経済学、イタリア留学、「文理融合」志向の先にある将来像はITエンジニア
国際政治経済学部 国際経済学科 4年
OVERTURE
在学中の留学を目標に掲げ、好きな海外サッカーを通じて興味を持ったイタリアのボローニャ大学に留学した西浦悠晴さん。英語を共通語としたフラットな学修環境でEU圏から集まる多様な学生と交流し、国際的な社会問題にも目を向ける機会を得ました。帰国後の現在は、国際政治経済のトピックをデータサイエンスの手法で分析する「文理融合」のゼミで学び、卒業後はITエンジニアに挑戦する道を選びました。
授業で知的好奇心を高めながら、留学という目標を実現させる
将来、社会に出る上で、「グローバル」と「経済学」の知験は必要不可欠だろうと考え、国際経済学科に進学しました。1年次前期に履修した「経済学入門(ミクロ)」では、私たちが消費生活で無意識に行っている選択の背後に、数学的原理が働いていて論理的に説明ができることを知りました。知的好奇心を高めながら学問の基礎をしっかり習得できる授業に出会え、自分の学部・学科の選択は間違っていなかったことを再認識しました。
大学で必ず実現させたいと心に決めていたのが留学です。内部進学のため、同世代が経験する「大学合格」という目標達成を経験していない分、大学生になったら異文化に飛び込んで自分の殻を破るような挑戦をしたいと考えていました。高等部には英検表彰があり、受験を推奨していたので、英検準1級に合格するまで勉強しました。
大学に入学してすぐ国際センターに足を運んで、具体的な留学準備や協定校留学の絞り込みをしていきました。小学生の頃からずっと海外サッカー、特にスペインのFCバルセロナのファンで、サッカーを通じてヨーロッパの都市や文化にも関心が広がっていたこともあり、留学先を英語圏に限定せずにヨーロッパの大学も視野に入れて検討しました。
最終的に留学先として選んだのは、イタリアのボローニャ大学です。「ボローニャFCの本拠地」「11世紀に創立された世界最古の大学(と言われている)」「コペルニクスやガリレオも在籍した歴史ある大学」という分かりやすい情報に触れ、「日本が平安時代に創設された大学?!」「伝記に出てくる偉人たちと同じ場所で学ぶなんて、なかなかできないよね?」と好奇心が湧いてきました。
本格的にリサーチを進めると、学生数7万人超の巨大な大学で、学べる分野が幅広く、世界中から学生が集まる多様性の環境が整っていることが分かりました。さらに、英語で開講する授業科目が充実して、留学生は学部横断的に授業を受けられるという現実的な情報を知り、留学先として大きな魅力を感じました。
大学生が流動するヨーロッパ、「第二外国語」の英語を共通語にしたフラットな学修環境
ボローニャ大学で留学をスタートさせて、ヨーロッパ各国からの留学生の多さに驚きました。彼らに聞いてみると、エラスムス(European Region Action Scheme for the Mobility of University Students)というヨーロッパ大学間交換留学プログラムが整っていて、異なる母語を持つ大学生の流動が一般化していることを知りました。自然と共通言語は英語になります。誰もが「第二外国語」の英語を共通言語に授業に取り組むので、語学力によって周囲の学生と圧倒的な差がつくことはありません。フラットな学修環境が、ヨーロッパ留学の良さではないかと感じました。
履修科目は、「青学で専攻する経済学をさらに発展させられる内容」と「イタリアでしか受けられない内容」を軸に選択しました。
特に力を入れて取り組んだのは「International Economics」というマクロ経済学の基礎を網羅的に扱う授業です。青学での学びを土台に、英語でさらに知識を積み上げることができ、経済学は世界共通の学問であることを実感しました。ただし、日本語で何となく理解しているだけでは、英語で正確に説明することは難しいです。課題では、図やグラフなどを効果的に用いて英語で分かりやすい説明ができるよう心がけました。青学で学んだ内容を英語で復習することになり、両言語を比較しながら学ぶ体験は新鮮で楽しかったです。経済学の知識の幅を広げ、理解が定着した実感は自信にもつながりました。
