英米文学科で培った
英語力を生かした
ドイツ留学で
大きく広がった視野と展望
OVERTURE
「英語の青山」の伝統を体現する英米文学科で英語力を磨きながら、第二外国語で出会ったドイツ語の語学力と異文化に対する感受性をさらに伸ばそうと、ケルン大学(ドイツ)で協定校留学を経験した宮田良佳さん。英語留学が可能なドイツに目を向け、環境先進大国での問題意識の芽生え、多文化共生社会のドイツで大きく広がった視野について、お話をうかがいました。
英語力を鍛えながら、ドイツとの縁を感じドイツ留学を決意
幼少期にアメリカの衛星放送で見るアニメやドラマに夢中になって、「英語」という言語を通じたコミュニケーションに強い関心を持つようになりました。中学時代から、将来は外国に立脚した人生を歩みたい、そのためには国際感覚や語学力を深めたいと考え、高校は国際科に進学しました。高校では英語に加え韓国語を勉強し、韓国の高校生と交流を深める活動に打ち込みましたが、大学では新しい言語に挑戦しようと、第二外国語にはドイツ語を選択しました。高校時代にドイツからの交換留学生とともに学んだ経験があり、他の外国語よりドイツという国に親しみがあったからです。また、青学入学直後に参加した留学生歓迎イベント(青山学院大学公認留学応援クラブAOMO主催)で、ドイツのデュッセルドルフ大学からの交換留学生(地球社会共生学部)と友達になり、ドイツとの距離がさらに縮まっていきました。
青学の英米文学科の英語の授業は、習熟度別の少人数制で行われるのが特徴です。新入生対象の英語プレイスメントテストの結果、
Integrated English Program(英語4技能集中教育、以下IE)の最上位クラス「Integrated English Ⅲ」に入ることができたのは嬉しかったです。IEの全12単位の科目は、特に主体的に取り組んだ授業として印象深いのですが、最上位クラスは帰国子女の割合が高く、10年以上の海外渡航歴を持つクラスメ-トもいて、英語力の差を痛感しました。ちょっとした挫折感も味わいましたが、極めてレベルの高い環境に身を置くことは大きな刺激となり、みんなに追いつこうと予習復習などを徹底したおかげで、それまで以上に英語力が鍛えられたと感じています。
大学2年次後期からの協定校留学(交換留学)を実現させるために、大学入学直後から留学の目的を明確化させ、留学する国や大学について考え始めました。私が留学で体得したいことは、国際コミュニケーションの共通語として英語力を生かしながら、「陸続きで多くの国々が接してさまざまな文化が交わるヨーロッパで、言語・ものの見方を吸収すること」と「高いドイツ語運用能力を身に付けること」と結論付け、第一志望先をドイツのケルン大学(University
of Cologne)に決めるまで時間はかかりませんでした。コロナ禍により、留学は1年間の延期を余儀なくされましたが、初志貫徹で3年次(2021年度)後期から1年間、ケルン大学の協定校留学生として、ドイツ語学習をはじめ充実した大学生活を送ることができました。
双方向の形で異文化理解・コミュニケーションを実践したドイツ留学
ケルンはドイツ西部の街で、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク国境付近に位置し、ドイツの中でも留学生や移民の多い国際色豊かな街です。外国人だからと、特別視されないところが素晴らしく、快適に過ごせました。ドイツは勤勉な国民性などから「ヨーロッパの日本」と言われることもありますが、異なる点も多く、特に役所や保険などの窓口対応では困惑することがたびたびありました。なぜか係員が英語を使わない外国人向けのビザ申請、何かと理由をつけて申し込みを取り下げようとする保険の手続きなどに理不尽さを感じながらも、粘り強く交渉し、こちらの主張を通して目的を果たす力も身に付けました。留学以前ならきっとすぐに諦めていたので、これは大きな成長と言えます。青学で出会ったデュッセルドルフ大学の友人が、現地でサポートしてくれたことも心強かったです。ドイツは、明確に言葉で伝える「ロー・コンテクストの文化」で、行間を読む「ハイ・コンテクストの文化」の日本とでは、コミュニケーションの方法が大きく異なり、曖昧な表現をしていては気持ちをくみ取ってもらえないことも学びました。
ケルン大学では、世界各国の留学生が集まる学生寮に暮らし、また大学の留学生支援バディ制度の世話役となってくれたドイツ人学生を通じて、数多くの多様な背景を持った学生と交流を深めることができました。ドイツでは高校卒業後、職業学校、ボランティアやインターンシップをとおして社会経験を積み、自分の将来の方向を見極めてから大学に入学する人が多く、学生の年齢もさまざまです。とりわけ教育水準が高いドイツの大学生たちは学びに対して積極的な姿勢を持ち、入学後に自分の学びたいことを追究するために、主専攻を変更する学生も多く見受けられました。実際、友人たちもそうしたキャリアを積んだ人ばかりでした。日本とは全く異なるキャリア観、自分の意見を述べるのは当たり前という友人たちの姿に刺激を受けた私も、ドイツ語でも英語でも、とにかく自ら発言することを心がけました。留学生向けのドイツ語コースの履修を中心に、経済学部や文学部など複数の学部で関心のあることを意欲的に学び、特に留学の主目的であったドイツ語は、1年間で計36単位分を履修しました。また、ケルンの北側にあるデュッセルドルフには、世界屈指の日本人コミュニティーがあります。日本から遠く離れたドイツで、日本はどのように受け入れられているのか興味を持っていたこともあって、留学中は、大学で日本語を担当するドイツ人の先生にお願いして、授業のアシスタントをさせて頂きました。自分が一方的に学びを享受するだけでなく、双方向の形で異文化理解・コミュニケーションを果たせたのではないかと思います。
