幅広く芸術を学んで身に付いた、鑑賞力と印象を言語化して伝える力
OVERTURE
比較芸術学科は、「美術」「音楽」「演劇映像」という3つの領域を相互に関連させ、芸術の魅力や鑑賞の理論を学びます。アートが好きで芸術を広く学べることに魅力を感じて入学した東出梨乃さんは、学びを通して、視野の広がりや伝える力の向上を感じていると言います。東出さんにこれまでに印象に残った授業や、今後の展望などを伺いました。
芸術作品を浴びるように鑑賞し、その理論を学ぶ
青学の比較芸術学科を知ったのはオープンキャンパスでした。美術館巡りが好きで高校の美術部に所属していた私は、美術大学への進学を考えていましたが、進路を考える中で、自分自身で制作するよりも、芸術学や鑑賞の理論を中心に学ぶことに興味を持つようになり、この学科に注目したのです。体験授業で佐久間康夫先生のシェイクスピアについてのお話をはじめ芸術の多種多様性に触れることになり、「ここは私が好きなことを全力で学べる大学!」と直感し、進学を決意しました。
1年次必修の「比較芸術学入門A・B」は、西洋・東洋の美術・音楽・演劇映像を包括的に学び、「鑑賞のツボ」ともいうべき作品の見方を習得することができました。各分野の特徴を知ったうえで、芸術を広く俯瞰しながら深く理解しなければならないという気付きを得て、その後の学びの土台となっています。アート鑑賞が好きな私にとって、多くの芸術作品を浴びるように鑑賞できる素晴らしく楽しい授業でした。特に後期は、対面授業に切り替わり、オンラインでは叶わなかった大画面での映像鑑賞で楽しさが倍増し、授業後は先生に質問をしたり、学生同士で感想を言い合ったりすることも良い刺激となりました。この授業を受講してレポート執筆を重ねることによって、作品の印象だけではなく、具体的なシーンや描き方を取り上げながら、印象を言語化する力を身に付けることができたと思います。
総合芸術として「演劇」への関心が高まる
比較芸術学科では、3年次から専攻分野を絞って学びます。もともと美術が好きなことと、シェイクスピア演劇との出会いに刺激を受けて青学に入学したこと、その両方に興味があったので、専攻を美術にするか演劇にするか迷っていましたが、それまでの学びを振り返って、舞台美術や衣装、演目内で流れる音楽など、3分野すべての要素が入った総合芸術は「演劇」だと気付きました。佐藤かつら先生の「日本・東洋の文芸と演劇映像B」での学びは、古典芸能の世界への誘いにあふれ、私がこの分野に夢中になった決定打と言えます。歌舞伎や能そのものの魅力だけでなく、劇場構造の特徴や魅力を知ったことで、古典芸能に無関心だった自分が「劇場に行きたい!」と強く思うようになりました。先生の毎回の質疑応答の丁寧さも相まって、古典芸能を学びたい気持ちがどんどん高まっていき、演劇関連のゼミナール(ゼミ)に入ることを決めました。
演劇を考える上では、佐久間先生の「基礎演習Ⅲ(1)」にも影響を受けました。演劇や映画作品内からおのおのが思う「名台詞」を発表する課題では、他学生の視点や人の意見を参考にする大切さを学びました。同時に、多様な受け取り方を許容する演劇、ひいてはアートの寛容さも改めて知るきっかけとなりました。
専門科目以外にも、「青山スタンダード科目」で受講した「考古学A」は、多くのリスクと戦いながら細心の注意を払って進める発掘調査について知ることができて、美術館や博物館などの展示品がどれほどの苦労の末にそこにあるのか改めて気付くことができました。歴史的資料の重みの理解につながり、今の学びにも生かされています。また、学問の奥深さや難しさを学ぶことが出来た授業としても印象に残っています。高校の授業で習った時代区分が絶対的なものではなく、今も議論が続いていると学んだとき、「大学の学びとは高校時代までの知識を改革すること」なのだと思い、とても印象に残っています。
古典演劇のゼミでの議論で視野が大きく広がる
