京都の寺院には、数々の龍図があります。
私が調べたところ、京都市内だけでも25ヶ所ほど確認できました。
最も多いのが法堂や本堂などの天井に描かれた龍図です。
そこで今回は、通常公開・期間限定公開・外から覗くことができる、天井に描かれた龍図をエリアごとに紹介しますので、龍図めぐりの参考にしてみてくださいね。
京都市北区エリア(大徳寺・閑臥庵)
北区では、大徳寺と閑臥庵(かんがあん)に龍図があります。
大徳寺の龍図
南に北大路通り、船岡山を望む位置にある大徳寺は、臨済宗大徳寺派の大本山で、京都有数の広大な寺域を持っています。
山内には、龍源院・高桐院・大仙院など20余りの塔頭がありますが、そのほとんどが
境内には自由に入ることができ、散策コースとしてもおすすめです。
大徳寺の由緒
大徳寺は、正和4年(1315)に大燈国師宗峰妙超(だいとうこくししゅうほうみょうちょう)が開きました。
後醍醐天皇が朝廷の勅願道場としたり、花園天皇が帰依したりしたことで、とても栄えていましたが、応仁の乱で荒廃してしまいます。
しかし、一休宗純(とんちの一休さんです)が復興し、豊臣秀吉が織田信長の葬儀を行ったことで、再び栄え、戦国時代には、大名がこぞって塔頭を建立しました。
大徳寺法堂の幡龍図
大徳寺の龍図は法堂にあります。
幡龍(ばんりゅう)とは、天に上る前のとぐろを巻いた状態の龍の姿を指します。
大徳寺の幡龍図は、狩野探幽が35歳このころに手掛けたもので、法堂のゆるいドーム状になった天井に描かれています。
幡龍図の真下にある敷瓦の上で手を叩くと、天井の龍も共鳴して「ズウ~ン」という鳴き声のような音が聞こえることから、「鳴き龍」と呼ばれています。
こちらの幡龍図は通常非公開ですが、2024年は辰年にちなみ、期間限定公開が行われています。
⛄京の冬の旅 非公開文化財特別公開 大徳寺 法堂・仏殿⛄
🛎仏殿は「京の冬の旅」初公開!🛎天井画「雲龍図」は「鳴き龍」とも称されます。
仏殿(重文)は寛文5年に再建されたもので、釈迦如来坐像を安置。
再建前の仏殿から引き継がれた天井画「天人散華図」も残っています。… pic.twitter.com/3gEhkxJaj6— 京都観光Navi《京都市観光協会》 (@kyo_kanko) December 20, 2023
公開期間は2024年3月18日(月)までとなっています。
大徳寺の基本情報
- 住所 京都市北区紫野大徳寺町53
- 境内自由(大徳寺本坊は通常非公開)
期間限定特別公開
- 拝観料 800円
- 拝観時間 10:00~16:30(16:00受付終了)
最寄り駅
- 市営地下鉄「北大路」駅 徒歩約17分
- バス「大徳寺前」 徒歩約5分
バス・電車乗り換え案内 https://www.arukumachikyoto.jp/
閑臥庵の龍図
閑臥庵は、黄檗宗の寺院で、創建は江戸前期と伝わっています。
閑臥庵の由緒
後水尾法皇が、王城鎮護のために貴船の奥の院から鎮宅霊符神(ちんたくれいふしん)を勧請し、宇治にある黄檗宗・万福寺の千呆(せんかい)を開山として創建しました。
鎮宅霊符神とは、陰陽道最高の神とされ、厄除や方除けのご利益があると言われています
閑臥庵の龍図
閑臥庵の龍図は、中国風の山門を入ってまっすぐ奥にある本堂の天井にあります。
ご本尊がお祀りされている天井一杯に龍が描かれていますが、作者ははっきりとわかっていません。
閑臥庵の見どころ
閑臥庵には、山門をくぐってすぐのところにある羅漢像や安倍晴明開眼と伝わる北辰鎮宅霊符神(鎮宅霊符神本廟内)のほか、チベット密教の構想によって作られた鮮やかな「砂曼荼羅」などを拝観することができます。
また閑臥庵では、素敵な日本庭園を眺めながら、閑臥庵独自の京懐石普茶料理が楽しめます。
鞍馬口地蔵の後は、その横に位置する閑臥庵を訪れました。ここは黄檗宗寺院ですがどちらかというと普茶料理の料理屋です。北辰鎮宅霊符神という陰陽道最高の神が祀られていますが、姿も名前もかっこいいです。拝観料プラス500円でバーのようなところで庭を見ながら抹茶をいただきました。 pic.twitter.com/omCR8dlGK6
— ざしきわらこ (@8t7zrNIH0uEKZTG) August 28, 2021
閑臥庵の基本情報
- 住所 京都市北区烏丸通鞍馬口東入ル278
- 拝観時間 13:00~20:00(19:30受付終了)
- 拝観料 500円/お抹茶・お菓子付き1200円(14:00~16:30)
京懐石普茶料理
営業時間
