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100万円分のサンドバッグになることで賭け麻雀で負けた分を無しにしてもらった事件
100万円分のサンドバッグになることで賭け麻雀で負けた分を無しにしてもらった事件
賭け麻雀で負けた男が、100万の支払いをサンドバッグとして1時間殴られる見返りに免除にしてもらった事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事例
京都府伏見警察署によると、男性は、京都市伏見区内にある駅前の雑居ビルで友人のほかその場に居合わせた者と賭け麻雀をして100万円ほど負けたが、お金がなく支払えなかったため、1時間サンドバッグ代わりに殴られることを条件に免除してもらった。
1時間サンドバッグ代わりに暴行を受けた結果、気絶した男性は救急車に運ばれ、病院から伏見警察署に通報され事件が発覚した。
被害男性は肋骨が折れて全治2ヶ月と診断された。
(事例はフィクションです。)
賭け麻雀
本件では、大きく分けて2つの犯罪が成立する可能性があります。
1つは、賭博罪です。
刑法185条
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
賭博とは、偶然の勝ち負けによって財産を得るか失うかを争うことを言います。
本件では、男らは現金を賭けて麻雀をしたとされています。
麻雀は偶然の要素により勝ち負けが左右されるものですから、その勝敗に現金という財産を得るか失うかを賭ける賭け麻雀は、賭博に当たる可能性があります。
もっとも、本条はただし書きで、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは」賭博罪は成立しないとしています。
本件も、このただし書きに当たりはしないのでしょうか。
「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」場合とは、すぐに飲み食いするなどして消費するもので、価値も低いものを賭けた場合を言います。
例えば、負けた人は勝った人にラーメンを奢るような場合です。
本件では、男は100万円もの大金を賭けて負けたようですから、ただし書きには該当しないでしょう。
以上より、サンドバッグになった男も含めて、賭け麻雀に参加した人には、賭博罪が成立する可能性があります。
被害者への暴行と承諾
もう1つ、サンドバッグになった男を被害者とする傷害罪が成立する可能性があります。
刑法204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
傷害とは、殴って出血させたりするなどして人の生理的機能に障害を与えることを言います。
本件では、加害者は被害者を殴って、肋骨を折っているようですから、傷害罪が成立するように思われます。
もっとも、被害者は自分から100万円分サンドバッグとして殴られることを提案しているので、傷害行為を受けることについて被害者の承諾があるとも言えそうです。
刑法204条の傷害罪の規定は、個人の身体を守るための規定ですから、当の本人が傷害行為に晒されることに同意している場合、傷害罪は成立しないのではないでしょうか?
この点について、判例は、承諾があっても、傷害罪が成立するかどうかは、「単に承諾が存在するという事実だけでなく、」その「承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合せて決すべき」であるとしています(最高裁決定昭和55年11月13日)。
例えば、不義理をした暴力団員の小指を、その承諾を得て切断をした事例について、犯罪が成立するとした裁判例があります(仙台地裁石巻支部昭和62年2月18日判時1249号145頁)。
本件では、被害者の承諾は、賭博という違法行為によって発生した100万の請求を免除するために得られていますから、承諾を得た目的が社会的に相当ではないと言えるでしょうし、身体傷害の程度も肋骨の骨折して全治2ヶ月と重症です。
したがって、被害者の承諾があるとはいえ、傷害罪が成立する可能性があります。
なるべく早く弁護士に相談を
185条の賭博罪の法定刑は、50万円以下の罰金又は科料となっています。
このような比較的軽い刑罰となっているのは、賭博を主催するものが搾取する側であるのに対し、賭博に参加するものは搾取される側であるためです。
したがって、微罪処分や不起訴処分となり前科がつかないこともあります。
もっとも、とるべき防御活動を怠ったために罰金刑がつく可能性もあります。
罰金刑も刑罰ですから前科となります。
したがって、賭け麻雀をして警察に呼び出された場合には、出頭前に弁護士に一度相談することをおすすめします。
また、本件では、被害男性に対する傷害罪が成立する可能性があります。
傷害罪の法定刑は十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金と非常に重たいため、容疑者が逃亡したり証拠隠滅したりする恐れがあるため逮捕されることも多いです。
逮捕による身柄拘束は最大3日ですが、必要と判断されれば勾留という10日間に及ぶ身体拘束がされる恐れがあり、さらに延長されることさえあります。
逮捕前や逮捕後すぐに弁護士に弁護活動を依頼していれば、勾留が不要である旨の意見書を提出することができ、早期に身柄が解放される可能性があります。
意見書を提出する機会を逃さないためにも、早い段階で弁護士に相談することが大切です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、賭博事件や傷害事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
