自席に紐で縛られた児童……大学で学んだこととかけ離れた現場に心を痛めています|みんなの教育技術

【相談募集中】自席に紐で縛られた児童……大学で学んだこととかけ離れた現場に心を痛めています

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現在特別支援学校1年目、大学で児童理解の大切さを学び、特別支援学校の教師は専門家であるという自負をもって赴任したという相談者の先生。しかし、赴任先の学校現場では、児童の離席を防ぐために自席に紐で縛るといったことが恒常化しており、専門性のかけらもないと感じてしまっているとのこと。この相談に、岡山県特別支援学校教諭の村井明美先生が答えてくれた、その回答をシェアします。

回答/岡山県特別支援学校教諭・村井明美

小学校や特別支援学校で、支援員・講師等を経て、現職。初任者指導教員として数年にわたり初任期の先生方と共に学ぶ。現在は教務主任を務めながら、『自立活動の指導』について校内外の先生方と研鑽を積んでいる。

落ち込む女性教師
イラストAC

Q.特別支援1年目。専門性のかけらもない現場に心を痛めています

大学を卒業し特別支援学校で勤務しています。大学での指導では「児童理解が大切」「温かい目と心で」「行動には必ず理由がある」などと特別支援教育の専門的な知識を叩き込まれてきました。
私自身、特別支援学校の教師は専門家だと思っています。
しかし、実際の現場での教育を見ると専門性のかけらもないと感じました。
離席する児童に対して、椅子と机に固定し長く丈夫な紐で机と椅子ごと縛ったり、嫌がっているにも関わらず嫌いな野菜を無理やり口に入れるなど、児童が教師の力でねじ伏せられていることが現状です。離席については教室のドアに鍵がついてあるので、教室から抜け出すことはできなくなっているため、あまり緊急性はなく、ただただ教師が本児童の離席によって困るというのが縛る理由です。
かつて、ある特別支援学級で離席する児童を長縄で縛りつける体罰がありニュースになりました。その教師は減給の処分を受けています。私のクラスでも今その状況と同じことが起こっているのではないかと毎日心を痛めています。
自閉症の子どもがほとんどで、自発的に発語でのコミュニケーションは難しいため、家庭で「縛り付けられた」と報告されないことをいいことに、教師から児童に対してなんでもやりたい放題なような気がします。保護者が目の前にいることを仮定した教育を提供するべきで、保護者に見せられない指導は本来するべきではないと思っています。
学級で4人の教師で見ているのですが、私以外の3人の教師は当たり前のように縛りつけることをするので1年目の私には誰にも相談できませんでした。体罰に該当している場合、今すぐやめさせたいです。(特支1年目・女性・20代)

A.まずは「このようにされているのはなぜだろう」と話題にしてみましょう

先生は悩みながらも、子どもたちのために毎日頑張っておられるのだと思います。「児童生徒理解が大切」「温かい心と目で子どもをみる」「行動には必ず理由がある」「保護者に見せられない指導はするべきではない」。先生が言われていることは、全てそのとおりです。大切なことを学んできておられますね。理想と現実が違うとき、学んできたことが現場で実践されずにいるとき、強い不安や怒りを感じる。それは、先生が子どもたちと、また、教職という職業と真摯に向き合っておられるからだと思います。そんな一生懸命な先生が「誰にも相談できませんでした」と書かれていることが、この相談をいただいてからずっと気になっています。

「おかしいな」と思える心を大切にする

先生が感じられた、違和感。ちょっとおかしいな、と感じることができる心はとても大切です。多数がそのようにしているから、とか、今までがそうだったから、という感覚ではなくて、ベテランと言われる年代になっても「おかしいな」と感じることに敏感でありたいと、私も思っています。言いにくいこともあるかもしれませんが、勇気をもって、その違和感を言葉にすることを、今後も大切にしてくださいね。

ほう(報告)れん(連絡)そう(相談)の順番を逆にする

「ほう(報告)れん(連絡)そう(相談)が大切」だと言われますが、私はこれを逆にするとよいと思っています。まずは、身近な、話がしやすい同僚に(相談)すること。(相談)ということにハードルを感じるなら、話しやすい同僚に対して『話題にする』だけでも良いです。そのときの話題の出し方は、「A先生はこんなことをしている」という伝え方ではなくて、「このようにされているのはなぜだろう」という伝え方が良いと思います。人の批判からはじめるのではなく、行動や発言の意味を一緒に考える≪指導支援相談仲間≫や、先生の気持ちを共有できる≪先生にとっての安心基地≫を見付けるのです。そして、一人では心細くても、仲間と共に然るべき人(教務主任、学部教頭、初任者指導教員など)に伝えてください。≪組織として相談できる先輩≫を見付けることも、子どもたちのことをみんなで見守り、より良い方向に導くために必要です。一人で苦しまず、抱え込まないでくださいね。先生が苦しんでいるのは学校として辛いことです。先生は学校のなかの大切な一人です。

座らせる、食べさせる、やめさせる。『~させる』と考えているうちは、うまくいかない

先生がおっしゃるように、「行動(や発言)の裏には必ず理由がある」と考えます。それは、子どもに対しても、同僚に対しても同じです。同じクラスの先生方も、指導に焦っているのかもしれません。しかし、『困っているのは教師ではなく、子ども自身』であるということを忘れてはいけません。きっと、子どもたちをよりよく育て、導きたいと思う気持ちは教員であるならば同じだと思います。迷ったり、間違えたりすることもある。うまくいかないこともある。でも、そのときには「子どもたちの豊かな人生を願っているのはみんな同じ」というゴールをもう一度チームで確認し、そのために今何ができるかを考えましょう。子どもの苦しさの背景要因を考えず、焦って指導すると『~させる思考』に陥りがちです。それをチームで防いでいくのです。どんなスペシャリストでも、1人での指導には限界があります。特に、特別支援教育はチームで指導をしていくことが大切です。
先生の周りに素敵なチームを作っていってほしいと思います。

どのようにチームを作っていくかが、今後の教員人生のカギ

先生がどのようなチームを作るか、どのようにチームを作っていくかが、今後の教員人生のカギになってくるでしょう。うまくいかないこと、苦しいことにぶつかることもあります。1人で解決できることの方が少ないかもしれません。私も同じです。でも、校内外の仲間に支えられて頑張っています。先生も支え合える仲間を見付け、前を向き、子どもの小さな成長にも感動でき、子どもと共に笑い合えるこの仕事に誇りをもってください。同じ支援学校教員として応援しています!


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