また、「Urban Planning and Development」の授業で訪問した「トリノ課外研修」が稀有な体験として特に印象に残っています。トリノ中心街には、世界遺産に登録されている王立図書館や伝統あるオペラハウスなどの文化施設があり、これらの歴史的建造物が市民の公共空間として日常的に利用されている様子を視察しました。日本とは異なる文化・芸術との関わり方を学び、イタリアに行かなければ知ることができなかった重要な観点を得ることができました。
授業内容の専門性が高まると、英語での理解が難しく感じることや、テストの範囲が広いこともあり、どの科目も難易度が上がりました。しかし、青学で単位を取ることを目的化せず、より深い理解を目指して取り組んでいたことが、留学中の学びにも好影響を与えたと思います。
ヨーロッパで国際交流し、国際問題に目を向け、外から日本を見る体験
授業や寮の共有スペースで出会った学生に話しかけたり、イタリア語で開講される「日本語」の授業を履修して日本に興味のあるイタリア人学生と親しくなったりすることで、多くの留学生やイタリア人学生と友人になることができました。サッカー観戦でも交流の輪が広がり、ワールドカップカタール大会の日本対ドイツ戦、スペイン戦を両国出身の学生と一緒にテレビ観戦し、周囲の予想を覆して日本が勝利したときの喜びは壮快な思い出です。
イタリアと陸続きのEU各国は移動がしやすく、出入国審査も不要なので、休みには国内外さまざまな場所を訪れました。友人の地元を案内してもらい、実家に泊めてもらって一般家庭の生活を体験することもできました。
イタリアは南北に長い国なので、場所によって地理や気候、文化風習が大きく異なります。現在は、北部・中部・南部の3地域に大分されますが、政治的に統一される前のイタリア半島は複数の国家に分かれていたため、それぞれに独自の歴史、言葉、料理などが存在します。各地の特徴を現地で体感できたことは、大きな収穫でした。
キャンパスでの学び以上に考えさせられたことは、ヨーロッパの分断の火種となりつつある移民問題です。アフリカの政情不安から逃れようと地中海を越えてヨーロッパを目指す移民・難民がイタリアで急増しています。ロシアによるウクライナ侵攻の影響でヨーロッパ全体が疲弊しているため、自国の雇用・経済を守りたい移民・難民受け入れ反対者によるデモや暴動を目の当たりにしました。移民政策を取っていない日本にいたら知ることがなかった国際問題に初めて目を向けることになり、大きな衝撃を受けました。
イタリアでの生活は「予定どおりに進まない」ことが日常で、渡航直後はありとあらゆる苦労をしました。一つ一つ課題を解決し、問題を乗り越えていくうちに耐性が付き、臨機応変に行動できるようになりました。また、海外から日本を見ることで、予定や約束を遵守する国民性、勤勉さや技術力が世界的な信用につながっていることを再認識し、日本の価値を再発見した1年でもありました。
2年次後期からの留学で、就職活動は帰国後にスタートさせる学年でしたが、毎年4月にヨーロッパ最大規模の日英バイリンガルのための就職イベント「ロンドンキャリアフォーラム」が開催されると知り、イギリスまで見学に行きました。会場で青学の先輩・同期に再会し、海外での就職活動の一端を知り、観光も楽しみ、充実したロンドン滞在になりました。
「文理融合」志向で、IT技術の専門家集団でエンジニアを目指す
留学前の2年次前期に竹田憲史先生の「プリゼミ[英語講義]」を履修し、英語による統計分析、プレゼンテーション、ディスカッションのスキルを習得する授業がとても楽しかったので、帰国後は迷わず竹田先生のゼミナール(ゼミ)を選択しました。国際政治経済のトピックをデータサイエンスの手法で分析するゼミで、データ分析の結果を客観的に正しく理解して、意味を読み取る基礎能力を身に付けることが目標です。日本は大学進学で文系・理系に分かれることが一般的ですが、私自身はその意味をあまり感じていません。その点、データサイエンスは、文理を分離するのではなく融合させてアプローチするところに魅力を感じています。
卒業論文では、国際スポーツビジネスをテーマに、データに基づく比較研究を考えているので、今夏は国際政治経済学部主催の「EU研修(EU経済とビジネス)」に参加し、ドイツの大学でスポーツビジネスやワイン産業について知見を深めてきます。
