ビジネスに変革をもたらすDX。ユーザーのニーズをくみ取り成功への道筋を描く|AGU LiFE

ビジネスに変革をもたらすDX。ユーザーのニーズをくみ取り成功への道筋を描く

掲載日 2023/2/22
No.215
株式会社NTTデータ経営研究所 コンサルタント
(株式会社NTTデータより出向)
社会情報学部 社会情報学科 卒業
社会情報学研究科 社会情報学専攻
博士前期課程修了
吉田 智彦

OVERTURE

2007年、スマートフォンの登場を皮切りに人々の生活は一変しました。そのような時代に社会情報学部第1期生として青山学院大学で学んだ吉田さん。大学院修了後、「世の中に変革をもたらすシステムをつくりたい」と活躍の場をSIer※に求めました。コロナ禍において、デジタル化の波はますます加速しています。今、吉田さんが思い描いているのは、互いを認め合い、誰もが充実感をもって過ごせる居心地の良い社会です。

※ システム開発に関連する業務全般を担う企業

各ユーザーの目線を重視したコンサルティング

iPhoneが発売され、SNSが普及し始めた学生時代。社会のニーズが大きく変化するさまを目の当たりにし、自分も社会にインパクトを与える新たな仕組みづくりに関わりたいと考えるようになりました。学部・大学院で学んだ情報システム開発やデザイン思考を生かしつつ目標を達成できる場はSIerだという思いに至り、中でも公共分野・金融分野・法人民間分野と幅広い対象にアプローチできるNTTデータに入社しました。

公共分野へのサービス提供に携わった後、NTTデータ経営研究所に出向し、現在はコンサルタントとして組織のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた企画・計画の策定や新規事業の創出を中心に支援しています。クライアントと共に組織の課題に立ち向かい、より良い道筋を見出す伴走者のような役割です。また、当研究所にはシンクタンク機能もあり、サービス向上を目的としたリサーチ業務も重要な仕事のひとつです。アンケートや文献調査、有識者へのヒアリングなどを通して社会のニーズを的確にとらえようと努めています。
コンサルティングで最も重視すべきなのが、組織内の各ユーザーの目線です。学生時代、システム開発に多額の資金を投入したにもかかわらず失敗した事例について学びましたが、これはそもそもユーザーのニーズをくみ取れていないことが原因でした。企業でDXを進めようとすると、経営者と現場担当者、管理職と部下、あるいは部署間の認識の相違が浮き彫りになります。変革を求める領域と現状維持を望む事柄、それぞれの立場から抱いている思いを丁寧にくみ取らなければ、組織全体が納得して前進できる道筋は見えてきません。このプロセスにおいて大学院で培ったデザイン思考、つまりユーザーの潜在的ニーズを把握し、課題解決を目指す手法が大いに役立っています。地道な努力を重ね、クライアント企業で働く皆さんと共に理想通りのロードマップをまとめ上げられたときには、大きなやりがいを感じます。

学部・大学院での学び、あらゆる経験が今の自分を形作っている

社会・情報・人間をベースに、文系・理系の枠を超えて幅広い分野を学べるところに惹かれ、第1期生として2008年度、社会情報学部に入学しました。この学部にはチャレンジ精神旺盛な学生が多く、先生方もそれを後押ししてくださる自由な風土がありました。挑戦には失敗がつきもので、そこから工夫し、改善してこそより良いものが生まれます。積極的に挑戦できる場を与えてくださったことに感謝しています。
学部時代は経営マネジメントと情報システム開発を軸に学び、現在の仕事に必要とされる知識の土台を築くことができました。またプロジェクト型学修が多く、チームを組み、ひとつのテーマについて計画を立てて皆で協力しながら期日までに形にするという過程で、プロジェクトマネジメント能力が自然に身に付いたように思います。そして本学独自の全学共通教育システムの青山スタンダード科目の授業では、例えば同じ情報システムについて学ぶとしても、所属学部と他学部とでは異なる視点からアプローチしており、その方法はひとつではないのだと実感できました。物事を複眼的にとらえる感覚はここで養われました。
大学院時代は情報システム学が専門分野の宮川裕之教授のゼミナール(ゼミ)に所属し、大学院では、「情報システム開発へのデザイン思考の活用」をテーマに研究に取り組みました。自ら課題を見出し、それを解決していくプロセスをひたすら考えて言語化する作業を繰り返し、考え抜く力が鍛えられました。

