子供たちとの出会いを大切にするには?「教師という仕事が10倍楽しくなるヒント」きっとおもしろい発見がある! #14|みんなの教育技術

子供たちとの出会いを大切にするには?「教師という仕事が10倍楽しくなるヒント」きっとおもしろい発見がある! #14

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教師という仕事が10倍楽しくなるヒント~きっとおもしろい発見がある!~
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帝京平成大学教授

吉藤玲子
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教師という仕事が10倍楽しくなるヒントの14回目のテーマは、「子供たちとの出会いを大切にするには?」です。子供たちとの出会いは、学校現場において一番大切にしたいことです。様々な子供たちとの出会いが仕事を続ける原動力になり、自分を成長させていきます。今回は、初めてクラスを担任した時や異動して初めての日、そして管理職になって初めての日など子供たちと初めて出会った時についてのお話です。

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執筆/吉藤玲子(よしふじれいこ)
帝京平成大学教授。1961年、東京都生まれ。日本女子大学卒業後、小学校教員・校長としての経歴を含め、38年間、東京都の教育活動に携わる。専門は社会科教育。学級経営の傍ら、文部科学省「中央教育審議会教育課程部社会科」審議員等、様々な委員を兼務。校長になってからは、女性初の全国小学校社会科研究協議会会長、東京都小学校社会科研究会会長職を担う。2022年から現職。現在、小学校の教員を目指す学生を教えている。学校経営、社会科に関わる文献等著書多数。

子供たちと初めての出会い

私は、公立小学校に就職をする時に私立小学校からの就職の話もあり、迷ったことがあります。その時に、相談した高校の恩師から「公立小学校は異動があるからいいですよ。そちらのほうがあなたに向いているのでは」と言われました。その当時は、よく意味も分からないまま公立小学校の道を選びましたが、振り返ってみると、やはり異動があったのは自分の人生の中で大きな意味があったと感じます。もちろん、1つの小学校の中で長年働き続けることもすばらしいことだと思います。でも異動があるということはそこで一度いろいろなことがリセットできます。そして、多くの違った職場を経験することができます。

初めて教壇に立った時

私は、学級増に伴う採用でしたので、初任からいきなり5年生の担任でした。教育実習も3年生でしたので、高学年のイメージがあまりもてず、初めての教師、初めての高学年とドキドキして学校へ行ったのを覚えています。

みなさんは、初めて教壇に立った時のことを覚えていますか? 緊張で少し怖い思いで開けた教室の扉でしたが、子供たちとは、すぐに何の違和感もなく楽しく出会うことができました。初日に学年主任の先生から、「若いってそれだけで魅力だから」と言われました。本当にそうなのです。子供たちにとって、若い先生は、お兄さん、お姉さんの感覚なので、大学を出たばかりの新採の先生は、その若さが強みになります。そのことを知っておいてください。

最初に何を話したかは正直なところ、覚えていません。でも、真剣に私の話を聞いてくれた子供たちの表情は今でもよく覚えています。そのスタートが38年間も教員を続けることができた原動力となりました。もし日々の教員生活の中で何か壁にぶち当たったら、初心に返るではないですが子供たちと初めて出会った時のことを思い出してみるのもよいかもしれません。

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異動した時の出会い

異動は必ずしも希望が叶うものではありません。自宅から遠くなってしまったり、小規模校がいいのに大規模校に異動してしまったりということはよくあることです。でも、何事も縁です。せっかくの縁なのですから、プラスに捉えて新しい学校での初日を楽しみましょう。

子供たちといっしょに遊ぼう

担任発表は、始業式の後に校長先生が全児童の前で伝えます。そして、担任する学級の子供たちの前に教師が立ちます。子供たちは「どんな先生だろうか」と興味関心をもって新しい先生を見ます。隣の学級の先生が以前からその学校にいる人気の先生だと、担任発表の時に「わぁーっ」という子供の声を聞くこともあります。もちろん校長先生は、「心の中で感想をもちましょう。声を上げないように」などと言うのですが、子供たちはそんなことはできません。他のクラスの子供たちの喜びの声を聞くと、自分が子供たちに残念な思いをさせてしまったような気がします。でもそんなことは、次の日の授業でいくらでも挽回できます。異動した時はリセットできるチャンスです。前任校での課題をどう自分なりに解決していくか、考え実行することができます。

ともかく明るく挨拶すること、それが肝心です。そして、子供たちと早く仲良くなれるようにいっしょに遊びましょう。学級活動の時間などを使って、簡単なゲームをすることもお勧めします。しりとりや伝言ゲームなど簡単なゲームでよいのでいっしょにやってみることです。

私は、教員時代、異動後に5年生や6年生の担任をすることが多くありました。6年生は、入学式の手伝いのため前日登校をするので、そこでだいたいあの先生が新しい先生かなと分かってしまいます。前からその学校にいて高学年を担任する先生は、人気のある男性の先生が多く、私は女性で、もう1つの学級は男性であることが多かったので、男性の先生が好きそうな男子が「隣のクラスはいいなぁ」という表情をするのを毎回見てきました。でもだから余計、1日目、2日目で何とか子供たちを自分に引き付けたいと思いました。

