前科とはなにか(前歴との違い)
前科とは、一般に刑事事件として起訴され、刑罰が科せられた経歴のことをいいます。
これに対して、前歴というのは、捜査機関によって一定の捜査の対象になった経歴のことを意味します。
その他にも交通違反で反則金を支払ったなどの経歴である交通違反前歴というものもあります。ちなみに、過去に警察に補導されたり指導を受けたりしても、前科・前歴には残りません。
前科がついた場合には、検察庁が管理している前科調書に名前が記載されます。
また、罰金以上の刑(執行猶予付き判決を除く。)を受けた場合には、本籍地の市区町村で管理される犯罪人名簿に一定期間掲載されるなどの措置がとられます。
前科調書は、検察官が容疑者の前科の有無を調べたり、裁判において前科の有無・内容を証明する証拠としたりするのに用いられます。
また、本籍地の市区町村で管理されている犯罪人名簿は、前科が一定の職業につき資格取得の欠格事由になっていないかを確認したり、選挙権・被選挙権の有無を確認したりするのに利用します。
ただし、犯罪人名簿に記載された前科は、一定期間が経過すると記載が削除されることとなっています。
前科が付くことによる不利益
刑事事件を起こしてしまい、罪に問われる場合、捜査機関は必ずと言っていいほど容疑者の犯罪歴を調査します。そして、容疑者に前科が付いていれば、その内容や犯罪歴の個数にも関係しますが、重い処分につながりやすくなります。
たとえば、万引きを繰り返し行ってしまった場合、同じような態様で行われたとしても、罰金処分、執行猶予付き判決、実刑判決とより重い処分へとつながりやすくなります。
また、前科があることによって、一定の職業に就くことができなくなるなどの制限が課せられることにもなってしまいます。
前科の有無や内容は、通常、一般には公開されませんし、本人であっても調査して確認することはできません。しかし、報道機関などにより、一旦実名報道がなされてしまうと、ネット上に記事などが残っていることがあります。
履歴書などに前科を記載すると、当然就職活動は困難になるでしょうし、かといって企業が要求している場合に嘘を書いてしまうと経歴詐称になってしまいます。後にネット記事などによって犯罪歴を知られてしまうと解雇されてしまう場合もあるでしょう。
前科を避けるためには
前科を避けるためには、捜査機関による事件化を防止するか、検察官に起訴しないで事件を終結させてもらうことが必要です。
軽微な事件では、被害者との示談が成立し、被害届が出されないような場合では事件化を防ぐことが可能です。
しかし、事件が捜査機関により捜査の対象となってしまった場合には、検察官が起訴するかどうかの秤にかけられることになります。
検察官が起訴した場合の有罪率は、99%ですから、無罪判決を勝ち取ることは非常に困難です。
その反面、送致事件のうち検察官の起訴率は40%程度です。
したがって、約60%は不起訴処分で処理されています。
不起訴処分のうちの約90%は、起訴猶予となっています。
起訴猶予処分とは、犯罪の嫌疑はあるものの、訴追するまでの必要はないと検察官が判断した場合に下される処理のことです。
多くの事件では、この起訴猶予を理由とする不起訴処分の獲得を目指すことになります。
不起訴処分となれば、裁判にかけられることもないし、身柄の拘束を受けている場合は、直ちに釈放されることとなります。
犯人であるかどうか、有罪であるかどうかを判断するまでもなく、事件から解放されるというメリットがあります。
不起訴処分を勝ち取る方法
不起訴処分には、実際には罪を犯していないのに犯罪の嫌疑が欠けられてしまった場合にもなされますし、犯罪の嫌疑があっても訴追を必要としないと判断されてなされる場合(起訴猶予)もあります。
起訴猶予を理由とする不起訴処分の場合には、起訴・不起訴処分がなされるまでの限られた時間の中で、検察官に対して不起訴処分が相当であるということを説得的に主張しなければなりません。
そこで、捜査の早い段階から弁護士が積極的に弁護活動に取り組むことが非常に有用なのです。
具体的には、刑事裁判で有罪を勝ち取るには証拠が不十分であるとか、容疑者にアリバイがあること、すでに示談が済んでいること、被害弁償が終わっていること、被害届・告訴状の取下げがなされていることなど容疑者に有利な事情を示して検察官に不起訴処分にしてもらえるよう交渉していきます。
特に被害者がいる場合に示談が成立していることは、不起訴処分を勝ち取るためにも、刑罰を軽くするためにも非常に有利に働く事情です。
被害者が処罰を求めない以上、検察官としても刑罰をもって処罰するまでの必要性は乏しいのではないかと考えさせる契機になるというわけです。
また、親告罪の場合には、被害者と示談をして、告訴を取り下げてもらうことにより、確実に不起訴処分を得ることができます。
不起訴処分を勝ち取り前科を避けたい場合は、不起訴処分で事件を終結させた実績が多数ある弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部にぜひご相談ください。