珈琲日記という店に行った。喫茶店だ。
まめの深煎り浅煎りを聞かれる。どっちがどんな味かもよくわからないので、とりあえず浅煎りでと答えてみる。浅煎りは酸っぱいですよと言われたので、たちまち翻意し、深入りを頼む。サイフォンでじょぼじょんぼじょぼと珈琲を入れてくれる。
珈琲について全然詳しくないため、いろいろな種類の珈琲があるのだが、いったい何がどういう味で、どんな香りがするのかまったくわからない。教養がないというのは悲しいことである。
しかし、とにかく、深煎りのコーヒーは、焙煎しましたぜ!という香ばしいにおいがした。おちつく味だった。甘いものを食べるにはちょうどいい苦さだった。
珈琲日記の名物的なフルールサンドも一緒にたのむ。断面がきりっとしている。ステンドグラス的フルーツサンドである。
フルーツが大きく豪快に入っているので、噛むとじゅわーっと甘くて大変おいしい。一つ一つのカットがとても大きいのでそれぞれのフルーツの味がよくわかるのだ。キウイからのマンゴー、この味の遷移が、おい、まじかよ……的うまさなのである。
クリームはさっぱりなめらか、パンはしっかりとしていて塩気がある。分厚くてたべごたえもある。食物咀嚼幸福度ランキングにおいて、このフルーツサンドというのはかなりの好位置を占めることは、あまりにも明らかな事実であった。
問題は、このフルーツサンドは一日にわずか16食ぶんしかつくられないということだ。365日ということは、毎日、フルーツサンドが作られていてたとしても、5840食しかないのである。これはかなりすくない数字である。休日は10時開店ということだったので、気持ち早めに行ってみた。9時48分ころであった。
それにしても、休日に10時前に起きることに成功するというのはそれだけでほとんど奇跡のようなものである。これだけで、なにか、自尊心の向上を感じることができた。
店の前では整理券を持った人が5人ほど並んでいた。何時くらいから並んでいたのだろう。どうやら、休日でも開店10分くらい前に行けば、食べられるようである。平日なら開店してからでも大丈夫なのかもしれない。
ツイッターに写真を挙げてみたら、300近くお気に入りがついていて、とてもびっくりした。甘物の王といえば、長らくパンケーキがその座をしめてきた。しかし、豪奢絢爛たるキャバ嬢ヘア的装飾美をほこったパンケーキの時代は、成熟を迎え、モダニズム建築をおもわせるきりっとしたフルーツサンドの時代がやってきていることをひしひしと感じたのだった。