- 昼 12:00~15:000(最終入店13:00)
- 夜 17:30~21:00(最終入店19:00)
2~3日前までに要予約
- 075-256-2480
- 予約受付時間 11:00~21:00
最寄り駅
- 市営地下鉄「鞍馬口」駅 徒歩約3分
- バス「出雲路橋」 徒歩約4分
バス・電車乗り換え案内 https://www.arukumachikyoto.jp/
京都市左京区エリア(南禅寺・金地院・蓮華寺)
左京区エリアでは、南禅寺とその塔頭である金地院、そして蓮華寺の龍図を紹介します。
南禅寺の龍図
南禅寺は、臨済宗南禅寺派の大本山で、石川五右衛門が景色の美しさに「絶景かな、絶景かな」と言ったという三門でも有名な寺院です。
南禅寺の由緒
南禅寺は、正応4年(1291)に亀山天皇が無冠普門禅師を開山として創建されました。
室町時代には、京都五山(寺院の格付けのようなもの)により、「五山之上」という最も高位に格付けされ、優れた禅僧を輩出しています。
江戸時代初期の住職には、徳川家康の参謀として武家諸法度や禁中並公家諸法度の制定にも関与した金地院崇伝がいます。
現在は境内全体が国の史跡に指定されていて、1年を通して多くの観光客が訪れる人気スポットとなっています。
南禅寺の見どころ
南禅寺と言えば、巨大な三門です。
別名「天下龍門」と呼ばれる三門は、寛永6年(1628)に藤堂高虎が、大坂夏の陣で戦死した家臣を弔うために寄進したものです。
国宝に指定されている方丈は、御所の建物が下賜されており、大方丈の狩野派の絵師による障壁画(デジタル復元)はとても雅なきらびやかさです。
また近年ではインスタ映えスポットとしてとても人気があるのが水路閣。
赤レンガのアーチがノスタルジックで、ついつい写真を撮りたくなる素敵な場所です。
南禅寺が特に美しく彩られるのが、春の桜と秋の紅葉シーズンです。
三門から眺める桜は、まさに絶景!
広い境内をゆっくりと散策し、時間をかけて楽しんでいただきたい寺院の1つです。
法堂の幡龍図
南禅寺の龍図は、三門からまっすぐ進んだ奥にある法堂の天井に描かれています。
明治期に火災で焼失した法堂は、明治42年(1909)に再建されていますが、その際日本画家の今尾景年によって幡龍図が描かれました。
法堂は通常公開がされていませんが、外から覗き見ることは可能です。
南禅寺の基本情報
- 住所 京都市左京区南禅寺福地町86
- 境内拝観自由
方丈庭園・三門
- 拝観時間 8:40~16:30(12月1日~2月28日)/8:40~17:00(3月1日~11月30日)
- 拝観料 一般600円/高校生500円/小中学生400円
最寄り駅
- 市営地下鉄 「蹴上」駅 徒歩約10分
- バス 「東天王町」「南禅寺・永観堂道」 徒歩約10分
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金地院の龍図
金地院は、鷹峯で荒廃していたものが、以心崇伝(金地院崇伝)により現在地に移築され、南禅寺塔頭として再興された寺院です。
禅文化を体現したようなしっとりとして落ち着いた雰囲気を持つ金地院には、小堀遠州が手掛けた「鶴亀の庭」や重要文化財である「八窓席」のほか、長谷川等伯の襖絵などが現存しています。
東照宮の雲龍図
金地院の中には、徳川家康の遺言により、家康の衣鉢と念持仏が納められた東照宮が作られています。
現在はすっかり色あせてはいますが、創建当時は日光東照宮のように色鮮やかな美しさが見られたそうです。
この東照宮の拝殿天井に描かれているのが、狩野探幽作の雲龍図です。
残念ながら拝殿内には入れませんが、外から雲龍図を見ることはできます。
金地院の基本情報
- 住所 京都市左京区南禅寺福池町86-12
- 電話 075-771-3511
拝観時間
- 9:00~16:30(12月~2月)
- 9:00~17:00(3月~11月)
拝観料
- 方丈庭(鶴亀の庭) 500円
- 八窓席と方丈内(要事前予約)700円
最寄り駅 南禅寺と同じ
蓮華寺の龍図
蓮華寺は、洛北大原へ向かう国道沿いにある寺院です。
参拝される方も少なくひっそりとたたずんでいる静かな寺院ですが、初夏の青もみじと秋の紅葉はとても美しく、知る人ぞ知る穴場スポットとなっています。
蓮華寺の由緒
蓮華寺は、元は今の京都駅辺りにあった寺院でしたが、応仁の乱で荒廃していました。
それを加賀藩前田家の家老・今枝近義が父の菩提を弔うために現在地に移築し、再興しました。
