ストーカー行為等の規制等に関する法律 | 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所-京都支部

ストーカー行為等の規制等に関する法律

【ストーカー行為等の規制等に関する法律】
(罰則)
第18条
1項
ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第19条
1項
禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2項
前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。
第20条  
前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
※近時の改正で罰則が過重されました。

1.ストーカー規制法について

「桶川女子大生刺殺事件」(※)を契機に成立した法律です。

特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者等に対し、「つきまとい等」をして、相手方に不安を覚えさせてはならないと定めてこれを禁止しています。

そして、警察本部長等が「つきまとい等」をして不安を覚えさせた者に対し警告を行うことができ、警告に従わない者に対し公安委員会が罰則付の禁止命令を発令することができることを規定しています。

一方で、同一の者に対し、「つきまとい等」を反復してすることを「ストーカー行為」と定義し、「ストーカー行為」をした者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処するとされています(ストーカー行為罪)。

(※)桶川女子大生刺殺事件

元交際相手の男らにストーカー行為をされていた女子大生Aが、堂々ナイフで刺殺された事件。

生前、女子大生およびその家族が再三にわたり警察署に対し被害を訴え名誉棄損で告訴するに至っていたにもかかわらず、警察は男に対する捜査をほとんど実施しませんでした。また、警察は女子大生が殺害された後も最重要容疑者である元交際相手の男を取り逃し、男が事件発生の約3か月後に自殺してしまい真相究明の手がかりを失うなど、殺人事件の捜査についても失態を演じその在り方が問題となりました。

2.「ストーカー行為」の定義

ストーカー規制法では、同一の者に対し、「つきまとい等」を反復してすることを「ストーカー行為」と定義しています(2条2項)。

そして、ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処するとされています(ストーカー行為罪)。

なお、近時の改正により、ストーカー行為罪は非親告罪となりました。つまり、告訴がなくとも起訴されその結果処罰される可能性があります。

3.「つきまとい等」と「ストーカー行為」について

ストーカー行為等の規制等に関する法律は、ストーカー行為の中から悪質性の高いものを「ストーカー行為」ととらえて罰則の対象とするとともに、そこまでに至らない前段階の行為を「つきまとい等」として、警告、禁止命令等の行政措置の対象としています。

4.近時のストーカー規制法の改正について

2016年5月、芸能活動を行っていた当時20歳の大学生の女性に、ファンを名乗る男がSNS上でストーカー行為を繰り返した後、ナイフで襲いかかり重体に陥らせるという痛ましい事件が起こりました。この事件をきっかけに、相談を受けた警察の対応の不手際やストーカー規制法の不備などについて批判が相次ぎ、結果、ストーカー規制法が改正されることとなりました。

大きな改正点は以下の通りです。

(1)規制対象行為「つきまとい等」の拡大

  1. 恋愛感情等充足目的での次の行為を追加
    ●住居等の付近をみだりにうろつくこと
    ●拒まれたにもかかわらず、連続して、
     ・SNSを用いたメッセージ送信等を行うこと
     ・ブログ・SNS等の個人のページにコメント等を送ること
  2. 性的羞恥心を害する電磁的記録等の明記
    「つきまとい等」の一類型である性的羞恥心を害する行為について、電磁的記録やその記録媒体を送りつける行為等を明確的に明記


(詳しく解説すると・・・)
「つきまとい等」とは

「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で」、「当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し」、2条1項各号のいずれかに掲げる行為をすることをいいます。

近時の改正で規制対象行為である「つきまとい等」の範囲が拡大されました。

(2条1項各号の列挙事由について)

① つきまとい・待ち伏せ・押しかけ
【近時の改正】
上記に加えて、「住居等の付近をみだりにうろつくこと」が追加されました。

② 監視していると告げる行為
(具体例)
相手方に対し、帰宅した直後に「今日は1日大変だったね。」等と電話したりする。

③ 面会・交際の要求
(具体例)
相手が拒否しているのにもかかわらず、面会、交際、復縁を求めたりする。その手段には限定がなく電子メールを含む。

④ 著しく粗野又は乱暴な言動をすること
(具体例)
家の前で大声をだしたり、乱暴な行為をしたりする

⑤ 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること
(具体例)
拒否しているにもかかわらず、何度も電話をかけたり、電子メールを送信したりする。