まず、大きな声で明るく話すこと、女性の先生でよかったと女子の人気を得ること、次にスポーツやゲームをして活発さを男子にアピールすることです。何度異動しても、異動して初めて子供たちに会う時は緊張します。でもだからまたリフレッシュでき、自分も成長できると思います。

黒板に子供たちへのメッセージを

私は、絵があまり上手ではないので、初めてクラスを担任した時などは、黒板に「進級おめでとう!」という言葉と「1年間よろしく!」という意味を込めたメッセージを書いていました。私が知っている若手教員は、毎回クラスの初めに「ライオンキング」のライオンのイラストの絵を上手に描き、漫画のように噴き出しで子供たちにメッセージを書いていました。

始業式の後に担任発表があり、その翌日に子供たちは、どんな先生かなと思いながら教室に入ってきます。その時に、黒板にメッセージがあるのとないのとでは、ワクワク感が違います。担任初日の時は、ぜひ、黒板を有効活用してください。

プレゼンテーションソフトなどで自分のプロフイールを紹介してもおもしろいかもしれません。バイオリンが得意な先生は、子供たちに弾いて聞かせていました。リコーダーを演奏していた先生も知っています。子供たちにとっては、担任はとても重要な存在なのです。ぜひ、自分にしかできないアピールの方法を工夫してください。

管理職になってからの異動

管理職になってからの異動は、子供たちにどう受けるかよりも教職員の目線や地域、保護者など大人の目線を気にしました。長く勤務していた地域内での異動であれば、多少前評判もあり、やりやすいのですが、突然知らない土地へ異動になった時は、すべてが初めてなので新規採用教員と同じ感覚で、緊張します。

まずは異動する学校の情報を集めます。ホームページ以外にも周年誌などでその学校の歴史や行事について知っておきます。次に子供たちに会う前に前任の管理職と挨拶回りをするので、地域に好印象をもってもらえるように努めます。お花見など、学校が始まる前の行事にも参加しておきます。まずは、地域を知ることが大事です。教職員についても年齢構成から教科の専門性、学級経営についてなど、情報をしっかり得ておきます。そのうえで学校経営方針なども事前にある程度作成しておきます。

管理職はいろいろとやりたいことがあるものです。でも自分がやりたいことを行う前に土台となる学校の現状についてよく知っておかなくてはいけません。この状況把握がとても大切だと私は思っています。

「チーム学校」という言葉がありますが、校長が1人でがんばっても決して学校は動きません。校長と校長の意見に賛同し、共に改革してくれる人たちがいなければ学校は回らないのです。どれだけそれに賛同する人物がいるのか、いなければ校長の力でどの程度人を集められるか、考えなくてはいけません。私は、幸い、副校長の時から自分を助けてくれる教員や職員に恵まれました。どこの学校でも主事さんに本当に助けてもらいました。

管理職は学級担任ほど子供たちといっしょにいる時間は多くありません。管理職の異動があった場合、6年生の子供たちは、始業式前の登校日に新しい校長や副校長を目にすることが多いのですが、私はこの時の子供たちの目線がとても気になりました。担任発表と同様、自分の前任が評判もよく人気のある管理職であるなどすると、どのように子供たちと接するか考えます。そして、自分のよさやアピールの方法、始業式の話を練ります。何歳になっても子供たちとの初めての出会いは新鮮です。

管理職になっても、副校長であれば担任の代わりに教室に入ることがありますし、校長も授業をすることがあります。その時も、やはり緊張するものです。すべての子供の名前を覚えているわけではありませんし、子供たちは好奇の目を向けてきます。でも、そこで楽しい授業をしたり、子供たちとよい関係ができたりすると、学校生活は楽しくなります。

まずは子供を認めよう

私は今、大学に勤務していますが、自分の実践研究の資料やデータ収集のために、小学校現場で授業をすることがあります。突然、知らない先生が授業に来て、授業をするわけですから、子供たちは最初、大変集中します。その集中をどこまで保てるかが勝負です。

先日、ある学校で中華学校との交流前授業を行い、春節とお正月の違いなど映像資料を交え、授業しました。その時にずっとお年玉の値段にこだわっている子供が1人いました。私は、もっといろいろな文化の相違点に気付いてほしかったのですが、その子供はずっとお年玉のみでした。どうしたものかと思いましたが、彼の探究意欲を認めて、否定することなく授業を進めました。そうしたら、最後にはこちらが期待していた以上の感想を書いてまとめていました。改めて、どんな出会いもまずは、自分の意を通すことでなく、相手を認めることが大切なことを学びました。

子供たちとの出会いは、学校現場において一番大切にしたいことです。

構成/浅原孝子 イラスト/有田リリコ

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