再興する際には、書家で詩人の石川丈山や絵師の狩野探幽、儒学者の木下順庵、黄檗宗の隠元禅師らの有名な文化人たちも協力したそうです。
蓮華寺の見どころ
創建当時のままの山門から庫裏までの参道では、もみじやイチョウが出迎えてくれます。
庫裏から書院へ上がると石川丈山が手掛けたとされる池泉回遊式庭園が見えます。
書院から見える庭は、柱が額縁のように見えるいわゆる額縁庭園としても有名で、最近では紅葉シーズンに訪れる方も増えてきたそうです。
龍図のある本堂へは書院から渡り廊下を通っていくことができます。
本堂の雲龍図
本堂の天井に描かれた雲龍図は、もともとは狩野探幽が描いたものでした。
しかし明治時代にその龍図が失われたため、昭和53年(1978)に仏師の西村公朝氏によって復元されました。
雲龍図をゆっくりと拝見するなら、紅葉時期は避けて、青もみじの季節がおすすめです。
もちろん紅葉も楽しみたいという方は、秋にお出かけください!
蓮華寺の基本情報
- 住所 京都市左京区上高野八幡町1
- 電話 075-781-3494
- 拝観時間 9:00~17:00
- 拝観料 大人500円/中学生以下は無料
最寄り駅
- 叡山電鉄 「三宅八幡」駅 徒歩約5分
- バス 「上橋」 徒歩すぐ
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京都市右京区エリア(天龍寺・妙心寺)
嵐山のある右京区エリアは、京都屈指の観光地で1年を通じて多くの観光客でにぎわっているエリアです。
この地域で紹介する寺院は、嵐山の中心エリアにある天龍寺と右京区の東に位置する妙心寺です。
天龍寺の龍図
天龍寺は嵯峨嵐山のふもとにある寺院で、世界文化遺産に登録されています。
夢窓礎石が手掛けた特別名勝の池泉回遊式庭園は、嵐山を借景にした非常の雄大な景色となっています。
天龍寺の由緒
天龍寺が創建されたのは、暦応2年(1339)
足利尊氏が、後醍醐天皇の菩提を弔うために、夢窓国師を開山として開いた禅寺です。
京都五山の1位という高い格を与えられた名刹として栄えますが、兵火などにより何度も焼失し、次第に寺域が縮小されました。
現在私たちが見られる伽藍の大部分は明治時代後期以降に再建されたものです。
創建当時は今の約10倍もの広さ(東京ドーム21個分!)があったそうです
日本で最初の史跡・特別名勝に指定された壮大な庭園
天龍寺の最大の見どころは、夢窓疎石が作庭した曹源池庭園です。
庭園の中央に配置された曹源池を中心とした池泉回遊式庭園で、嵐山や亀山を借景としています。
よく写真で見られる曹源池庭園の風景は、手間の大方丈から撮影されたものですが、実は大方丈と反対側、つまり山側からも見ることができるのです。
山側にある遊歩道からは、庭園を見下ろす形になり、またいつもとは違った印象の素敵な景色が見られます。
法堂の雲龍図
天龍寺の龍図は、法堂の天井にあります。
天龍寺は、幕末の蛤御門の変(禁門の変)の際に長州藩が本陣を置いていましたが、当時は犬猿の仲だった薩摩藩が激しい砲撃をしたために、伽藍のほとんどを焼失しました。
その時唯一残ったのが、雲居庵禅堂。
この禅堂を移築し、仏堂を兼ねたものが現在の法堂です。
移築当時、法堂の天井には、明治期に活躍した鈴木松年氏の雲龍図が描かれいたそうですが、損傷が激しく、平成9年(1997)に天龍寺開山夢窓国師650年遠諱記念事業の一環として、日本画家の加山又造氏により新たな雲龍図が描かれました。
五爪の龍
こちらの龍は、5本の爪を持っています。
他の龍図と比べていただくとよくわかりますが、ほとんどの龍が3本の爪になっているはずです。
実は、五爪の龍は中国の皇帝のみが使用を許されたそうで、大変恐れ多い存在だとされてきました。
なぜ五爪の龍が描かれたのかはわかっていません。
おそらく後醍醐天皇への畏敬の念や天龍寺という由緒ある寺院への崇敬の気持ちからではないでしょうか。
八方睨みの龍
ただ見ているだけでも迫力満点の龍ですが、この龍をじっと見ながら移動すると、龍の目が追いかけてくるように見えます。
どの場所にいても龍ににらまれている…ちょっと怖いような、不思議な感覚を味わうはず。
京都…天龍寺『八方睨み龍』
私にはこう見せてくれる
金色で虹色🌈
確か墨絵な筈
(間違ってたらゴメン🙇♀️)
どうなってるの💦 pic.twitter.com/JcsWKj4HEx— パトラ (@c8l8COGbNsfgA37) June 6, 2023
八方睨みの龍には、隠し事ができないような気がする!
