくばらんに会話をし、素の自分が受け入れられていると感じられたことが嬉しかったです。個性を認める自由な雰囲気や幅広い事業領域、自主性を重んじる環境を魅力に感じて、入社を決めました。

サークルで手掛けた広報制作物の一部

人生も変わるような純粋な感動を届け続けたい

就職活動で苦しかったのは、「いつ終わるかわからない」ということでした。「面接が終わったら美味しいものを買って帰る」や「ライブや美術鑑賞は我慢せずに楽しむ」といった、自分を喜ばせるマイルールを作って、モチベーションを維持するように努めました。長い就職活動を乗り切るためには、自分の機嫌を自分でとる方法を持つことが大切だと思います。

また、ネット上には就職活動の情報があふれているため、始めたばかりの頃は何から手をつければ良いのか悩みましたが、進路就職支援システム「Web Ash」や就活手帳「Ash青山学院大学就職活動ハンドブック」など、青学が提供している情報が一つの指標となりました。大学主催のWEBテスト解説セミナーでは実際にどのような問題が出るのか知ることができ、とても参考になりましたし、オンライン面接用ブースの貸し出しをたくさん利用しました。ぜひ、こうした大学の就職活動サポートを有効に活用してほしいです。

納得のいく進路を決められた今、最も強く感じているのは、就職活動は「勝ち負け」ではなく、「マッチング」だということです。人それぞれ個性や適性は異なるので、他者の意見や世の中の基準に惑わされず、自分が大事にしている価値観ややりたいことを突き詰めれば、自分に合った場所が見つかると思います。

私の夢であり目標は、数字では測れない、人生が変わるような純粋な感動を届ける起点であり続けることです。一方で、アーティストが音楽生成AIの影響や著作権の問題などに苦しんでいる現実も見聞きしており、作り手が正当な利益を得られる環境づくりに取り組み、才能あるクリエイターを支えることにも真摯に向き合っていきたいと考えています。そして、音楽に限らず、「好き」に一途であること、好奇心を放置せずに学び続けることを大切にしながら、年を重ねていきたいです。

応援しているバンドの武道館公演にて

坂田さんの就職活動スケジュール

  1. <3年次> 2023年 4月

    説明会にいくつか参加、就職活動を意識し始める

  2. <3年次> 2023年 6月

    本格的に就職活動開始。夏インターンの応募、自己分析やwebテスト対策を始める

  3. <3年次> 2023年 8~12月

    広告業界の夏・秋インターン参加、早期選考参加

  4. <3年次> 2024年 2月

    1社目の内々定をいただくが、就職活動を続けることを決める

  5. <3年次> 2024年 3~4月

    本選考の応募開始、webテストラッシュ

  6. <4年次> 2024年 5月

    本選考面接ラッシュ

  7. <4年次> 2024年 6月

    第一志望から内々定をいただき、就職活動終了

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2024年度)のものです。

総合文化政策学部

青山学院大学の総合文化政策学部では、“文化の創造(creation)”を理念に、文化力と政策力を総合した学びを探究。芸術・思想・都市・メディアなどの広範な領域を研究対象とし、各現場での“創造体験”とともに知を深めていくチャレンジングな学部です。新たな価値を創出するマネジメント力とプロデュース力、世界への発信力を備えた“創造的世界市民”を育成します。
「文化の創造」を理念に、文化力と政策力を総合した学びを探究します古典や音楽、映像、芸能、宗教、思想、都市、ポップカルチャーなどあらゆる「創造」の現場が学びの対象です。どうすれば文化や芸術によって社会をより豊かにすることができるのか。創造の可能性を模索し、自身のセンスを磨きながら、創造的世界市民として社会への魅力的な発信方法を探ります。

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