万平ホテル(軽井沢町軽井沢)が1月3日の営業をもって休業に入った。4日から約1年半の間、大規模改修・改築工事に取りかかる。創業130周年を迎える2024年の夏に営業再開を予定する。
万平ホテル 大規模改修前営業最終日のチェックアウト客を見送る支配人
同ホテルは1894(明治27)年創業。日本の西洋式ホテルの草分けの一つともいわれるクラシックホテル。今回、ジョン・レノンをはじめ数々の国内外の著名人や政界人などに愛されてきた、国の登録有形文化財である「本館アルプス館」(1936年築)の建物の経年劣化部分の補強など、広範囲に及ぶ改修を施すことを主な目的として、130周年を迎える2024年に向けて大規模改修・改築工事を実施することになったという。
この三が日が現況のホテル空間での最後の宿泊の機会となったため、多くの万平ホテルファンが年末から三が日にかけて詰めかけ、名残惜しそうにする姿が見受けられた。
大みそかには年越しに向け、料理人の山崎紀夫さんらがアイスカービングで、これまでの人のつながりに感謝の気持ちを表現したという、人と人が向き合い、上にThank Youの文字が刻まれた作品を制作。宿泊客らは眺めながら、「万平ホテルのおいしい料理を作ってくださるコックさんが料理以外にもこのような作品を作るとはびっくりした。素晴らしいおもてなし」などと感動していた。
元日には、餅つき大会とアイスカービングの実演も行われ、取締役支配人の西川眞司さん自ら宿泊客らをもてなし、ホテルスタッフの威勢の良い掛け声に合わせて宿泊客が餅をつき、盛り上がりを見せていた。餅つきに参加した千葉県から来たという50代夫婦は「毎年万平ホテルで年越ししてきた。来年は来られないと思うと残念で仕方がない。2024年の予約を取れるようになる日が待ち遠しい」と話していた。
3日の営業最終日は晴天に恵まれた。チェックアウトする宿泊客一人一人に同支配人らが感謝の気持ちと「2024年にまたお待ちしています」と思いを伝えていた。「また会いましょう」と同支配人らとあいさつする宿泊客の姿も見られた。東京から来たという小学校6年生と4年生の子連れの家族4人の父親は「毎年万平ホテルに来ていたが、今回アルプス館の最後の一部屋を予約できて幸せ。必ず2024年に戻ってきたい」と熱い思いを語った。
この日は、カフェテラスや売店利用など外部からの客も多数押し寄せた。「地元軽井沢に住んでいる。軽井沢のシンボルなのでしばらく寂しくなる。最終日なのでホテルスタッフの顔も見に来た」と軽井沢町に住む50代夫婦。
地元住人にも旅行者にも親しまれてきた同ホテルは2024年の営業再開に向け、日本のホテル史上における貴重な歴史的建造物としての伝統を守りつつ、装いを新たにする。
ホテルスタッフは改装期間中、全国の系列ホテルに出向し、再び2024年の営業再開時に同ホテルに戻り、同じメンバーで客をもてなす予定だという。
竣工は2024年5月、営業再開日は未定。