「リーガルマインド」を胸に臨んだ留学で見えた法学への思い|AGU LiFE

「リーガルマインド」を胸に臨んだ留学で見えた法学への思い

掲載日 2023/4/4
No.226
法学部法学科
ヒューマン・ライツコース 3年
石川 敬都
静岡・私立不二聖心女子学院高等学校出身

OVERTURE

社会問題に関心を持ち、公正で客観的な判断ができる「リーガルマインド」を養うため法学部に入学した石川敬都さん。「ASEAN協定校特別派遣留学」制度を利用したタイ王国(以下タイ)への留学経験を経て、改めて法学に関わることへの思いが強まったと言います。

「リーガルマインド」に感銘を受け、法学部へ

法学や人権に対する私の興味は、幼少期から国内外の社会問題に触れることで深まっていきました。例えば、ストリートチルドレンや人権の問題について考えるようになったきっかけは、フィリピンを訪れた際に同世代の子どもたちが物乞いをして生きていることに衝撃を受けたことでした。さまざまな社会問題に触れ、困っている人々へ手を差し伸べるためにはどうしたら良いかということを考える中で、立場の異なる当事者それぞれの身になって誠実に考え、公正で客観的、そして論理的・合理的思考力、問題解決能力を兼ね備えた判断ができる「リーガルマインド」を養いたいという思いが強まっていきました。

法学部法学科に進学し、ヒューマン・ライツコース*を選択した理由は、「リーガルマインド」という考えにとても感銘を受けたためです。当時の法学部長であった大石泰彦先生の「法学を学ぶ意義は法曹界へ行くためだけではない。法や人権の知識を持つ学生を社会へ送り出すことでより良い社会を目指すことも法学部の使命だ。」というお話がとても印象に残っています。

入学後は、授業を通じて法学と社会問題との最新の動向を知ることができています。例えば、申 惠丰先生の「国際法」の授業では、その時に実際に起きていた時事問題と国際法との関わりを学ぶことができ、ニュースを理解する力も向上しました。日々の授業を通して、人権の理念や規定、国際法・国内法の密接な関わり、メディアの社会的役割や問題点などについて、次第に知識が増えていく実感があり、とても充実しています。メリハリをつけ日々学習に励み、法学部の成績最優秀賞をいただいたことは大変光栄でした。後に留学の研究テーマに選んだ「ヤングケアラー」も、自身の経験を基に授業を通じて興味を持った社会問題でした。

*法学部法学科に加えて、2022年度ヒューマンライツ学科を新設。法学科ヒューマン・ライツコースはその前身である。


研究テーマを決めて挑んだ「ASEAN協定校特別派遣留学」

留学は大学入学にあたって絶対に実現させたいことの一つでしたが、コロナ禍でなかなか叶わず、3年次後期にようやくチャンスが訪れました。希望していた1年間の留学は日程的に難しい状況でしたが、半年間でも実りのある留学にしたいと考え、事前に作成した研究計画書に従って、留学期間中に研究にも取り組むことが求められる「ASEAN協定校特別派遣留学」に挑戦することにしました。

タイ、バンコクにあるシーナカリンウィロート大学を志望したのは、私が設定した「医療観光/認知症/ヤングケアラー」という研究テーマと関わっています。タイには世界的に見ても高度な医療技術が整っており、医療用ビザを発行し、医療観光者を世界中から受け入れることで経済効果を生んでいます。また、日本同様に高齢化が急速に進んでいるタイで、認知症やヤングケアラーの問題がどう捉えられているのかを知ることで、日本での法整備に生かせると考えたのです。過去にタイへの旅行経験があり好印象を抱いていたこと、親日家が多く、治安が比較的良いなど、安全面での不安が少なかったことも、タイを留学先に選ぶ決め手となりました。

シーナカリンウィロート大学のキャンパスからの眺め。
日本でいうと青山エリアのような場所に位置するが自然も豊か

留学先では、通常の授業に加えて、研究テーマに関する電話インタビュー、オンラインアンケート、病院訪問も行いました。留学先の学生に加えて、他大学の現地学生や教員、タイ国政府観光庁、旅行会社の方々など、多くの方の協力を得ることで、認知症やヤングケアラーについて、法制度を含めたタイの現状を学ぶことができました。その中で印象に残ったことの一つが、法整備の前提となる文化の違いです。タイでも認知症やヤングケアラーという問題は認知されていますが、宗教観の違いから「家族の面倒は家族がみるのが当然」「家族を大事にしないと罰が当たる」と考える人が多く、問題そのものの捉え方は日本とは異なっていました。法整備においては制度面だけではなく、その前提となる問題の捉え方や文化についても考える必要性があることを実感しました。

