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しずかみちこ
Gallup認定ストレングスコーチ
ストレングスファインダー(クリフトンストレングス)の専門家として、個人やチームが「強み」を活かして最大の成果を生み出すためのコーチングと研修をしています。

リクルートスタッフィングで経理したり、レアジョブの管理部門立ち上げたり、ブラック企業に入ったり、上司の横領見つけて辞めさせられたり、人の会社2つ作ったりと波乱万丈な職歴の後、独立して今に至ります。

投資と経理スキルでお金をデザインし、ストレングスファインダーで強みを活かしたら、人生が楽しくなりました。

趣味は野球観戦と美味しいものを食べること

収集心・最上志向・戦略性・未来志向・分析思考
ストレングスファインダーのnote
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『狭小邸宅』新庄耕。ブラック企業でも何も成し遂げずに逃げたら負け?と悩んだときに読む本

ブラック企業から逃げるのは卑怯?

ブラック企業に入ってしまったとき、なかなか辞められない理由はいくつもあるが、「ここで辞めたら、逃げることになるのではないか」というためらいもその理由の一つである。

「一度逃げたら、この先も逃げ続ける人生だぞ」
「何も成し遂げてないのに、逃げるのは卑怯だ」
こういう声が外からも、自分の内側からも聞こえ、逃げるのを遅れさせる。

では、逃げなかったら、どうなるのだろうか。
もし逃げずに、何かを成し遂げたら、得るものがあるのだろうか。

その答えが書いてある小説を読んだ。

結論を先にいう。
「ブラック企業で何かを成し遂げても、幸せにはならない」

この本は、ブラック企業から逃げることをためらっている人と、あのとき逃げたことは間違っていたのかと悩んでいる人に、ぜひ読んでほしい。
 

目次

『狭小邸宅』

その本は、『狭小邸宅』というタイトルの、新庄耕さんが書いた小説だ。
不動産会社に勤める主人公は、全く売れない営業マンで、日々、上司の罵声を浴びせられている。
ある日、ひとつの物件が売れたことをきっかけに、周囲からも徐々に認められるようになる。
売れない時代から、周囲に認められて起きた主人公の変化までを書いた話だ。

この先はネタバレになる。

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売れない日々

主人公は、戸建て住宅専門の不動産屋の営業マンだ。
しかし、入社して何ヶ月も経つが、全く売れない。
上司にも先輩にも、学歴だけあって売れない奴と罵られる毎日だ。

上司からは辞めろと凄まれる。すでに同期はほぼ全員辞めた。
でも「辞めます」とは言えなかった。
家を出るときは「今日こそ辞めてやる」と思うのだが、相手から辞めろと言われると、自分は何の価値もない人間だと烙印を押された気がして、認められない。
結果を出して見返したい気持ちもある。
何かを成し遂げる前に辞めるのは逃げではないかと躊躇う気持ちもある。
 

最初の1棟から始まる

「お前はいくらやっても売れないから辞めろ」という上司からの最終通告に、首を縦にふれない主人公。
周囲から見放され、声も掛けられなくなって初めて、目の前の現実に、がっぷり取り組もうと覚悟を決める。

そこに奇跡が起きて、1棟売れた。

そして、上司の手助けもあり、自分に足りないものに取り組むようになる。
自分は特別な人間であるという意識を捨て、必死に学ぶ。
そうすると、徐々に売れるようになってくる。
売れるようになると、周囲の目が変わってきた。

上司から怒鳴られることは無くなったが、同僚がよそよそしくなり、寂しさを感じる。
収入が増えたが、仕事に追われる日々では使う暇もない。

高価なスーツをまとい、自尊心を満たす。
言動が変わり、世の中を見る目が変わり、ますます仕事にのめり込むようになる。
体は疲れ果てていても、頭にたぎる興奮が冷めず、冴え渡っている。
睡眠不足が心地よくさえ感じた。
 

崩壊

全てがうまく回り始めたように感じたのも、つかの間。
世の中に苛立ちを感じるようになる。
彼女の優しさでさえ、鬱陶しい。

一部引用する。(文中、真智子とは主人公の彼女である)
「身も心もぼろぼろだった。それでもどうにかやれているのは、綱渡りのような緊張と、ときに自分でもおかしいのではと疑うことの興奮が常態化しているからに他ならない。真智子の気遣いが、酷使され軋み続けている心身を癒し、その痛覚を忘れさせてくれることは疑う余地もない。が、かろうじて保たれている危うい均衡を打ち崩す毒も多分に孕んでいた。」

主人公がいるのは、心身ともに麻痺した上に成り立っている砂上の楼閣なのだ。
そのバランスを崩すものに対して、激しい苛立ちを感じる。
危ういことには気がついている。しかし、その現実を見たくない。
現実を気づかせようとする周囲の言葉は、自分への非難としか聞こえない。

全てを見ないことにして、仕事にのめり込んでも、心を騙しきることはできない。
「会社の目標をいくら達成しても、どこか満たされない空虚な気持ちが胸の内側にへばりついてとれない。無理に剥がそうとすれば血が流れた。」

ついに、彼女は離れていった。
客を怒らせてしまった。
不安が、どんどん広がっていく…。
 

ブラック企業で頑張ること

自分の心を殺そうとする人間が権力を持っている会社をブラック企業という。

心が殺されている状態で、いくら頑張って結果が出たとしても、心が復活することはない。
死にかけている心に鞭を打っても、さらに心が悲鳴を上げるだけだ。

この小説には、他にも、一時は結果を出しても、すぐに売れなくなっていく営業マンが何人か登場する。
一人だけ、結果を出し続けたまま辞める営業マンがいるが、彼の心は元々殺されてはいなく、将来を見据えていた。

ブラック企業であっても、何も成し遂げてないのに逃げるのは卑怯だと悩んでいる人に知ってほしい。
ブラック企業で何かを成し遂げ、何かを得たとしても、その分、心は死に、大切なものを失う。
せっかく得たものも、心が死んでいれば、身に付かないで、すぐに手からこぼれ落ちていく。

それならば、ブラック企業で何かを成し遂げるために努力をするその力を、自分を守ることに使ったほうがいい。
新しい場所を探し、新しい場所で何かを成し遂げたほうが、よっぽど自分のためになるのだ。

だから、逃げよう。
自分の心を殺しにくる人の近くにいても、自分にプラスになることは、一欠片もない。

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