高齢者と地域を結ぶ〝自分史カフェ〟 - リビング京都

高齢者と地域を結ぶ〝自分史カフェ〟

2021年2月12日 

リビング編集部

高齢者が自分の歴史を語る〝自分史カフェ〟。地域とのつながりを作るため、というそのユニークな取り組みとは。

写真提供/谷本克己
※写真はいずれも昨年撮影したものです

和気あいあいの「GG’s者語」のメンバー及び関係者。後列右端が椋平さん、その左が藤本さん

近年問題となっている高齢者の孤立。地域のコミュニティーも減少しており、退職すると社会との接点が全くなくなってしまう人も。

そんな高齢者と地域・社会との橋渡しをしようと中京区・明倫地区で活動しているのが、市民団体「GG’s者語(じーじーずものがたり)」です。

「GG’sとは、近隣のおじいさん(グランパ)・おばあさん(グランマ)のこと。彼らに自分史を語ってもらう〝自分史カフェ〟を開催しています」

そう話すのは、同会代表の椋平芳智(むくひらよしとも)さんと副代表の藤本慎介さん。おととし、藤本さんが通う大学院の公開講座で出会い、同じく高齢者の問題に関心を持っていた12人のメンバーと構想を練っていきました。

〝自分史カフェ”では、地域団体・高齢者支援団体を中心に聞き手を募集。当日は話を聞くだけではなく、その活動内容について話してもらうそう。

「ただ単に、高齢者に『こんな団体があるよ』と紹介するだけではなく、両者がより深く知り合う機会を作ることで活動に加わるきっかけを作りたいと考えたんです」(椋平さん)

語り手として参加した赤井さん(左)。半生を振り返り、「仕事で培ったノウハウを生かして、地域社会に貢献していきたい」と話しました

昨年は2回開催し、合計4人の高齢者が語り手を務めました。そのひとり、赤井又三郎さん(77)は、「自分の半生を振り返るのにちょうどいい機会」と思い参加を決めたといいます。

広告代理店でフォトグラファーとして長年活躍した赤井さん。当日は、仕事での貴重な経験のほかスキルを生かして地域の広報誌を制作したり、地元の「すこやかサロン」に参加したりといったリタイア後の生活についても話しました。

聞き手は、地区の民生委員や認知症カフェの主催者、高齢者の話を脚本に生かしたいという劇団員など。その中の一つ、絵本の読み聞かせボランティアからは「ぜひ撮影に来てほしい」とのアプローチも。

赤井さんは、「さまざまな人と交流できるのはいいこと。ずっと続けてもらいたいですね」と話してくれました。

続けることでつながりを広げたい

カフェでは、始めに聞き手として参加した地域団体から自己紹介。活動内容を語り手の高齢者に伝えます
会場は明倫地区の飲食店。密を避けるため参加者は2階と1階に分かれ、モニターでつないで進行

〝自分史カフェ”は、同会スタッフが高齢者にインタビューする形で進行。「当初はうまく話を引き出せるか心配でした」と藤本さん。事前に語り手となる高齢者と会って聞き取りを行うなどする中で、関係性が築かれていったそう。

「今は、語り手のプロフィールだけではなく、人生の中のドラマやその時の感情を引き出すことを大切にしています。人柄や人生観が伝わった方が、地域団体のみなさんもアプローチしやすいと思うんです」

開催ごとに語り手を募集していますが、現在はまだ応募は少ないそう。

「こうした場に出るのが苦手な高齢者も少なくありません。活動を継続することで認知を広げ、孤立化している高齢者に届くようになれば。また、自分史を劇団の台本にしてもらったり、絵本にして読み聞かせてもらったり、地域団体とのつながりをより深めていければと考えています」(椋平さん)

自分史カフェの開催情報や問い合わせ

●フェイスブック

[GG’s者語 〜知恵の輪を広げよう〜」
https://www.facebook.com/grandpama.story/

●電話

090(9879)4233(椋平さん)

●メール

grandpama.story@gmail.com

(2021年2月13日号より)