計画委員会の指導とは【やき先生のとっておき学級活動の基礎・基本】④
宮川八岐・元文部科学省視学官による「やき先生のとっておき学級活動の基礎・基本」の連載4回目。議題となる案を集めて「選定」したり、学級の全員にはかって「決定」したり、「学級会の準備」をしたり、「学級会の進行」をしたりするのが計画委員会です。今回は、その計画委員会の組織や運営の仕方について考えると共に、できるだけ児童が自発的、自治的に活動できるよう、適宜のオリエンテーションをどう工夫したらよいかについて、みなさんと一緒に考えてみましょう。
執筆/元文部科学省視学官・宮川八岐
目次
「学級の組織」のいろいろ
学級の組織には、伝統的に次の4通りがあります。
①「当番」の組織:掃除当番や給食当番、そして日直当番です。
②「生活班」の組織:①の組織にも活用されますが、教科の学習にも活用されます。
③「計画委員会」の組織:学級会の運営組織で、一般的に②の生活班が担当することが多いです。
④「係」の組織:当番の仕事以外の仕事を児童が見いだし、創意工夫して活動する組織です。
上記①②は、学校の生活指導として、教師が組織して指導することになりますが、③④は、児童の自発的、自治的な活動の組織で、学級会によって組織されることを特質としています。これらの組織編成については、昔から様々な方法があります。それらの是非について十分検討して指導に当たることが大切です。
「計画委員会」の組織編成上の課題
学級会の準備や運営に関する活動組織を一般的に「計画委員会」と言っています。その組織の編成の仕方にはいろいろありますが、ここでは典型的な2つの事例を取り上げます。
(1)各班の班長で組織する
いわゆる班長会ということでしょうか。生活班の各班の班長で計画委員会を構成して、効率よい運営をめざす教師の指導法です。かつて計画委員会と言わずに「議長団」と言っている学校もありました。現在もこうした方法が行われているところがあるかもしれません。しかし、どの児童にも学級会の運営に関わる仕事を経験できるようにすることが計画委員会の指導の基本です。
このことは、学習指導要領の昭和33年改訂で学級会活動が必修化されたねらいを踏まえ、教育課程としての指導の基本として、各学校の指導計画に明記してほしいことです。
(2)生活班が輪番で担当する
学級会の運営組織である計画委員会は、例えば、生活班などで輪番にして誰もが経験できるようにすることです。
6年生の担任として4月の家庭訪問で、女子児童の母親から、「1年生からずっと消極的な子と言われ続けて先生には迷惑を……」という話があった際、「リーダー的な経験をさせるようにしますので……」と述べ、早速、計画委員会の輪番制の指導に入りました。計画委員会の役割や活動内容などを指導し、司会進行の台本も作成しました。
すると、当該女子児童も司会の1人として司会の仕事を立派にやりきったのです。その女子児童は、中学校に進んでも学級委員に立候補し、剣道部に入り部長を務め、生徒会の役員まで自発的にするようになりました。母親から「6年生で学級会の司会を経験できたお陰で……」と感謝されたという経験があります。
これは 典型的なエピソードですが、「私も計画委員会の司会を務めることができた」という喜びと自己有用感や自信を得て、意欲的な態度が醸成されることにつながった意義について強調しておきたいと思います。
※生活班の編成方法については、いろいろな方法があります。しかし、適切でない編成方法が行われている実態もあり、望ましい学級経営の観点からの検討が必要であることから、改めて別の機会で解説することにします。
「学級会を充実させる計画委員会」の活動
学級会が行われ、決まったことが実践されるまでの過程(「事前」「本時」「事後」)において、計画委員会の組織的活動が重要な役割を担うことになります。教師の適切な指導助言が必要です。
一般的な活動の流れと指導のポイントは次のとおりです。
「議題集め」の段階で、教師からミニオリエンテーションとして、時期的なことや考えられる視点などを話し、場合によっては具体例を話題にすることも、問題意識を広めるうえで効果的です。また、「選定」の際にも、出された案をすべてそのまま提示するのでなく、合体できるもの、明らかに問題がある案などは、提案者にも理由などを説明して案に入れないなどの調整もします。
「計画委員会②と③」は、状況に応じて活動内容などを組み替えたり合体したりすることも考えられます。
