北方守護の神「玄武」が宿る、京都始まりの地・船岡山。
四季折々の自然や眺望、ふもとに点在する神社仏閣、史跡、お店も魅力的ですが、船岡山エリアを囲む“通り”に注目してみれば、散策の楽しみも倍増します。この連載では、時代と人と物語が交錯し、千年の都を織り上げた“通り”をフィーチャー。
第3回目は、「今宮通」をご紹介します。
厄除祈願! 京の三奇祭・やすらい祭の行列が練り歩く「今宮通」
今宮神社の楼門前を東西に走る「今宮通」は、賀茂川に沿う加茂街道から千本通に至るまで、約2kmの通りです。
通り名の由来となった今宮神社は、平安京が開かれるよりも前から鎮座していた疫神を祀る社に起源をもちます。平安時代中期の994(正暦5)年、一条天皇が都に蔓延した疫病や災厄を鎮めるため、疫神を神輿にのせて船岡山に祀り、紫野御霊会を行ないました。1001(長保3)年、船岡山に祀っていた疫神をふたたび元の地に還し、大己貴命 (おおなむちのみこと)、事代主命 (ことしろぬしのみこと)、奇稲田姫命 (くしなだひめのみこと)の三神を祀る神殿を新たに造り、ふたたび御霊会を行なったのです。このときに造営された“新しい宮”が「今宮」と呼ばれるようになりました。民衆のなかから生まれた、京の三奇祭のひとつである春の風物詩・やすらい祭でも知られます。
毎年4月の第2日曜に行なわれるやすらい祭は、桜が散るころに流行る疫病を鎮めるための祭礼。花傘を中心として赤毛や黒毛の鬼たちをはじめとした行列が、鉦や太鼓のお囃子に合わせて踊り歩き、今宮神社へ詣でます。桜や椿で飾られた花傘の下に入ると、一年間健康に過ごせると伝わります。
今宮神社から今宮通を東へ進む前に、ちょっと寄り道を。参道を南下すると、左手には、京都屈指の規模を誇る禅寺・大徳寺が広がります。時間にゆとりがあれば、静謐な空気が満ちる境内をそぞろ歩いてみては。
大徳寺から東側の通り沿いには、民家を中心に、スーパー、診療所、個人商店など、地域の人の暮らしの息づかいが聞こえてくるような、素朴な町並みが続いています。地下鉄烏丸線の北大路駅と、駅の上に建つイオンモール北大路店がもっとも人通りの多い一帯。気候が良ければ、駅前でお弁当や飲み物を買って、今宮通東端の賀茂川ほとりでピクニック気分を楽しんでみるのもおすすめです。
今宮通のおすすめ立ち寄りスポット
その1:【歩粉】
遠方からのリピーターも訪れる、焼き菓子の専門店。名物のスコーンをはじめ、月替わりのケーキ、自家製ジャム、和スイーツなどを盛り合わせたプレートとドリンクのセットメニューがおすすめです。選りすぐりの紅茶やコーヒーのほか、ジュースやハーブティーなど焼き菓子と相性抜群のドリンクがそろいます。
歩粉のご紹介記事はこちらから→
その2:【ぱんとおかし コハルビヨリ】
昔ながらのお店と新しいおしゃれなカフェやショップが共存する新大宮商店街内のベーカリー。元々はコーヒー専門店やパティスリーで働いていたご主人が独立して開いたお店です。小麦と酵母を選び抜いて作るパンと焼菓子のほか、プリン、パンナコッタなどスイーツも並びます。
ぱんとおかし コハルビヨリのご紹介記事はこちらから→
その3:【あぶり餅 一和&かざりや】
今宮神社の東門前、参道を挟んで向かい合う茶店「一和」と「かざりや」。小さくちぎった餅を竹串に刺し、炭火で香ばしくあぶって白味噌ダレでいただく「あぶり餅」は、厄除けのご利益もあるとか。「一和」の店内に現存し、応仁の乱で被災した人々を救ったと伝わる井戸も見どころです。