小学校の不登校・登校渋り対策に! 登校するのが楽しくなる「ぬいぐるみ」のススメ|みんなの教育技術

小学校の不登校・登校渋り対策に! 登校するのが楽しくなる「ぬいぐるみ」のススメ

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大阪府公立小学校教諭

松下隼司

文部科学省の調査によれば、不登校の小中学生は、昨年度(2022年度)に29万9000人となり、10年連続で増え、過去最多となっています。不登校の理由は、「先生と合わない」「身体の不調」「生活リズムの乱れ」「いじめ」など、多岐にわたっています。

居心地の良い学級の中で楽しく授業を受けることができれば、遅刻や不登校は少しずつ減っていきます。そのためにはもちろん、教師力の向上が不可欠とはいえ、すぐに達成できることではありません。

毎朝登校してきた子どもたちが、少しでも、教室に入ることを楽しく感じられるようにしたいと願う松下先生。前回に引き続き、楽しいアイデアを紹介してくれました。

指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司

劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。

教室に入るのが楽しみになる工夫 その1

毎日、毎時間の授業が楽しく、安心感のある居心地の良い学級であれば、遅刻や不登校は少しでも減っていくはずです。そのためには、教師の授業力を向上させることが一番大切なのですが、すぐにはできることではないのが現実です。

そこで私は、少しでも、毎朝登校してきた子どもたちが教室に入ることを楽しく感じるような工夫を考え、まずは、「のれん」を教室の入口のドアにかけてみることにしました。

子どもたちがメッセージやイラストをかいたのれんです。のれんをくぐりながら、楽しそうに教室に入ってくる子どもが増えました。

のれんの実践については、こちらをご覧ください。
毎朝、登校するのが楽しくなる!教室入り口にかける「のれん」のススメ

しかし、のれんの実践も毎朝やっていると、わくわく感が薄まってきました。どんなに美味しいご飯でも、毎日食べていると慣れていってしまうのと似ています。

そこで、新メニュー(新しい仕掛け)を考えました! 教室の入口のドア近くの前に、かわいい「ぬいぐるみ」を置いてみることにしたのです。

教室に入るのが楽しみになる工夫 その2

ぬいぐるみは、修学旅行先の水族館で買ったものです。

ぬいぐるみを見た子どもたちは、「かわいい~!」と喜んでくれました。寝不足で元気がない子どもも、笑顔になりました。のれんを導入した時以上に楽しそうな子どももいたほどです。

朝から楽しく教室に入ってくる子どもたちの姿を見ると、私も嬉しくなります。

そしてさらに、ぬいぐるみの近くに、「おはよう♡」と書いた吹き出しを掲示してみました。

ピンクの色画用紙に文字を書いてラミネートしたものを、マグネットクリップで挟んでいます。

かわいいぬいぐるみの「おはよう♡」の挨拶に、子どもたちはさらに笑顔になりました。私がぬいぐるみに嫉妬するほどに(笑)、子どもたちは喜んでくれました。

このぬいぐるみは、どう進化したと思いますか?

どんどん上に重ねていきたい!

いいね! ブレーメンの音楽隊みたいだね!

と展開していったのです。子どもたちとの楽しい会話も弾んでいきます♪

そして翌朝、サメのぬいぐるみの上に、ネコのぬいぐるみを重ねました。

かわいく重なる動物のぬいぐるみに、メロメロになる子ども。

先生、明日は?

と、続きを楽しみにしてくれる子も出てきました。

多くの子どもたちは、「ぬいぐるみを増やして上に重ねる」ことを予想し、期待すると思います。子どものその期待に答えるのはもちろん鉄板ですし、あえて「重ねるぬいぐるみの順番を変える」だけでも、さりげない変化に気づいた子どもは笑ってくれます。「ぬいぐるみを縦に重ねるのではなく横に並べる」ようにしても、意外性を感じて、子どもは喜んでくれるでしょう。

さらに、「吹き出しの言葉を変える」のもおすすめです。「おっは~♪」や「グッドモーニング♪」など、挨拶の言葉を変えたり、「会えて嬉しいニャ~」と気持ちを伝える言葉に変えたりすると、子どもたちは喜んでくれるかと思います。それぞれの人形1つ1つに吹き出しをつけてみても、楽しくなりそうですね!


学級経営において、ぬいぐるみやパペットを使用するような実践は、低学年向けのイメージがありました。しかし実際は、思春期を迎えようとする高学年の子どもたちも、私を驚かせるほど、ぬいぐるみに喜んでくれました。子どもたちの意外なかわいらしい一面を見ることができたのも、嬉しい発見でした。

 


松下隼司先生

松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。

イラスト/したらみ 横井智美

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