とりあえず心の中で誤ってしまう私です
天龍寺の基本情報
- 住所 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
- 庭園受付・北門受付時間 8:30~17:00(受付終了16:50)
参拝料
- 庭園(曹源池・百花苑) 高校生以上 500円 / 小中学生 300円 / 未就学児 無料
- 諸堂(大方丈・書院・多宝殿) 庭園参拝料に300円追加
法堂「雲龍図」特別公開
- 土曜日・日曜日・祝日のみ公開(春夏秋の特別参拝期間は毎日公開)
- 9:00~16:30(受付終了16:20)
- 1人500円
- 雲龍図参拝休止日 2024年1月3日/2月3日/10月28~30日/12月31日~2025年1月2日…
最寄り駅
- 京福電鉄「嵐山」駅 徒歩すぐ
- JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅 徒歩約13分
- 阪急電車「嵐山」駅 徒歩約15分
- バス 「嵐山天龍寺前」徒歩すぐ/「京福嵐山駅前」徒歩すぐ
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妙心寺の龍図
妙心寺の境内は、東西に約500m、南北には約600mという広さがあります。
沙羅双樹の寺として有名な東林院や枯山水庭園「阿吽の庭」がみられる大心院、椿や紅しだれ桜、蓮の花など季節の花が美しい退蔵院などの塔頭もあり、1日かけてゆっくりと参拝したい素敵なお寺です。
妙心寺の由緒
妙心寺は、鎌倉後期の花園上皇の御所があった場所で、花園上皇の発願により、大徳寺を開いた宗峰妙超(しゅうほうみょうちょう)の弟子・関山慧玄(かんざんえげん)を開山として創建された寺院です。
建武4年(1337)のことです。
以降盛衰がありながらも、現在では臨済宗妙心寺の大本山として全国に3400余りの寺院を持ち、また地元では「西の御所」として広く親しまれています。
2つの龍図
妙心寺は、三門・仏殿・法堂が一直線に並ぶ禅宗特有の建築様式となっています。
そのうち龍図があるのは、三門と法堂です。
妙心寺の三門は、東福寺・大徳寺の三門に次いで古い建築で、国の重要文化財に指定されています。
三門の龍図
三門の東にある急な階段を上って楼上に上がると、柱から梁、天井など一面に色鮮やかな絵が描かれています。
中央には観世音菩薩像がお祀りされ、その手前の天井には見事な龍が!
他にも鳳凰や飛天(空中を飛んでいる天女・天人)、迦陵頻伽(がりょうびんが:頭は人、体が鳥)などが描かれています。
@三門は通常非公開となっています
法堂の雲龍図
法堂の天井に描かれた雲龍図も大変色鮮やかで美しい龍図です。
こちらの雲龍図は、狩野探幽が55歳の時に手掛けた作品と伝わっています。
製作には、8年という長い歳月をかけたそうで、実はこちらの龍も「八方睨みの龍」なのです。
#妙心寺
法堂の天井の雲龍図は狩野探幽によるものです。
また、このお堂の隅に置かれた妙心寺鐘🔔は698年の作ということで、ヒビが入って今はつかれませんが、以前録音した音を聞くことができ、心が洗われる感じがしました。大庫裏(厨房)も見学しましたが、雲龍図はこちらの撮影可のもの。4/2 pic.twitter.com/dZJZlLUT7n
— NANA&吾郎 (@nanagoro3) April 6, 2022
どこから見ても龍と目が合うばかりでなく、見る方向によって龍が空へ上っていくようにも、空から下りてくるようにも見える、躍動感にあふれる龍図です。
妙心寺の基本情報
- 住所 京都市右京区花園妙心寺町1
- 拝観時間 9:00~12:00 / 13:00~16:00(配管チケット販売は15:30で終了)
- 拝観料 大人700円/小中学生400円
最寄り駅
- JR嵯峨野線「花園」駅 徒歩約5分
- バス最寄り 「妙心寺北門前」徒歩約2分/「妙心寺前」徒歩約4分
