授業や海外インターンシップを通じて、「小さな民」への支援と世界状況の理解に取り組む|AGU LiFE \

授業や海外インターンシップを通じて、「小さな民」への支援と世界状況の理解に取り組む

掲載日 2023/9/8
No.258
<2022年度 学業成績優秀者表彰 奨励賞受賞>
<2023年度・2024年度 学業成績優秀者表彰 最優秀賞受賞>
地球社会共生学部 地球社会共生学科 3年
黒沢 舞衣
東京・私立青山学院高等部出身

OVERTURE

高校生の時から東ティモールと国際支援活動への強い関心を維持する黒沢さん。地球社会共生学部の多彩な授業で新しい視点を養い、東ティモールでインターンシップに挑戦するなど、学内外で意欲旺盛に学んできました。現在も、大学院への進学を見据えて勉学に励む傍ら、現地の子どもたちへの日本語教育活動などを継続し、忙しくも充実した毎日を送っています。

人や地域にフォーカスを当て国際問題を学ぶため地球社会共生学部に進学

子どもの頃から貧困や紛争などの国際問題に興味を持ち、「世界で困っている人を助ける仕事がしたい」と考えていました。高校時代(青山学院高等部)、校内有志団体BLUE PECOに所属し、私の代はコーヒーのフェアトレードを中心に勉強していました。そのプログラムで東ティモールを訪れたことは、今後同国と深く関わるきっかけとなりました。訪問前に事前調査を行ってから現地に一週間滞在したのですが、実際に訪れた時、学んだ知識が臨場感を持ってイメージしやすくなったことが原体験として残っています。そして、現地の人たちの価値観や文化を尊重しながら、経済を発展させるためにはどのような支援が必要なのかということを真剣に考えるようになりました。

母校の青山学院高等部で自身の東ティモールでの経験を伝える

帰国後は、現地での気付きを反映させ、学校内で東ティモール産のコーヒー豆を販売した収益で、現地にコーヒーの苗木を贈るプロジェクトなどを実践しながらも、自分はまだ東ティモールのことを何も知らないという思いが残っていました。知識をもっと身に付けようと関連する本をたくさん読み、「もっと知りたい!」と学習意欲が増していったことを覚えています。この経験は私の大学での学びの原点となりました。

そして、大学では「人」や「地域」に焦点を当てたミクロな視点で国際問題を学び、支援や開発のあり方を考えてみたいと、地球社会共生学部に進学することにしました。入学後は、東ティモールとの関わりを継続したいと思い、学生NGO団体『HaLuz』に加入しました。この学生NGOでは同国に興味を持つ他大学の学生とともに、現地の子どもにオンラインで日本語を教える活動などをしています。

ジャーナリズムとの出会いで知った学際的に学ぶ面白さ

地球社会共生学部では、社会科学のさまざまな分野を専門とした先生方のもと、多彩な授業を通して学問領域を超えて学際的に学ぶことができます。あまり興味がないと思っていた分野の授業がきっかけで、学びの視野が思いがけない方向に広がることもあるのが、この学部の面白いところです。

2年次でたまたま履修した「ジャーナリズムの歴史」は、自分の物事に対する考え方を180°変えてくれた授業です。元新聞記者で海外特派員として世界各地の紛争を取材してきた福原直樹先生の授業は、社会問題をわかっている気になっていた自分を省みて、曖昧な知識をそのままにせず、能動的に知ろうとすることの意義を教えてくれました。例えば先生は、国名の書かれていない白地図を用いて、「この国はどこ?」「今ここで何が起きている?」「問題の背景は?」「報道記事に書かれているこの言葉の意味は?」と次々に質問を投げかけ、学生の知識と思考力を揺さぶるような授業をされます。質問にほとんど答えることができなかった悔しさ、社会で起こっていることへの無知を突き付けられた経験によって、学びの意欲に火がつきました。今はどの授業においても、知らない単語や事例が出てきたら、十分に理解できるまで調べたり、人に聞いたりすることを徹底しています。学業成績優秀者表彰最優秀賞を受賞できた理由も、このような学修態度の変化のおかげではないかと思っています。

1年次と2年次前期の必修科目「Academic English」では、ほぼ毎日の授業で実践的な英語を身に付けることができました。授業で扱うトピックスもジェンダーや地球温暖化など学術的で、専門用語も扱う高度な内容だったので、本当に鍛えられました。特に苦しんだのはライティングです。学術論文の正式なフォーマットでレポートを作成しなければならず、論理的に長文を書くのに大変労力しました。英語でレポートを書く苦労は、日本語で論理的にレポートを書く力も底上げしてくれ、他の授業でレポートを書くのがとても楽に感じるようになりました。

自身の生き方への気付きも得た海外インターンシップ

コロナ禍がなければ、2年次後期は、地球社会共生学部でカリキュラムの柱となっている学部間協定校留学に行く予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、特別派遣留学という一定の条件を満たした学生のみの留学となりました。私は留学に行くか考えた結果、「卒業までに長期的に東ティモールを再訪し、実際の支援現場やコミュニティに入り込んで、人々の生活や価値観を学びたい」という思いを行動に移す時ではないか、と元々興味のあった現地NGOでの海外インターンシップ(インターン)を選択することに決めました。