賭け麻雀をして警察に見つかった場合や傷害事件を起こしてしまった場合には、一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
同僚に誘われて違法賭博をしたところ逮捕された事件
同僚に誘われて違法賭博をしたところ逮捕された事件
同僚に誘われて違法賭博をしたところ逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事例
京都市内に住む会社員の男性Aは、普段から常習的に賭け麻雀をしていた会社の同僚Bに誘われて断りきれず賭け麻雀に参加したところ、店舗が摘発され同僚と一緒に逮捕された。
京都府下京警察署によると、Aは、5万円ほどを賭けて麻雀をしていた容疑が持たれている。
Bは、以前に常習賭博罪の前科があった。
(フィクションです。)
賭博罪とは
賭博とは、偶然の勝ち負けによって財産を得るか失うかを争うことを言います。
刑法は、賭博をした者について、185条と186条1項を用意しています。
刑法185条
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
刑法186条1項
常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
185条は単純賭博罪と呼ばれ法定刑が「五十万円以下の罰金又は科料」であり懲役刑が規定されていないのに対し、186条1項は常習賭博罪と呼ばれ「三年以下の懲役」が規定されているので、常習賭博罪で有罪になった場合は懲役刑に処される可能性があります。
両者はともに、賭博をした場合に成立する犯罪ですが、常習賭博罪は、反復して賭博行為をする習癖のある者が賭博をすることにより成立する犯罪です。
本件では、AとBが逮捕されていますが、賭博の常習者であるかどうかで刑罰は大きく異なります。
常習として賭博したか否かは、賭博行為の種類、賭けた金額、賭博の行われた期間・回数、前科の有無などを総合的に考慮して判断されます(最判25年3月10日集刑16号767頁)。
本件では、Bは、常習賭博罪の前科があり、普段から賭け麻雀をしているようなので、常習者であると評価される可能性が高いでしょう。
それに対し、Aは今回が初めての参加であるため、成立する犯罪は、常習賭博罪ではなく単純賭博罪となりそうです。
単純賭博罪の場合、適切な弁護活動がなされれば、Aに関しては、微罪処分や不起訴処分となる可能性があります。
共犯
ところで、AとBは同じ卓を囲んで賭け麻雀をしていたようですので、一緒に同じ犯罪を犯したと言えそうです。
刑法60条は、「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」と規定しています。
本件で、刑法60条が適用され、Bのした常習賭博罪が正犯にあたり、Aにも常習賭博罪が成立することはないのでしょうか?
結論からいうと、通説によれば、そのようなことにはなりません。
Aのような賭博の常習性がない者と、Bのような賭博の常習性がある者とが、共同して賭博を行った場合、前者には単純賭博罪が、後者には常習賭博罪がそれぞれ成立すると理解されています(条解刑法<第4版>552頁)。
弁護士に相談を
捜査機関は、AがBと同僚であり一緒に賭け麻雀をしていたこと、Bが賭博の常習者であることからAについても賭博の常習者と考えているかもしれません。
その場合、捜査機関は逮捕後の取調べで、Aに常習性を認めるかのような供述をするよう誘導してくる可能性があります。
仮に、常習性を認めるかのような供述をして、その供述を文書化した供述調書にサインしてしまった場合、裁判になってこれを常習性を覆すのは非常に困難です。
したがって、取調べ前に、認めることと認めないことの線引きをしておくことが重要となります。
このような判断を十分な法律の知識なしに適切に行うことは、非常に困難です。
そこで、法律のプロである弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、賭博罪を含む刑事事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
刑事事件に詳しい弁護士に事前に相談して取調べのアドバイスを得ることで、常習賭博罪の嫌疑を晴らすことができるかもしれません。
また、単純賭博罪についても微罪処分や不起訴処分に落ち着かせることができるかもしれません。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。
【事例紹介】オンラインカジノを利用し賭博罪に
オンラインカジノで現金をかけたとして、賭博罪で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
海外のオンラインカジノで金をかけたとして、京都府警は27日、賭博容疑で、(中略)書類送検した。(中略)
(4月27日 京都新聞 「30代巡査がオンラインカジノで賭博疑い、京都府警が書類送検」より引用)
捜査関係者によると、巡査は昨年4月、海外のオンラインカジノで、私用のスマートフォンを使って2万円をかけた疑いが持たれている。容疑を認めている。(後略)
賭博罪
賭博罪は刑法第185条で、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」と規定されています。
賭博とは、偶然の勝敗について財物などをかけることをいいます。
