小5国語科「固有種が教えてくれること」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小5国語科「固有種が教えてくれること」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都板橋区立志村第四小学校・髙桑美幸
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元の学習材「固有種が教えてくれること」では、筆者である今泉忠明氏が自身の論を展開する上で、資料を効果的に活用していることを捉える力を育てます。
また、文章全体の構成を理解した上で、筆者の主張を捉えるために要旨をまとめることにも適した学習材です。文章を俯瞰的に見ることを通して、筆者の論の進め方について児童が考えをもつことを目指します。
これらを踏まえ、既習事項を生かしながら、資料を活用することの価値について学ぶことのできる授業展開が望まれます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、説明的な文章である「固有種が教えてくれること」(以下「固有種」)を読むことを通して、筆者の論の進め方や資料を用いた文章の効果について、分かったことや考えたことを話し合ったり、文章にまとめたりする言語活動を位置付けます。
「固有種が~」は、日本の固有種を題材にした理科的な文章であり、典型的な双括文となっています。また、題名そのものが問いの形となっており、その答えを求めていくような学習の流れが期待されます。さらに、冒頭の扉絵に挙げられたニホンノウサギとアマミノクロウサギから、多様な動物の事例を基に「固有種」というテーマに迫っていくことを、導入の段階で押さえることができます。
読者の興味を惹きつけながら、一つの考えを述べるための論理の上に様々な資料が用いられていることが、「固有種が~」の最大の特徴です。地図や年表、写真やグラフなど多岐にわたる資料について、文章と対応させながら読み進めていく必要があります。
それらを踏まえ、言語活動につなげるための読み方として、大きく二つのポイントがあります。
一つは文章全体の構成を押さえ、要旨を捉えることです。筆者の主張がどこに述べられているのか、それぞれのまとまりにはどのような事例がどのように述べられているのかを、丁寧に押さえていきましょう。
もう一つは、論の進め方を支えている資料の活用のしかたについて確かめることです。文章のどの部分と対応しているのか、必要があれば文章には書かれていない情報を読み取る経験をすることで、説明の工夫について理解を深めることができます。
また、「固有種」の筆者である今泉忠明氏は、多くの子供たちにとって馴染みのある「ざんねんないきもの事典」(高橋書店、2016年)の監修者でもあり、児童にとって親しみのある人物であると考えられます。説明的な文章を学習する際に、筆者の情報は大変重要です。筆者の論の進め方を考える際の手助けとなることもあるので、筆者がどのような人物であり、どのような思いで書いているのか、その意図に触れたり思いを馳せたりする声かけができるとよいでしょう。
単元の最後には、筆者の論の進め方について、自分の考えをまとめる言語活動を設定します。
筆者が読み手である私たちに伝えたいことを、どのような説明のしかたで伝えようとしているのか、さらにそれは説得力をもって伝えることができているのかを、学習したことを基に整理していきます。
学級の友達と互いに書いたものを読み合うことで、納得できた部分を確かめたり、反対に分かりづらかったところを知ったりと、多角的に文章を読む視点を養うことも期待されます。
4. 指導のアイデア
本単元は、“固有種とは何たるか”について学習をすることがねらいではありません。教材文を読むことを通して、筆者の論の進め方や資料を用いて説明することの効果について、自分なりに考えをまとめることをねらいとしています。そのための方法として、前述した二つのポイントが鍵となります。
まずは、要旨を捉える活動を設定することです。低学年においては、「重要な語や文を考えて選び出す」こと、中学年においては「中心となる語や文を見つけて要約する」ことを経験しています。
高学年として要旨を捉えることは、学習指導要領上の〔構造と内容の把握〕にあたり、低中学年の〔精査・解釈〕とは過程が異なりますが、系統性を考えると重要な学習経験の流れであるといえます。
高学年において要旨を捉えるということには、文章全体の構成を正確に捉えたり、筆者の主張がどこに述べられているかをつかんだりする力が必要となってきます。ただ、実際の授業の場では、児童が「要旨とは、何をどのように書けばいいのだろうか」と迷うことが予想されます。
その解決策は、筆者の主張がどこに書かれているかを押さえること、文章構造図を作成し、それぞれの段落にどのようなことが書かれているかを整理していくことです。題名から考えられることを入れ込むことも有効です。
次に、多様な資料について押さえる際に、その目的を明確にしながら本文との関連を確かめていく活動も設定します。図表やグラフなどを用いた文章については、高学年においては書くことの領域でもその力を育成していくこととなります。資料があることでどのような効果があるのかを考えるだけでなく、本当にその資料は適切なのか、よりよい資料に置き換えることはできないかを考えることも、説得力のある文章とは何かを考える上で重要な学習経験となるでしょう。
それらを通して、必要感のある学びとなるよう、課題解決的な授業展開の流れになることが期待されます。初発の感想を共有し、児童がなぜそのように感じたのか、どうしてその部分が心に残ったのかを整理していくことで、学習材をどのように読むべきかという視点が明確になってくるはずです。
授業時間を効率よく使うためにも、活動や発問を精査していく必要のある単元です。
5. 単元の展開(4時間扱い)
単元名: 資料を用いた文章の効果を考えよう
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① 単元の扉絵や題名から、文章の内容を予想する。
② 教材文を読み、初発の感想を書く。
③ 初発の感想を基に、学習課題を確かめる。
④ 新出漢字や語句の確認をする。
・第二次(2時)
⑤ 文章全体の構成を整理し、文章構造図を作る。
⑥ 要旨をまとめる。
(3時)
⑦ 資料と本文との関連する部分について押さえる。
⑧ 資料の効果について、考えたことをまとめる。
(4時)
⑨ 筆者の論の進め方や説明の工夫について、考えたことをまとめる。
⑩ 単元の学習を振り返る。
6. 全時間の板書例と指導アイデア
第1時は、初めて教材文を読むことを通して、学習課題を確かめる時間です。
イラスト/横井智美