【近時の改正】以下のことが追加されました。
拒まれたにもかかわらず、連続して、
(1) SNSを用いたメッセージ送信等を行うこと
(2) ブログ、SNS等の個人ページにコメント等を送ること 

⑥ 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態におくこと

⑦ その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと
(具体例)
相手を中傷したり、名誉を傷つけるような内容を告げたり、文書などを送り付けたり、インターネット掲示板に掲載したりする。

⑧ 性的しゅう恥心の侵害
わいせつな写真などを自宅に送り付けたり、インターネット掲示板に掲載したりすること。
【近時の改正】
電磁的記録やその記録媒体を送り付ける行為等が確認的に明記されました。

(2)禁止命令等の見直し

緊急性が高いと判断された場合は、警察の警告がなくても都道府県の公安委員会が加害者に対して被害者への接近禁止命令を出せるようにしました。これにより、迅速な対応が可能になります。

(詳しく解説すると・・・)
ストーカー被害に会った場合、被害者は警察本部長等に対して、「警告申出書」を提出することができます。加害者の行為がストーカー規制法2条に該当し、被害者が不安を感じており、当該行為の態様や頻度、きっかけ等を考慮して反復して当該行為をするおそれがあると判断されれば、警告がなされます。また、警告を受けた行為者が、警告に従わないでさらに行為を繰り返して被害者に不安を覚えさせ、行為者がさらに繰り返して同じ行為をするおそれがあると認められる場合は、都道府県公安委員会が聴聞を行って、行為者に対し禁止命令を発します。禁止命令に違反して再度ストーカー行為等を行うと、加害者を逮捕することができ、加害者は2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます。

しかし、【近時の改正】により・・・
加害者の行為がストーカー規制法2条に該当し、被害者が不安を感じており、当該行為の態様や頻度、きっかけ等を考慮して反復して当該行為をするおそれがあると認めるときであって、当該行為の相手方の身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、「警告を経なくても禁止命令等」をすることができるように改正されました。

なお、禁止命令に更新制が導入され、禁止命令等の有効期間は1年間で、1年ごとに、聴聞を経て更新されることとなりました。

(3) 非親告罪に改正

近時の改正により、「ストーカー行為罪」について、告訴がなくても公訴を提起することができるようになりました。

(4) ストーカー行為等による情報提供の禁止

ストーカー行為等をするおそれがある者であることを知りながら、その者に対してその行為の相手方の氏名、住所等の情報を提供することを禁止する条文が置かれました。

(5) 罰則の見直し

従前よりも罰則が引き上げられました。
1.ストーカー行為罪
⇒懲役1年以下又は100万円以下の罰金

2.ストーカー行為に係る禁止命令等違反罪
⇒懲役2年以下又は200万円以下の罰金

3.2以外の禁止命令等違反罪
⇒懲役6月以下又は50万円以下の罰金

~ストーカー規制法違反事件の弁護活動~

1 早急に示談を成立させる

ストーカー行為をしたことに争いがない場合でも、弁護士を介して、被害者に謝罪と被害弁償をして、早急に示談を成立させることで不起訴処分により前科がつかなくなる可能性があります。

一方、刑事裁判になってしまった場合でも、ストーカー規制法違反事件の被害者との間で示談や被害弁償を行うことで、刑務所に入らないで済む執行猶予付判決を獲得できる可能性が高まります。

2 不起訴処分又は無罪判決になるよう主張

身に覚えがないにも関わらずストーカー規制法違反の容疑をかけられてしまった場合、弁護士を通じて、警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対して不起訴処分又は無罪判決になるよう、主張する必要があります。ストーカー規制法違反を立証する十分な証拠がないことを指摘することも重要になります。

3.早期の身柄開放を目指します。

逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。

ストーカー被害、ストーカー規制法違反のことでお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部へお問い合わせください。刑事事件を専門に取り扱う弁護士が、直接「無料相談」を行います。被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。すぐにお問い合わせください。

 

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