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京都市上京区エリア(相国寺)
京都御所や二条城がある京都市中心部の上京区では、相国寺の龍図が有名です。
相国寺の龍図
相国寺は、京都御所の北、同志社大学のすぐ隣に位置する臨済宗相国寺派大本山です。
相国寺周辺は、今出川通や烏丸通など車通りの多い道がありますが、一歩境内へ入ると、とても静かな空間が広がっています。
相国寺の由緒
相国寺を創建したのは、室町幕府第3代将軍・足利義満です。
開山は夢窓疎石で、京都五山では、天龍寺に次ぐ第2位に列せられています。
創建当時は、広大な寺域を誇り、現在の地図で言えば、北は上御霊神社の森・西は大宮通り・東は寺町通りに渡っていたそうです。
しかし、応仁の乱をはじめとする戦火により、たびたびの焼失・復興を繰り返す中で、現在の境内となりました。
相国寺自体は、観光地としてはあまり有名ではありませんが、定番の観光スポットである金閣寺(鹿苑寺)や銀閣寺(慈照寺)は、相国寺の境外塔頭です。
相国寺の見どころ
相国寺は、中心的な伽藍が一直線に配置された禅宗寺院特有の建築様式となっています。
南の総門をくぐり、参道をまっすぐ歩いていくと見えてくるのが、龍図のある法堂です。
法堂
法堂は、慶長年間に豊臣秀頼により再建されており、現存する法堂としては日本最古のものです。
法堂内の天井には、のちに紹介する幡龍図が生き生きと描かれています。
方丈
法堂の北にあるのが方丈。
方丈も江戸時代、天命の大火によって焼失し、文化4年(1807)に開山堂・庫裏とともに再建されています。
方丈内には数々の襖絵や杉戸絵がありますが、中でも注目していただきたいのが「白象図」です。
江戸時代の絵師である原在中の作と伝わっていますが、当時のままの鮮やかな色合い、そして少し微笑んだような表情を眺めていると、こちらまで楽しい気持ちになってきます。
それにしても、江戸時代の人が、象をどこでどうやって見たのでしょう?
方丈の裏には、白砂が美しい枯山水庭園があります。
枯山水庭園は、開山堂にもありますので、両方を見比べるのも面白いです。
京都 相国寺…禅宗のお寺です。
法堂の🐉鳴き龍を体験しました。八方睨みの龍の下で手を叩くと反響が返って、ググッと龍が鳴くという。やってみましたが鳴きませんでした💦
方丈から見る庭、杉戸の白象、開山堂の枯山水庭園…禅宗のお寺はシンプルで落ち着いていて、とても好きです😊 pic.twitter.com/cpKE6jjxOQ— のぴのぴ (@wwNopicoww) November 11, 2018
承天閣美術館
方丈の北東に位置する場所には承天閣美術館があります。
承天閣美術館は、昭和56年(1981)に相国寺創建600年記念事業の一環として、相国寺をはじめ、金閣寺・銀閣寺などの塔頭に伝わってきた美術品を保存・保管し、展示公開、修理、研究することを目的に建てられました。
館内には、伊藤若冲や長谷川等伯、円山応挙らの作品など多くの文化財が保管・展示されています。
法堂の龍図
相国寺法堂の龍図は、狩野光信によって描かれた幡龍図です。
龍の姿は、彩色も鮮やかではっきり見ることができます。
こちらの幡龍図は別名「鳴き龍」とも呼ばれ、堂内の中央付近で手を叩くと、「カラカラ」という音が返ってきます。
法堂は通常公開は行われていませんが、特別公開時には内部入って幡龍図を見ることができます。
⛄京の冬の旅 非公開文化財特別公開 相国寺 法堂・方丈⛄
🛎「京の冬の旅」6年ぶりの公開!🛎日本最古の法堂には、狩野光信筆の「蟠龍図」が描かれ「鳴き龍」として知られています。… pic.twitter.com/CJLSU8Bd30
— 京都観光Navi《京都市観光協会》 (@kyo_kanko) January 9, 2024
2024年3月18日(月)まで、冬の特別公開が行われています!
