なぜアメリカにはどこにでもリスがいるの?リス増殖に関しての知られざる歴史的背景|カラパイア
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なぜアメリカにはどこにでもリスがいるの?リス増殖に関しての知られざる歴史的背景

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 アメリカにはいたるところにリスがいる。パルモがいたイリノイ州アーリントンハイツや、ペンシルベニア州モンロービルにもたくさんリスがいて、ベランダにナッツ類を置いておくと次から次へとリスがやってきた。それはワシントンDCやニューヨークなどでも同様で、少しでも木があるところには必ずリスが存在していた。

 なぜこんなにアメリカにはリスがいるのだろう?そこには知られざる秘密があったようだ。

アメリカのリスの増加は人為的なもの

 動物学者である米ペンシルバニア大学の助教授エティエンヌ・ベンソン氏が、アメリカにおけるリス増殖の理由についての研究結果を公表した。リス増殖はどうやら人為的なものだったようだ。

 それによると、現在アメリカのあちこちの都市で見かけるハイイロリスは、以前、人々が娯楽のために公園に放ったものが増殖した結果なのだという。

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 19世紀以前、リスはただの野生動物に過ぎなかった。都市部に顔を出すことはなく、森の中に住み、狩猟者が食糧として狩る程度にすぎなかった。

 アメリカの都市部に住むリスの歴史は1847年、ペンシルベニア州フィラデルフィアのフランクリン広場にて、公園内の娯楽を増やすために2~3匹放たれたことから始まる。

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 その後ある事件が起きた。1856年頃、ニューヨークシティでペットとして飼われていたリスが逃走、それを追うように次々とリスが逃走し、そのリスが繁殖をはじめ数百匹に膨れ上がりニューヨークの公園を占拠した。この様子をメディアが大々的に報じることで、リスの愛くるしい姿が人々の関心を高めた。

 その後、フィラデルフィアだけでなく、ニューヘイブンやボストンでもリスが公園で放たれ始めた。

 1870年代に入り、造園家のフレデリック・ロー・オムステッド氏の緑化運動に端を発して、アメリカではリスを増やすブームが起きた。1877年にニューヨークのセントラルパークで放たれた数匹のリスは、7年後には1500匹まで数を増やし、ボストン、ワシントン、シカゴなど全土に広がり始める。

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 ベンソン氏によれば、リスを公園に放つということは、当時の「美しいものを街に増やそう」とする動きに当てはまり、なおかつ当時の「都市部に自然を採り入れ、旅行のできない労働者たちのために娯楽の場を設け、市民の心身の健康維持をする」という思想にも合致ていたという。

 「リスのえさやりは人間性を豊かにする行為とみなされ、奨励された」。ベンソン氏は語る。この動きに動物愛護活動家は喜び、ボーイスカウト創設にも携わった作家、アーネスト・トンプソン・シートン(シートン動物記の著者)も、「リスのえさやりは、人間の残虐性を癒す方法のひとつだ」として、奨励し、さらなる広がりを見せたのである。

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増えすぎたリス、20世紀に規制

 ところが20世紀前半の数十年、リスにとっての天国のような時代は終焉を迎える。都心に住む人々にとってリスは害獣になり始めたのである。

 屋根裏に住みついたり、庭を掘り起こしたり、鳥の餌を奪うことで愛鳥家にも嫌われはじめたのだ。20世紀後半を迎え、ついにリスの餌やりが犯罪であるかのように扱われていった。現在アメリカには、「リスに餌を与えたら罰金」などと書かれた看板が多数ある。

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 リスの繁殖力と適応力は人間が思うよりも高かった。ベンソン氏はこれらを研究して、「我々人間の生み出した状況は生態系を大きく崩していった。リスは確かにかわいいし、愛すべき存在である。だが、それを人間が人為的に増やすことで他の動物たちにどんな影響を与えているのか、我々はもう一度よく考えなくてはならない。」と語った。

アメリカのフレンドリーな赤ちゃんリス

via:The Urbanization of the Eastern Gray Squirrel in the United States・原文翻訳:Yucaly

 西海岸部はわからないが、東海岸や中部に関していえば、本当にリスはどこにでもいる。リスがこれ以上増殖しないよう、「リスを触ると病気になる。」という噂が徹底して広まっているほどだ。

