学究の姿勢で
金融工学研究に取り組み、
培った数学力を社会で生かすことが目標
OVERTURE
受験勉強を通じて数学の面白さを知り、理工学部 物理・数理学科*の門をたたいた成川さん。好きな数学をより深く学ぶため、授業前や帰宅後の決まった時間に自習するルーティンを休まず続けてきました。現在は、数学の専門知識を社会で生かしたいと金融工学研究に取り組んでおり、金融業界でデータサイエンティストとして活躍することが目標です。
*2021年度から、物理・数理学科は「物理科学科」「数理サイエンス学科」に改編
学んだことをより深く理解するために身に付けた自習の習慣
数学の面白さを知ったのは高校3年生の時です。大学受験に向けて数学の過去問題を解いていくうちに、数学の解を導く難しさと、そこを探求する面白さ、そして勉強を通じて自分の成長が感じられる学問であることを知り、「大学で数学を学びたい」と思うようになりました。
大学に入学にした際、4年間で数学をしっかりと学ぶために、在学中は日々の学びの習慣を大切にしようと決めました。
まず、最初に取り組んだのは、授業を時間通りに受けることです。1年次は新型コロナウイルス感染症の影響で全てオンライン授業でしたが、対面授業と同じように、どの授業も開始時刻前にパソコンの前に座って準備し、余裕を持って講義を受けようと心掛けていました。また、授業後は自習することを習慣にしていました。
2年次に対面授業が再開されてからは、授業1コマ分早めに登校して、授業が始まるまで自習することを習慣化しました。単位修得ありきではなく、学んだことをより深く理解して単位を取りたいと思ったときに、こうした習慣が必要だと感じていたからです。
1年次から続けてきた自習は4年になった現在も続けていますが、義務感で仕方なく勉強するという感覚はありません。むしろ、いつも学びの内容に関心を持ち、主体的に楽しみながら勉学に励んでいます。
数学以外の授業や学外活動から得られた新しい視点
1、2年次は数学以外に物理も学びました。私が学んでいる数学が物理にどう生かされているかを知ることは、学びへのモチベーションになりました。
「青山スタンダード科目」にも大いに刺激を受けた授業があります。沖縄の歴史をテーマにした2年次に履修した「歴史と人間(個別科目)」です。多くの人は中学や高校の社会科の授業で沖縄の歴史を学びますが、沖縄の史実を、現地の方の声を交えながらより深く解説する授業でした。教科書を読むだけでは知りえない事実に触れたことで、背景に何があるかをきちんとつかむことが必要であり、そのような視点は勉強をするうえでも大切なことだと考えるようになりました。
勉学以外では塾講師として数学を教えるアルバイトを経験し、さまざまな気づきを得ました。たとえば生徒によって理解度はさまざまで、私が当たり前だと思っている問題の解き方を知らない生徒もいます。そのような状況に直面したときは、こちら側から「まず、この問題の解き方がわかりますか?」と聞くことによってスムーズに教えられることがわかりました。これから社会に出て仕事をするときも、相手との行き違いを避けるために、最初に前提条件をすり合わせすることが求められると思います。そのことを大学時代に気付き、実践してきた経験は、今後、きっと役に立つはずです。
授業での発表や専門書、論文の読み込みで、専門性を深める
1、2年次に取得可能な単位をあらかた修得できたので、3年次は一つ一つの専門科目をじっくり学ぶ期間になりました。
3年次の授業で特徴的だったのが必修科目の「数理専門実験Ⅰ・Ⅱ」です。実験とありますが、何かの実証を行うわけではなく、用意されたいくつかの問題を予め解いたうえで解法をまとめ、それを一人ずつ発表する少人数クラスの授業です。発表の際は教員、講師が同席し、「解法に疑問があるので、もう少し詳しく説明してください」というように指摘を受けることがあります。こうした指摘を受けないように、問題の解き方をよく理解し、誰にでもわかるような説明ができるよう、授業の度に準備を行いました。このような発表の準備を繰り返し行うことにより数学への理解を深めました。2年次までは先生の講義を聴いて知識を吸収する授業が多かったため、思考力とプレゼン力を養う「数理専門実験Ⅰ・Ⅱ」には大きなやりがいを感じました。4年次にスタートする研究室活動の練習という位置づけの授業で、実際に良い練習になったと思います。
また、3年次は2年次よりも自習時間が増えました。授業のコマ数こそ少なくなりましたが、内容が格段に難しくなり、1、2年次と同程度の自習時間だと理解しきれない部分があったため、それを補うために自習時間を増やしたのです。
自習時間が増えたことで、図書館に行く回数が増えました。私は、対面授業が再開された2年次から図書館に通うようになり、キャンパスに行くときは必ずといっていいほど利用していました。専門書を手に取り、手元の課題と似通った記述を見つけて参考にするのです。たくさんの専門書に触れたことにより、数学への理解が一段と深まったように思います。
4年間で培った数学の力と自ら学ぶ姿勢を社会で生かす
4年次の研究室選択では、ファイナンスの理論と実証を研究テーマに掲げる山中卓先生の研究室を選びました。
数理工学の一分野である「金融工学」に関心を持ったのは、「大学で培ってきた数学力を社会で生かしたい」という思いがあったからです。研究室選択の時点では大学院進学も視野に入れていたこともあり、理系人材のニーズが拡大している金融業界にかかわりの深い研究をしている山中研究室は最善の選択だと考えました。
現在は、株価変動と為替レート変動の関係を解析するための分析方法など「金融工学」にかかわる幅広い知識を学んでいます。
研究に取り組んでみて感じるのは、自分が興味を持ったことに対して積極的にアプローチして自ら学びを深めていく姿勢が求められるということです。さまざまな論文を手に取り、気付きを得て自分の研究に生かそうとすることは、どのような研究の活動にも欠かせないことです。改めて、私が続けてきた自習習慣は、研究に求められる姿勢と結びついていたことに気付き、継続してきてよかったと率直に思っています。
現在は金融系のSIer(システムインテグレーター:システム開発を請け負う企業)を中心に就職活動を進めています。データサイエンティスト職がある企業が志望で、SE(システムエンジニア)として情報処理の実務経験を積みながら、ゆくゆくはデータをもとに意志決定を行うデータサイエンティストを目指したいと思っています。
研究活動はまだまだ続きますが、ここまで、高校時代に抱いた「大学で数学を学びたい」という思いを貫き、しっかり努力してきたという思いをはっきり抱いています。卒業後に、「大学で培ってきた数学力と、大切にしてきた学ぶ姿勢」を生かして仕事に取り組んでいくことを楽しみにしています。
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は2023年度のものです。
理工学部 数理サイエンス学科
青山学院大学の理工学部は数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
さまざまな数学の基礎を学びながら、数理科学に関する未知の事柄について研究を行います。「数理サイエンス」という言葉には、厳密な論理に基づく学問としての数学だけではなく、現実社会の諸問題を記述し解決する道具としての数学という意味が込められています。自分で考える習慣と力を身に付けることが目標です。