東ティモールで活動している3つのNGOに直接連絡して受け入れ先を自分で探し、「NPO法人パルシック(パルシック)」でインターンをさせてもらうことに決めました。パルシックは、コーヒーや加工食品のフェアトレードでその土地の人びとが息長く活動を続けていく支援に取り組んでいる団体です。

現地事務所には日本人スタッフが3人しかいないので現地人と関わる機会が多いこと、また、現場に入って行くのなら現地の言葉(テトゥン語)を話す必要があるということを事前に聞いていました。渡航が決まってからの3か月間、『HaLuz』のOBOGの協力で辞書や教材を提供していただき、英語で書かれたテトゥン語の教科書を使って基礎を叩き込みました。現地到着後は、語学学校でマンツーマン指導を受けました。1週間でどんどん話せるようになる実感がありましたが、レッスン代が高額だったので長期受講は困難と判断し、自学自習を決意しました。とにかく東ティモールの人々に混ざることを意識し、積極的に会話をするようにしていました。退勤後や休日に現地スタッフが勉強に付き合ってくれたこともあり、徐々に意思疎通ができるようになりました。心を開いてもらわなければと必死でしたし、わからないことを聞かなければ生活もできなかったので、現地で生きるために言葉を身に付けたというのが実情です。

東ティモールの首都ディリのスーパーで、パルシックのスタッフと一緒に企画した商品の試食会を実施
©パルシック

現地の人々の生活や価値観に触れたいという目的をかなえるために、パルシックの配慮でさまざまな生産現場を見学し、いろいろな家にホームステイをさせてもらいました。初めて一般家庭に宿泊してみると、例えば、水場が家の外にあって、水がめの水で体を洗うといった日本とはまるで異なる生活に、当初はカルチャーショックを受けました。ホームステイを始めた頃から一人で移動していたこともあり、経験を積むにつれ、精神的に強くなりました。

また、現地の人々と過ごしていくうちに、時間の概念の違いや、天候や気分に応じてその時々の予定を決める彼らの柔軟性にも慣れてきました。彼らは、自分の気持ちを大事にしながら行動し、余裕を持って生きていますし、家族との時間をとても大切にしていることも私に新たな視点を与えてくれました。私自身の幸せのために、心の豊かさが大事なのだと気付かされました。

東ティモール人の友人から似顔絵のプレゼント

人の縁に感謝し、納得いくまで研究したい

インターンを通して、生産者とNGOスタッフ双方の努力により品質の良い商品が丁寧に作られているという認識を新たにした一方、資金面などが活動に影響することがわかりました。必要な人へ支援を行き届かせるためには、どのように資金を集めるのかという課題が大きく、経済的な力を持つ国が儲けを第一とする意識を変えていくことも重要だと思います。「NPO/NGO論」の授業でもそうした部分を学んでおり、良い解決方法を模索したいと考えています。

インターン中には、普段オンラインで日本語を教えている子どもたちにも会いに行った

これまでの大学生活を振り返ると、私は人とのご縁やタイミングに恵まれていると思います。現在は、西ティモールを研究されている堀江正伸先生のゼミナール(ゼミ)に所属しています。フィールドワークを通して「小さな民」を取り巻く世界状況を理解するという研究方針が、私が研究テーマとして思い描いていたものとぴったり一致していたからです。そして、堀江ゼミの学生たちはゼミ活動とは別に、各自が思い思いの支援活動をキャンパス外で行っていることも特徴です。難民センター訪問や外国にルーツを持つ子どもの学習支援などで、私はフェアトレードブランドを立ち上げようとしているところです。対象となる商品は、東ティモール産に限定せず、ゼミの仲間の活動と関係する地域やものを候補としたいと考えています。この活動の体験から、売り上げを伸ばすことに貢献するためのヒントが得られればと思います。

堀江ゼミのメンバーと(前列中央が黒沢さん)

研究テーマはまだ漠然としていますが、支援団体の活動が現地にどのような影響を与えているのか考察したいと思っています。研究のために再び東ティモールを訪問するつもりです。まだまだ考えてみたいことがたくさんあるので、卒業後は大学院に進学し、NGO支援の事例研究を続けたいと思っています。最終的には国際協力に関する仕事をするのが目標ですが、どのような形で携わるのかはまだ定まっていません。研究を深めつつ、たくさんの可能性の中から進む道を絞っていきたいと思います。

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2023年度)のものです。

地球社会共生学部

地球社会共生学部(School of Global Studies and Collaboration /GSC)では、世界の人々と共に生き、共に価値を見出し、よりよい社会を共同で創造していくための専門知と実行力を備えた人材育成を目指します。タイとマレーシアなどのアジア諸国への留学をカリキュラムの柱におき、効果的な留学のための集中的な英語教育などとともに、激動する世界を視野に「地球社会」の多様性に触れ、異文化理解を深める幅広い学びを展開。世界の人々との「共生」をキーワードに、コラボレーション領域、経済・ビジネス領域、メディア/空間情報領域、ソシオロジー領域の専門4領域を中心に、Global Issuesを共に解決し協働できる「共生マインド」を養います。
地球社会共生学科は、国境を超えた「地球社会」を教育研究対象としています。多角的な視点と異文化への共感力、語学力に裏打ちされたコミュニケーション能力をもって、さまざまなグローバル課題の解決策や持続的な社会を創造する方法を探究します。

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