世界一のメダルと指導者の夢に向かってボクシングも勉強も全力で|AGU LiFE

世界一のメダルと
指導者の夢に向かって
ボクシングも勉強も全力で

掲載日 2023/5/29
No.238
<2022年度 学友会表彰(体育会表彰)
最優秀選手 受賞>
教育人間科学部 教育学科 2年
体育会ボクシング部
篠原 光
東京・私立日本体育大学桜華高等学校出身

OVERTURE

創部95年を迎える体育会ボクシング部で初の女子主将に就任する篠原さんは、小学生の頃から国内トップ選手として活躍し、昨年は「第56回関東大学ボクシングトーナメント戦 女子ライトフライ級」で優勝、「2022全日本ボクシング選手権大会 女子ライトフライ級」で準優勝しました。自分の目標を真っ直ぐに見つめ、自身の能力に磨きをかけ、飽くなき向上心でボクシングと学業の両立に励んでいます。

悔しさをバネに奮起。オリンピックの金メダルを目指す

ボクシングでオリンピックの金メダルを取ることが子どもの頃からの夢であり、目標です。ボクシングを始めたきっかけは5歳の時、元プロボクサーである父がトレーナーをしていたボクシングジムについて行ったことです。見よう見まねでシャドーボクシングをしたり、大人を相手にミット打ちをしたりするのが楽しく、いつの間にかボクシングが好きになっていました。初めてスパーリング(実践形式で行う練習)をしたのは小学校2年生の時です。当時はボクシングをしている女子がほとんどいなかったので、体格や筋力の面で優れる男子選手にどうしても太刀打ちできませんでした。中でもキックボクシングで実績を積んでいる選手と対戦した際には、手も足も出ない惨敗を喫し、あまりの力の差に衝撃を受けましたが、そこで私の負けず嫌いにも火がつきました。それまではボクシングと並行してバスケットボールにも取り組んでいたのですが、ボクシングに専念することを決意。悔しさをバネに、父の指導のもと練習に打ち込むうちに、試合でも結果が出始め、ボクシングにのめり込んでいきました。

ボクシングは相手がいなければ成立しない競技ですし、危険も伴うだけに対戦者に対してリスペクトを持って試合に臨むことがとても大切です。試合中はもちろん「勝ちたい!」という気持ちで戦っているのですが、パワーや気持ちの強さなど、実際に手を合わせることで伝わってくるものがたくさんあって、自然と相手を称える気持ちが湧いてきます。対戦後に仲良くなることもよくあり、そうした競技を通じたコミュニケーションにも大きな魅力を感じています。

一から見直し、築き上げた自分のボクシングスタイル

青山学院大学を進学先に選んだ理由は、高校時代に青学のボクシング部の練習を見学した時、部員が自律的に練習メニューを組むなど、選手の自主性が重んじられている部の雰囲気が自分に合っていると感じたことです。また、アマチュア指導者の資格を持つ父がボクシング部のコーチを務めていることも、理想的な練習環境を追及するという点で決め手になりました。
授業期間中、ボクシング部は、青山キャンパスの大学体育館のボクシング練習場で週5日、1日3時間前後の練習を行っています。また、週2日の休日のうち1日は、走り込みや筋トレなど、自分自身の技術力向上を目的とした基礎トレーニングを自主的に行っています。部員一人一人が自分の役割を持ち、支え合って活動しているため、主将だからと気負うことはあまりありませんが、オンとオフのメリハリをつけ、練習が始まったら練習だけに集中するという意識付けは大事にしています。

大学のボクシング練習場でミット打ちのトレーニング

アマチュアボクシングの競技者の区分は、大学生になると19歳以上を対象としたシニアに上がります。筋力も経験値も勝るシニアの選手を相手に、高校までのジュニア時代の戦い方では通用せず、技術も体づくりも一から見直してきました。ボクシングはパンチで相手を倒すことで勝敗が決まるスポーツと思われがちですが、女子のアマチュアボクシングはグローブも大きく、防具を着用していることもあって、勝敗の大半はジャッジの判定で決まる「印象競技」です。ですから、ジャッジに対して、自分の戦い方がいかにフェアであり、いかに優勢であるかを「見せること」がカギになります。

私は身長167cmと長身ですが、階級は3番目に軽いライトフライ級です。小柄な選手が多い階級で、長身の私が理想としているのは、リーチの長さを生かしたボクシングスタイルです。相手のパンチを受けないよう、腕を伸ばした距離をキープする動き方や、リングの下で見ているジャッジに対して効果的にアピールするためのパンチの角度などを研究すると共に、体幹トレーニングの量を増やし、筋力の強化にも努めました。

