「ペーパーティーチャー」とは?【知っておきたい教育用語】|みんなの教育技術

「ペーパーティーチャー」とは?【知っておきたい教育用語】

連載
【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】

近年、社会問題にもなっている「教員不足」。この問題を解消するため、教員免許を持ちつつも現在は教壇に立っていない「ペーパーティーチャー」を現場に呼び込もうとする動きが増えています。教員不足の背景から、その解決の糸口となるペーパーティーチャーの可能性を考えてみましょう。

「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム

ペーパーティーチャーとは

「ペーパーティーチャー」とは、教員免許を有しながら教職に就いていない人(潜在教員)を表す呼び方です。主に教員免許の取得後、教員採用試験を受けなかった(もしくは受からなかった)ことで、一般企業などに勤めている社会人が「ペーパーティーチャー」と呼ばれる人たちの多くを占めています。

加速する「教員不足」問題

2022年に文部科学省が発表した「『教師不足』に関する実態調査」によると、全国の公立小学校・中学校・高等学校・特別支援学校のうち、1897校で2558人の教員が不足しています(2021年度始業日時点)。教員不足の主な要因は、「見込み数以上の必要教師数の増加」と「臨時的任用教員のなり手不足」の2つの観点から認識されています。

①見込み数以上の必要教師数の増加
・産休・育休取得者数が見込みより増加
・特別支援学級数が見込みより増加
・病休者数が見込みより増加

以上のような状況で人手が求められる一方…

②臨時的任用教員のなり手不足
・講師登録名簿登載希望者数の減少
・もともと臨時的任用教員として勤務していた者の正規採用が進んだこと
・臨時的任用教員のなり手がすでに他の学校や民間企業等に就職済みであることによる、講師名簿登録者の減少
・講師名簿登録者や退職教員が教員免許状を更新しておらず失効した、もしくは更新手続きの負担により更新がなされていないことで、採用ができなかったり本人が辞退する

以上のような理由から、学校へ配置する教員の数に欠員が生じてしまう実態があります。

教員不足について、学校業務改善アドバイザーの妹尾昌俊氏をはじめとした有識者たちが、2022年5月9日に文部科学省内で記者会見を行い、政策を提言しました。提言した内容には社会人経験などに応じた採用試験でのインセンティブを強化するといった、ペーパーティーチャーを教育現場に呼び込むための具体的な取組も明示しました。

教員免許更新制の廃止によって、自動的に復活する教員免許

昨年から、教員免許更新制が廃止されました。これにより、施行日(2022年7月1日)時点で有効な教員免許状は有効期限のないものに変更されました。ちなみに、教員免許状には、新免許状と旧免許状の2種類があります。

新免許状:更新制導入後(2009年4月1日以降)に初めて免許状の授与を受けた者が保有する免許状

旧免許状:更新制導入前(2009年3月31日以前)に初めて免許状の授与を受けた者が保有する、もともと有効期限のない免許状

新免許状の場合、退職などによって失効した現職教員や、有効期限内に更新手続きをせず失効したペーパーティーチャーなどの非現職教員がいますが、各都道府県の教委に再授与申請手続きを行うことで、有効期限のない免許状を授与されます。

一方、旧免許状を保有しているペーパーティーチャーについては、有効期限を過ぎても失効せず、「休眠」扱いとされます。以前なら、休眠となっていた免許状をもう一度有効なものにするには、更新講習を受講する必要がありました。しかし、更新制の廃止によって、手続きせずとも休眠状態の免許状が自動的かつ無料で有効になるよう変更されました。

ペーパーティーチャーを教育現場に呼び込む動き

教員不足の深刻化や教員免許更新制の廃止をうけて、ペーパーティーチャーへの注目が高まっています。多くの自治体が教育委員会を中心にセミナーを開催し、採用試験への挑戦や講師登録の後押しをするとともに、先輩教員の講義や模擬授業の実践などを行っています。ペーパーティーチャーの採用が教員不足解消の大きな突破口になると期待されています。

▼参考資料
文部科学省(PDF)「『教師不足』に関する実態調査 令和4年1月
文部科学省(PDF)「令和4年7月1日以降の教員免許状の扱いについて
教育新聞(ウェブサイト)「『失効』した教員免許状、再授与申請で生涯有効に 文科省
讀賣新聞オンライン(ウェブサイト)「『ペーパーティーチャー』を教壇へ…教員不足が深刻化、潜在教員向けセミナー続々

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】

教師の働き方の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました