オタクが新しい作品の深淵に出会った記録 - kisaiwakaの日記

オタクが新しい作品の深淵に出会った記録

海獣の子供」にハマりました。

海獣の子供を観てください。映画館で観てください。原作・五十嵐大介先生、アニメーション・STUDIO4℃で、6月から公開中のアレのことです。お恥ずかしながら私は原作もスタッフもずっと存じ上げなかったが、あんなに暗闇で大画面で浴びる映像体験が似合うアニメ映画を初めて観た。原作を読むとさらに最高で、もちろん出会いたての私なぞが薦められるような作品ではないが……とにかく、もはや合う合わない問わず色んな人に縋り付いて感想を聞きたい。

それはもう見事なハマり方をした。数年ぶりに全く知らない新たな作品にいちから没入した。
直前に長年の推しラノベが最終巻を迎え、それはそれで情緒が乱れていたんですが、弱った心にボディブローを食らったのだろうか。気がついたら映画鑑賞が6回を数え、必死で関連情報集めてはこの体験が何だったのか考えています。五十嵐先生の作品も追い始め、とりあえず「魔女」読んだ。作風の理解度が高まる。ペトラゲニタリクス~!

同じタイミングで気が狂ったフォロワーがブログを公開しており、別のフォロワーにも水没した人間全員ログを作れと言われたので、作ります。絶対後で読んでおもろいやろ! 自分が。

というわけで時系列で感想をまとめます。めちゃくちゃ長いです。



【6月9日、鑑賞1回目】

まだ自分がこのあとどうなるか理解していない。

この日、フォロワーとオフ会。
特に映画を観ようというつもりはなく、かわいいクレープ屋さん知ってるから行こう、最近こっちに引っ越したんだー、という会でした。

帰り道、プロメア観た? 私は観た~。(フォロワー)さんはたぶん好きだと思う~、という会話から、じゃあ金曜に公開されたらしいし折角だから海獣の子供行こうか、の流れに。
この時点で私の海獣の子供知識はPVのみ。米津玄師氏の壮大そうな曲にちょっと怖い海洋不思議系?
趣味の近いフォロワーが「絶対に自分向け」と発言していたので印象には残っていたが、その時点の認識は期待半分迷い半分。「こういうの地に足ついてないやつも多いんだよな、それだとあんま刺さらないんだよな」みたいな想像していた。殺せ。原作もスタッフも知らなかった頃の私だ。(趣味はそれぞれなので同じ状況で他人が言うのは構わない、念の為。自分なので自己矛盾を殺したい。)

もちろん期待もしてた。「この映画たぶん気鬱なときに刺さると思うんですよね。今元気なので観ても勿体無いかも」みたいなことをフォロワーに語りつつ映画館へ向かった記憶がある。私は気鬱なときの自分を刺すために戦争映画や家庭崩壊ものを収集しているタイプのオタクだ。それらと同じとは全く言わないが、別の角度から「気鬱なときに刺さる」自体はわりと的を射ている。

結果。

観た。
鑑賞後フォロワーと並んでヒューマントラストシネマ渋谷の地上階に降りるまで、無言であった。

このときの私に何が起こっていたかというと、処理落ちしていた。
考えていた。

上映開始、鯨の声と後ろ姿に重なるモノローグ。マンハッタンからのタイトルロール一瞬で「良い作品」アンテナが立つ。
序盤、琉花の動作の表現が良い。もう好き。「ふーん、こういう感じかあ」、「心の声多いなあ、不意にファンタジーだなあ」と思っていたあたりまではまだ冷静。

ヒトダマあたりから、徐々に駄目になった。
私は映画における「音」の表現に弱い。めちゃくちゃ弱い。具体的に言うとシン・ゴジラのピーーーーーイーーーー(観た人はわかる)とかがすごく駄目。駄目になっちゃう感じの好き。そこに絵画的な背景を貫く、戯画化された光。このギャップが駄目だった。