 実際にアメリカで最近のリスによる狂犬病の報告例は見られないし、エキノコックス症もレプトスピラ症の報告例もないのだが、リス増殖による生態系の崩壊が懸念されているからだろう。

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この記事へのコメント、79件

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    1. 日本人としてこの記事を見ると真っ先に思い出すのは※1の鯨問題だな。一時の感情で事を起こそうとするからこうなるんや。鯨だって増えすぎたらどうなるかくらい分かりそうなものだが。

  1. 色々問題があるのだろうけどアメリカのリスがいる風景は癒されるよね…

  2. 西岸もリスがゴロゴロいるよ。大きい大学とかよくリスが走り回ってる。

  3. ドブネズミより100倍いいわ。てか可愛さがあるだけでこんなに違うんだね。
    ゴキブリもハエトリグモみたいに可愛くなればいいのに。

  4. どこも同じだね(・ω・)
    日本はサル
    ロシアはクマ
    アメリカはリスか

  5. 確かにどこにでもいたなあ
    しかし自分たちで可愛いからって増やしておいて
    あとから害獣よばわりとは随分じゃないか
    まあ積極的に駆除してないだけマシなのかもしらんが

    1. ※7
      いやいや、捕鯨をしなかったとしてもクジラが爆発的に増えることはないだろうが、もともと天敵がほぼ存在しないんだから。むしろ漁業と狩猟の相乗効果で減ることはあったとしてもな

  6. 「井の頭公園のリス園からリス逃走、捕獲した数が逃走した数より多かった」
    というニュースを思い出して微笑ましく読んでいたら生態系破壊の残念な話になったでござる(´・ω・`)
    リスかわいいんだけどね(´・ω・`)

  7. 当時のアメリカはめっちゃ殺伐としてたので、アニマルケアで緩和しようというのは間違ってはいなかった
    問題は間引かなかったことだが、生態系への影響度に対する理解は当時では望むべくもなく
    まあつまりいまさらどうしようもないってことっすな

  8. リスと共存出来る作りの家にすれば良いのでは。
    家の壁にリス用の通り道をスケルトンで作ったり、屋根裏をリスの住居にさせたりしたい。

  9. (英)squirrel
    (仏)ecureuil
    外国語だと長い

  10. 人間の勝手で増やされ 挙げ句害獣扱い
    本当に人間の勝手さには呆れかえる
    どんな動物より人間が一番地球にとって害のある生物であることがわかっていない

  11. ネズミより良いったって、家の壁に穴開けたりもするんだが。
    それと全然清潔ではないし、いくつかの伝染病の媒介もしてるので、
    現地では触らないように言われてる。

  12. 動画のオッサン、縞シャツ+短パンに靴下にクロックス、そのファッションはアウトだ。

  13. >それを追うように数百匹のリスが逃走
    ごめん、ちょっとここわかんない
    そんなにノリで気軽に逃走できる環境なの!?

  14. たしかにそのまま鯨に当てはまるよね。
    鯨激減から鰯などの小魚が増えて食物連鎖で大型魚まで増えたのに、捕鯨が規制されて鯨が増えてプランクトンが減って小魚減って大型魚も減った。
    可哀想だけで捕るなって言うなら食料不足を補う方法を先に確立させないとね。

  15. 其れ丈栗鼠が殖えれば、其を狙って捕食者もやって来るんでは。梟とか鼬とか。

  16. >鯨
    海外の動物問題をとかく捕鯨問題にこじつけ、さらには日本の捏造調査捕鯨がさも正しいかの様なミスリードは良くない。リスの異常繁殖問題は、むしろミドリガメや鹿が近似例だろう。
    世界の漁場で魚が減っているのは99%人間の商業漁業による乱獲が原因(残りの1%は異常気象)。鯨が増え過ぎた結果~とか妄説を垂れ流してるのは日本人だけ。しかもその日本人が一番、数多くの魚類を乱獲で絶滅に追いやっている。ウナギ、タコ、マグロ…今後も「代替魚」とやらでメロやアカマンボウなども無節操に取り尽くすだろう。