また、一時の娯楽に供する物とは、一時的な娯楽に提供されるもののことをいい、食べ物やたばこなどの提供があたります。
今回の事例では、容疑者がオンラインカジノで現金2万円をかけたとして賭博罪の容疑で書類送検されています。
容疑者がどのようなゲームで賭け事をしたのかはわかりませんが、カジノで行われるゲームは大抵の場合、勝敗の決定に偶然性があるゲームでしょう。
また、現金は一時の娯楽に供する物にあたらないでしょうから、今回の事例では賭博罪が成立する可能性があります。
賭博罪と常習賭博罪
常習して賭博を行っていたと判断された場合、賭博罪ではなく、常習賭博罪が成立する可能性があります。
賭博罪の法定刑は50万円以下の罰金又は科料でしたが、常習賭博罪の場合は3年以下の懲役が科されます。(刑法第186条1項)
常習賭博罪の成立を判断するうえで、判例は、「常習賭博においては、賭金の数額、手段方法の如何、勝負の回数結果等によつて常習を認定判示し得べき」としています。(昭和24年2月10 最高裁判所 決定)
ですので、かけ金、賭博の種類や方法、賭け事の回数などで常習賭博罪が成立するかどうかが判断されることになります。
賭博罪と弁護活動
刑事事件で被疑者になると、取調べを受けることになります。
賭博罪の場合、取調べでは、賭博を行った回数やかけた金額などを聴取されることが予想されます。
場合によっては賭博罪ではなく、科される刑罰がより重い常習賭博罪が成立する可能性がありますので、取調べ前に供述すべき内容を整理しておくことが重要になります。
加えて、取調べで作成される供述調書は、裁判の際に証拠として扱われますし、検察官が処分を判断する際にも重要な判断材料になります。
ですので、あなたの意思に反した供述調書が作成されることで、あなたの不利になる可能性が高くなってしまいます。
そういった事態を防ぐためにも、事前に弁護士と取調べ対策を行うことが望ましいでしょう。
また、弁護士は検察官に処分交渉を行うことができます。
例えば、ギャンブル依存症の治療のため専門機関を受診していることや、二度と賭博を行わないことを誓約していることなど、あなたにとって有利になるような事情を弁護士が検察官に主張することで、不起訴処分を獲得できる可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、無料法律相談を行っています。
賭博罪、常習賭博罪の容疑をかけられた方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
【事例紹介】魔改造フィギュアで書類送検
魔改造フィギュアを販売したとして、著作権法違反の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
人気アニメ(中略)のキャラクターのフィギュアを改造して販売したとして、京都府警北署は10日、著作権法違反の疑いで、(中略)書類送検した。
(3月10日 京都新聞 「「鬼滅」禰豆子と蜜璃の「魔改造」フィギュアを販売疑い 病院職員を書類送検」より引用)
書類送検容疑は、(中略)に登場する(中略)の頭部と、別作品のキャラクターの胴体を組み合わたフィギュア4体を、ネットオークションを通じて木津川市の男性ら3人に計3万2400円で販売した疑い。「小遣い稼ぎにやった」などと容疑を認めているという。
フィギュアの頭部と胴体を組み替える手法は「魔改造」と呼ばれ、女性キャラクターの性的な外見を強調した改造品の販売がインターネットで横行している。(後略)
魔改造フィギュアと著作権侵害
著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものをいいます。(著作権法第2条1項1号)
ですので、原則として、人によって創作された物は著作物に該当します。
また、著作権法では、著作物の財産的利益の他にも、著作者の人格的利益を保護しています。
この著作者の人格的な利益を保護する権利を著作者人格権といい、著作者人格権には「公表権」、「氏名表示権」、「同一性保持権」の3つの権利があります。
公表権、氏名表示権、同一性保持権とはどういった権利なのでしょうか。
公表権とは、公表されていない著作物を公衆に提供、提示する権利をいいます。(著作権法第18条1項)
また、氏名表示権とは、著作物の提供や提示の際に著作者名を表示又は表示しない権利を指します。(著作権法第19条1項)
さらに、同一性保持権とは、著作物を著作者の意に反して変更、切除、その他の改変を受けない権利をいいます。(著作権法第20条第1項)
今回の事例では、容疑者が魔改造フィギュアを販売したとされています。
魔改造フィギュアとは、報道の通り、キャラクターのフィギュアの頭部と別のキャラクターのフィギュアの胴体を組み合わせて作成されたフィギュアのことをいいます。
フィギュアになっているアニメのキャラクターは、著作権者であるアニメの原作者が創作したものですので、当該キャラクターはもちろん、キャラクターが象られたフィギュアも著作物にあたります。
魔改造フィギュアを作成する行為は、著作者の同意なくキャラクターの姿を変える行為であり、著作物を改変しているといえます。
したがって、魔改造フィギュアの作成は著作者人格権の1つである同一性保持権を侵害する行為になります。
著作権法第113条1項2号では、著作者人格権を侵害する行為によって作成された物を、事情を知りながら頒布することを禁止しています。
今回の事例では、容疑者が魔改造フィギュアを販売し、著作権法違反の容疑で書類送検されています。