相国寺の基本情報
- 住所 京都市上京区今出川通烏丸東入ル
- 境内自由
- 参拝時間(特別拝観時) 10:00~16:00(閉門6:30)
- 参拝料 一般・大学生800円/中高生700円/小学生400円/未就学児無料
最寄り駅
- 地下鉄「今出川」駅 徒歩約8分
- バス「同志社前」徒歩約5分
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京都市東山区エリア(建仁寺・東福寺・泉涌寺・瀧尾神社)
京都屈指の観光地・東山で龍図が見られるのは、建仁寺と泉涌寺、東福寺そして龍図ではありませんが、注目の龍が見られる瀧尾神社です。
実は地主神社にも八方睨みの雲龍図があるのですが、現在工事中で拝観できないため、今回は除いています。
建仁寺の龍図
建仁寺は、祇園からほど近くにある寺院ですが、一歩境内に入るだけで繁華街の中心にあるとは思えない静かな空間が広がっています。
近くには八坂神社や知恩院もある人気の観光エリアであるにもかかわらず、なぜか建仁寺を訪れる人はそれほど多くありません。
おかげでゆっくりと散策できるので、実は私のお気に入りの散策スポットの1つなんです!
建仁寺の由緒
建仁寺は、鎌倉幕府第2代将軍・源頼家が寺地を寄進し、栄西(えいさい・ようさい)禅師を開山として創建された寺院です。
栄西禅師は、日本へお茶を伝えた人物としても有名で、建仁寺にはお茶の木がたくさん植えられています。
境内には、半夏生が美しいことで知られている両足院や甘茶で有名な霊源院、もう一つの龍図がある禅居庵などの塔頭があります。
建仁寺の見どころ
建仁寺の方丈は通常公開されていて、本物を忠実に再現したデジタル高精細の複製品である、俵屋宗達の「風神雷神図」や長谷川等伯の襖絵などが間近で見ることができます。
写真撮影もOKなので、ちょっと得した気分になります!
また、緑が美しい潮音庭や禅宗の四大思想(地水火水)を表した○△□乃庭、広々と気持ちの良い枯山水庭園「大雄苑」なども見どころです。
そして、肝心の龍図があるのが、方丈から渡り廊下を通っていくことができる法堂内にあります。
法堂の双龍図
法堂の天井一面に描かれた双龍図は大迫力です。
彩色も鮮やかでとても美しい龍図。
それもそのはず、こちらの双龍図が描かれたのは、平成14年(2002)なのです。
手掛けたのは小泉淳作氏で、建仁寺創建800年の記念事業として作成されました。
2匹の龍は、一方が口を開けていて、もう一方が口を閉じている「阿吽」の形をとっています。
この双龍図は、写真撮影がOK (三脚は禁止)ですので、ぜひいろんな角度からじっくりと撮影してみてください。
禅居庵の龍図
建仁寺塔頭の禅居庵の摩利支天堂内の天井にも龍図があります。
堂内が暗く、経年劣化もしているため、見えにくくはなっていますが、しっかりと龍のお姿を拝見することはできます。
建仁寺へお越しの際は、禅居庵の龍にも会ってみてくださいね。
建仁寺の基本情報
- 住所 京都市東山区大和大路通四条下ル小松町
- 境内自由
- 方丈拝観時間 10:00~17:00(16:30受付終了)
- 拝観料 一般600円/中高生300円/小学生200円
最寄り駅
- 京阪本線「祇園四条」駅 徒歩約7分/阪急京都線「河原町」駅 徒歩約10分
- バス 「東山安井」徒歩約5分/「南座前」徒歩約7分/「祇園」・「清水道」徒歩約10分
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泉涌寺の龍図
泉涌寺は、東山の南に位置する月輪山にある寺院です。
お山の参道に沿って塔頭が点在し、緑が豊かでとても気持ちの良い境内となっています。
泉涌寺の由緒
泉涌寺の前身は、斉衡2年(855)に左大臣・藤原緒嗣が建てた仙遊寺です。
建保6年(1218)に、宇都宮信房からこの地を寄進された俊芿(しゅんじょう)が開山となり、寺地の一角から清水が湧き出たことで、泉涌寺と名前を改めました。
泉涌寺は、大変皇室とのかかわりが深く、歴代の多くの天皇のご葬儀が泉涌寺で行われ、月輪陵となっていることから、御寺(みてら)と呼ばれています。
泉涌寺の見どころ
泉涌寺の入口にあたる大門は、境内伽藍の最も高い位置にあり、参道を真っすぐと下りた先に本堂があるという「下り参道」になっています。
