NHK正月時代劇「風雲児たち 蘭学革命編」が素晴らしく、そのことについてはまた別項で述べるとして、気になるのは、
「『風雲児たち 蘭学革命編』が面白く、原作にあたってみたいと考えた時に、結構な分量があり二の足を踏んでしまう方々」
がもしいらしたとしたら大変勿体ない、ということである。
そこで今回ご紹介するのが無料で読める「宝暦治水伝 波闘」だ。
「風雲児たち」連載中の作品で、168ページと読み応えがある。
江戸時代中期の薩摩藩と幕府との静かなる戦がほのぼのとした絵柄で、しかし重厚に描かれる。
・絵柄と内容の良い意味でのギャップ
・「風雲児たち」の通奏低音として流れる「関ヶ原での敗者が紆余曲折を経て徳川家へ立ち向かう」
・油断すると出てくるギャグ
・粋な商人
など、「風雲児たち」本編のエッセンスが凝縮されている。
まずはこちらで肌に合うかどうか確かめてみるのもよいだろう。
因みに現在流通している「風雲児たち ワイド版」においては三巻・四巻にまたいで収録され、その次からちょうど蘭学革命編の原作となった部分へと突入していく。
また、現在は蘭学革命編の原作部分をより抜いた「風雲児たち 蘭学革命編」も出ているのでこちらを買ってみるというのも手だ。
来週からは大河ドラマ「せごどん」が開始するが、何故せごどんたち薩摩藩はそんなに窮乏しているのか、という原因の一端もうかがい知ることが出来る。そういった意味では、大河ドラマの予習としてもお薦めできるかもしれない。
宝暦治水自体は半ば神話化されていたみなもと先生が波闘を執筆された当時と違い、現在は様々な説が出ているようである。それらについては筆者のような人間は述べる知識を持たないが、薩摩藩士が治水事業を行ったことの根幹は、「自分の故郷と同じような他人から見ればなぜ住むのかわからない土地を、それでも愛して住まう人々に共感したため」ということでいいのではないか、と思う。