先ほど述べたように、魔改造フィギュアの作成は著作者人格権の侵害にあたりますので、魔改造フィギュアだと知りながら、魔改造フィギュアを販売する行為は、著作権法違反の罪が成立する可能性があります。
著作者人格権の侵害と量刑
著作者人格権を侵害し、著作権法違反で有罪になった場合には、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。(著作権法第119条2項1号)
併科というのは、懲役刑と罰金刑の両方を科すという意味です。
刑事事件では捜査の一環として、取調べが行われます。
取調べでは、容疑者の供述を基に供述調書が作成されます。
供述調書は後の裁判で証拠として扱われます。
ですので、取調べであなたの意に反した供述調書が作成されてしまった場合は、後の裁判であなたが不利になってしまう可能性があります。
弁護士と事前に取調べ対策を行うことで、あなたの意に反した供述調書の作成を防ぎ、裁判になった際に執行猶予付きの判決を獲得するなど、あなたにとって良い結果を目指せるかもしれません。
また、著作権者と示談を締結することで、不起訴処分の獲得や科される量刑を軽くできる場合があります。
加害者が被害者に直接示談交渉を行うと、話を聴いてもらえない場合やそもそも連絡すら取れない場合があります。
そういった場合でも、弁護士が代理人として示談交渉を行うことで、話を聴いてもらえる可能性があります。
示談交渉をする際は、弁護士を代理人として付けることが望ましいといえます。
取調べ対策や示談交渉の他にも、弁護士は検察官に処分交渉を行うことができます。
弁護士が、あなたの有利になるようになる事情を検察官に主張することで、不起訴処分の獲得など、あなたにとってより良い結果を得られる可能性があります。
著作者人格権侵害による著作権法違反は、懲役刑が最長で5年、罰金額が最大で500万円とかなり重く規定されています。
刑事事件に精通した弁護士による弁護活動で、不起訴処分や略式命令での罰金、執行猶予付き判決の獲得など、少しでも科される量刑を軽くできるかもしれません。
著作権法違反でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
[事例紹介]京都市東山区の違法賭博事件
京都市東山区で起こった違法賭博事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
京都・祇園で違法賭博店を開いたとして、京都府警生活保安課と東山署などは2日夜、賭博開帳図利の疑いで、カジノ店経営者の男(43)=京都市下京区=と、26~49歳の従業員の男女7人を逮捕した。
逮捕容疑は、共謀して2日午後8時、京都市東山区林下町の雑居ビル3階で賭博店を開き、男性客5人から手数料を取り、バカラと呼ばれるトランプを使った賭博をさせた疑い。
経営者ら6人は容疑を認め、1人は黙秘しているという。府警は2日夜にカジノ店を捜索し、バカラ台2台や現金210万円などを押収した。
(7月3日 京都新聞 「京都・祇園でバカラ開帳疑い カジノ経営者ら男女7人逮捕」より引用)
店は二重扉で、監視カメラを設置して会員客だけを入れていた。カジノ店は5月24日以降、週6日営業し、違法賭博をさせていたとみられるという。
賭博場開張等図利罪
賭博場開張等図利罪は、主催者になって賭博場を開設し、賭博への参加料等の利益を得ようとする場合に適用されます。
また、主催者自らが賭博に参加した場合は、賭博罪と賭博場開張等図利罪が適用されます。
賭博場開張等図利罪で有罪となった場合には、3年以上5年以下の懲役に処されることになります。(刑法186条第2項)
類似裁判例紹介
今回の違法賭博事件では、逮捕された男女が、先ほど簡単に触れた賭博場開帳等図利罪という罪の容疑をかけられています。
しかし、この賭博場開帳等図利罪という犯罪は、なかなか聞くことのない犯罪でもあるでしょうから、刑事裁判のイメージもつきにくいでしょう。
そこで、次に、賭博場開張図利事件の裁判例を紹介します。
被告人は、野球賭博により利益を得るために事務所を設置し、電話にて野球賭博の参加者を募り、一定の金員を徴収していました。
裁判の結果、被告人は懲役1年2月に処されました。(昭和46年10月27日 名古屋高等裁判所)
上記の裁判例では賭博場開張図利罪の適用について争われました。
裁判所は、賭博場を利益を得る目的で設置したのであれば、その場で人が集まり賭博を行なっていなくても賭博場開張図利罪が成立すると判断し、被告人は賭博場開張図利罪で有罪となりました。
賭博場開張等図利罪は罰金刑の規定がなく、有罪になってしまうと3年以上5年以下の懲役刑という刑罰が科されてしまいます。
つまり、賭博場開張等図利罪で有罪となるということは、執行猶予が付かなければ刑務所に行くことになるということなのです。
これだけ重い刑罰が設定されている犯罪ですから、刑事裁判に向けて入念な準備が必要です。
早い段階で弁護士に相談し、サポートを受けながら刑事裁判に臨むことがおすすめです。
賭博場開張等図利罪で捜査・逮捕されてしまった際には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までお問い合わせください。
無料法律相談や初回接見サービスもございます。
【解決事例】特定商取引法違反事件で接見禁止解除
【解決事例】特定商取引法違反事件で接見禁止解除
事件
Aさんは京都府宇治市にある会社で営業職として働いており、普段からBさんとともに訪問販売をしていました。
ある日、Aさんらの訪問販売時に不実告知があったとして、京都府宇治警察署の警察官が会社に家宅捜索に訪れました。
その後、Aさんは、Bさんと共に特定商取引に関する法律違反(特定商取引法違反)の罪で京都府宇治警察署の警察官に逮捕されてしまいました。