コロナの影響により、ケルン大学は2021年度後期の授業は全てオンラインでしたが、2022年度前期からは、徐々に対面授業が戻ってきました。経済学部が真っ先に対面授業を再開することを知り、それまで経済を深く学んだことはなかったものの、英語で開講される授業であれば内容を理解できるかもしれないと考え、エネルギーマーケットについて扱う「エネルギー経済学」を受講し、再生可能エネルギーなど環境問題に関するトピックを興味深く聴講していました。「エネルギー経済学」とも関わりが深いことですが、ドイツではSDGs、とりわけ環境に対する問題意識が、国民の日常生活に浸透しています。消費者に身近な日用品の分野でも、地球環境への影響を抑えた持続可能な製品の導入が進んでおり、国を挙げて様々な施策に取り組んでいます。例えば、メーカーは過剰包装を徹底して排していますし、市民レベルでもプラスチック製品の使用を極力避けることが習慣化されています。また、生産過程で大量のCO2を排出する工業的畜産に対して、環境保護や持続可能性の観点から肉食を控える人も多く、レストランにはベジタリアンやヴィーガン向けのメニューが必ず用意されているほどです。店舗でパッケージや成分の記載をじっくり読み、購入するに値する物を厳選する友人の姿を見て、私自身も一消費者として、倫理的消費(エシカル消費)を実践する習慣が身に付きました。
環境を言い訳にせず、常に目標を掲げて挑戦する
留学前後の学生生活を振り返ると、留学で得た収穫の下地は、青学で培われました。例えば、青山スタンダード科目「English Studies C[英語講義]」は、さまざまな広告メディアを調査・分析し、学生が広告を作成するという英語の双方向型授業でしたが、説得力のある表現や批判的思考を身に付けられるよう、先生は学生に多くの意見を求めました。英語を使い、学生が自ら発言する授業を履修した経験によって、留学先で物おじせずに授業に参加できたと感じています。また、コロナの入国制限によって外国人留学生が激減した時期に、国際センターが私の英語力を評価してくださり、
チャットルームの活動で、受入交換留学生の代わりに英語チャットリーダーの役割を与えられ、青山学院高等部の生徒や青学の学生たちと交流したことも、思い出深く残っています。また、コロナ禍で留学が延期になった1年間、日本にいながらドイツとつながる方法を模索し、(独)国際交流基金「ケルン日本文化会館」が開催するプログラムで、ドイツの人たちに日本語で会話をするボランティアをしたことも有意義でした。
逆境にめげず初心を貫いた結果、予想以上の収穫を得た今回の留学をとおして、いずれはドイツの大学院に進学したいという目標ができました。大学入学当初、卒業後は就職しようと考えていましたが、留学を経験してさらに学びたいという意欲が膨らんだためです。失敗したり、自分の肌に合わなかったりといった経験もその後の糧になるはずなので、留学しようか悩んでいる方は、恐れることなくぜひとも行動に移してほしいと思います。
宮田さんの交換留学スケジュール
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<1年次> 2019年 冬
ケルン大学協定校留学学内選考合格
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<2年次> 2020年 春
新型コロナの影響で留学が中止、留学の学内選考も仕切り直しへ
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<2年次> 2020年 秋
再びの協定校留学の学内選考(1次書類 2次面接)
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<2年次> 2020年末
合格発表・第一志望ケルン大学に留学決定
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<3年次> 2021年前半
諸手続き
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<3年次> 2021年 9月
渡航・留学開始
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<4年次> 2022年 8月
帰国
文学部 英米文学科
青山学院大学の文学部は、歴史・思想・言葉を基盤として、国際性豊かな5学科の専門性に立脚した学びを追究します。人間が生み出してきた多種多様な知の営みにふれ、理解を深めることで、幅広い見識と知恵を育みます。「人文知」体験によって教養、知性、感受性、表現力を磨き、自らの未来を拓く「軸」を形成します。
高い水準と幅広い教育内容を誇る「英語の青山」の伝統を体現する英米文学科では、専門コースは「イギリス文学・文化」「アメリカ文学・文化」「グローバル文学・文化」「英語学」「コミュニケーション」「英語教育学」の6分野があります。3年次のコース選択に向けて、1・2年次では専門基礎科目を偏りなく学び、英語力を磨きます。卒業生は語学力と豊富な知識を生かし、多方面で高い評価を受けています。
国際センター
国際センターは、大学の国際化に関わる教育支援と国際人育成をサポートしていきます。主な業務は、海外協定・認定校を対象とする「学生派遣」と「留学生の受入れ」、短期語学研修などのプログラムやイベント等の企画・運営、および青山学院中・高等部などの設置学校と大学間のグローバル化に関わる一貫教育体制のサポートなどを担います。国々の多様な文化や慣習および学生の異なる価値観を尊重しながら、海外大学と本学との連携をさらに強化・拡充していきます。