【レビュー】JCAT NETカードFEMTO - Audio Renaissance

【レビュー】JCAT NETカードFEMTO

【更新】canarino Fils ― ついにデジタル・ファイル再生の原器を手に入れたぞ

 USBに関しては既にJCAT USBカードFEMTOを導入していたのだが、現状Windows PCでしか使えないDiretta/LAN DACのポテンシャルを最大限に引き出すためには、やはりLANへの配慮が必要不可欠だと考えた。

 というわけで、canarino FilsにJCAT NETカードFEMTOを導入した。
 「PCにオーディオ用LAN端子を追加するPCIカード」の選択肢がどれだけあるかは正直わからないが、USBカードで実力を証明していたJCATを選ぶことに迷いはなかった。

 canarino Filsに収まったJCAT NETカードFEMTO(手前)の様子。
 ちなみにこの後USBカードと場所を入れ替えている。

 背面。これでUSBもLANもどんとこいになった。

 LINN DSやDELAやfidataといった「オーディオ機器」がそうであるように、JCAT NETカードFEMTOのLANポートのLEDは光らない。オーディオではこういうところが大事。

 外部給電にはEL SOUNDの5V4Aアナログリニア電源を導入。
 iFi-AudioのiPowerで済ますことも考えたが、この際とことんやることにした。
 でも電源LEDは要らないと言うのを忘れた。

 それでは、バーンインも各種設定も済んだJCAT NETカードFEMTOの音を聴く。

 課題曲は、

Corrinne May / Angel in Disguise
Luther Vandross / She’s a Super Lady
Helge Lien, Knut Hem / Rafferty
the pillows / Fool on the planet
みゆはん / ぼくのフレンド

 という聴き慣れたいつものメンツ。
 四曲目と五曲目はいかにもな日本的音作りの代表。

 まずは以下の①と②の状態で聴く。

①ハブにcanarino FilsのマザーボードのLANポートとDSP-Doradoを接続
 つまりJCAT NETカードFEMTOを使わない状態

②ハブにJCAT NETカードFEMTOのLANポートとDSP-Doradoを接続

 この比較が、普通の(マザーボードの)LANポートとJCAT NETカードFEMTOの直接的な比較となる。

 ①の状態で「あーDirettaすげー」となっているので、別に不満があるわけではない。
 それでも②にすると、さらなる向上が感じられる。「Angel in Disguise」の冒頭のピアノの音が一気に繊細になる。細部の情報量が俄然増大する。「ぼくのフレンド」のボーカルに重なる微妙なコーラスがはっきり聴こえるようになる。方向性はさておいても、変化の度合いは期待に違わない。
 全体的に音の品位が向上する一方、①に比べておとなしくなるという印象も受ける。雑さ粗さが取り払われた結果というべきか。

 やはり「PCそのまんま」なマザーボードと比べた時の差は歴然としており、この時点でJCAT NETカードFEMTOの存在意義は確かである。

 続いて③と④の状態で聴く。

③ハブにcanarino FilsマザーボードのLANポートを接続し、JCAT NETカードFEMTOのLANポートをDSP-Doradoと接続

④JCAT NETカードFEMTOのLANポートを2個使い、ハブとDSP-Doradoを接続

 ③と④ではDSP-Doradoはネットワークから見えず、設定画面も開けなくなる(ネットワークオーディオプレーヤーとしては使えないが、Direttaでの再生は可能)。よって、事前にDiretta/LAN DACモードに設定しておく必要がある。この時のDSP-Doradoは「ネットワークに繋がって色々できる」という性格さえ捨て去った、いわば完全なLAN DACの状態といえる。もはやたまたまUSBケーブルじゃなくLANケーブルで繋がっているだけ的なアレ。

 ③の音は②と結構差があってもよさそうなものだが、ほとんど差を感じない。
 違い自体はあるものの、「音質差」と呼べるようなものではない。

 ④にすると再び音が豹変した。

 我が家で聴く過去最高の音の分離とスピード感である。曲によっては感じられることもある「うるさい」という印象が完全に消え去り、「ぼくのフレンド」や「Fool on the planet」といったやかましさ全開の音源が見違えるようになった。
 ディテールの浮かび上がり方も尋常ではない。どれだけ込み入った局面でも細部の表現がまるで崩れず、意識にぐいぐいと切れ込んでくる。そしてまったく低音が濁らず埋もれない。どこまでも輪郭明瞭な、かつてない「見える低音」となった。

 なんたる情報量。
 数えきれないほど聴いた曲でなお新たな発見がある。
 「音源の持つ情報量をことごとく意識できる形で再生する」という点において、我が家の音がとうとう一線を越えた、そんな感覚がある。
 いちオーディオファンとして物凄い満足を味わった。ついにここまで来たのだと。

 やはり、ネットワークとの接続とDSP-Doradoとの接続の両方にJCAT NETカードFEMTOを使うのが最も良い結果となった。

 なお、DELAやfidataのように「2個のLANポートを使ってネットワークオーディオプレーヤーと直結する」状態を実現するためには、

⑤JCAT NETカードFEMTOのLANポートをブリッジし、ハブとDSP-Doradoを接続

 このようにJCAT NETカードFEMTOのLANポート2個をブリッジをする必要がある。しかし、そうすると今度はDirettaで音が鳴らなくなってしまった。
 ネットワークからはDSP-Doradoが見え、ネットワークオーディオプレーヤーとしては普通に再生可能なので、これはDiretta自体の仕様が絡むと思われる。よって現時点では何ともできない。

 結論:①<<②≒③<<④

 私の現状の環境では、④の音が圧倒的に良かった。
 強いて言えば、使うハブ次第では④を②が上回る可能性も考えられる。それこそ日本テレガートナー M12 GOLD SWITCHあたりを持ってこないと、なかなか逆転は難しいとも思うが。

 USBにせよ電源にせよ、「きちんとオーディオ用に作られたか否か」の差は大きい。これはLANでも変わらず、「オーディオ向けネットワークカード」であるJCAT NETカードFEMTOは期待以上の効果を発揮した。

 最後のピースが埋まった感がある。Direttaとあわせてまさに鬼に金棒。
 これでcanarino Filsは完全体になった。
 
 

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