Aさんの逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、京都府宇治警察署に行きました。
しかし、Aさんに会うことはできず、Aさんの状況を確認するために、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の初回接見サービスを申込みました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)
事件解決のながれ
弁護士から初回接見サービスの報告を受けたAさんのご家族は、Aさんの弁護活動を弁護士に依頼することに決めました。
Aさんは接見禁止処分を受けており、Aさんのご家族はAさんに対して面会もできず、手紙も送ることができない状況にありました。
接見禁止処分とは、口裏合わせなどのおそれがある場合に付される処分で、弁護士以外の人との面会や手紙のやり取りなどが制限される処分です。
弁護士は、依頼後すぐに、Aさんの家族がAさんに接見できるようにするために、接見禁止の一部解除を求めるための申立てを行いました。
申立ての中で、弁護士はAさんが家族と会えないことで精神的に不調をきたしていること、Aさんと面会する必要性があること、Aさんの家族はAさんに求められたとしても証拠の隠滅を行わないことを訴えました。
弁護士の訴えにより、Aさんの家族に限って接見禁止が解除されました。
Aさんは家族と会い、直接話をすることができるようになりました。
その後、Aさんは再逮捕され、勾留の延長が決定してしまいました。
Aさんの身体拘束が長期に渡っていたことから、弁護士は勾留延長決定に対して不服申し立てを行い、Aさんの釈放を求めました。
この不服申立てが認められたことで、Aさんは釈放されることになりました。
釈放後、自宅で家族と過ごしながら捜査を受けていたAさんは略式起訴されることになり、略式命令によって罰金刑となりました。
接見禁止がついてしまっている場合は、ご家族であっても面会や手紙のやり取りをすることができなくなります。
ご家族と直接のやり取りが一切できないという状況は、被疑者・被告人の大きな精神的負担となることが予想されますから、接見禁止処分となっている場合には早期に弁護士に接見禁止一部解除に動いてもらうことをおすすめします。
また、弁護士であれば接見禁止処分となっていても接見を行うことが可能ですので、ご家族やご友人の伝言を弁護士を通じて本人にお伝えすることができます。
連日にわたる取調べの中で、味方である弁護士の存在は心の支えになることもありますから、こうした面でも弁護士のサポートを受けることが望ましいといえるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕・勾留中の方に弁護士が接見に向かう初回接見サービスをご用意しております。
初回接見サービスのご予約は0120―631―881でお承りしておりますので、ご家族が逮捕されてしまってお困りの方、接見禁止処分が付いていて状況がわからずお悩みの方は、一度お問い合わせください。
【解決事例】不正競争防止法違反事件で公判請求回避
【解決事例】不正競争防止法違反事件で公判請求回避
事件
Aさんは、京都府向日市にあるV社で営業担当として勤務していましたが、V社の取引先であったX社への転職が決まっており、近々V社を退職する予定でした。
まだAさんがV社に在職している最中、Aさんは勉強のために使えるだろうと考え、V社の顧客情報などの営業データをプリントアウトし、自宅へ持ち帰りました。
Aさんは、V社から引き留めにあったものの、最終的に退職届を提出し、プリントアウトしたものは全てV社へ返却しました。
翌月、京都府向日町警察署の警察官がAさんの家とX社を捜索しました。
その後、Aさんは京都府向日町警察署の警察官から取調べを受け、自分の勉強のために持ち帰ったこと、プリントアウトしたものは全てV社に返却していることを話しました。
しかし数か月後、Aさんは京都府向日町警察署の警察官に不正競争防止法違反の疑いで逮捕されてしまいました。
不安になったAさんの家族は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の初回接見サービスに申し込み、弁護士に弁護活動を依頼することを決めました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)
不正競争防止法
不正競争防止法では、利益を得る目的もしくは損害を与える目的のために不当に営業の秘密を得る行為を取り締まっています。
不正競争防止法第21条(以下抜粋)
次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは2千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第1項の3号
営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者の損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者
イ 営業秘密記録媒体(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図面又は記録媒体をいう。以下この号において同じ。)又は営業秘密が化体された物件を横領すること。
ロ 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物体について、その複製を作成すること。