  17. 鯨に関しては詳細はまだチェックしてないから反対賛成をここで言うつもりはないが、少なくとも捕鯨禁止ってのは獲るのを止めましょうってことであって人工的に殖やしましょうってことではないんだから、この記事のリスの話とはぜんぜん対応しないな。

    1. >>26
      確かに何でもかんでも捕鯨問題にこじつける奴は腹立つし、漁獲量の減少が乱獲によるものだってのも同意見だが、日本の調査捕鯨の結果が捏造だというならそう判断できるデータを持ってきてくれ
      あとウナギ、タコ、マグロは漁獲量は減ってるけど別に絶滅してないし、絶滅危惧種でもない
      いや数が減ってるってことを強調したくてそう表現したのは分かるけどね
      相手の意見をミスリードだって指摘しながら自分もミスリードしてるってのは如何なものかと
      コメント書き込むときは、書いた後に一回自分の文章読み直そう。

    2. そもそも※26はマグロが日本人のせいで絶滅寸前と言い出しちゃうくらい無知やん
      マグロなんて日本人くらいしか好んで食わなかったのに、寿司だの日本食が広まってマグロが旨いと広まった結果世界中で乱獲されるようになっただけやん
      ウナギは知らねーけど、環境破壊やろ
      環境の変化に強い種類のウナギは普通に採れまくるし

    3. >>26
      >>30
      捏造ってより調査の体をなしていないって言った方がいいんじゃないか?
      10年間で4000頭も殺してるのに国際司法裁判所に提出できた論文がたったの二冊って・・・
      そりゃ「お前んとこがやってるの調査捕鯨じゃなくて商業捕鯨だろ!」とか言われても文句言えんわ

      1. >>45
        10年で4000頭ってことは1年で400頭か、生態バランスに影響無いし決して多く無いだろ
        商業かどうかはどうせ美味しく食べるだけだし無問題

        1. ※69
          昔、六甲山はハゲ山だったと聞きました。植林で今は立派な山に。マイナーなネタですが。。

          1. ※71
            コイは元々汚れ耐性があるからきれいな川の目安にはならないし(逆にきれいな所だとエサが足りなくて弱っていく)、外敵ができないくらい大きくなるから、その地域の川にとって侵略的外来生物になるんだよね

            • +1
  18. 人間ってのは何年経とうと同じ過ちを繰り返すんだね…
    日本だとアライグマ、ハクビシンとか問題なってるね。
    コウノトリだって昔は田畑を荒らす害鳥で必死で駆除したのを、今必死で繁殖させてる。
    人間は本当に勝手だなぁ… って改めて思うよ

    1. >>30
      「調査」はごまかしでしょ
      文化って主張するなら調査捕鯨は否定しないと

  19. 岩魚を魚止めの滝より上流に放流するのと
    ブラックバスなどの違法放流。
    食料と趣味とどれほどの違いがあるというのか、最近考えるわ。

    1. >>33
      文化ってよりは、イルカは網を食い破る害獣だから殺して、死体捨てんのももったいないから流通させてんだけどな。
      調査捕鯨は国際捕鯨委員会の許可受けてんだからごまかしじゃないだろ。許可取り消されたらちゃんと捕鯨中止してるし

  20. 『人間は勝手』っていうけど動物だって本来自分の事しか考えてないぞ。
    動物が他の種を絶滅させないのは、たまたまバランスがとれてるだけで、あるものあるだけ喰い尽くしてバタバタ餓死する動物だっているじゃない。

  21. リスは森を作るというから落葉樹を増やすにはいいんだろうけど。

  22. リスの尻尾がネズミみたいだったらかわいくないから増やされることなく終わっただろう

  23. 環境破壊に日夜邁進する人間。猿チゃンより毛が三本多いだけ。
    キツネザルのカニ飛びは木が減りすぎてのやむ無い仕様と知った時は暗然としたね。
    カカポぉー、西表の山ちゃんー、死ぬなよー。

  24. RADWIMPSのおしゃかしゃまを思い出す内容だな。
    カラスが増えたから殺します
    さらに猿が増えたから減らします
    でもパンダは減ったから増やします
    けど人類は増えても増やします
    僕らはいつでも神様に
    願って拝んでても いつしか
    そうさ僕ら人類が 神様に
    気付いたらなってたの 何様なのさ