現在は、佐藤先生のゼミに所属し、日本・東洋の古典演劇を学んでいます。特に面白いのは、意見交換の場で、議論の中では新しい視点や意見が飛び交い、視野が大きく広がりました。特に4年生の先輩方の知識量には圧倒されます。同学年でも私が全く知らない作品を関連づけて意見を述べる人もいて、自分になかったものを取り入れる楽しさがあります。
初回には、一人一人、自己紹介として自分の好きな作品やジャンルを発表し合う機会が設けられていたので、お互いの興味関心領域がわかって、話し合いや質問もしやすく、一緒に学んでいく仲間という気持ちで毎回の授業に臨んでいます。
今は、興味がある中から研究テーマを探している段階で、前期後半に行われる4年生の研究発表も参考にしながら、絞り込みたいと思っています。候補の一つは、「着物」です。成人式に着物を購入したことをきっかけに「着付け」を習い始めて、着物の美しさや芸術性に引かれて夢中になり、現在は着付けの資格を取れる上級クラスでさらに技術を磨いています。「着物も立派な芸術品」だと感じる機会があり、これらの経験から「着物装飾の演劇作品への影響」というテーマも考えています。
そうした研究を行うためには、歌舞伎や能、文楽等、日本の古典演劇の知識がまだまだ不足している状態ですから、今後、いろいろな作品を貪欲に観て学んでいきたいと思います。演劇作品は、観客が劇場に行って、役者と観客との関わりがあって初めて成立する「生」の芸術です。映像での鑑賞だけでなく、積極的に劇場に足を運ぶことを目標にしています。
将来は、身に付けた「言葉で伝える力」を生かしたい
この学科で学び、芸術作品の鑑賞力とともに、その作品についてわかりやすく人に伝える力も付いたと感じます。授業の中で、自分ならどう考えるかを常に自問したこと、数多く課されるレポート課題に向き合ううちに、自分が感じた印象の理由や背景を客観的に探る習慣が身に付いたこと、それをどう表現すれば自分の意見を人に伝えられるのか、考え抜く機会を多く持てたことが要因だと感じています。
意見や事実関係を相手にわかりやすく伝えること、美しい、面白いといった抽象的に終わりがちな概念を言葉に表すことは、どんな仕事においても役立つ能力です。将来は、演劇や芸術に関連する業界も視野に入れつつ、幅広い職業を検討したいと考えています。「司書」の資格取得も目指していて、司書をはじめとする本に関係する仕事にも興味があります。
比較芸術学科は、好きなことを好きなだけ学べる学科です。本格的な設備で作品を鑑賞することは、楽しく得難い経験であり、同じ作品を共有し、語り合える仲間がいることで、毎日新しい発見があり視野も格段に広がりました。また、「キャンパスメンバーズ・パートナーシップ」を普段から活用しており、公共博物館・美術館等の常設展を無料で観に行っています。とても素敵な制度なので、気になる方は是非一度利用してみてください。友人の中には、美術・音楽・演劇を幅広く学ぶ中で、新しい興味・関心が立ち上がり、入学時には想像もしていなかったジャンルの芸術を専門として学ぶ人もいます。
アートが好きな人、作品を鑑賞することが好きな人に、ぜひおすすめしたい学科です。
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は2023年度のものです。
文学部 比較芸術学科
青山学院大学の文学部は、歴史・思想・言葉を基盤とし、国際性豊かな5学科の専門性に立脚した学びを通じて、人間が生み出してきた多種多様な知の営みにふれ、理解を深めることで、幅広い見識と知恵を育みます。この「人文知」体験によって教養、知性、感受性、表現力を磨き、自らの未来を拓く「軸」を形成します。
比較芸術学科は、伝統的・古典的な芸術として長い歴史を刻んできた「美術」「音楽」「演劇映像」という3つの領域をもって構成されています。これらは古典や伝統、歴史を基盤とする人文学の基本というだけでなく、現代社会の芸術・文化の本質を知るうえでも欠くべからざる領域といえましょう。これら芸術諸領域の幅広い比較学習・研究を通じて、学生個々の“人間力”が確立されることを願っています。