「計画委員会③」などは、例えば、始業前の「○○タイム」などに行い、計画委員会以外の全児童が見学することも望ましい工夫です。
「発達の段階に応じた計画委員会」の指導
やき少年時代には、突然「外でソフトボールをしよう」とか、「裏山で遊ぼう」といった学級会の時間がありましたが、現在は、前述した展開過程を経るのが基本になります。しかし、小学校の場合、1年生の入門期、低学年、中学年以上といった発達の段階に応じた計画委員会への指導(教師の関わり方)が重要です。
現在、研究校で取り組んでいる形が次の4段階の指導です。
〈小1の4~6月頃〉の指導ポイント(上の写真①)
入学直後の1年生は、児童を教室の前の方に集めて車座にし、担任が学級会の司会をします。発表の姿勢や声の大きさなどを指導しながら進めるのです。入学後何日かして児童会が「1年生を迎える会をしてくれた日の4時間目に、例えば、早く友達の名前を覚えて仲良くなるように「どうぞよろしくの会」などのゲームをします。1時間の前半で楽しいゲームの「フルーツバスケット」と「楽しく行う約束」を1~2つ決めます。後半の時間で決めたゲームをします。
これら一連の進行を担任が進めるのです。つまり、進めてみせる、決めてみせる、そして、楽しいゲームをして、また、元の車座に戻します。「小学校では、このような勉強もします。<学級会と言います。サン、ハイ。>」と全員で唱和します。2回目以降は誰かに手伝ってもらうようにするのです。
〈小1の7月~2・3学期〉の指導ポイント(上の写真②)
ひらがなを習い終わる頃、教師がする司会や黒板記録などの仕事を児童に手伝わせながら進めるようにします。多くの学校では、お手伝いの組織を「司会グループ」と言い、やがて計画委員会になります。徐々に児童の言葉や活動を多くしていきます。学習指導要領の解説(旧指導書)では、「低学年では教師が中心になって」と言い続けてきています。実態によっては、かなりのところを児童ができるところもありますが、どの児童も「ぼくも(わたしも)先生と一緒にできたという経験」を与えるようにします。効率よくみんなで決めることができたという経験が、その後の一人一人の活動意欲につながるからです。
なお、この頃から下の写真のように学級会の事前の簡単な計画委員会を行うようにするのです。
〈小1の3学期末~小2〉の指導ポイント(上の写真③)
1年生が学校生活に慣れ、言語活動もそれなりに活発化してきた段階を見計らって、司会進行などの台本(マニュアル)のもとに司会2人で協力しながら学級会を進めることができるようになります。この段階でも司会を前面に出しながらも教師はすぐ後ろに位置し、一緒になって進行に当たることです。計画委員の紹介の際、教師も「司会と黒板記録のお手伝いをする○○先生です、△△になるようがんばります」などと役割紹介をすることをお勧めします。
〈小2後半から〉の指導ポイント(上の写真④)
この段階では、計画委員会として、それまでの経験や教師の指導を生かしながら司会や黒板記録などの役割を相互に協力し合って、あまり教師の手を借りないで自主的に活動できるようにします。もちろん必要に応じて「確認」「混乱の整理」「イメージの共有化のための問い」などの適切な助言をする必要があります。
まとめ
学級会が効率的に進められ、望ましい成果を挙げられるか否かは、計画委員会のもち方や能力といったものが大きく関わることになります。時間がない中でいかに効率化を図って準備や運営を工夫するか、学校経営と教師の指導力が問われることになります。自発的、自治的な活動とはいえ、すべてを休み時間や放課後だけでというわけにはいかないでしょう。始業前に学級経営の時間として「○○タイム」を設定し、集団活動の場の確保を工夫する学校体制も必要です。
今回は、特に計画委員会の組織編成のあり方、学級会の事前・本時・事後の活動における計画委員会の役割、発達の段階に応じた指導などについて取り上げました。次回の内容においても取り上げることになりますので、ご期待ください。
宮川八岐(ミヤカワ・ヤキ)
埼玉県公立学校教員、教頭、草加市教育委員会、草加市立氷川小学校長を経て、平成6年から文部省初等中等教育局小学校課教科調査官(主に特別活動、生徒指導、学校図書館等)に。平成12年から同局視学官。平成16年度国立妙高少年自然の家所長、平成17~20年度まで日本体育大学教授、平成21~27年度まで國學院大學人間開発学部教授を務める。
構成/浅原孝子 イラスト/畠山きょうこ