2021-01-01から1年間の記事一覧 - 未翻訳ブックレビュー

未翻訳ブックレビュー

世界の本への窓 by 植田かもめ

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年のオススメ本まとめ

新潮社「Foresight」での連載「未翻訳本から読む世界」、更新されています。 *Yahooでの記事単品売り 今回は特別編として、2021年に日本語版が発売された注目本と、今後の翻訳が期待される本をまとめて紹介しました。 5000字以上使って、関連書籍の言及ま…

働くのってBitterでSweet - 『仕事の喜びと哀しみ』by チャン・リュジン

韓国の作家チャン・リュジンの短編小説集『仕事の喜びと哀しみ』が好きだ。 以下、一部ネタバレあり。 表題作では、スタートアップ企業に勤務する女性が主人公である。そこでは英語名のファーストネームで互いを呼び合う事が推奨されている。CEOはデービッド…

SDGsは17個も目標があるけれど実質はただ1つ - Net Positive

新潮社「Foresight」での連載「未翻訳本から読む世界」、第4回が更新されました。 ユニリーバ社の元CEO(最高経営責任者)であり、SDGsに関する国連の活動にも数多く携わっているポール・ポルマンの著作「Net Positive」を紹介しています。 ニュースなどで聞…

メタバースより「俺バース」 - ジェニー・オデル、注意経済、折坂悠太

ジェニー・オデルの「何もしない」(How to to nothing)を読んだ。余暇を含めた全ての時間を換金可能な経済資源として差し出す事に慣れてしまった社会を批判する本だ。カリフォルニア在住のアーティストであるオデルは、荘子や古代ギリシャのエピクロス派の…

問題を大きくしないと話をきいてくれない人たちがいるから気をつけろ - What We Owe Each Other

新潮社「Foresight」での連載「未翻訳本から読む世界」、第3回が更新されました。 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの学長でもある経済学者ミノーシュ・シャフィクの"What We Owe Each Other"を紹介しています。所得格差の拡大やSDGsも踏まえた「新し…

ごらん世界は美しい。それはいいけど、あなたはどこ?

Beautiful World, Where Are You by Sally Rooney サリー・ルーニーの新作小説"Beautiful World, Where Are You"、すごく良いタイトルだと思った。 ルーニーは1991年アイルランド生まれの女性作家で、これまでに2作の小説を発表。若者の恋愛を描いて、いわゆ…

すぐに忘れてよいという特権 - What Strange Paradise

新潮社「Foresight」での連載「未翻訳本から読む世界」、第2回が更新されました。 有料記事なので、こっちのブログにはteaser・予告編・オマケ話みたいなものを書こうと思います。 今回取り上げたのは、オマル・エル=アッカドの小説第2作"What Strange Para…

新しい連載が始まりました

www.fsight.jp お知らせです。 新潮社さんの国際政治経済情報webメディア「Foresight(フォーサイト)」で、新しく連載を始めました。 毎月、世界について新しい視点を与えてくれる本を紹介して考察を加える予定です。以下、リードを引用します。 書籍という…

【最近のマンガ話#3】和山やま「夢中さ、きみに」、または、干渉しない多様性という存在しないユートピア

前回と、前々回に続いて、最近読んだマンガの話。 和山やまの「夢中さ、きみに。」に男子校を舞台にした連作短編が収められていて、その中に「林くん」というキャラクターが出てくる。 彼は周りから見て「よくわからない男」だ。学校の階段の数を全て数えて…

【最近のマンガ話#2】池辺葵「ブランチライン」、または、社会とは値札である

前回の記事に続いて、最近読んだマンガの話。 池辺葵「ブランチライン」の1巻を読んだ。女性ばかり4姉妹の家族を描いた物語でとても素晴らしいのだけど、この記事ではまた本筋とは関係ないところを紹介したい。 主人公姉妹のひとりがはたらく職場に後輩の若…

【最近のマンガ話#1】「チ。地球の運動について第4集」または、ルールを守らせる側になる面倒くささ

最近読んだいくつかのマンガについて語りたい事が溜まってきたので、ラフに連続記事にしてみようかなと思う。 まずは「チ。地球の運動について」の第4集。このマンガの主題については以下の記事で以前紹介したので省略する。 巻を重ねても相変わらず面白いの…

「個人攻撃マシーン」化した社会を論じるキャシー・オニールの新刊はおそらく必読書

発売予定が2022年3月なのでまだかなり先だけど、これは必読だ。AIの活用が助長する社会的な偏見や不公正を論じた「あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠」の著者であるキャシー・オニールの新刊が出る。さっそく予約購入した。 新刊のテー…

知的好奇心の強い若者がいま何で情報収集しているのか見失っている話

約3年間にわたって寄稿連載を続けさせてもらっていた「翻訳書ときどき洋書」の定期更新が終了となった。 「世界が広がるような海外の良書を紹介する」というコンセプトがこのブログで目指している事と完全にシンクロしていて、しかも選書は自由に任せてもら…

【寄稿連載更新】「CRISPR」生みの親の評伝

タトル・モリエージェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新されています。 『スティーブ・ジョブズ』などの評伝で知られるウォルター・アイザックソンの新作を紹介しています。遺伝子編集技術「CRISPR」の生…

【寄稿連載更新】青空を捨てる未来

タトル・モリエージェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新されています。 名著「6度目の大絶滅」のエリザベス・コルバートの新作を紹介しています。前回紹介したビル・ゲイツ気候変動本からもつながってい…

向田邦子がビヨンセすぎて人生に前向きになれそうだ - 「手袋をさがす」

向田邦子ベスト・エッセイ (ちくま文庫) Spotifyのポッドキャスト番組「ホントのコイズミさん」の向田和子ゲスト回を聞いた影響で、2020年に発売された「向田邦子ベストエッセイ」を読んでいる。オリジナル編集のアンソロジーである。 最後に収められた一編…

優しさとはあきらめである - 「春にして君を離れ」by アガサ・クリスティー

春にして君を離れ (クリスティー文庫) アガサ・クリスティーの「春にして君を離れ」を初めて読んだら最高の小説だった。全ページ全センテンス全ワードが好きだ。ポアロは登場せず、殺人事件も起きない小説であり、発表当時はクリスティーが名前を隠して別名…

【寄稿連載更新】ビル・ゲイツの気候変動本

タトル・モリエージェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新されています。 ビル・ゲイツが解説する気候変動本を紹介しています。気候変動版「ファクトフルネス」という感じで分かりやすい本ですので是非どう…

私は一割しか理解していないAIの名著2選

d yomoyomoさんの記事で知ったのだけれど、ペドロ・ドミンゴスの「マスター・アルゴリズム」の日本語版がついに発売されるらしい。

いつか宇宙人に人間について説明してみたい、または「エイリアン系」の本について

タトル・モリエージェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新しています。「人間を説明するマニュアルがずっと欲しかった」と語る自閉症の分子生物学者カミーラ・パンが著した"Explaining Humans"を紹介してい…

【寄稿連載更新】アンチレイシストになるには

タトル・モリエージェンシーさんが世界の本棚からお薦めを紹介する「翻訳書ときどき洋書」への寄稿連載、更新されています。 歴史学者でありボストン大学反人種差別主義研究センターの所長も務めるイブラム・X・ケンディによる一冊を紹介しています。是非ど…

2020年のオススメ本まとめ

もう年が明けてしまったけれど、毎年恒例で書いているオススメ本のまとめ。 寄稿連載の最新回に「ベスト洋書と翻訳書」という形でフィクションとノンフィクションを合計6冊紹介しているのでぜひどうぞ。