ハ 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載または記録を消去したように仮装すること。
今回のAさんは、転職先のX社にV社の顧客情報当の営業秘密を持って行こうとしたのではないか(不正競争防止法第21条第1項の3号イに違反)と疑われていました。
Aさんとしては、あくまで勉強のために持ち帰ったつもりでしたが、X社での仕事でも役に立つだろうという思いもぼんやりとあったという認識でした。
事件解決のながれ
Aさんとしては、ぼんやりと次の転職先でも役に立つとは思っていたものの、深く考えていたわけではなく、情報をどのように活用するかといったことも全く考えていないという状況でした。
弁護士は、何度もAさんの接見に行き、Aさんの認識を正しく捜査機関に伝えられるよう、随時取調べ等のアドバイスを行いました。
Aさんの問われた不正競争防止法違反では、10年以下の懲役、2千万円以下の罰金の両方を科される可能性がありました。
これだけ重い犯罪でもあるので、Aさんも公判請求され、刑事裁判の場に立つ可能性もありました。
しかし、弁護士によるアドバイスが有利に働いたことにより、Aさんの事案では悪質性が低いと判断され、Aさんは略式手続き(略式命令)に付され、罰金を支払って事件を終了することとなりました。
略式手続となった場合、罰金を支払って事件が終了となるため、公開の法廷に立つことなく刑事手続を終えることができます。
Aさんは公判請求を回避できたことにより、刑事手続に割く時間を大幅に減らすことができたとともに、刑事裁判の場に立つことを回避することができました。
当然ながら、公判請求され刑事裁判となれば、刑事裁判自体にかかる時間もありますし、そのための準備も必要となってきますから、略式手続(略式命令)と比べてより心身ともに負担がかかることが予想されます。
もちろん、公判請求されて公開の法廷に立つことによって、事件のことが周囲に知られてしまうリスクも大幅に上昇してしまいます。
弁護士のサポートを受けて適切に取調べ等に対応することで、公判請求を回避したり、不要に重い処分を回避したりすることが期待できます。
不正競争防止法違反や刑事事件でお困りの際には、ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にお問い合わせください。
初回接見サービスのご予約は0120ー631ー881で受け付けております。
ロマンス詐欺事件で逮捕されたら
ロマンス詐欺事件で逮捕されたら
ロマンス詐欺事件で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府綾部市に住んでいる女性VさんとSNSを通じて知り合うと、海外に住んでいる医者を装い、Vさんと親しくなりました。
そしてAさんは、「日本で一緒に暮らしたい」「私が日本に行ったら結婚しよう」などと話すと、日本への渡航費用が必要だと言い含めて、Vさんから150万円を振り込ませました。
その後、Aさんと連絡がつかなくなったことからロマンス詐欺の被害に遭ったと気が付いたVさんが京都府綾部警察署に相談したことをきっかけに捜査が始まり、Aさんは詐欺罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和3年10月1日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・ロマンス詐欺
ロマンス詐欺とは、インターネット上の交流サイトやSNSなどで知り合った相手に対して恋愛関係になったように見せかけ、金銭を騙し取る詐欺の一種です。
ロマンス詐欺の中でも、海外の相手を騙すものを国際ロマンス詐欺などとも呼んだりします。
ロマンス詐欺は、名前に「詐欺」と入っていることからもわかる通り、詐欺罪に該当する犯罪です。
刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪の成立要件は、①「人を欺」くこと、②①に基づいて「財物を交付させ」ることです。
このうち、①の「人を欺」く行為は欺罔行為(ぎもうこうい)とも呼ばれ、相手が②の「財物を交付させ」るに至る重要な事実について偽ることを指します。
つまり、ただ単に相手に嘘をついただけでは①の要件を満たさず、それが嘘であれば相手が②の行為をしないであろうことについて嘘をつかなければ詐欺罪成立の要件を満たさないということです。
ロマンス詐欺の場合、相手に対して恋愛関係になったり、結婚の意思があったりするように見せかけるという部分が①に当たることになるでしょう。
例えば、今回のAさんの事例であれば、AさんはVさんと日本で結婚することをほのめかし、日本への渡航費用に必要だからと150万円を要求し、振り込ませています。
しかし、Vさんからすれば、Aさんが日本でVさんと結婚するための渡航費用という話が嘘であれば、150万円という「財物」をAさんへ引き渡すことはしなかったということになるでしょう。
ですから、今回のロマンス詐欺事件では①の要件が満たされていると考えられます。
さらに、詐欺罪成立の要件である②は、①の欺罔行為によって騙された被害者がそれに基づいて財物を交付することです。
今回の事例を見てみると、VさんはAさんが自分と恋愛関係にあり、自分と結婚する意思があるのだと騙されたことによって、それに基づいてAさんに150万円を渡していることになります。
つまり、詐欺罪成立の要件である②も満たすことになると考えられるのです。
こうしたことから、ロマンス詐欺には詐欺罪が成立すると考えられるのです。
・ロマンス詐欺事件と逮捕