大学院では、日々の研究もさることながら、特に学会発表に向けた準備を通して得られた学びがとても印象に残っています。課題の選定に関しては、先行研究や専門のレポート等を中心に多様な観点からシステム開発における問題点を整理することで、理論を習得することができたと思います。また、課題の解決に有効なプロセスの検討や、その実証を通じて、研究活動というプロジェクトを肌で感じることができました。指導教員の宮川先生から、本番の発表に向けた資料作成や発表練習で、プレゼンテーションやドキュメンテーションに関してご指導いただいたり、情報システム開発における課題や将来展望についてのさまざまな議論を経験させていただいたことは、今でも私の財産となっております。

大学院時代の学内表彰時の様子(右は指導教員の宮川教授)

大学院時代は研究活動に加えて、IT企業との協働により「新たな情報人材の育成」をコンセプトとした授業を作るプロジェクトにTA(ティーチングアシスタント)として参加する機会がありました。大学が育てたい人材と企業が求めている人材という両方の視点から社会的ニーズに合った授業を企画する意義を実感し、大学と社会とのつながりを認識できた貴重な経験でした。
指導教員以外の先生方も研究室を訪ねると気軽に応じてくださり、研究や学修についてアドバイスをいただいたり、さまざまなテーマについて意見交換したり、先生方と学生の距離がとても近かった印象があります。
その他にも、サークルで独自の世界をもった仲間たちと出会い、人生は自分が納得して自由に選べば良いのだと思えたこと、アルバイトで立場の違う人と共に働き、自分とは異なる考え方にふれたこと、留学生やさまざまな学部の学生が学んでいた日常のキャンパス風景など、学生時代のあらゆる出来事が現在の私の骨格を形作っているのです。

互いの違いを認め合い、誰もが心地よく過ごせる社会を目指して

大学受験においては偏差値や就職実績などが主な選択基準になっていますが、それだけで選択することはもったいない気がします。人生の先輩方の話を聞くと、物事を周囲との比較による上下・優劣でとらえる思考は、年齢を重ねるにつれ優先度が低くなっていくと想像できます。それよりも、納得したうえで人生の中で使える時間がどれだけあるかが大切なのだと思います。これから大学を受験される皆さんには、自分の将来の方向性が見出せるような環境で前向きに学び、他人と比べるのではなく自分が納得できる生き方を見つけてほしいと願っています。

NTTデータはもともとシステム開発を手がける会社でしたが、昨今は世の中の大きな変化をとらえ、デジタルで新たな世界を切り開こうとしています。そこでどのような社会的価値が求められるか考えてみると、目指すべき世界の本質が自ずと見えてくるのではないでしょうか。重要なのは、それぞれがもっている価値観を尊重すること。自分自身の価値観さえ、長い人生の中で変わっていく可能性があります。
私が理想とするのは、互いの違いを認め合いながら緩やかにつながり、誰もが充実感と納得感をもって心地よく過ごせる社会です。将来の目標としては、時代の変化に応じて新たな生活スタイルを支える価値あるサービスを創出し、世界中に展開していきたいと考えています。

卒業した学部

社会情報学部

現実の社会には文系・理系の境界はなく、さまざまな社会的課題を解決するため社会情報学部においても“文理融合”の学びを追究しています。文系の「社会科学」「人間科学」と、理系の「情報科学」の各専門領域をつなぎ、各分野の“知”を“融合知”に高めるカリキュラムを整備。新たな価値を創造し、社会へ飛び立てる力を育みます。
高度情報化社会と呼ばれる現代では、文系・理系の双方に精通していることがアドバンテージとなります。社会情報学科では、文理の垣根をなくした「文理融合」をコンセプトに、社会・情報・人間の複数分野にまたがる学際的な学びを展開します。学問領域をつなぐことで生まれる新たな価値観で、一人一人の可能性を広げ、実社会における複雑な問題の解決に貢献できる人材を育てます。

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