  25. 警戒心強すぎて、全然懐かないし、病気持ってるからもし噛まれたら大変だよ。

  26. 当然の帰結。ちょっと考えりゃ分かりそうなことなのに、実際やってみて実害を及ぼしてから初めてしまったと思う。愚かだね。

  27. パルモ、モンロービルに居たんか。ゾンビモールのとこだよな。

  28. これってリスがどうこうじゃなくてノイジーマイノリティの問題だと思うの

  29. アメ公はいつも適当なことやってあとあと問題化するよなあ

  30. 確か向こうのリスは狂犬病とか持ってて、ノミ経由で感染するから超危険だったはず

  31. みんな、ブラックバスのことを忘れるなよ。あとはマングースとかね。
    当初は釣りの対象としても素晴らしい上に食ってもおいしい最高の魚!この魚を全国に広めようぜ!!
    っていう、完全によかれと思っての行動なわけで。
    実際悪影響が出るか出ないかなんて、事前に予測するのは難しいよ。
    今は色々と問題が顕在化したから、安易に自然に手を加えないように、というのが常識になりつつあるけどさ。
    どの国も似たようなことやってるよ。

  32. アメリカは本当にどこにでもリスがいる。
    アメリカ育ちだがニューヨークに住んでたころはよくアパートの非常階段を伝って窓まできて、家に入ってきていた。
    公園もリス天国だった。
    大学もキャンパス中にリスがいたし、
    なんかそれが普通だったから今日本に居るとリスになんて遭遇しないから寂しいね。

  33. 似たような件でいうと、みんなが近所の池で見かけるメダカだと思ってる魚は、かなりの地域で北米原産の特定外来生物であるカダヤシという魚に置き換わっている。
    過去にボウフラ退治のために日本に持ち込まれて広まったんだそうな。
    見分け方は(上からじゃ分からないから捕まえて見ないとだめだけど(詳しくはウェブで!))簡単だから、自分のところはどうかチェックしてみるといいよ。

  34. 奈良公園にも台湾リスとか外来種が増えてるの、どうしたらいいんだろうな。

  35. シマリスは飼うなよ
    超ラブリーな子が、ある朝突然マジ噛みする
    噛み付いて頭を振って食いちぎろうとする
    本気で止血しないと血が止まらない
    数時間で元のラブリーな子に戻る
    いつもは肩の上で遊んでるのに、急変したら戻ってこないことも
    かわいいのに、意外とショップに置いてない理由がこれ

  36. 日本の森林がシカ被害・・・というのは少し違う。
    日本の山間部って実は80%が商業用に植え替えられたもの。
    つまり鹿も食わないマズイ針葉樹。だから人里に降りて畑を荒らす。
    北斎の描いた富士山がどうしてあんな絵なのか。それは明治頃の日本は
    ほとんどハゲ山だったから。当時は炊事も暖房も薪に頼っていたからね。
    つまり「鹿が食べる広葉樹を人間の都合で伐採した結果」が今のシカ被害。
    それと日本の漁業に文句言ってる人がいるが、底引き網でゴッソリ海の資源を
    根こそぎかっさらっていくのは中韓なんだけど? 知ってて言ってるのかな。
    日本の底引きは3km。対して中韓は10km×3回も仕掛ける。そりゃ魚も枯渇するわ。

  37. 魚の住める綺麗な川になんて言って小学校のイベントで鯉放流してたけど、今思えば無茶苦茶な事してるんだよなぁ

  38. みんなでもうちょっとだけ、先を見て生きて行ける様になれたら理想だよね

  39. ネズミの仲間なのにこの扱いの差。
    ゴキブリとカブトムシの差みたいなもんか

  40. アメリカにはリス捕まえて食べる人もいるからね
    squirrel recipesで調べるといろんな出てくるよ

  41. 大学院時代にウィスコンシン大学に研究発表に出かけたが、
    その時にもマディソンという町中にはたくさんリスがいた。
    びっくりして写真を撮ってたら地元の人が笑ってみてた。

  42. 岐阜の護国神社そばにもリスが
    でるが、これは金華山リス村の
    脱走兵らしい。

  43. オーストラリアにもいた。ニューデリーの大学構内にもいた。
    なぜ日本だけリスが少ないのか、のほうが私には疑問。

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