ロマンス詐欺事件では、被疑者が被害者の連絡先を知っていること等から、被疑者と被害者の接触を避けるために、今回の事例のAさんのように逮捕されてしまうことも考えられます。
さらに、ロマンス詐欺の特性上、被疑者と被害者がインターネットを介して連絡を取っていることが多く、被疑者の住所地から離れた警察署に逮捕されてしまうことも大いに考えられます。
そうなると、被疑者の家族などが逮捕に対してすぐに活動を開始できないおそれが出てきてしまいます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、京都支部を含めて全国13都市にある支部と連携をとりながら刑事弁護活動を行っています。
遠隔地に住む被疑者がロマンス詐欺事件を起こして京都府で逮捕されてしまった、自分は京都府に住んでいるが別の場所で家族が逮捕されてしまったといったご相談にも迅速に対応が可能です。
ロマンス詐欺事件の逮捕にお悩みの際は、まずは遠慮なくご相談ください。
パスワードの販売で不正競争防止法違反
パスワードの販売で不正競争防止法違反
パスワードの販売で不正競争防止法違反に問われた事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市山科区に住んでいるAさんは、会社Vが提供しているXという音楽・映像編集ソフトの有料版を利用していました。
Xは、IDとパスワードによって管理されており、有料版を利用している人はそのIDとパスワードを入れることで有料版の機能を使えるようになっていました。
Aさんは、「IDとパスワードをネットオークションに出せば小遣い稼ぎになる」という話を聞きつけ、有料版のXを利用できるIDとパスワードを会社Vに無断でネットオークションに出品し、合計で50人程度の相手にIDやパスワードをメールやメッセージアプリを通じて教えました。
しばらくして、Aさんの自宅に京都府山科警察署の警察官が訪れ、Aさんに不正競争防止法違反の容疑がかかっていることを告げると、Aさんは逮捕されてしまいました。
Aさんは、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に、自分にかかっている不正競争防止法違反という犯罪の中身と、今後の手続について詳しく相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・パスワードの販売と不正競争防止法違反
前回の記事で取り上げた通り、不正競争防止法では、特定の人以外に利用できないように営業上パスワードや暗号化などを用いて制限しているプログラムなどについて、その制限を効果を妨げるような指令符号(パスワード等)をインターネット等を通じて相手に渡す行為などが不正競争防止法の「不正競争」の1つとされ、いわゆる「プロテクト破り」などとも呼ばれています(不正競争防止法第2条第18号)。
今回のAさんの事例にあてはめて考えてみましょう。
まず、今回のAさんが利用していたソフトXの有料版は、有料版を利用している人がIDとパスワードを入れることで有料版の機能を利用できるようになっています。
つまり、有料版Xは、有料版の会員でない人が有料版を利用できないように制限しているものと考えられます。
不正競争防止法第2条第18号の条文と照らし合わせていくと、「他人」=会社Vが、「特定の者以外の者」=有料版の会員でない人に、有料版Xという「影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限」しているものと考えられます。
AさんによってパスワードがXの有料会員でない人に販売され渡されれば、その有料版の会員しか利用できないという制限は妨げられることになります。
すなわち、Aさんのパスワード提供によって本来特定の人以外に制限されているはずのプログラムの利用等が「当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能と」されることになります。
そしてAさんは、そのパスワードを販売してメール等によって販売相手にパスワードを送る=「指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為」をしています。
したがって、Aさんの行為は不正競争防止法のいう「不正競争」に当たると考えられるのです。
では、パスワードの販売によってAさんに不正競争防止法違反が成立するとして、Aさんにはどういった刑罰が考えられるのでしょうか。
不正競争防止法第21条第2項
次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第4号 不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第2条第1項第17号又は第18号に掲げる不正競争を行った者
今回の事例のAさんは、有料版Xのパスワードを販売することでお金を稼ごうとしたようです。
パスワードの販売によって出た利益は、会社Vに無断で不法に取得した利益ということになりますから、Aさんは「不正の利益を得る目的」があったといえるでしょう。
そのため、Aさんが不正競争防止法第2条第18号に違反したとすると、不正競争防止法第21条第2項第4号により、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれの併科という刑罰が科せられると考えられるのです。
刑罰を見ていただければわかる通り、不正競争防止法違反は非常に重い犯罪です。
