ナードサークの独り言 映画ポスター余話、の巻。
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ナードサークの独り言

2013年、退職記念に始めたブログ。「悠々自適」を夢見ながら、せわしく過ぎゆく日々の雑感を、写真と一緒につぶやきます。

映画ポスター余話、の巻。

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前回の記事中に、いただいた映画ポスターをホテルに置き忘れた過去の失敗談を書きました。関連記事を、こちらの8月11日付の記事にも書いたことがありましたので,一部を引用して再掲します。

出がらしですが、の巻

(中略)

夕焼けあれこれ(3) kazg

高校生の頃、学校行事で集団鑑賞した映画「橋のない川 第一部」(今井正監督)の一シーンに、たしかこんな場面がありました。
北林谷栄演じる老婆、畑中ぬいが、地主の元に小作米を収めての帰り道、空になった大八車(荷車)に乗るよう嫁のふでに勧められ、寛いで後ろ向きに腰を下ろした彼女の目に、みごとな夕焼けで西の空が真っ赤に染まっているのが見えます。

「見てみい。おふで。あの向こうが西方浄土ゆうてなあ、お釈迦はんが住んではるところやで。あそこには、差別も貧乏もないのやで。この世で、どんなに辛くても、辛抱して、お釈迦はんにおすがりしとったら、あそこへ行けるんやで。」というようなことを、しみじみ語る場面。まことにあやふやなうろ覚えで、正確なところは確かめるいとまがありませんが、私の記憶の中では、印象的な場面なのです。

映画「橋のない川」(第一部)は、モノクロ映像がずーっと続きます。ですから、この「西方浄土」を眺めやる場面も、実際はモノクロ映像だったのでしょうが、私の脳裏には鮮やかな紅い夕焼けの映像が刻まれています。

ところで、この映画、ラストシーンの一瞬、カラーに変わります。(「パートカラー」と呼ばれるそうです)。小森の村の人達が歩いているシルエットを包んで、夕日が空一面を真っ赤に染める、鮮烈な映像でした。

空腹の弟のために豆を炊こうとした小学一年生の永井武は、失火により村を焼く火事を起こします。在所の消防団は、「小森」が被差別部落であるゆえに、消火しようとせず、火事を放置します。失火をとがめられた武は、その夜自殺してしまうのでした。武の父藤作は、武の死体を抱きながら、この村にも消防ポンプを買うと決心し、娘を遊郭に売った金を、消防ポンプの購入に充てます。村対抗の提灯落し競争で、その新しい消防ポンプにより「小森」が優勝しますが、それを承認したくない他地区の連中により、優勝旗を焼かれてしまいます。

堪え難い憤懣を抑えながら、村に向かって歩む小森の人々を夕焼けが包むなか、画面には、1927年(大正十一年)三月三日、全国水平社が結成された旨、テロップが流れます。

「水平社は、かくして生れた。 人の世に熱あれ、人間に光りあれ。」



ラストシーンが一瞬カラーになるほかは、全編モノクロの、テーマ、表現ともにシリアスなこの映画に、私は、思いの外「暗い」印象は持ちませんでした。ほとばしるヒューマニズムと、繊細・鋭敏な感性が、作品の隅々にみなぎっているせいでしょうか?この映画作品に強く打たれて(日記にそんなことを書いています)、以後、私は、原作作品を続けて読みました。

当時、作品は雑誌「部落」に連載中で、一部分が刊行されていただけでしたが、続編が新たに出版される度に、学校帰りに立ち寄る書店で買い求め、読み浸りました。いわゆる「受験生」であった頃に、その自覚を放擲したかのように、何度も繰り返して読んだ本の一つですので、思い入れもひとしおのものがあります。

今、私の手元に一枚のポスターがあります。

大学に入学したばかりの頃、サークルの先輩で専攻も同じ女学生Kさんの、飾り気のない室の壁に、このポスターが貼ってありました。卒業される時、それを無理にせがんで「形見分け」として戴いたような記憶があるのですが、今では実物は見あたりません。

Kさんは、卒業後上京して政党機関紙「赤旗」の編集部に「就職」。主に文化・芸能の分野で活躍されました。紙面に署名入りの記事が掲載されるたびに、懐かしく励まされたものでした。退職後の今も、「ジャーナリスト」の肩書きで、映画評などを執筆されています。

ところで、今、私の手元にあるポスターは、彼女の部屋にあったものではなく、最近(10年ほど前)あるいきさつで入手したものです。(つづく)


実はそのいきさつというのが、前号記事で話題にしたポスター置き忘れトホホ事件の顛末でした。

きょうはこれにて
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2013年、退職記念にブログ始めました。
最初、「フォーカスは過去に向かったり、身辺に向かったり、内面に向かったりで、浅く、淡く、ミクロサイズの日録になるでしょう。」と書いたとおり、細々と更新を続けてきましたが、利用していたSSブログ(旧so-netブログ)のサービスを終了に伴い、2024年11月、こちらのfc2ブログに引っ越しました。
旧ブログの記事は、少しずつこちらに移転作業を続けていますが、いろいろと問題が残っていますので気長に見守っていただけるとうれしいです。
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