時間を最大限に活用し、学問にとどまらない学びを得る

タイは非英語圏ですが、所属学部の授業は全科目が英語で開講されていました。タイ人の学生も第二外国語である英語で授業を受けているのだから、私だけ「できない」「わからない」という言い訳は通じません。その気持ちがモチベーションになり、自分を奮い立たせて勉強に励むことができました。
授業によっては、タイ人の履修者の中に日本人は私1人という場合もありました。疎外感をおぼえることもありましたが、その分自分から積極的にコミュニケーションを取るようになりました。また、友人とタイ語で会話したいという思いが、タイ語を学ぶ意欲にもつながりました。タイ語の授業では、アメリカやミャンマーなどからの留学生と、お互いの文化を紹介し合ったことも印象的でした。

同じクラスの現地学生とアメリカ、オランダ、ミャンマーからの留学生(一番手前)

授業の課題と復習だけでなく、自身の研究にも取り組むなど忙しい毎日でしたが、現地でしかできない交流も大切にしたいと考え、時間を最大限有効に活用しました。余暇を利用して参加したお祭りやハロウィンイベント、フィールドトリップなどの行事では、たくさんの現地の人と関わることができました。また、タイ人の友人の実家に招待され、バンコク以外のタイの文化に触れることもできました。観光旅行では見えてこない“素顔のタイ”を知ることができたことは、私にとっての財産です。

学部主催のチャオプラヤー川ディナークルーズに参加
(左側、手前から2番目)

楽しい思い出だけではなく、ビザの延長手続が難航したり、盗難被害にあったりするトラブルもありましたが、それらを主体的に解決できたことも含めて、本当に良い経験でした。

留学を経て見えた将来の目標

ASEAN協定校特別派遣留学制度は、将来のグローバル・リーダー候補となる意欲的な学⽣を特別⽀援体制のもと協定校派遣留学⽣として送り出す制度です。私はその自覚と責任を持って留学に臨みました。自分の振る舞いが、青学、日本、さらにはアジアを代表することにもつながるからです。その結果として充実した留学生活を過ごすことができ、この機会をいただいたことに心から感謝しています。

留学中には自分の将来について考える機会もありました。元々はタイで働くことにも興味があったのですが、現地の学生たちと自己分析を行う中で、大学で専門的に学んでいる法学の知識やタイで伸ばすことができた語学力を生かした仕事に就きたいと考えるようになりました。
そのため、将来は「リーガルマインド」を生かして、法律事務所で専門アシスタントとして働く予定です。大規模案件を数多く取り扱う国際的で専門性の高い環境で、組織に貢献したいと考えています。

留学を通じてタイのことをますます好きになりました。敬虔でありながら、ゆったりとした雰囲気が大きな魅力です。キャッシュレス決済は日本よりも盛んで、医療も先進的であるなど、豊かで近代的な国でもあります。留学時の研究テーマだった医療観光は、日本でもインバウンド推進施策の一つとして掲げられており、タイを参考にする取り組みが生まれるかも知れません。タイのことを広め、タイと日本をつなぐ架け橋になりたいと考えているので、研究はライフワークとして続けていきたいと考えています。

石川さんの交換留学スケジュール

  1. <2年次> 2021年 9月

    IELTS受験

  2. <2年次> 2021年 10月

    学内選考一次合格

  3. <2年次> 2021年 11月

    学内選考2次通過、第一志望シーナカリンウィロート大学のASEAN特別留学候補者に内定

  4. <2年次> 2022年 2月

    出願オリエンテーション

  5. <3年次> 2022年 4月

    シーナカリンウィロート大学へ出願

  6. <3年次> 2022年 5月

    シーナカリンウィロート大学から合格通知、入学許可がおりる

  7. <3年次> 2022年 6月~7月

    各種オリエンテーション(保険、異文化、航空券手配、海外医療セミナー、海外安全管理)を経て各種手続き(航空券や住居予約、ビザ申請、保険加入)

  8. <3年次> 2022年 7月

    ASEAN協定校特別派遣留学のための事前学習レポート作成、研究内容概略発表

  9. <3年次> 2022年 7月末

    渡航・留学開始

  10. <3年次> 2023年 1月

    帰国、帰国オリエンテーション

  11. <3年次> 2023年 2月

    ASEAN協定校特別派遣留学のための事後学習レポート作成、研究成果発表会

  12. <3年次> 2023年 2月

    単位認定に向けた学部長面接

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2022年度)のものです。

法学部 ヒューマンライツ学科

AOYAMA LAWの通称をもつ青山学院大学の法学部には、「法学科」に加え、2022年度新設の「ヒューマンライツ学科」があります。
ヒューマンライツ学科は、人権問題の解決のためという目的意識をもって、法および隣接分野を学びます。
人間が人間らしく生きるために欠かせない「人権」について、法学をはじめとした多様な学問分野から学ぶ日本初の学科です。人権は国の最高法規である憲法で保障されているだけではなく、国際社会の普遍的な価値でもあります。さまざまな人権問題の解決・改善のために法をどのように生かしていけるかを意識的に学び、政治学や経済学、公共政策などの観点からも学際的にアプローチします。

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