だからこそ、被害者対応や取調べ対応などに早い段階から慎重かつスピーディーに活動していくことが重要なのですが、事件内容が複雑なことや、被害者である企業相手に対応しなければならないことに不安を抱える方もいらっしゃいます。
だからこそ、専門家である弁護士に相談・依頼するメリットも大きい刑事事件と言えるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は刑事事件専門の法律事務所ですから、不正競争防止法違反事件も安心してお任せいただけます。
まずはお気軽に、弊所弁護士までご相談ください。
不正競争防止法違反と「プロテクト破り」
不正競争防止法違反と「プロテクト破り」
不正競争防止法違反と「プロテクト破り」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市山科区に住んでいるAさんは、会社Vが提供しているXという音楽・映像編集ソフトの有料版を利用していました。
Xは、IDとパスワードによって管理されており、有料版を利用している人はそのIDとパスワードを入れることで有料版の機能を使えるようになっていました。
Aさんは、「IDとパスワードをネットオークションに出せば小遣い稼ぎになる」という話を聞きつけ、有料版のXを利用できるIDとパスワードを会社Vに無断でネットオークションに出品し、合計で50人程度の相手にIDやパスワードをメールやメッセージアプリを通じて教えました。
しばらくして、Aさんの自宅に京都府山科警察署の警察官が訪れ、Aさんに「プロテクト破り」をしたことによる不正競争防止法違反の容疑がかかっていることを告げると、Aさんは逮捕されてしまいました。
Aさんは、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に、自分にかかっている不正競争防止法違反という犯罪の中身と、今後の手続について詳しく相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・不正競争防止法と「プロテクト破り」
今回のAさんは、有料版のソフトウェアXを利用できるパスワード等をネットオークション等で販売していたようです。
一見するとどんな犯罪が成立するのか分かりづらい事例ですが、こういった事例では、Aさんの逮捕容疑でもある不正競争防止法違反という犯罪が成立することが考えられます。
不正競争防止法は、簡単に言えば、文字通り事業者間での不正な競争を防止し、公正な競争を確保するための法律です。
事業者同士は、お互い市場におけるライバルのように競い合っていますが、その競争が不正に行われるようになるとなんでもやり放題になってしまって企業や経済の信用が失われてしまったり、消費者が被害を受けてしまったり、経済の成長が滞ってしまったりすることが考えられます。
そういったことを防止するために、不正競争防止法では公正な競争を確保するための決まりやそれを破った時の罰則などを定めているのです。
こうした不正競争防止法の目的等を見ると、今回のAさんの行為のように、一個人の行動によって不正競争防止法違反になるようなことはなさそうに見えます。
しかし、不正競争防止法の中には、以下のような規定があります。
不正競争防止法第2条
第1項 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
第18号 他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為
第8項 この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法により影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録のために用いられる機器をいう。以下この項において同じ。)が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音、プログラムその他の情報を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
長くて分かりづらいかもしれませんが、簡単にまとめると、特定の人以外に利用できないように営業上パスワードや暗号化などを用いて制限しているプログラムなどについて、その制限を効果を妨げるような指令符号(パスワード等)をインターネット等を通じて相手に渡す行為などが不正競争防止法の「不正競争」の1つとされています。
このような行為は、プログラム等にかかっている制限(いわゆる「プロテクト」)を妨害することから、いわゆる「プロテクト破り」と呼ばれ、不正競争防止法第2条第17号・第18号(今回取り上げているのは第18号の条文)は、この「プロテクト破り」を助長する不正競争行為を禁止しています。
「プロテクト破り」という呼び方から、物理的に制限を破ったり、いわゆるクラッキングしてシステムに侵入したりするイメージがわくかもしれませんが、先ほど挙げたようにパスワードを提供するといった行為でも「プロテクト破り」による不正競争防止法違反となることに注意が必要です。
次回は、今回のAさんの事例がこの「プロテクト破り」に当てはまるのかどうか、条文とAさんの行為を照らし合わせながら具体的に検討していきます。
「プロテクト破り」などの不正競争防止法違反は、条文が複雑なこともあり、どういった容疑をかけられているのか理解するにも大変に感じられることもあるでしょう。
だからこそ、早い段階で弁護士に相談・依頼することが重要です。
京都府の不正競争防止法違反事件にお困りの際は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。