手術の後に音楽を聴くと痛みや不安が軽減されることが科学的に証明される|カラパイア
メインコンテンツにスキップ

手術の後に音楽を聴くと痛みや不安が軽減されることが科学的に証明される

記事の本文にスキップ

10件のコメントを見る

著者

公開:更新:

ヘッドホンで音楽を聴いてリラックスする女性この画像を大きなサイズで見る

 音楽にリラックス効果があるのは以前から知られていたが、最新の研究によると、手術後に音楽を聴くと痛みや不安が軽減されるという。

 音楽には人を幸せにしたり脳の創造性を解き放つなど、素晴らしい効果がいくつもあるが、新たなレビュー研究では、術後の患者の回復を後押ししてくれることを明らかにしている。

 ただ痛みや不安が和らぐだけでなく、実際に鎮痛剤の使用量が減ったり、心拍数がゆっくりになるといった効果も確認されている。いわば音楽は副作用のない薬のようなものなのだ。

音楽と手術後の痛みや不安の関係性を調査

 米カリフォルニア州北部医科大学医学部の研究チームは、音楽が手術後の痛みに与える影響を調べるために、関連する35本の研究論文を調べてみた。

 これらの研究はいずれも、音楽が患者の痛みや不安に与える影響や、それによる心拍数やオピオイド鎮痛薬の使用量の変化を計測したものだ。

 レビューの結果明らかになったのは、ヘッドホンであれスピーカーであれ、ただ音楽を聴くだけで、手術後の患者の痛みや不安が軽くなるということだ。

 具体的には次ような効果が確認された。

痛みの軽減

音楽を聴いた患者は、手術の翌日に痛みが軽くなった。痛みは2種類の自己申告による方法で計測されており、それぞれ19%と7%痛みが和らぐという結果だった

不安の緩和

こちらも自己申告によるものだが、患者の不安は3%軽くなっていた

鎮痛薬の使用量の減少

手術後初日に音楽を聴いた患者は、そうでない患者に比べて、オピオイド鎮痛薬の使用量が半分以下だった(平均0.758mg 対1.654mg)

心拍数の低下

音楽を聴いた患者は、そうでない患者よりも心拍数が毎分4.5回少なかった

研究チームは、これは非常に重要なことだと述べている。なぜなら患者の心拍数を健康的なレベルに保つと酸素や栄養の循環がうながされるため、手術部位の回復もうながされるからだ

また頻脈(心拍数100以上)になると、心房細動などの危険な症状も発生しやすくなるので、その意味でも心拍数の低下には大きな意味がある

この画像を大きなサイズで見る
手術後に音楽を聴くことで痛みの軽減、心拍数の低下、鎮痛剤使用料の低下、不安の緩和が確認された image credit:American College of Surgeons

手術後に好きな音楽を聴くことの有効性

 研究の上席著者であるエルド・フレッツァ医師は、「手術の麻酔から目覚めた患者は、強い恐怖を感じたり、自分がどこにいるのかわからなくなったりすることがあります」と、プレスリリースで語る。

 音楽は、そうした不安定な状態から普段の状態への移行をスムーズにして、患者の負担を軽くしてくれる可能性があるという。

 術後のストレスを軽くする方法としては、瞑想やピラティスのようなものもある。

 だが、そうした活動がかなりの集中力や動きを必要とする一方、音楽はただ聴くだけであるため手術直後の患者にとってより手軽な方法であるという。

病院の病室のベッドで音楽を聴く女性の姿この画像を大きなサイズで見る

 また筆頭著者のシェハザイブ・ラエース氏によると、実際に痛みが軽くなったのかどうかは不明だが、少なくとも「患者が痛みが軽くなったと感じている」ことが重要なのだという。

 なぜ音楽が痛みを軽くしてくれるのか?

 詳しいメカニズムは不明だが、研究チームの考えでは、それによってストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」が少なくなり、それが手術後の患者の回復を助けている可能性があるとのこと。

 ただし痛みを和らげるために、どのくらい音楽を聴くべきかなど、わからないことも多い。

 音楽の治療効果をさらに解明するため、研究チームは今後、手術室や集中治療室での音楽の効果を調べる試験的なプログラムを予定しているそうだ。

 そんなわけで手術後に音楽が聴きたくなったら、聴こう! これがフレッツァ医師からのアドバイスだ。

 この研究は、2024年に開催されたアメリカ外科学会(ACS)臨床会議で発表された。

References: Listening to music may speed up recovery from | EurekAlert! / Listening to Music After Surgery Lowers Pain and Anxiety - Neuroscience News

同じカテゴリーの記事一覧

この記事へのコメント、10件

コメントを書く

  1. 音楽の嗜好との関係も知りたいな。つまり好みの音楽を聴くことと、ノイズ、何も聞かせない(いままでの状態)、好みでない音楽を聴くこと、嫌いな音楽を聴くことなどでいろいろ変わるかなーと。さらには平常状態で同じことをした研究もあるだろうからオピオイドはともかく心拍などは測定できそうなのでその辺の比較とかね。もっと広げると音楽を聴く趣味がない人で別に没頭することのできる手術の後に影響のない/少ない趣味を持っている人にそれをさせるとかね。読書・映画鑑賞・プラモづくりなど安静にしていてもできるパターンだとどうなのかなーと。あ……アクション映画の鑑賞だと心拍上がるかなw
    今後の研究に期待してます。

  2. 音楽が好きな人はいいとして音楽が嫌いな人だと逆効果になったりするのだろうか。

  3. 何度も腹開く手術した身としては、ずっと落ち着いてるよ。
    やること無さ過ぎてイラっとするよりずっとボーっとしてた。
    傷が痛かったって記憶はあまりない。ずっと天井眺めてた。

    初めてイライラするのは食べ物が重湯ばっかり続いて空腹にさいなまされた時だ。
    これはもちろん食事のお許しでてからの話ですね。

  4. 音楽ジャンルによる相関性なんかもあるんだろうか
    クラシックとか、ヘヴィーメタルとか・・・

  5. 歯医者が音楽流してるところが多い理由はコレだし。昭和の時代から言われてないコレ?

  6. 体調悪い時とかメンタル落ちてる時に音楽聞くと、その時の気分が染み付いちゃって
    何でもないときに聞いても嫌な時の気分がぶり返すから
    好きな音楽ほどこういう時聞きたくない派
    あとこれ単に気が紛れてるだけとは違うのかな

    1. 何でマイナス付いてるんだ?
      そんな人もいるんだなって面白く書き込み読んだのに
      でも私も分かる気がする
      気持ちがぶり返すって事はないけど、純粋に娯楽としての楽曲ではなくなってしまう気がする
      だからなんかその曲に申し訳ないような気もする

  7. 歌で治療するアニメやってたな。マイナーだけど。手術中にも歌で補助してた。

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

料理・健康・暮らし

料理・健康・暮らしについての記事をすべて見る

最新記事

最新記事をすべて見る