大門から本堂を望むと、奥行きと広さを感じながらも、ちょっと不思議な気持ちになってきます。
楊貴妃観音堂
大門を入ってすぐ左にあるのが、楊貴妃観音堂(ようきひかんのんどう)です。
玄宗皇帝が楊貴妃を偲んで作らせたという楊貴妃観音は、とても神秘的で美しいお姿をしています。
美人祈願や縁結びなどのご利益があると言われ、特に女性の参拝者が後を絶ちません。
泉山七福神
泉涌寺の塔頭は、山内に点在しており、それぞれに七福神(厳密には九福神)がお祀りされています。
それを巡拝する行事が1月の第2日曜日に行われる泉山七福神めぐりです。
当日に参拝できなくても、御朱印は1年を通じていただけるので、興味のある方はぜひ一度巡拝してみてください。
泉涌寺の龍図
泉涌寺の龍図は、仏殿と舎利殿の天井に描かれています。
仏殿の龍図は通常公開されていますが、舎利殿の方は特別公開の時のみ見ることができます。
仏殿の龍図
仏殿の龍図は、狩野探幽が手掛けた雲龍図です。
とても高い天井に見える龍。
炭の濃淡だけで描かれているのにすごく迫力があります。
狩野探幽は、仏殿のご本尊・過去現在未来を表す三世仏(釈迦如来・阿弥陀如来・弥勒如来)の後ろにある白衣観音図も描いているので、ぜひご覧ください。
春の涅槃会には、長さ約16m、幅約8mという日本最大の涅槃図が掲げられる(長すぎて折ってあるのです!)を見ることもできます。
私は一度見ましたが、想像よりもずっと大きくてびっくりしました。
舎利殿の龍図
本堂のすぐ後ろに位置する舎利殿には、通称「鳴き龍」と呼ばれる幡龍図があります。
描いたのは狩野派の狩野山雪。
舎利殿の中で手を叩くと龍が鳴いているような不思議な反響音がします。
ただ、手を叩く場所やその時の環境(人が多いと聞こえないようです)などに左右されるそうです。
龍の鳴き声は簡単には聞けないということなのですね。
舎利殿は通常非公開ですが、辰年に限り期間限定で公開されています。
また、2024年「京の冬の旅」記念として、源氏物語図屏風風御朱印帖の販売と「鳴龍」の刺しゅう入り御朱印の授与も実施されています。
御朱印集めが趣味の方はぜひいただいてください。
とっても格好良い御朱印です!
泉涌寺の基本情報
- 住所 京都市東山区泉涌寺山内町27 総本山御寺泉涌寺
参拝受付
- 12月~2月 9:00~16:30(16:00受付終了)
- 3月~11月 9:00~17:00(16:30受付終了)
拝観料
- 伽藍拝観料(仏殿・楊貴妃観音堂ほか)大人500円/小中学生300円
- 特別拝観(御座所・御座所庭園・海会堂)大人500円
- 舎利殿期間限定特別拝観料 900円(通常公開を含む)
最寄り駅
- 京阪本線「東福寺」駅/JR奈良線「東福寺」駅 徒歩約25分
- バス 「泉涌寺道」徒歩約15分
バス・電車乗り換え案内 https://www.arukumachikyoto.jp/
東福寺の龍図
紅葉の名所として全国に名を知られている東福寺の法堂にも迫力ある龍図があります。
通常は非公開ですが、外から覗くことは可能ですし、期間限定で公開されることも多いです。
東福寺の由緒
東福寺は、鎌倉時代中頃に摂政・九条道家が円爾弁円(えんにべんえん)を開山として創建しました。
奈良最大の規模であった寺院・東大寺と優れた教えで隆盛を極めた興福寺に習い、それぞれの寺院から「東」と「福」の字を取って「東福寺」と名付けたそうです。
当時の京都で最大の規模を目指した東福寺は、嘉禎2年(1236)の着工から19年もの歳月を費やして完成されたものです。
伽藍完成後数十年の間に数度の火災に遭いますが、その都度再興し、室町時代以降は災禍に見舞われることもなく、京都最大の禅寺として栄えました。
しかし、明治に入り仏殿や法堂、庫裏など多くの伽藍を焼失します。
実は東福寺には大仏があったのですが、惜しくも明治の火災で失ってしまいました。
今も法堂内には、焼け残った大仏の左手がお祀りされていますが、その大きさは縦2mあまり…。
もしも焼けていなければ、京都にも大仏がいらっしゃったかもしれません。
デカすぎんだろ…(東福寺新大仏の手と化仏) pic.twitter.com/k00ThwhlD1
— 頁(おおがい) (@Notpoteo) April 8, 2023
東福寺の紅葉
東福寺の見どころといえば、もちろん紅葉!