就職活動中、どんな業界でもITがビジネスのインフラになることを確信し、「文理融合」志向を発展させ、ITに携われるようなキャリアを模索しました。卒業後は日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング株式会社(ISE)でエンジニア職に挑戦します。IT技術の専門家集団で、文系学部の学生がエンジニアを目指すことは簡単な道ではないと思います。それでもエンジニアに挑戦しようと決心したのは、コンサルティング業ではなく、データ活用の基盤作りに携わって力をつけたいという思いが強かったからです。ISEは文系学生でも向上心を持って努力すれば業務を通じてエンジニアとしての専門スキルを身に付けられること、外資系ならではの企業風土や社員の方々の働く姿がとても魅力的だったことにご縁を感じ、挑戦を決意することができました。
国際経済学科で身に付けた数字を根拠に考える姿勢、留学で培った語学力と異文化理解・受容・適応・協働、これらを自分の強みとして融合させて専門スキルを伸ばし、いつかより良い社会の構築、日本企業の価値創造に貢献できる人材になりたいと考えています。
西浦さんの留学スケジュール
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<1年次> 2021年 春〜夏
留学先検討、IELTS勉強・受験
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<1年次> 2021年 9月〜 10月
出願
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<1年次> 2021年 11月
留学先がイタリア・ボローニャ大学に決定
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<2年次> 2022年 夏
ビザ等の必要書類の準備
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<2年次> 2022年 9月
ボローニャ大学への留学を開始
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<3年次> 2023年 7月
帰国
各科目のリンク先「講義内容詳細」は2024年度のものです。
国際政治経済学部 国際経済学科
青山学院大学の国際政治経済学部は国際社会への貢献をそのミッションとし、国際系学部の草分けとして創設されました。各学科の学びを深めるだけでなく、有機的に3学科の学びを統合することもできます。グローバルレベルの課題への理解を深め、エビデンスにもとづいて議論・討論するスキルを養成します。世界の多様な人々と協働し、新たな価値を創造する実践力を育みます。
国際経済学科では、国際経済や開発経済に特化したカリキュラムのもと、地球規模の諸問題、特に国際的な経済相互依存関係などを経済やビジネスの観点から歴史的・理論的かつ数量的に学びます。一人一人の興味や進路を踏まえて、「国際経済政策コース」と「国際ビジネスコース」を設置。異なる文化や価値を理解し尊重する姿勢を身に付け、問題解決のため積極的に考え行動できる人材を育成します。
バックナンバー
多様性の街「渋谷」で、自分だけの特別な場所を見つける
(フランス・トゥール大学)
Maxime Labbé
入学時からの努力で開いた公認会計士への道。誠実に財務諸表と向き合い監査の価値を高める
経済学部 経済学科卒業
夢は日本のビジネスを支える弁護士。正確な知識と「説明できる力」で、司法試験に挑む
法学部 法学科 4年
将来を模索していた私が
経営学科で見定めた
公認会計士という目標
経営学部 経営学科 4年
研究を通して積み重ねた
挑戦と成功体験が大きな自信に
理工学研究科 理工学専攻 知能情報コース
博士前期課程2年
オリジナルの分子を使って
新たな核酸の検出手法を開発
理工学研究科 理工学専攻 生命科学コース
博士後期課程2年
*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。