【殺人罪(刑法199条)】
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
【自殺関与罪(刑法202条)】
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその食卓を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役または禁錮に処する。
【殺人予備罪(刑法201条)】
第199条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
【未遂罪(刑法203条)】
第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。
1.人の生命を侵害する犯罪について
殺人罪は、殺意(人を殺す意思)をもって、その人の意思に反して人の生命を侵害する犯罪です。
殺人未遂罪は、人を殺そうと殺害行為を開始したが、被害者が死に至らなかった場合に成立します。
一方、自殺関与罪(刑法202条前段)は、①自殺教唆(きょうさ)罪、②自殺幇助(ほうじょ)罪、からなります。
また、同意殺人罪(刑法202条後段)は、③嘱託(しょくたく)殺人罪、④承諾殺人罪、からなります。
- 自殺教唆罪とは、他人をそそのかして自殺を実行させる犯罪です。
- 自殺幇助罪は、自殺を決意している他人に対し、自殺を手助けする犯罪です。
例えば、自殺を決していることを知って毒物を準備する等の行為です。 - 嘱託殺人罪は、他人の依頼を受け、依頼をした本人を殺す犯罪です。
- 同意殺人罪は、同意を得て、同意した本人を殺す犯罪です。
例えば、「老人介護」が原因で、介護されている方が死にたいと望み、介護をしている方が介護されている方を殺害するような事件が起こっています。
2.生命に対する罪のQ&A
① 未遂罪であれば、刑は軽くなるのですか?
刑が軽くなる可能性があります。あくまで、裁判官の裁量で減刑することができるにすぎません。
一方で、未遂犯の中でも、自己の意思で止めた中止犯については、刑の減免が必ず認められます。
つまり、中止犯にあたるならば、必ず刑を減軽するか又は免除しなければなりません。
自己の意思とは、「たとえできるとしても欲しなかった」といえる場合です。
このような規定がされたのは、「後戻りするために黄金の架け橋をあたえたもの」と説明されることもあります。
なお、いくら自己の意思で犯罪をやめたとしても、結果が発生した(殺人罪なら死亡した)場合には中止犯は成立しません。
あくまで、中止犯は未遂犯の一種にすぎないからです。
②殺人罪は執行猶予がつかないの?
法律上は執行猶予がつけられる場合もあります。
執行猶予は、3年以下の懲役の言渡しを受けたときに適用されます。
とすると、殺人罪の刑の下限が5年であるため執行猶予はつかないとも思えます。
しかし、裁判官の裁量で行なわれる「酌量減軽」は半分まで減刑が可能ですから、懲役2年6月までの判決が出せます。
よって、執行猶予がつくこともあります。
③量刑はどのように判断されるのですか?
裁判官に裁量はありますが、気の向くままに量刑を決めているわけではありません。
一定の基準があります。
大まかにいうと、①犯情事実(簡単に言うと「犯罪の悪質性」です)により量刑の大枠を決定し、②その大枠の中で一般情状事実(犯情以外の事実のことをいいます)を、刑を微調整させる要素として被告人に有利ないし不利に考慮して、最終的に決定されます。
(1)犯情事実について
- 結果
統計的にみると、最も大きな要素となっているのが、結果である被害者の死亡の数です。 - 犯行の動機、犯行に至る経緯
・被害者側に落ち度がある
・計画性がない、たまたま起こってしまった
・精神的疾患や知的障害の影響がある
・犯行に至る経緯について斟酌すべき事情がある⇒「保険金目的殺人」など、「不法な目的」のために殺人をした場合、「不法な目的」による殺人に至った経緯がどのようなものであっても、非難の程度を低くする事情とは評価されにくいと考えられます。なぜならば、「不法な目的」のために殺人をすること自体が強く非難されるからです。
例えば、保険金目的殺人の場合、殺人に至った経緯に「会社をリストラされた」という事情があったとしても、そのような経緯は非難の程度を下げるものとは評価されにくいと考えられます。 - 行為態様(態様が残忍・執拗・素手・殺傷能力の高い凶器を使った等)
- 共犯事件(主導的か専ら従う立場であったか)、等です。
(2)一般情状事実について
- 示談・被害回復の有無
- 前科・前歴の有無
- 被告人の反省の有無
- 社会的制裁(「解雇された」等)
- 再び犯罪を行う可能性の有無、等です。
殺人事件における弁護活動
1 不利な供述調書の作成を防止し、少しでも有利な判決をめざします(情状弁護等)。
殺人罪などの重大事件では、逮捕・勾留され、警察など捜査機関による取調べが続きます。
連日の取調べで心身ともに疲弊してしまい、不利な形で供述調書が作成されてしまうこともあります。
そのようなことを防ぐためにも、殺人事件で、逮捕・勾留されたら、すぐに弁護士を依頼してください。
刑事事件専門の弁護士は、日々、被疑者・被告人のもとに接見(面会)へ向かい、警察などの取り調べ状況をチェックします。
また、依頼者に量刑上有利な事情を主張し、少しでも有利な判決をめざします。
2.自分が殺人犯人でないことを争う(冤罪防止)
冤罪というのは、無実の人が罪に問われ、被疑者として逮捕されたり、裁判で有罪の判決を受けたりして犯罪者と扱われてしまうことです。
冤罪の大きな原因は、警察官等から「お前がやったのだろう。」「包み隠さず全て吐け。」等と威圧的な取調べに屈してしまったり、連日連夜の厳しい取調べに根負けしてしまい「はい。やったのは私です。」「私が全てやりました。」等と認めてしまう(自白)ことに多いです。
一旦、自白をしてしまうと、後に控えている裁判で「あの自白は間違っていました」と言っても、なかなか認められにくい現状があります。
取調べは密室で行われるため、たとえ違法な手法で行われたとしても、それを裁判で証明することは容易ではないのです。
虚偽の自白をしないためにも、早期の段階から弁護士をつけてしっかりと対応していくことが必要です。
3.人を殺したことは認めるが、殺人罪が成立しないことを争う。
(1)殺意を争う
殺人罪が成立するためには、殺意が必要です。
殺意の有無は、殺人罪と傷害致死罪とを分ける基準になるなど重要な意味を持ちます。
通常、殺意の有無は、死因となった傷の部位、傷の程度、凶器の種類・使用方法、動機の有無、犯行後の行動など様々な客観的状況を総合的に考慮して判断されます。
そこで、弁護士はこれらの事情を詳細に検討し、殺意の存在と矛盾する点があれば、その点を強く訴えていきます。
(2)正当防衛・緊急避難・心神喪失などを主張する
殺人事件でも、あるいは自己または家族などを守るためやむをえず第三者を傷つけてしまった場合があります。
こんな場合は、殺害行為が正当防衛・緊急避難行為に当たるとして殺人罪が成立しない可能性があります。
弁護士としては様々な客観的状況や目撃証言を収集し、加害者の行為が事件当時やむを得ない行為であったとして正当性を主張していきます。
また、心神喪失などにより罪に問えないことが明らかな場合、検察官が不起訴処分をすることがあります。
よって、早期の段階から対策を立てることが必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件を専門に取り扱う弁護士が、直接「無料相談」を行います。
被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。