通天橋から見下ろすと一面真っ赤な紅葉で、全山燃えるような景色が見られます。
ただ、紅葉シーズンはこの素晴らしい景色を見ようと、とんでもなく多くの方がいらっしゃるので…。
地元民の1人としては、すぐ近くにあるのに見たくても見られない紅葉なのです。
贅沢だけど、地元民だけが楽しめる日を作ってほしいと結構本気で思っています。
紅葉だけじゃない!東福寺の見どころ
東福寺の魅力は紅葉以外にもたくさんあります。
まずは、本坊の「八相の庭」
名作庭家・重森三玲が手掛けたこちらの庭は、巨石が配された枯山水庭園の南庭、北斗七星を表した石が並ぶ少し小さめの東庭、市松模様が可愛い北庭にサツキと大きめの市松が素敵な西庭と、それぞれに異なった表情が楽しめます。
お気に入りの庭を眺めながらすわっていると、時間がゆっくりゆっくり流れていくようです。
塔頭にも見どころがいっぱい!
東福寺の周辺には、塔頭が点在していますが、それぞれが個性のある寺院となっています。
初夏には桔梗が美しく咲き誇る天得院に雪舟ゆかりの芬陀院(ふんだいん)や筆供養が行われる筆の寺・正覚庵、2mを超える不動明王がお祀りされている同聚院(どうじゅいん)花手水が素敵な勝林院などなど。
東福寺へお参りの際は、ぜひ塔頭の方もお参りしてみてくださいね。
法堂の蒼龍図
東福寺法堂内の天井に描かれた蒼龍図は、堂本印象氏によって描かれたものです。
体長約54m、胴回りは6.2mという巨大な龍を、堂本印象氏はわずか17日で描き上げたという渾身の龍図。
特別公開の際には、ぜひぜひご覧ください。
東福寺の基本情報
- 住所 京都市東山区本町15丁目778
- 境内自由
拝観時間(本坊庭園・通天橋・開山堂)
- 12月第1月曜日~3月末 9:00~16:00(受付終了15:30)
- 4月~10月末 9:00~16:30(受付終了16:00)
- 11月~12月第1日曜日 8:30~16:30(受付終了16:00)
拝観料金
- 本坊庭園 大人500円/小人300円
- 通天橋・開山堂 大人600円/小人300円(11月11日~12月3日:大人1,000円/小人300円)
- 本坊庭園・通天橋・開山堂共通拝観 大人1,000円/小人500円(11月11日~12月3日は共通拝観がありません)
最寄り駅
- 京阪本線・JR奈良線「東福寺」駅 徒歩約10分
- バス 「東福寺」徒歩約4分
バス・電車乗り換え案内 https://www.arukumachikyoto.jp/
瀧尾神社の龍
東山区エリア最後の紹介は、瀧尾神社の龍です。
こちらは龍図ではなく、天井に飛んでいる(?)龍(木彫り)なのですが、辰年の今年は大注目されていています。
メディアでも隠れた初詣スポットとして何度も取り上げられたため、今は龍を見るために並ばなくてはならないほど。
おかげで、お正月期間のみの一般公開が、延長に延長となり、今のところは2月末まで公開されることとなっています。
瀧尾神社の由緒
瀧尾神社の創建年代は詳しくわかっていませんが、平安時代末期にはすでにあったと考えられています。
現在の場所には、豊臣秀吉の時代に移ったと伝わっています。
ご祭神は、
- 大己貴命(おおなむちのみこと:大国主命)
- 弁財天
- 毘沙門天
で、仕事運向上・商売繁盛などのご利益があるとされています。
拝殿天井の巨大龍
龍がいるのは、本殿の正面にある拝殿の天井です。
体長8mという大きな龍は、何本もの木を組み合わせた寄木造りでできています。
今にも動き出しそうなリアルな龍は、迫力満点!
まるで生きているかのような龍の姿に、その龍が毎晩拝殿を抜け出して、近くを流れる今熊野川(一ノ橋川)へ水を飲みに行ったとの伝説まで生まれたそうです。
一時は、龍が抜け出せないように天井に金網を張っていたとか。
細部にわたるまで見事な龍の彫刻、公開されている間にぜひご覧になってみてください。
瀧尾神社の基本情報
- 住所 京都市東山区本町11丁目718
- 境内自由
- 拝殿公開期間 2024年2月29日まで 9:00~16:00(木曜日を除く)
- 拝観料 500円
最寄り駅 京阪本線・JR奈良線「東福寺」駅 徒歩約3分
京都龍図めぐりまとめ
京都でおすすめの龍図をエリアごとに紹介しましたが、あなたが気になった龍図はありましたか?
ひとくちに龍図と言っても、作者や描かれた年代、描かれている場所によって、全く異なったものに見えることもあります。
私自身も、今回紹介した龍図をコンプリートできていません。
通常非公開の龍図は、タイミングが合わないと見られないので、結構難しいんですよね。
でも2024年は辰年!
今年中には、すべて拝観してやろうと、心に誓っています!
あなたもこの機会に、ぜひ迫力ある龍図をご覧になってくださいね。
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