「さびしいから、光るんだよ」

これもズキュンときた。これは後述するが、少し勘違いを呼ぶことにもなったのだが。「さびしい」を冠する作品に対してめちゃくちゃ弱い。弱いので思考が釣られ、じわじわ、感情移入する。

音、ほかにもジムに送られたソングが身に迫ってくる琉花がスゴい。観る方も一瞬ではだかになって海の中に放り出される。このシリーズだとお察しと思うが、とどめに698.45ヘルツ、「星の死ぬ音」。怖さと、切実な思いをいっぱいに叫ぶ声みたいな綺麗さ。怖さと美しさを兼ね備えたものにも弱いのだ。お前弱いものばっかだな。

これを書いてると、どんどんあれも、あれも……と言いたいことが出てくる。
沖のジンベエザメのシーンももかなり惹き込まれた。そもそも日常の延長線上の沖合に巨大生物がいるというシチュエーションがアガる。ドキドキする。もしかして自分の近くにも……と思う。かなり素直な楽しみ方だ。私は単純な鑑賞者だからな。
同じ理由で鯨が出てくるとだいぶゾワゾワくる。
オキゴンドウに囲まれて琉花が飛び込んだシーンはもうそろそろ映画に釘付けで夢中の頃だった。
そこからあの予告のシーン……。鳥肌が立つ。

そうして祭が始まる。
ここからは言うに及ばず、もう言語化できもしないのでみんなに観てわかってもらうしかない。

忘我で観ながら、ずっと考えていた。

なんだこれは?

私が知っている観念だと「梵我一如」がいちばん近い。でもそのまんまではない。海を媒介しているから、もっと身体的で、生々しい気がする。

細かい疑問が大きな疑問に一緒になって引っかかっていた。
なんで空は隕石を追ってったんだ? どうして琉花に預けたんだ?
海くんは生まれたのか、死んだのか? どうして結局彼が宇宙になったのか?

ハテナだらけだった。
ハテナだらけだったのに、二時間弱の本編の間一度も集中が途切れることなく、
最後に至っては、5分くらいですべてを駆け抜けたのではないかと思えるほどアタマを掴まれていた。

「三年後くらいにもう一回観たい」

すぐにもういちど見ても理解できない気がする。そういう感想だ。
すごいものを見た、という感覚はあった。
なんか、知っているものに掠る気もするが、ぜんぜん違う気もする。
言葉で感想を言うとすれ違っていく気がする。理解したと思っちゃいけない気がする。大切なことは言葉にならないらしいし……
しかし、一緒に渋谷のカフェに腰掛けたフォロワーが、向かいでこう言った。

「私が普段考えていることに近かったから、驚いた。ずっと浸っていたい」

あ、これ、わかるんだ。
共感してもいいんだな。理解してもいいんだ。
二回目鑑賞が決定したのは潜在的にはこのときである。考えても構わないのであれば、抱いたいろんな疑問の答えを考えてみたかった。
ちなみに「これ原作だとどんな表現してるんだろうね」と話し合いながらその場で電子書籍の原作を買った。ちらりと捲ってすでになんとなくアプローチが違うことを察している。(証言パートを発見したらさすがにね……!)

このあとの顛末をご存知の方は笑ってください。


【6月10日、鑑賞2回目】

2日目、仕事帰りに米津玄師/海の幽霊を買う。
そのまま気がついたらチケットも買っている。早帰り日で……何なんだ……?
ちなみに昼休憩中に原作第1集を読み終わって2集に入っている。もうずぶずぶじゃない?


