管理職のせいで職員室の空気が悪くなります【現場教師を悩ますもの】|みんなの教育技術

管理職のせいで職員室の空気が悪くなります【現場教師を悩ますもの】

連載
諸富祥彦の「現場教師を悩ますもの」
特集
職員室の人間関係あるある:リアルな改善策を集めました!

「教師を支える会」代表

諸富祥彦

「教師を支える会」を主宰する『現場教師の作戦参謀』こと諸富祥彦先生による連載です。教育現場の実状とともに、現場教師の悩みやつらさを解決するヒントを、実例に即しつつ語っていただきます。

【今回の悩み】トップダウンの管理職にどう対処すれば?

新しく着任した管理職が、保護者の意見やクレームをひどく気にするタイプで、さまざまな仕事がトップダウンで押し付けられてきます。とにかく丸投げがひどくて、誰も何も意見を言わなくなる空気の悪い職場になってしまいました。

このような現場でどのように働いていったら良いのか? 自分の考えは正しいのか、間違っているのかすら分からなくなってしまい、毎日、苦しいです。

管理職のせいで職員室の空気が悪いときの、現場の職員がとれる対策と改善に向けたアドバイスをお願いします。


(小学校教諭・ 4年生担任45歳、教職歴:22年)

たしかにトップダウンはなじまないが…

小学校の先生方を見ていると、小学校の組織運営にトップダウンはなじまないと感じることが多いです。本来、どの世界でも「仕事」というものは上司から部下に対して仕事を振り分ける、トップダウンで押し付けられるものですが、その点では小学校という職場は、他とは少し違う空気が流れているようです。

小学校では「私たちの職場は私たちが、自分たちで作り上げていくものだ」という和気あいあいとした風土がとりわけ好まれる、ということです。

これは現場経験の長い管理職はともかく、教育委員会など行政にいた時期が長い管理職にはやりづらい職場だといえます。ですから、この相談を聞いたときにも、もしかしたらこの管理職の先生は、行政組織のごく普通の感覚で仕事を振っているだけなのではないかと思いました。

小学校の職員室の独特な雰囲気を忘れてしまっていたり、逆に反感を持っている結果なのかもしれません。それでミスマッチが起きているように思えました。

小学校の職場はスタバ型が向いている

小学校の職場は「スターバックスコーヒー」と似ているんです。スタバでは、スタッフ全員でお店を盛り上げていく、だからスタッフ一人ひとりが主役になって力を発揮することを大切にしています。そのために店長は細やかな心配りをする。そんな雰囲気がお店を利用するこちら側にも伝わってきます。

小学校も同じです。子供たち一人ひとりが主役になれる学級経営が求められているからこそ、先生自身も一人ひとりが主役になることを大切にした職場づくりをしないと、うまくいかないのだと思います。民主的に進めることが職場づくりのコツと言えるのかもしれません。

小さな事でも、管理職がトップダウンで指示するよりも先生方自身が調整して決めていったほうが、だんぜん雰囲気はよくなります。

小学校は職場のサイズが中学や高校に比べて小さいです。だから一人ひとりの創意工夫が必要になります。「この学校は先生方が中心なんだ」という雰囲気を作り、一人ひとりの意見を尊重していくやり方が、 教頭や校長に求められます。

それを忘れて、外部に目が行き始めると、先生方は「うちの管理職は外の目ばかり気にして」とぼやき始めます。これは小学校の先生方の悩みの定番中の定番です。つまり「私たちのほうを向いていない」というわけです。

先生たちから遠慮せず働きかけを

ご相談の先生からも、管理職へ自分たちのプランを積極的に提案していただきたいと思います。小学校の先生は、自分たちが主役になりたい割には、妙に管理職との上下関係を意識しすぎて「校長には言えません」とか「校長の指示を待って」と引いてしまう傾向があるのです。

この「妙に遠慮する空気」も壊していかないと「雰囲気の悪さ」は変わっていきません。もっと自分たちの意見を出していいのです。クラスでも高学年になると「先生! 私たちの係はこう考えたんですけど!」と、遠慮なく数人で提案してくる子供たちがいますよね。意外とそういう子たちの存在で、学級経営が変わったりするものです。職員室も同様です。

先生方も身構えずに「校長先生、私たちの部会でこう考えてみたのですけれど!」と提案していいのです。校長も「(えっ、それって校長が決めることなんだけどな。うーん、でもたしかにいい考えかも)じゃ、やってみようか!」と、なるはずです。こんな風にしてスタッフの意見が通る職場にしていきましょう。

力のあるミドルリーダーが中心になって管理職にもわかってもらうのです。そんなボトムアップの働きかけにぜひトライしてください。


諸富祥彦●もろとみよしひこ 1963年、福岡県生まれ。筑波大学人間学類、同大学院博士課程修了。千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表を務め、長らく教師の悩みを聞いてきた。主な著書に『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『図とイラストですぐわかる教師が使えるカウンセリングテクニック80』『教師の悩みとメンタルヘルス』教室に正義を!』(いずれも図書文化社)などがある。

諸富先生のワークショップや研修会情報については下記ホームページを参照してください。
https://morotomi.net/

取材・文/長尾康子

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
諸富祥彦の「現場教師を悩ますもの」
特集
職員室の人間関係あるある:リアルな改善策を集めました!

教師の働き方の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました