【児童福祉法】
34条1項6号
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
6号
児童に淫行をさせる行為
60条1項
第34条第1項第6号の規定に違反した者は、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
【京都府青少年保護育成条例】
第21条
1項
何人も、青少年に対し、金品その他財産上の利益若しくは職務を供与し、若しくはそれらの供与を約束することにより、又は精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、淫いん行又はわいせつ行為をしてはならない。
2項
何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつ行為を教え、又は見せてはならない。
第31条
第21条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1.児童福祉法
(1)児童福祉法とは?
児童福祉法は、児童が心身ともに健やかに生まれ、かつ、育成されることを理念とし,児童保護のための禁止行為や児童福祉司・児童相談所・児童福祉施設などの諸制度について定めている法律です。
性風俗に関する場面で罰則が適用されるのは、児童に淫行をさせた場合や、満15歳に満たない児童をして主席での接待を業務としてさせた場合などが挙げられます。
「児童」に「淫行」させた場合、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金となります。
(2)「児童」「淫行」とは?
「児童」とは、満18歳に満たない者をいいます。
「淫行」とは、簡単にいうと、性交(SEX)や性交類似行為(手淫・口淫行為など)をいうものと理解されています。
判例では、福岡県青少年保護育成条例の「淫行」について、「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうもの」と解しています。
児童福祉法の「淫行」も同様の解釈が妥当すると考えられています。
児童福祉法Q&A
児童福祉法では「児童に淫行させる」とあるので、語彙からすると自分を相手方とする場合には児童福祉法で処罰されないのではないですか?
自分を相手方とする場合にも児童福祉法で処罰されることがあります。
平成10年11月2日の最高裁判例では、中学校の教師である被告人が、その立場を利用して、児童である女子生徒に対し、性具の電動バイブレーターを示し、その使用方を説明した上自慰行為をするよう勧め、あるいは、これに使用するであろうことを承知しながらバイブレーターを手渡し、よって、児童をして、被告人も入っている同じこたつの中に下半身を入れた状態で、あるいは、被告人も入っている同じベッド上の布団の中で、バイブレーターを使用して自慰行為をするに至らせたという各行為について、いずれも児童福祉法34条1項6号にいう「児童に淫行させる行為」に当たるとした原判断は正当である、と判事しています。
⇒この判例からすると、「淫行をさせた」とは、児童をして第三者に淫行をさせる場合のみならず、事実ある程度の影響力を及ぼして自分と性行為を行った場合には児童福祉法における淫行させる行為と判断されるおそれがあります。
一方で、児童が自発的に近い状況で淫行の相手方になるような場合は、児童福祉法には反せず、青少年保護育成条例又は児童買春・児童ポルノ禁止法違反として処罰される可能性があります。
児童買春については、~児童買春・児童ポルノ禁止法違反へ~
2.青少年保護育成条例
(1)青少年保護育成条例とは?
青少年の健全な育成を図るために、青少年を保護する目的で、青少年の逸脱行動を禁止し,また青少年にとっての有害な環境を浄化するために制定されている地方公共団体の条例の総称をいいます。
(2)「淫行」とは?
「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうもの」と解されています。
(3)「青少年」とは?
京都府においては、18歳未満の者(婚姻により成年に達したとみなされる者を除く。)をいいます。
青少年保護育成条例Q&A
①18歳未満の学生同士が性行為をした場合にも、青少年保護育成条例で処罰されますか?)
京都府では、適用除外規定がおかれているため、処罰されません。
京都府青少年保護育成条例第33条
この条例の罰則は、青少年に対しては適用しない。この条例に違反する行為をしたとき青少年であつた者についても、同様とする。
②18歳以上と思っていた場合にも処罰されますか?
京都府青少年保護育成条例には、年齢不知情規定があり、行為者が18歳未満であることを知らなくても条例違反となり、処罰されます。
但し、全くの無過失である場合は処罰されません。
無過失であるかどうかは・・・
・青少年と知り合った経緯
(EX.20歳以上の女性からのサービスをうたっている風俗店で知り合った)
・行為者の身分・立場
・被害者の容貌、被害者の行動
(EX.現場でお酒を飲んでいた、被害者は学校生活のことを話していた)、等々
客観的事情を総合考慮して判断することとなります。
第31条6項抜粋
第21条の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、前各項の処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。
③真剣交際の場合にも処罰されますか?
真剣交際の場合、そもそも「淫行」にあたらず不起訴になったり、略式罰金処分という軽い手続きで終了する可能性があります。
児童福祉法違反・青少年保護育成条例違反の弁護活動
1.早期に示談交渉に着手して、不起訴処分など有利な結果を導けるように活動します。
示談は契約ですので、被疑者と被害者が合意することにより作ることになりますが、被疑者が捜査機関に被害者の連絡先を聴いても教えてもらえないのが通常です。
特に、児童福祉法違反・青少年保護育成条例違反の場合には、示談の相手方は被害者である子どもの両親となるため被害感情が強くなるのが相場です。
そのため、直接被疑者が被害者と交渉を行うのは無理に等しく、仮に示談できたとしても、不相当に過大な金額での示談解決になる可能性が大きいと考えられます。
一方、弁護士を通じれば、弁護士限りでという条件付き(被疑者には連絡先を教えないという条件付き)で検察官より被害者の連絡先を教えていただける場合が多々あります。ですので、弁護士に依頼することにより被害者とコンタクトをとりやすくなります。
また、弁護士が間に入れば、冷静な交渉により妥当な金額での示談解決が図りやすくなります。
2.早期の身柄開放を目指します。
逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。
そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。
3.否認事件では、独自に事実調査を行い、不起訴・無罪に向けて活動を行います。
児童福祉法違反、青少年保護育成条例違反事件では、18歳未満の児童と性的な関係を持ったという事実はないにもかかわらず、捜査機関からありもしない疑いをかけられ捜査対象になってしまう場合があります。
また、性的関係を持った相手が18歳未満であるとは知らずに、性行為をしてしまった場合もあります。
そのような場合には、できるだけ早く弁護士にご相談ください。
弁護士が児童福祉法違反罪、青少年保護育成条例違反罪の不成立を主張し、不起訴処分の獲得や無罪判決の獲得に尽力します。
具体的には、客観的証拠を積み重ねることで、実際は被害児童と性的関係を持つに至らなかった、あるいは人違いである旨の主張をする、または実際に性的関係を持ったとしても18歳未満だとは知らなかった旨の主張をする、さらには18歳未満と知っていたが、単なる性的欲求を満たすために性的関係を持ったわけではなく結婚を前提に真剣に交際していた上での行為であった旨の主張をしていきます。
児童福祉法違反・青少年保護育成条例違反でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部へお問い合わせください。