コロナ禍で一時は大学での練習ができず、大会も中止になるなど、モチベーションの維持に苦しんだ時期もありましたが、家族が祖母の家に練習場を設けてくれ、コーチである父に支えてもらえる恵まれた環境のおかげで、満足いく練習が継続できました。相手の癖を見抜き、どの角度・どのスピードで攻めるか、どこで試合の山場を作るかといった戦略を考えながら、冷静に試合を運べるようになったと思います。

関東大学ボクシングトーナメント戦で優勝、全日本ボクシング選手権大会で準優勝できた勝因を自己分析すると、自分のスタイルに相手を引き込む試合運びができたことだと思っています。前年は準優勝に終わり、悔しさが残っていた関東大学ボクシングトーナメント戦では、優勝してリベンジを果たせたことに安堵しましたが、全日本ボクシング選手権大会は、優勝すればパリ五輪出場に大きく近づくチャンスだっただけに準優勝の結果はとても悔しく、残念です。来年こそは絶対に優勝する決意で、前だけを見て努力を続けていきます。

2022年度 学友会表彰表彰式にて

ボクシング指導者という目標につながる教育人間科学部の学び

私には、将来、指導者として子どもたちにボクシングを教えたいという目標もあり、小・中学生への教育法を学ぶため、教育人間科学部 教育学科を選びました。試合等で授業への出席が難しい時には、先生に配布資料を学習支援システムで送っていただいて自習をしたり、同じ授業を履修している友人と復習したりして、できるだけ遅れを取らないよう努力しています。

学部の授業でとても興味深かったのが、小学校の体育の授業で行う身体運動が成長過程にどのように役立つのかを身体のメカニズムに基づいて学んだ、小木曽一之先生の「体育概説(理論)」です。子どもに指導を行うイメージをしながら、「こうした動きをさせると効果的なのか」と考え、トレーニングという意識ではなく、遊びの中で基礎体力をつけていくためには何が必要か、といったことを楽しく学習できました。もっと知識を身に付けたいと思い、3年次からは小木曽先生のゼミナール(ゼミ)に所属することになっています。

また、「生活科概説」の授業では、自分が小学生になったつもりで、どのような授業運営をしたら子どもは楽しめるかを考え、授業内容を組み立てる課題に取り組みました。自主練の走り込みの途中、公園に立ち寄って、そこにいる子どもたちが、花の色や草木の葉の形など、大人になると心に留めないような細かいところに着目して、驚きや感動を表す様子を見ると、「ああ、自分もそうだったな」と忘れかけていた子どもの視点を思い出しました。ボクシングを指導する上でも、子どもならではの感性や考え方について知識を持ち、そこに寄り添うことで、心のキャッチボールをしながらスポーツの力を伸ばすことができるのではないかと考えています。

韓国語能力試験TOPIK II(中・上級)の勉強にも励む

競技を離れたところでは、韓国アイドル好きがきっかけで、第二外国語で選択した韓国語の勉強にも力を入れています。高校生の時から、韓国語のラジオや音楽を聞き、音の響きに馴染んでいたせいか、大学で韓国語の勉強を始めるとスムーズに上達し、最近、韓国にスパーリングに出向いた際には、同行した父の通訳ができる自分に驚きました。毎日、教科書やWEB問題集の問題を40~50問解くことをノルマにし、日課にしているブログを韓国語と日本語の二か国語学で書くなどアウトプットの機会をできるだけつくるようにしています。ブログに韓国人のファンからコメントが届いた時にはとても嬉しかったです。友人の韓国人選手を介して韓国人の知り合いも増え、新たな交流が日々の楽しみになっています。4月には韓国語能力試験TOPIK II(中・上級)を受験予定です。

自主練習日には、趣味のお菓子作りも

残りの大学生活では、ボクシングで相手の気持ちをゆさぶるための戦略や、その逆に、指導する上で子どものやる気を喚起する声掛けなどのヒントを得るべく、心理学の勉強もしていきたいと考えています。そして、来年のパリ五輪、さらにその次のロサンゼルス五輪までを見据えて、ひとつひとつの試合を全力で戦い、大きな舞台で結果が残せるように頑張ります。

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は2022年度のものです。

教育人間科学部 教育学科

青山学院大学の教育人間科学部は、教育学科・心理学科を連携させながら、「人間」をさまざまな角度から学ぶ多彩な講義や、理論を実践する演習や実習を展開しています。理論的かつ実践的なアプローチの反復によって、人間についてより深く追究します。現代社会や人間の諸問題を読み解く高度な専門性と、自ら行動するための課題解決能力・自己教育力を育成します。
教育とは、年代や環境を問わず生涯にわたって行われる普遍的なものです。教育学科では乳幼児期から老年期に至るライフサイクルの中で、人間がどのように発達・学習・社会化・成熟していくのかを学修し、3年次に選択する専門分野の学びを通して、教育の本質と理想の姿、教育の担い手である人間という存在について理解を深めます。幼稚園から高等学校まで幅広い教員免許状の取得が可能です。

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