キャラクターの名前を個別具体で呟き始めたらだいぶハマっている証という個人的実感がある。
海洋民俗学は、なんか、なんだろう。どこまで数えるか微妙だけど凪あすとか近所でやってたアマチュア演劇で観たやつとかがめちゃくちゃ好きだったので心のいちジャンルにあったような気がする。

さて、原作を半端に読んだ状態で2回目を鑑賞して言語化できた私の感想がこれ。



見て、渡辺監督!!!!!という感じ。
原作をお読みの方はおわかりだろう。まんまと……私は、「映画でリミックスされたガールミーツボーイとしての海獣の子供」から転げ落ちたのである。


ここからアングラードの話をしはじめる。ここで引き返しておけばまだ致命傷は負わずに済んだ感。




わかりやすい死亡ログだ。





【6月12-3日、原作を読了する】



読んでる間に日付が変わる。映画ファンの私vs.原作がおもしろい私のバトルが始まる。



予防線引いている。し、知ってるもん! 客観視できてるよ! という必死の言い訳にすでにだいぶ沼にハマっている感が出ている。


このへんはアングラードに対する告白ログ。前者はジムも同じくだな。南極海洋調査船。(合言葉)

そんなこんなで読み終わった。
読み終わっちまったぞ。



【6月14日頃~、気が狂う】

このへんからフォロワーの波長の合いそうな人名指しで捕まえて一人ずつ薦め始める。


見事拗らせた。もはや予防線すら引けず完全に感覚が海に浸かっている。
一緒に海ドボンしたフォロワーさんたちの感想を必死でRTするようになる。そして以前から原作をご存知の方々に遠巻きに発見される。マジでうるさくて申し訳ないです。これはこの地方に伝わるすごいものに出会ってしまったときの人間の踊りだ。

江ノ島に行こうとし始める。
同時にフォロワーとどっぷり海獣鑑賞会をやる予定が立つ。日曜一日使って海獣の子供映画→ご飯食べながら感想→トゥレップ→ご飯食べながら感想 の会だ。バイブスが高まっている。



「限界オタク」という言葉しか出ない。なんでこの人こんなに限界なんだ?

これはちょっと冷静だ。



冷静じゃない。

今ちょっと真剣に自分を語ると、「異なる価値観のぶつかり合い」「無自覚に相手に踏み込むことが傲慢と呼ばれうること」「言葉に真摯であること」を描く作品に本当に弱いのだ。
映画にガールミーツボーイとしてハマった私、原作には違う意味合いでハマる。同じ作品がふたつぶ美味しいのだ。なんてことだ。「さびしい子どもたちの話」と「価値観の持ち方の話」が同じタイトルで!
想定がバグったようなものだった。こういう脳の混乱ほど幸せなものはない。

海獣の子供」という作品に恋をしている。恋をしたので毎日がキラキラしてる!





【6月22~23日、海獣どっぷりウィークエンド】

土曜日、江ノ島にて水族館聖地巡礼、および小田急とのコラボスタンプラリー。デプスツアーに行けなかったのは残念だけど、きっと私なんかよりずっと長く原作を愛してきたファンが特等席をわがものにしてるはずだ! それはうれしいことだ。

日曜日、くだんの映画二本立て日。フォロワー、ありがとうございました。

ようやく同じタイミングで同じくらい狂った人と現状の感想の共有ができ、息継ぎができたような気持ちになる。

しかし落ち着いてはいない。


真面目な感想。

不真面目な感想。(画像)

不真面目に真面目な感想。
このへんで先週~今週くらいの話である。ようやくまとめられる程度には落ち着いてきた。

【この数日】

サントラを買い、ムックを買い、紙でも原作を買った。原作はなお5回目鑑賞を一緒にしたリアルの知り合いにそのまま貸しました。私の手元には今ディザインズがある。

そして徐々に周辺の上映回数が減っていることに気が付き始める。かなりかなしい。

マジ。この水没をずっとしていたい。
どうぞ、このへんまで読んでくださったフォロワーさんなどがいらっしゃいましたらご協力ください。合う合わないはあると思うが、もし合うとしたら最高の体験ができると思うんだ。

まだ見納めにはしたくないが、覚悟してもう一、二度観ておきます。
あと、まとめる刺激をくれたフォロワーのひとたち、ありがとうございました。もうしばらく暴れるかもしれません。また遊んでね。